『日々の映像』

2008年09月16日(火)  リーマンの破綻、どうなる米金融業界

アメリカで4番目に大きな投資銀行であるリーマンが破綻した。これからどのような余波があるのかは見当か付かない。取りあえず事実のみを書き留めておきたい。
1、9月14日、アメリカで4番目に大きな投資銀行であるリーマンブラザーズが破綻した。リーマンは、米の不動産相場の悪化を受けて商業不動産関連投資の損失が拡大したためという。
2、今週末、他の金融機関に買収してもらうことで破綻を回避しようとしたが、失敗した。リーマンの持ち株会社は日本時間15日午後破産申請することを発表した。
3、報道によれば、リーマンは不良債権を、社員が社外に作った新会社に売却し、その新会社の資金はリーマン傘下の別の会社から出させる「飛ばし」をやったりして、何とかしのいでいたという。10年前に日本の銀行・証券会社の「飛ばし」と同じことをやっていたようだ。救済金を拒んだ米当局の姿勢は当然の成り行きのようだ。

これからどのような影響がでてくるのかを考える意味で以下の資料を収録しておきたい。

リーマン・ショック、世界主要市場で大幅株安・ドル安
                     2008年9月16日19時19分 読売新聞
リーマン破たんで国際金融情勢一段と悪化、政府・日銀に切り札なし
                     2008年 09月 16日 18:43 JST
リーマン・ブラザーズの破たん:識者はこうみる
                     2008年 09月 16日 16:31 JST

     
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リーマン・ショック、世界主要市場で大幅株安・ドル安
2008年9月16日19時19分 読売新聞
 リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)を受け、16日の世界の主要市場で大幅な株安とドル安が進行した。

 東京株式市場の日経平均株価(225種)の終値は、前週末比605円4銭安の1万1609円72銭で、3月17日につけた終値の年初来最安値(1万1787円51銭)を下回った。
 2005年7月以来、約3年2か月ぶりの安値水準となった。取引開始直後から幅広い銘柄で「パニック売り」(中堅証券)が広がった。
 東証株価指数(TOPIX)も59・63ポイント低い1117・57で、今年最低だった。東証1部の出来高は、約26億600万株だった。
 東京外国為替市場もドル売りが加速し、円は一時、前週末(午後5時)比3円87銭円高・ドル安の1ドル=103円62銭と、2か月ぶりに103円台まで急伸した。午後5時、前週末(同)比3円78銭円高・ドル安の1ドル=103円71〜74銭で大方の取引を終えた。
 上海株式市場も急落、市場全体の値動きを示す上海総合指数の終値は、前週末比4・47%安の1986・64となった。
 上海総合指数の終値が2000を割り込むのは2006年11月17日以来、1年10か月ぶりだ。
 香港のハンセン指数も前週末比5・4%安で、2年ぶりの低水準だった。
 欧州の株式市場も、金融株を中心に続落している。ロンドン市場では午前10時(日本時間午後6時)現在、フィナンシャル・タイムズ(FT)100種平均株価指数は前日終値より1・68%下落。フランクフルト市場のドイツ株式指数(DAX)も1・41%値を下げている。
(2008年9月16日19時19分 読売新聞)
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リーマン破たんで国際金融情勢一段と悪化、政府・日銀に切り札なし
2008年 09月 16日 18:43 JST

 [東京 16日 ロイター] 米リーマン・ブラザーズ(LEH.N: 株価, 企業情報, レポート)の経営破たんに伴い、国際金融市場の状況が一段と悪化し、信用不安の高まりから金融機関が資金を抱え込む姿勢を鮮明にしている。
 政府・日銀はリーマン・ブラザーズが手掛けていたデリバティブ取引の価格動向や、リスクプレミアムの拡大を通じた金融環境タイト化の可能性、世界経済への悪影響を通じて日本経済の回復シナリオが崩れないかどうかなどを注意深く点検していく方針だ。ただ、多くの市場関係者は政府・日銀とも海外発の信用不安に対して打つ手はなく、当面は流動性供給や総合経済対策の着実な実施など、できることは限られていると見ている。
 <日本の金融機関も期末に向け資金抱え込みか>
 リーマン・ブラザーズの経営破たんは、日本の金融市場にも影響を及ぼしている。16日の無担保コール市場では、金融機関が資金を抱え込む姿勢を強める中、朝方から外銀や証券会社などが日銀の誘導目標である0.5%を上回る水準で翌日物調達に動いた。
 日銀は朝方に白川方明総裁の談話を発表し、6月末以来となる即日の資金供給オペ1兆5000億円を通告。さらに国債補完供給の条件緩和を発表し、午後には1兆円の追加資金供給も実施し、今年3月末以来となる2兆5000億円の資金供給に踏み切った。市場の不安沈静化に向け、流動性供給を万全に行っていく姿勢を明確にしたかたちだ。
 ただ、日本の金融市場でも、期末に向けて資金を抱え込む動きが強まる可能性が大きい。これまで外国金融機関が円キャリー取引やサムライ債の発行などを通じてドル資金を調達していた動きに支障が出る可能性がある。
 また、リーマン・ブラザーズが扱っていた取引には、複雑な金融派生商品が多かっただけに、価格下落による損失確定にも時間がかかると見られ、当面市場の値動きが荒くなりそうだ。UBS証券株式本部/債券本部の金融担当アナリスト・大槻奈那氏は「信用収縮への警戒が急速に強まっている。リーマン・ブラザーズは積極的に証券化商品の組成などを手掛けてきた経緯があり、マーケット全体にどのくらの影響が出るのか見当がつかない」とみている。日銀も、こうしたリスクプレミアムの動きなどに警戒感をもって注視していくと見られる。
 <政府は様子見、経済対策の着実な実行が先決>
 一方、政府もリーマン・ブラザーズの経営破たんを受けて16日の閣議終了後、福田康夫首相の呼びかけで白川日銀総裁も加わった緊急の金融関係閣僚懇談会を開催。茂木敏充金融担当相によると、懇談会では福田首相からの指示により、出席者は「今後、いかなる事態になっても迅速に対応することで意見が一致した」という。
 関係閣僚らは、今回の事態に対して米当局と緊密に連絡を取り合っていることを強調したが「基本的には米国内の金融行政の問題。日本の金融機関、金融システムに不安はない」(伊吹文明財務相)との認識にとどまっている。
 企業融資においてクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が担保機能を果たしてきたことを考えると、リーマンの破たんによりCDSのスプレッドが拡大し、米国では信用収縮と景気の悪化という負のスパイラルが拡大しかねない。米経済の一段の悪化が世界経済を減速させ、ひいいては日本経済も影響を受ける可能性がある。
 与謝野馨経済財政担当相は「信用収縮が企業活動にじん大な影響を与える可能性がある」と警戒感を示すが、次期首相・総裁を決める自民党総裁選の真っ最中でもあり、政府が具体的な政策対応に動く気配は見えない。町村信孝官房長官は「追加対策は考えていない。総合経済対策を着実に実施し、中小企業に悪影響が出ないよう注意することが必要」(町村信孝官房長官)とし、総合経済対策に伴う08年度補正予算の早期成立が重要との考えだ。
 16日の日経平均が600円を超える下げとなったことや、ドル安/円高が進行している金融・資本市場の状況についても「全体的な為替・株式市場の動きを見ると、危機やパニックという動きではない」(伊吹財務相)と受けとめている。
 与謝野担当相は「不自然な為替レートの変動や日本経済のファンダメンタルズが全く考慮されない変動にどう対応するかは、それが起きた段階で考えなければならない課題」(与謝野担当相)と述べ、今後の市場動向次第では為替介入も検討課題になるとの見方を示したと見られるが、16日の閣僚懇談会で為替についての議論は一切なかったという。
 <利下げは温存の見方、16日の米欧市場を注視> 
 日銀がどう対応するかは16日から始まった金融政策決定会合でも議論されていると思われ、17日の白川総裁の会見が注目を集める。金融市場では、今回の金融政策決定会合で利下げに踏み切るとの見方は現在のところほとんどない。17日は会合後の声明文で市場の不安感を払しょくするためのメッセージが発せられるとの期待はあるが、「利下げしても効果はない」(第一生命経済研究所・主席研究員の熊野英生氏)との見方が支配的だ。
 これまで日銀内では景気が悪化した場合の利下げ対応について「0.5%しかない政策金利を念頭に置く必要がある」との考えが浸透しており、わずかな下げ余地をいざという時のために温存しておくとみられる。
 ただ、今夜の米欧市場における株価や金利の動き次第では、日本の金融当局も動かざるを得ない可能性は否定できない。債券市場では「16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げの議論が出ている中で、市場には日銀も協調利下げに追い込まれるという見方も出ている。ドル安が加速するリスクを踏まえると、市場では協調的利下げの思惑が高まりやすい」(新光証券・債券ストラテジスト、三浦哲也氏)との声が出ている。
 (ロイター日本語ニュース 中川 泉記者;取材協力 吉川 裕子記者 伊藤 純夫記者;編集 田巻 一彦)

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リーマン・ブラザーズの破たん:識者はこうみる
2008年 09月 16日 16:31 JST

 [東京 16日 ロイター]  東京市場では、リーマン・ブラザーズの破たんを受けて銀行株が急落。金融不安が一段と高まるという漠然とした不安感が売りを誘った格好だが、邦銀の対リーマン・エクスポージャーも現状では明確になっておらず、金融市場には疑心暗鬼な見方が広がっている。
 リーマン・ブラザーズ破たんの影響に関する識者の見方は以下の通り。
●ドル100円試す可能性、当局けん制発言に警戒
<バークレイズ銀行 トレーディング部ディレクター 小川統也氏>
 金融市場の状況は緊迫している。リーマンの破たんが他の大手金融機関に飛び火する可能性もあり、金融危機不安がくすぶる中ではドルを買うことはできない。欧州や豪、英などの状況も芳しくなく、相対感から安定している日本の円が買われる状況が続いている。ドル売りが波及する形でクロス円の下げも続く見通しで、ドル/円は売りポジションが心地よい。近いうちに100円割れを試す可能性もあると見ている。
 ドル急落時にはバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長ら米当局からあらためてドル安けん制発言が出てこないかに要注意だ。前回、米当局がドル安をけん制した時はユーロ/ドルが最高値圏へ近い状況で、当時に比べれば当局の姿勢もリラックスしているだろうが、対円で100円を割るようなことになれば、リップサービス的な発言が飛び出してくる可能性はある。
●米金融不安、実体経済と悪循環入りの可能性
<シティバンク銀行 リテールプロダクト本部 為替市場調査シニアマーケットアナリスト 城田修司氏>
 実現可能性は別として、市場参加者は中小金融機関や保険会社など、金融業界の中でまだ出てくるかもしれない「次のリーマン」探しに入っている。金融不安が貸し渋りを通じて実体経済に悪影響を与え、一段の不良債権増加や住宅価格の下落、金融機関の体力低下につながるという、実体経済と金融面が悪循環に入る可能性もある。米住宅価格の底打ちが見えるまでその流れは続くだろう。
 これまでユーロや原油に流入していたマネーはドルに逆流していたが、今回の一件でそれが再逆流するというほど事態は単純ではない。消去法で景気の「谷」が小さいと見られる円が買われる流れが続くだろう。ただ、あくまで消去法による円買いのため、ドル/円が7月安値を下抜けて102―103円台へ下落するには、一段のドル売り材料が必要になるのではないか。
●株価下落大きければ、設備投資に悪影響
<ニッセイ基礎研究所シニアエコノミスト 斎藤太郎氏>
 株価がどこまで下がるのか注目している。大きく下げれば、企業の設備投資、そしてある程度、個人消費にも悪影響があろう。最終的なインパクトという点では、米国株価下落で米国経済が悪化すること。リセッションはぎりぎりで避けられるとの見方が今は多いが、それが崩れると、日本の輸出落ち込みもありうる。
 とりあえず日銀が動く状況ではないが、ありうるとすれば国際協調利下げだろう。ただ、この可能性は大きくないとみる。
●他金融機関への波及リスク、予断許さず
<第一生命経済研究所主席エコノミスト 熊野英生氏>
 リーマン・ブラザーズが連邦倒産法11条(チャプター・イレブン)を申請し、再建過程に移行した。その損失確定の余波が他金融機関に波及するリスクは予断を許さない。米財務省は、各金融機関との緊急会合を持って、破たん回避を模索したが、それには成功しなかった模様である。実際に金融機関を破たんさせたことで、各種市場にリスクプレミアムを現出するのが怖い。
 驚くべき展開は、リーマン救済の候補として名前が挙がったバンクオブアメリカが、米証券会社第3位のメリルリンチを救済合併することを決めたことだ。バンクオブアメリカは、リーマン・ブラザーズの有力引き受け先とみられていただけに、急転直下という印象が強い。これは、リーマン・ブラザーズの救済が何らかのかたちで一段落しても、次に問題視されるかもしれないという不安があって、先手を打って守りに入ったという解釈が成り立つ。市場全体が疑心暗鬼に包まれたとき、実体面で状態が悪化していなくても、悪い噂が危機の連鎖反応を起こす可能性がある。従って、ベアー・スターンズ、リーマン・ブラザーズと続き、さらにその次とされないように金融再編が進んでいくのだと考えられる。
 同じタイミングで、保険会社大手のAIGも、連邦準備理事会(FRB)に緊急融資を申し込んだとされる。こうした金融機関の対応は、金融不安の第二幕(住宅公社問題を入れると第三幕)を先んじて予想するから、自らがセカンドベストの戦略を能動的に採ろうということなのだろう。今後、FRBが利下げに踏み切るとか、財務省などの主導によって公的資金を活用する別の仕組みが、危機封印のために動員される可能性がある。
●景気下振れリスク高まる
<JPモルガン証券・シニアエコノミスト 足立正道氏>
 米リーマン・ブラザーズ・ホールディングス(LEH.N: 株価, 企業情報, レポート)の破産法申請に伴い、景気に対する下振れリスクが高まっており、当面はポジティブな材料が出てくるとは考えにくい。
 金融の問題が実体経済に波及し、実体経済から金融に再び波及するという悪循環が一段と加速するリスクが高まっている。米国経済の鈍化だけでなく、エマージングを含むグローバル全体がかなり厳しい。
 今回の件では、公的サポートはなく自助努力しかないとの認識が広がり、市場参加者はリスクに対して更に敏感になり、投資を抑制するなど資金の流れが弱まることになる。マーケットの動きに比べて、当局の動きが後手に回っているという観点からみると、日本の1990年代前半に似ているといえる。
 唯一得られるポジティブな状況を想定すると、中国は利下げを始めており、今後はグローバルな利下げのようなものがあるのかもしれない。だが、当面はかなり不透明感が強い。
 今回の日銀金融政策決定会合では、利下げは考えづらい状況だが、日本経済に下振れリスクがあるのは間違いない。

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石田ふたみ