『日々の映像』

2008年09月21日(日) 農水トップ2人汚染米で引責辞任


 今日の段階では、農水トップ2人引責辞任はニュースのもならないようだ。
お粗末な辞任劇であぜんとする。無責任列島の見本と言えないだろうか。

カビ毒や残留農薬に汚染された事故米の不正転売問題で、太田誠一農相が責任を取って辞任した。白須敏朗事務次官も更迭された。農林水産省のトップ二人の首が飛ぶという異常事態だ。不正転売問題は、流通の実態が明らかになるにつれ、深刻さを増している。食の信頼を取り戻す手段が全くない状態がいつまで続くのだろう。


「事故米」遠い幕引き 構造問題は置き去り
                      2008年9月20日  日経
太田農相辞任:批判と怒りの声 「一連の発言消費者逆なで」
                      毎日新聞 2008年9月20日
農水トップ2人辞任 汚染米で引責 「責任ない」に首相激怒
                    9月20日8時2分配信 産経新聞
社説太田農相辞任 これでは責任の丸投げだ
                      新潟日報 9月20日

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「事故米」遠い幕引き 構造問題は置き去り
                     2008年9月20日  日経
 農薬などに汚染された「事故米」の不正転売問題は19日、農相と事務次官の同時辞任に発展した。転売問題の背景には、消費者を軽視し、事故米をも機械的に輸入してきた日本の農業の構造上の課題がある。人事だけの幕引きに終わり、体質改善に手を着けなければ、食の安全確保も生産性向上の道筋も見えない。
 「これからは『消費者重視』の姿勢で取り組んでほしい」。辞任した太田誠一前農相は19日、幹部向けの最後のあいさつで強調した。「消費者がやかましい」などと言い放った前農相も萎縮気味。「どこを向いて仕事をするか整理できてなかった。業者寄りとの批判を受けるのはやむを得ない」と猛省の姿勢を見せるしかなかった。(07:00)
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太田農相辞任:批判と怒りの声 「一連の発言消費者逆なで」
                      毎日新聞 2008年9月20日
 太田誠一農相と白須敏朗事務次官が19日、辞任した。農林水産省の閣僚と事務方トップが辞任する異例の事態に、道内の生産現場でも批判や憤りの声が相次いだ。
 十勝管内芽室町で牛180頭を飼育する酪農家、中村武さん(54)は「乳価の値上げ問題や資材の価格高騰など課題は山積。生きていけるかどうかの境目に、農政トップが簡単に何度も辞めてしまっては……。非を認めた上でまじめに取り組むことが責任の取り方」と批判した。同管内中札内村のJA中札内村の山本勝博組合長(65)は「食は国民の命にかかわり農相は一番重要なポスト。こんな簡単に辞められるのは食を軽くみているとしか思えない」と憤った。
 また、国際的には輸入農産物の関税が引き下げられ、道内の農業に影響が大きい世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の今後の再開が予想される重要な時期。道内の農家で構成される北海道農民連盟の山田富士雄委員長(58)は「国際的な交渉で毎回人が代われば印象が悪くなり、交渉に影響する。世界からバカにされてしまう」。
 一方、秋サケ定置網漁が本格的な時期を迎えている白糠漁協(釧路管内白糠町)の佐野正二専務理事(60)は「責任の取り方はご自身が決めることだが、一連の発言が消費者を逆なでしたのだろう」と冷ややかだ。燃油高騰や魚価低迷で苦しむ漁業者に対し、政府は7月、燃料価格の上昇分を最大で9割補助する支援策を決めたが、補助申請への制約が多く評判も悪い。佐野専務理事は「急に使い勝手の良い制度に変わるような期待はしていない。それよりも、せっかく決めた支援策をほごにせず、しっかり実現してほしい」と注文を付けた。
 また、高橋はるみ知事は「農林水産業は現在、肥料や燃油、飼料といった農業生産資材の価格高騰対策に向けた対応などの大変な時期。影響が生じないよう国としてしっかりとした対応をしていただくことを期待します」とのコメントを発表した。【仲田力行、田中裕之、山田泰雄】
 地方版

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農水トップ2人辞任 汚染米で引責 「責任ない」に首相激怒
9月20日8時2分配信 産経新聞

 太田誠一農水相は19日、事故米不正転売問題をめぐる農水省の対応が食の安全に対する国民の不安を招いたとして、福田康夫首相に辞表を提出した。福田首相は受理し、政府は午後の持ち回り閣議で町村信孝官房長官を臨時代理に充てることを決定した。農水省の責任を回避するような発言をした白須敏朗事務次官も同日に引責辞任し、農水省は閣僚と次官が同時に退く異例の事態となった。

 太田誠一農水相と白須敏朗事務次官の農水省トップの2人がそろって辞任したが、事実上は福田康夫首相による更迭だった。とくに白須氏に対しては、事故米の不正転売をめぐる同省の不手際が明らかになっても「役所の論理」を振りかざし責任を回避するような発言をしたことは看過できないことだった。太田氏の場合も、消費者軽視の発言をしていたことを問題視し、躊躇(ちゅうちょ)することなく受け入れた。また、24日の内閣総辞職や、近く予想される次期衆院選を控え、与党のダメージを最小限に抑えるため、早期の「けじめ」をつける必要もあった。

 福田首相が白須氏の更迭を決めたきっかけは、同氏が11日の記者会見で「私どもに責任があると今の段階では考えているわけではない」と発言したことだった。

 「三笠フーズ」(大阪市)による事故米不正転売の事実を農水省が公表したのは今月5日。官邸サイドは当初、農水省の対応を注視する姿勢を取っていた。だが、三笠フーズへは過去5年間に96回も立ち入り検査しながら見抜けなかった事実が判明したうえ、不正転売は他の業者でも行われ、被害が拡大していくこともわかってきた。

 「『役所の論理』が通用するはずがない。一度も発見できない検査というのは一体何なんだ」

 「消費者重視の行政」を掲げてきた福田首相は、農水省という組織を守り、消費者を軽視する白須氏の発言に怒りをあらわにした。12日に太田氏を官邸に呼んでおり、その場で「責任は取ってもらわないといけない」と白須氏らの処分を指示したとみられる。同時に、農水省に問題の対応を任せられないと、野田聖子消費者行政担当相に主導権を与えた。

 太田氏もまた、12日のテレビ番組で「人体に影響がないことは自信を持って申しあげられる。だから、あんまりじたばた騒いでいない」と発言、町村信孝官房長官が「誤解を生むような発言」と注意していた。福田首相も、太田氏が閣議後に辞表を提出すると「気持ちは分かった」と受理した。

 福田首相は19日夕、首相官邸で記者団から消費者重視が農水省に浸透していなかった点を問われ、「どうしてなのかと思う。大いに反省してもらわないといけない。次官の辞任は大きな問題だと考えてもらいたい」とこたえた。

 政府・与党も、農水省トップ2人の辞任は「あえて言えば意外じゃなかった」(政府高官)と当然視している。

 自民党は、衆院選をにらみ総裁選を行っている最中であり、農水省の不正転売問題への一連の不手際は「衆院選に響く」(若手)と批判が相次いだ。麻生太郎幹事長も19日のテレビ番組の収録で「政治に対する信頼という点ではダメージがあった」と強調した。

 いつもなら同省を擁護する農水関係議員でさえ「事務次官だけでなく関係者を全員処分すべきだ」(農水相経験者)と官邸サイドに迫ったほどで、太田氏らは「いずれだれかが責任を取らないといけない」(与謝野馨経済財政担当相)状況に追い込まれていた。(今堀守通)
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社説
太田農相辞任 これでは責任の丸投げだ
                       新潟日報 9月20日
 辞任をすれば、けじめをつけたということになるのだろうか。責任をわきまえないお粗末な状況判断にあぜんとする。
 カビ毒や残留農薬に汚染された事故米の不正転売問題で、太田誠一農相が責任を取って辞任した。白須敏朗事務次官も更迭された。農林水産省のトップ二人の首が飛ぶという異常事態だ。
 不正転売問題は終息する兆しさえない。流通の実態が明らかになるにつれ、深刻さを増している。食の信頼を取り戻すためには、組織が一丸となって対策を打ち出さなければならない。
 それなのにこの混乱ぶりである。「トップ自らが敵前逃亡した」と言われても仕方がない。国民の不信と批判は収まるどころか、火に油を注ぐ事態に陥っている。
 太田農相は「社会的な問題の大きさにかんがみて、決断した」と辞任の理由を説明した。農水省の責任は確かに大きい。不正転売をした米粉加工販売会社の三笠フーズなどに対してチェック機能が働かず、その後の対策も後手に回った。しかし今、大臣と次官がそろって辞める時期ではないはずだ。
 福田内閣の在任期間は二十四日までだ。太田農相は「(任期まで)ただ時間を過ごすのではなく、農水省全体として結果責任を明確にしておいた方がよい」とも発言した。
 大臣のポストは「時間を過ごす」ためのものではない。不正転売の全容解明に向けて陣頭指揮を執り、そしてけじめをつけるのが筋だろう。
 太田農相が辞めるにしても、白須次官は残して、農水省として解決に全力を挙げる選択肢もあったはずだ。
 太田農相は八月の就任以降、「やかましい」発言や事務所費の不透明な処理問題などで批判を浴びてきた。辞任するのなら、むしろこの時点で決断すべきだった。二重の判断ミスである。
 政治家の責任放棄が相次いでいる。安倍晋三前首相、福田康夫首相が政権を投げ出した。太田農相は首相の行動を見習ったわけではあるまい。
 政府や自民党には「早期のけじめが必要」との判断が働いた。近く予想される衆院解散・総選挙の前にダメージを最小限に抑えたいとの思惑もうかがえる。「何でも選挙絡み」にするのは思考停止である。
 農相辞任と相前後して、消費者庁創設の関連法案が閣議決定された。「消費者目線の改革」を掲げる福田首相が退任直前に一定の道筋をつけたということなのだろう。
 消費者庁の設置にこだわる一方で、農相は辞めさせる。政府の迷走ぶりは目を覆うばかりだ。そこに消費者目線は感じられない。国民を甘く見ているとしか思えない。

[新潟日報9月20日(土)]

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石田ふたみ