『日々の映像』

2008年09月15日(月)  汚染米、11業者経て価格40倍 「米国産」と偽装も

 毎日愕然とするような、汚染米のニュースが続いている。
カビ毒や残留農薬で汚染された「事故米」を、本来の用途である工業用ではなく食用に転売していた問題は、日経の社説が指摘するように「消費者の命に直結する食品を扱う業者のあまりに低い安全意識と、農林水産省の無責任さをあぶりだした。」まさにその通りである。

 消費者の命に直結する食品を扱うこの業界は、いったいどうなっているのだろう。「三笠フーズ」が農薬などに汚染された事故米を食用と偽って販売していた事故米が、同社から施設まで11業者を経由し、1キロあたりの単価は約9円の事故米から370円にはね上がっていたというから驚く。11業者全体が詐欺に係っていたといわれても仕方がない。

 ともかく、食の安全意識が低すぎる。中国やベトナムから輸入したコメで、「中国製冷凍ギョーザ事件で問題になった有機リン系殺虫剤メタミドホスやカビ毒のアフラトキシンなどが含まれていた。アフラトキシンは強力な急性毒性と発がん性をもつ猛毒だ」〔日経社説から〕こんな事故米をごみでも処理するかのように、ただ同然の価額で売り渡す農水省の感覚が分からない。

タミドホス検出の事故米、大阪の病院にも在庫 基準の2倍
                      2008年9月15日 日経
汚染米不正転売】食品衛生法違反容疑で大阪府警が捜査へ
                      2008年9月15 産経新聞
メタミドホス検出米、大半は農薬検査せずに転売
                      2008年9月14日 読売新聞
汚染米、11業者経て価格40倍 「米国産」と偽装も
                      2008年9月13日  朝日新聞
社説1 「事故米」、食の安全意識が低すぎる(9/10)
                      2008年9月10日 日経社説

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メタミドホス検出の事故米、大阪の病院にも在庫 基準の2倍
                      2008年9月15日  日経
 「事故米」の食用転売問題で、大阪府は14日、米粉加工会社「三笠フーズ」が販売したもち米のうち、府内の病院で見つかった在庫から、基準値の2倍の殺虫剤「メタミドホス」を検出したと発表した。濃度は0.02PPMで食べても直接健康に影響はない水準という。
 府によると、メタミドホスが検出されたのは、給食大手「日清医療食品」近畿支店(京都市)が仕入れた事故米約700キロの一部。府がサンプル調査した2袋のもち米からいずれも同濃度が検出された。同社はこの病院の患者らに給食を提供しており、すでに約75キロの事故米が消費されたという。(07:00)

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汚染米不正転売】食品衛生法違反容疑で大阪府警が捜査へ
                           2008.9.15 産経新聞
汚染米の不正転売と二重帳簿の偽装は自らの指示と認めた「三笠フーズ」の冬木三男社長=6日午後0時すぎ、大阪市北区
 大阪市北区の米粉加工会社「三笠フーズ」による事故米の不正転売問題で、大阪、京都、和歌山の3府県などの病院や保育園、福祉施設などに販売された中国産もち米の一部から、相次いで基準値を超える農薬メタミドホスが検出されたことを受け、大阪府警は14日、食品衛生法違反容疑で捜査する方針を固めた。府警は、これらの汚染米が三笠フーズから流れた複雑な流通経路と偽装転売の実態解明に乗り出す。
 農水省はすでに、同社とグループ会社の辰之巳について、熊本県城南町の美少年酒造に国産米と偽って農薬アセタミプリドに汚染されたベトナム産うるち米32.4トンを販売したとして、不正競争防止法違反(虚偽表示)罪で熊本県警に告発している。
 大阪、福岡両府県警も熊本県警と合同で捜査を進める方針だが、府警など警察当局は、消費段階の販売先から国の基準値(0.01ppm)の倍にあたるメタミドホスが検出されている事態を重視。食品衛生法違反容疑でも捜査を進めるとみられる。
 一方、大阪府と和歌山市は14日、病院などに販売され回収した中国産もち米の一部から、基準値の倍の殺虫剤メタミドホスを検出したと発表した。担当者は「食べても人体に影響はない」としている。
これまでに京都市の保育園などから回収された米からも同レベルのメタミドホスが検出されている。
 大阪府の調査では、病院や福祉施設など計26カ所(大阪、堺、東大阪各市を除く)に計255キロのもち米が納入され、241.1キロがすでに給食などで消費されていた。府は回収した米の一部を抜き取り検査していた。
 和歌山市では2156キロが市内の宗教法人「神路原神社」に納入され、もちまきなどに使われていた。市は販売元の市内の米穀店に残っていたもち米の一部を回収し検査していた。
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メタミドホス検出の事故米、大阪の病院にも在庫 基準の2倍
                         2008年9月15日  日経
 「事故米」の食用転売問題で、大阪府は14日、米粉加工会社「三笠フーズ」が販売したもち米のうち、府内の病院で見つかった在庫から、基準値の2倍の殺虫剤「メタミドホス」を検出したと発表した。濃度は0.02PPMで食べても直接健康に影響はない水準という。
 府によると、メタミドホスが検出されたのは、給食大手「日清医療食品」近畿支店(京都市)が仕入れた事故米約700キロの一部。府がサンプル調査した2袋のもち米からいずれも同濃度が検出された。同社はこの病院の患者らに給食を提供しており、すでに約75キロの事故米が消費されたという。(07:00)

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メタミドホス検出米、大半は農薬検査せずに転売
                         2008年9月14日 読売新聞
 米穀加工販売会社「三笠フーズ」(大阪市北区)が、汚染された工業用の「事故米」を食用と偽り転売していた問題で、同社が有機リン系殺虫剤「メタミドホス」に汚染された中国産もち米を転売する際、残留農薬の検査をしたのは、約20回の出荷のうち、数回にとどまることが、わかった。同社財務担当者が13日、報道陣に対し、明らかにした。同社はこれまで「出荷時にすべて検査し、国の基準値以下であることを確認している」と説明していたが、実際は、大半を検査せずにそのまま食用に流していた。農林水産省も事実関係を把握、調査を進めている。
 三笠フーズは2006〜07年、輸入後に、食品衛生法に定めた基準値(0・01ppm)を超える最大0・05ppmのメタミドホスが検出されたとして工業用に限定された中国産もち米を、国から約800トン購入していた。
 財務担当者によると、同社はこのうち、07年11月〜08年8月の間に約20回にわたり、1回あたり約20トン(約660袋)を食用に転売。検査は、冬木三男社長(73)の指示で、取引先の要望があった場合にのみ数回、実施しただけだった。約660袋のうち約35袋を抽出、袋から約30グラムずつコメを抜き取って約1キロのサンプルを作り、検査機関に依頼していた。
 社内の聞き取り調査に対し、検査を担当していた九州地区の責任者は「数回やった。とりあえず検査して、基準値を下回ったので(ほかも)安全と判断した」と説明しているという。
 保管・出荷業務を行う、同社九州工場内では「時間がたつとメタミドホスの有害な成分が消える」と指導しており、倉庫で約1年間保管してから出荷していた。しかし、農薬に詳しい識者は「メタミドホスは水と紫外線で分解されるが、日の当たらない倉庫の中に1年間置いても成分は変わらない」と指摘する。
 転売されたもち米を巡っては、京都市内の保育園や介護老人保健施設、岐阜県の米穀取扱業者に納入されたコメから、基準値の2倍のメタミドホスが検出されている。同社財務担当者は「安全性への認識が甘かった。ほかにもメタミドホスが残ったままで出荷した可能性がある」と話している。
 消費者問題に詳しい日和佐信子・雪印乳業社外取締役の話「残留農薬は見た目で区別できないので、消費者はわからないまま食べてしまう。不正行為で利潤を上げる事業者の倫理に期待するのはむなしい。法令できちんと規制すべきだ」

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汚染米、11業者経て価格40倍 「米国産」と偽装も
                       2008年9月13日  朝日新聞
大阪市の米販売会社「三笠フーズ」が農薬などに汚染された事故米を食用と偽って販売していた問題で、京都市内の介護施設などに保管され、基準値を超える有機リン系農薬成分・メタミドホスが検出された中国産もち米が「米国産」として流通していたことが13日、わかった。同社から施設まで11業者を経由し、1キロあたりの単価は約9円から370円にはね上がっていた。
 朝日新聞の調べや三笠フーズなどによれば、三笠フーズは06年11月〜昨年5月にかけて、メタミドホスの基準値(0.01ppm)を超えて事故米となった中国産もち米約800トンを、国から4回にわけて計711万9千円で購入。1キロ当たりの単価は8.9円だった。同社はその米を佐賀県の仲介業者に単価約40円で売っていたという。
 この後、中国産もち米は佐賀の仲介業者から、福岡県内の3業者と別の1業者を介し、大阪府内などの4業者を経て最終的に京都市内の給食会社「日清医療食品」近畿支店に単価370円で売られた。同支店は近畿2府4県の病院や老人保健施設など計119カ所に給食として納入していた。
 事故米の産地は、こうした流通ルートの過程で中国産から米国産に切り替わっていた。流通ルートで8番目にあたる大阪府泉佐野市内の業者は朝日新聞の取材に対し「中国産として購入し、中国産として販売した」と回答。日清医療食品に売った10番目の大和商会(堺市)は、「日清医療食品から米国産が欲しいと注文を受けたので米国産を発注した」と答えた。買った米の袋にも米国産を示すシールがはられていたという。
 大和商会から「米国産」の注文を受けたとされる9番目の神戸市内の穀類仲介業者は朝日新聞の取材に「大阪市の支店にすべてまかせていた」と話している。(藤田さつき)
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社説1 「事故米」、食の安全意識が低すぎる(9/10)
                        2008年9月10日 日経社説
 食の安全をどう考えているのか。三笠フーズ(大阪市)がカビ毒や残留農薬で汚染された「事故米」を、本来の用途である工業用ではなく食用に転売していた問題は、消費者の命に直結する食品を扱う業者のあまりに低い安全意識と、農林水産省の無責任さをあぶりだした。

 このコメを使った焼酎メーカーが商品回収に乗り出すなど余波も広がっている。農水省は食品衛生法違反の疑いで警察に告発する方針というが、どこにどう流れどんな最終製品になったのか。すみやかな真相解明と再発防止を図る必要がある。

 食品をめぐっては賞味期限の改ざんや産地偽装などが相次いでいるが、今回の問題はさらに深刻だ。転売されたのは政府が中国やベトナムから輸入したコメで、中国製冷凍ギョーザ事件で問題になった有機リン系殺虫剤メタミドホスやカビ毒のアフラトキシンなどが含まれていた。アフラトキシンは強力な急性毒性と発がん性をもつ猛毒だ。

 三笠フーズの冬木三男社長は健康被害の危険性について「認識が若干はあった」などと発言したが、消費者の健康を損ないかねない行為に対し無責任だ。しかも通常の加工米の6分の1から7分の1で仕入れたコメを高く売って利ざやを稼ぐため、二重帳簿やペーパーカンパニーをつくり不正が明るみに出ないよう工作するなど悪質さも際立つ。安全を無視して暴利をむさぼり、消費者ばかりか取引先までも裏切る行為は許されない。

 監督官庁である農水省の責任も重い。工業用に売り渡したコメが正しく処理されているか確認する責任があるにもかかわらず、ニセの伝票にごまかされて長年見逃してきた。あらかじめ調査日を通知するようなやり方で悪質業者の摘発ができるはずがない。不正発覚は内部告発がきっかけだが、昨年1月にも同様の告発があった。その際の立ち入り調査では不正を見抜けなかった。

 そもそも工業用のコメを食品会社に売っていたこと自体が疑問だ。見かけが普通のコメと変わらないなら、不届きな業者が食用に転売する可能性は十分予想できたのではないか。工業用に限るなら最初からそうした企業に売ればいい。遅ればせながら販売方法の見直しなどを検討しているようだが、事故米を購入した他の業者に不正はなかったのかも徹底糾明してもらいたい。

 福田康夫首相がけん引した消費者庁構想の先行きは不透明だが、食品業界や農水省の体質が変わらなければ食の安全確保はおぼつかない。

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石田ふたみ