『日々の映像』

2008年09月23日(火)  自民・麻生新総裁:得票7割で圧勝

 自民・麻生新総裁が得票7割で圧勝した。
しかし、いばらの道はこれからである。主要新聞社の社説を以下の通り引用した。一番納得できた論説は日経の社説であった。皆さんは如何でしょう。

自民・麻生新総裁:得票7割で圧勝
                   2008年9月23日  朝日新聞
社説 麻生・自民新総裁 理念も政策もなき勝利
                   2008年9月23日 毎日新聞 
社説1 「麻生対小沢」今度は国民が選ぶ番だ(9/23)
                     2008年9月23日 日経
社説 麻生自民党総裁 「何をなすか」明確に発信せよ
                     2008年9月23日 読売新聞
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自民・麻生新総裁:得票7割で圧勝
                   2008年9月23日  朝日新聞

 自民党は22日午後、党本部で両院議員総会を開き、党所属国会議員と各都道府県連代表による投票の結果、麻生太郎幹事長(68)を第23代総裁に選出した。過去最多の5氏で争われた総裁選は、1回目の投票で麻生氏が全体の7割近い351票を集めて圧勝し、福田康夫首相(72)の後継の新総裁に選ばれた。麻生氏は、内閣の要である官房長官に伊吹派の河村建夫元文部科学相(65)起用で最終調整に入った。また農相には、総裁選に立候補した石破茂前防衛相(51)を充てる方向。中川昭一元政調会長(55)の入閣も有力となった。
 麻生氏は、福田内閣の総辞職を受けて24日に国会で第92代、59人目の首相に指名され、新内閣を発足させる。麻生氏の任期は、福田首相の残任期間の09年9月までとなる。
 官房長官起用が有力となった河村氏は、文教・スポーツ政策を通じて麻生氏と関係が深い。閣僚経験があり安定感のある河村氏起用で新内閣を早期に軌道に乗せる狙いがある。
 総裁選は、議員票386票と各都道府県連3票ずつの計527票で争われた。麻生氏以外の候補者の得票は▽与謝野馨経済財政担当相(70)66票▽小池百合子元防衛相(56)46票▽石原伸晃元政調会長(51)37票▽石破氏25票−−の順だった。議員票で無効が2票あった。
 麻生氏は総裁選で景気回復優先の立場をアピールし、地方票では95%にあたる134票を集めた。石破氏は4票、与謝野氏2票、石原氏1票にとどまり、小泉構造改革の継続を訴えた小池氏は地方票を得られなかった。
 議員票も、党内各派閥から幅広い支持を得た麻生氏が217票と6割近くを占め、▽与謝野氏64票▽小池氏46票▽石原氏36票▽石破氏21票−−に大差をつけた。
 首相指名選挙は24日、衆参両院本会議で行われる。衆参の勢力が与野党で逆転しているため衆院で麻生氏、参院では民主党の小沢一郎代表がそれぞれ指名される見通し。この結果を受けて両院協議会を開くが、憲法の規定で衆院の議決が優越し、麻生新首相が誕生する。
 麻生氏の祖父は、戦後保守政治の基盤を築いた故吉田茂元首相で、妻は故鈴木善幸元首相の三女。【川上克己】

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社説:麻生・自民新総裁 理念も政策もなき勝利
                     毎日新聞 2008年9月23日 
 
自民党の新総裁に22日、麻生太郎氏が選出された。24日、国会での首相指名選挙を経て、麻生新内閣が発足する見通しだ。
 しかし、麻生氏の圧勝に終わった今回の自民党総裁選は、まだ「予選」に過ぎない。麻生氏が「総選挙で民主党に勝って初めて天命を果たしたことになる」と語った通り、「決勝戦」は間もなく行われるはずの衆院選である。衆院選で自民、公明両党が敗北し、民主党を中心とした政権が誕生すれば麻生内閣は極めて短命に終わる。まず、その点を確認しておきたい。
 すべては衆院選のため。2代続きの政権投げ出しとなった福田康夫首相の突然の辞任表明に始まる総裁交代劇の狙いは明白だった。
 内閣支持率低迷が続き、福田氏は自ら衆院を解散して総選挙に臨む自信がなかった。そこで総裁選をにぎやかに実施して国民の関心を自民党に引きつけ、その勢いで総選挙に突入する−−。再三指摘してきたように、総裁選はこんな演出を意識したものだった。
 だが、福田氏や自民党が期待したように「わくわくする総裁選」だったろうか。そうは思えない。
 ◇演出効果は疑問
 今回は5人が立候補し、連日のようにテレビに出演して地方遊説も続けたが、テレビの視聴率は必ずしも高くなかったという。関心が高まらなかったのも無理はない。投票結果は麻生氏が351票。予想通りの大勝だった。安倍晋三前首相と福田氏を選んだ時と同様、告示前から多くの議員が「勝ち馬に乗れ」とばかりになだれを打って麻生氏支持に回り、総裁選は消化試合の様相だった。
 一方では告示直前、日本の食糧行政を揺るがす汚染米問題が発覚し、その後、米国発の金融危機が各国経済を直撃した。こんな時にお祭りのような総裁選をしている場合かと疑問に思った人も多かったろう。
 しかも、多くの議員の判断基準は「だれが首相になれば自分が選挙で当選しやすいか」であり、麻生氏の政策に共鳴したのではないと思われる。麻生氏を選んだのは麻生氏が最も人気がありそうだからだろう。「理念も政策もなき勝利」だったのである。
 政策論争が深まらなかったのは当然かもしれない。特に麻生氏の発言は具体性を欠いた。「基礎年金は全額税方式に改め、財源は消費税を10%に引き上げる」が持論だったにもかかわらず、総裁選では「一つのアイデア」と後退し、22日の総裁就任後会見でも、消費税をどうするのか、筋道は明確にならなかった。
 外交もそうだ。東欧や中央アジア諸国との連携強化を目指す「自由と繁栄の弧」構想を従来打ち出していたのに、「中国やロシアとの対立を深める」との批判を意識してか、総裁選ではほとんど触れなかった。
 総裁選出が確実だから、余計な波風を立てぬよう持論は言わないというのでは本末転倒だ。今後、所信表明演説などでは、この国をどうしたいのか、具体的に語らなければならない。
 舛添要一厚生労働相が突如、後期高齢者医療制度の見直しに言及したのに呼応するかのように、麻生氏も見直しを言い出した。見直しするのに異存はないが、これも衆院選を意識した行き当たりばったりの提案ではないか。22日の会見では説明不足がいけないのか、実際に見直すのかもあいまいだった。見直すなら、早急に具体的なビジョンを示さなければ無責任である。
 今回、中堅議員が派閥の枠を超えて出馬したことは自民党の変化を物語るものではあった。だが、麻生氏が党の要として幹事長に起用したのは、町村派の細田博之氏だった。
 ◇変わらぬ党の体質
 森喜朗元首相をはじめ、最大派閥・町村派の意向を受けたものであろう。繰り広げられているのは旧態依然の派閥重視思考であり、自民党の体質が変わるに変われないということも国民は知っておいていい。
 麻生総裁誕生を受け、自民党や公明党内では、国会召集後、29日に所信表明演説を、10月1〜3日に各党代表質問を行った後、3日に衆院を解散し、投開票日を同26日とする日程が取りざたされている。
 早期の解散は、私たちもかねて主張してきたところだ。しかし、この日程は「ご祝儀相場で新内閣の支持率が高い間に」という狙いがあるのは明白だ。多くの与党議員は「麻生氏の失言などあらが目立たないうちに」とも真顔で語る。これまた本末転倒というべき身勝手な対応である。
 補正予算案の成立を最優先させるべきだというのではない。22日も麻生氏は民主党の政策に対し、「財源の裏付けがない」と批判した。ならば、何が衆院選の争点になるのか、有権者の前で整理するためにも、あらかじめ質問や答弁が用意される代表質問ではなく、補正予算案を審議する予算委員会や党首討論の場を通じ、麻生氏と民主党の小沢一郎代表が議論することが必要なのではないか。
 少なくとも代表質問後、1週間程度はそうした質疑の時間に充て、その後、解散する。それが妥当な日程だと考える。
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社説1 「麻生対小沢」今度は国民が選ぶ番だ(9/23)
                    2008年9月23日  日経
 
自民党総裁選挙は大方の予想通り麻生太郎幹事長が圧勝した。これにより、次期総選挙は麻生新総裁の自民党と小沢一郎代表の民主党との対決構図が確定した。今度は国民が総選挙で政権選択をする番である。自民党も民主党も明確な政権公約(マニフェスト)を提示して国民の審判を仰ぐべきである。

 麻生氏圧勝の要因は明確である。各種世論調査で次期首相にふさわしい候補として抜群の人気があり、「選挙の顔」として自民党内の圧倒的な支持を集めた。景気が後退局面に入り、麻生氏の景気対策に期待が集まった点も見逃せない。

 今回の総裁選は5人が立候補して、にぎやかに始まったが、途中から失速気味になった。麻生氏の独走展開になって勝敗に関する関心が薄れ、各候補の間に大きな政策の違いがなく政策論争も盛り上がりに欠けた。後半は世間の関心が米国発の金融危機や事故米転売問題などに集まり、消化試合の様相を呈した。

 それでも総裁選を通じて麻生新総裁の政策の輪郭は浮かび上がってきた。「日本経済は全治3年」と宣言し、景気対策重視を明確にした。具体的には定額減税の実施や政策減税、中小企業対策などを示した。

 2011年度までに財政の基礎的収支を均衡させるとした政府目標にはこだわらない姿勢も見せた。3年間は消費税引き上げをしないと明言した。社会保障費を毎年2200億円抑制する方針は「ほぼ限界に達している」とも述べ、後期高齢者医療制度は見直す考えを表明した。基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げる財源は特別会計の剰余金などで充当する考えも示した。

 麻生新総裁の誕生で従来の小泉改革路線からの転換が鮮明になった。景気は後退局面に入り、米国発の金融危機で先行きは不透明になりつつある。必要な景気対策は適切に実施すべきだが、その中身は経済の構造改革を促し、経済成長につながる政策に力点を置くべきである。

 財源を安易に国債増発に頼るのは好ましくない。行政改革やムダ排除を進める必要性はむしろ高まっている。国の出先機関の統廃合などの行革ビジョンも提示すべきである。

 麻生新総裁は24日召集の臨時国会で首相に指名され、新内閣を組閣する。前回の総選挙から3年が経過し、その間に3回も首相が交代する事態になった。次期首相は速やかに衆院を解散して民意を問うべきである。厳しい経済情勢を踏まえれば、臨時国会で補正予算審議を行ってから解散するのが望ましい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――麻生自民党総裁 「何をなすか」明確に発信せよ(読売社説)
               2008年9月23日01時54分 読売新聞
 
自民党にとって危急存亡の秋(とき)である。麻生太郎新総裁は、そんな危機感をもって、迅速果敢に、重要課題に立ち向かう必要があろう。
 自民党総裁選は22日、投開票の結果、麻生幹事長が、与謝野馨経済財政相、小池百合子・元防衛相、石原伸晃・元政調会長、石破茂・前防衛相の4氏に、大差をつけて勝利し、第23代総裁に就任した。
 麻生氏は、24日に召集される臨時国会で首相に指名される。
 ◆責任感と耐久力を示せ◆
 麻生氏は、戦後、長期にわたり政権を担当した吉田茂・元首相の孫にあたる。
 世襲議員の首相が2代続けて政権から中途退場した後を継ぐ総裁である。今度こそ、最高リーダーとして、強い責任感と耐久力を発揮してもらいたい。
 それにしても、麻生氏がこれほど圧勝したのはなぜか。
 麻生氏の総裁選への挑戦は今回で4回目だ。小派閥である麻生派を拠点に、2006年から3年連続して総裁選を戦ううちに全派閥に横断的な支持を広げた。
 明るい独特のキャラクターが大衆受けし、「首相に最もふさわしい人」を聞く世論調査でも、最近はトップに立っていた。
 とくに党内から期待されたのは、近づく衆院解散・総選挙での「党の顔」としてだろう。「発信力」不足の福田康夫・前総裁に比べて、高いコミュニケーション能力が買われたともいえよう。
 国会議員も地方代表も、「勝ち馬」に乗ろうと雪崩を打って麻生支持に回った。だが、安倍、福田政権のように、圧勝は必ずしも、党内基盤の安定を意味しない。
 麻生総裁は、党役員人事で党四役のうち3人を留任させ、幹事長に細田博之幹事長代理を充てた。前体制を継承することで、スムーズな移行を図ったといえる。
 麻生氏を選んだ以上、自民党国会議員は、挙党態勢の下、新総裁を支える責任があるだろう。
 公明党との関係も大切だ。福田政権の末期は、インド洋での海上自衛隊による給油活動を継続するための新テロ対策特別措置法改正案や定額減税などをめぐり、自公関係がギクシャクした。
 公明党との関係強化は、衆院選での選挙協力のうえでも不可欠だろう。麻生総裁にとって、両党連携の再確認が急務である。
 ◆「麻生VS小沢」◆
 自民党総裁選のさなか、米証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻(はたん)し、日本の株価も乱高下した。原材料高による物価上昇もあって、景気の先行き不安が強まっている。
 北朝鮮の金正日総書記の健康不安説も流れた。それに先立ち、北朝鮮は6か国協議の合意に基づく核施設の無能力化作業を中断し、日本人拉致被害者の再調査についても先送りした。
 農薬などに汚染された事故米の不正取引問題は拡大し、農相、事務次官の辞任へと発展した。
 深刻な問題ばかりである。
 麻生氏は、内閣人事では、これらの難問に即応できる、有能で信頼に足る人材を起用していかねばならない。
 麻生総裁が、職責を果たしていくには、まず、次期衆院選で小沢代表が率いる民主党に勝利することが前提になる。
 麻生氏は、総裁選を小沢代表と「戦う人」を選ぶ選挙と位置づけてきた。自民党大会で総裁に選出された直後には、「次の選挙に勝って初めて『天命』を果たしたことになる」と強調した。
 ◆政策の真贋が問われる◆
 政権の座をかけた「麻生VS小沢」の衆院選は、両党の政策の真贋(しんがん)を問う戦いになる。
 総裁選では、5氏が論争を展開し、民主党との政策論戦への備えを固めるものにはなったろう。
 しかし、なお消化不良に終わった論点は少なくない。
 09年度から基礎年金の国庫負担割合を2分の1にするための財源をどう手当てするのか。
 消費税率の引き上げは、当面は無理にしても、まったく議論すらしなくていいのか。
 少子高齢化、人口減社会における年金、医療、介護制度の抜本改革について、青写真を示すべきではないか。
 国際社会での責務を果たすための新テロ特措法改正案の成立を図るため、どんな手立てを講じなければならないのか。
 麻生総裁は、これら一つ一つに、具体的でわかりやすい答えを示すことが求められる。
 言質をとられるのを恐れるあまり、奥歯にものが挟まった発言を繰り返したりすれば、麻生氏の持ち味は失われかねない。
 国家指導者として、これから「何をなすか」を明確に発信し、それを具体化するプロセスを説明していく必要があるだろう。

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石田ふたみ