『日々の映像』

2008年09月11日(木)  組織ぐるみの年金改ざん疑惑

厚生年金の標準報酬月額を故意に改ざんした。・・・なんと酷いことをするのだろう。しかも、社会保険事務所職員の指導で行なわれた。この件は以前に1回書いた。ショックなことは、厚生官僚に国民を思う気持ちがひとかけらもないことであった。毎日新聞の報道のとおり、月給30万円の人が知らぬ間に8万円に減額された例がある。

計算してみよう。
正規の厚生年金保険料 300000円×15.35%=46050円 会社負担23025円
改ざん・・・・・・・  80000円×15.35=12280円  会社負担6140円

今まで厚生年金本人負担が23025円の人が、引き落とされる厚生年金が、6140になれば分かると思う。本人が全く気付かない方法を取るには、給料から23025円引き、社会保険事務所には6140円納めたのだろう。詳しく記述する気力がでない。こんなことを指導した社会保険事務所職員がいたのである。いや、社会保険事務所・社会保険事務局ぐるみで行なわれていたという証言がある。

2008年8月19日の中日新聞に記事を引用しておきたい。
「厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額(給与水準)の改ざん疑惑で、大津社会保険事務所で徴収課長などを務めた元職員、尾崎孝雄さん(55)が19日、民主党の会合に出席し『事務所長や上司から暗に改ざんの指示があり、(都道府県ごとに置かれている)社会保険事務局も容認していた』と証言した。」

年金改ざん、社保庁認定1件のみ 大甘、16件「シロ」
2008年9月10日  毎日新聞 
社保庁ぐるみ疑惑も 政府、被害回復に責任
2008年9月10日 読売新聞
標準報酬改ざん、社保庁職員関与認める 全受給者に履歴送付
2008年9月9日 中日新聞
年金の標準報酬改ざんは組織ぐるみ 元職員が証言
2008年8月19日中日新聞 夕刊

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年金改ざん、社保庁認定1件のみ 大甘、16件「シロ」
2008年9月10日  毎日新聞 

 ◇「古い事案多く」
 社会保険庁は9日、厚生年金の標準報酬月額などの改ざんに、社会保険事務所職員がかかわったケースが1件あったことを初めて認めた。ずさんな処理で誰のものか分からなかった「宙に浮いた年金」や「消えた年金」とは違って、誰のものか分かっているものが、故意に改ざんされていた点でさらに深刻だ。職員の関与が長年指摘されてきた不正にもかかわらず、いまだ1件しか判明しないことが、問題の奥深さを示している。【野倉恵、吉田啓志】
 ■職員の筆跡決め手
 厚生年金の改ざん問題で、社保庁は長年、職員や組織の関与について強く否定してきた。今回初めて認めたのが、東京都千代田区の設計コンサルタント会社社長、相馬稔さん(52)のケースだった。
 経営難から、95年秋に社員たちの2カ月分の保険料約230万円を滞納した際、麹町社保事務所の係長が作成した書類に押印した。
 相馬社長1人の標準報酬月額を1年以上さかのぼって最低ランクに引き下げて保険料額を減らしたうえで、「全社員の退職」を理由に年金制度から脱退した。この「操作」によって、2カ月分の滞納額が消滅したとみられる。
 職員関与を認めざるを得なくなったのは、企業の届け出書類の筆跡が、当時の担当職員のものと特定されたためだ。相馬さんは、当時の多くの書類を保存。その一つに「被保険者標準報酬取消届」と「決定通知書」があった。「取消」には本来の給与水準93万円が記載され、「決定」には引き下げて最低ランクになった11万円が記載されていた。右上がりの特徴的な筆跡は、相馬さんや当時の全従業員20人の筆跡と明らかに異なっていた。相馬さんがかつて小切手で分割払いした時の控えの預かり証や納付受託書の筆跡が、職員が書いた通知書などとうり二つだった。
 しかし、相馬さんのケース以外では、総務省年金記録確認第三者委員会が社保事務所の処理を「事実に反する」などと指摘した16件はすべて、職員の関与はなしとされた。15件は担当者すら特定できないままだった。
 「古い事案が多く、事業主らに話を聞けなかったり、証言が不明確だった」と社保庁は釈明するが、関与の有無の聞き取りは自己申告。矛盾を追及するつめた聞き取りは行われなかったとみられる。中には、書面調査の段階で関与を認めながら、社保庁に直接事情を聴かれたら「記憶違いだった」と前言を翻した埼玉県内の社保事務所のようなケースもあった。「外部調査を含む調査の抜本的見直しが必要」(元職員)との指摘がある。
 ◇高徴収率、事務所間で競争
 厚生年金保険料の徴収率は、バブル崩壊後の90年代後半も98%以上、06年度も98・7%という「信じがたい数字」(現役の社保事務局職員)の高さを保ってきた。国民年金の納付率が70年代の9割から次第に下がり、昨年度は63・9%になったのと対照的だ。なぜこのような高水準が続いてきたのか。
 「社保事務所ごとの厚生年金の徴収率がグラフにされ、職場に張り出される。競い合う空気が自然にあった」。西日本の社保事務所元職員は言う。
 保険料徴収のめどが立たない滞納企業に対し、職員は「(個人事業者になって)国民年金に切り替え、業務が軌道に乗ったら(厚生年金に)また入れば」と伝えることが多かったという。
 今年8月、滋賀県内の社保事務所の元課長、尾崎孝雄さん(55)は、厚生年金加入記録の改ざんが社保事務所の組織ぐるみだと、民主党の会合で証言した。県社保事務局主催で毎月開く「収納対策会議」では、各事務所ごとに徴収状況や脱退事業所数などを報告。会議後、標準報酬月額をさかのぼって引き下げるといった、明確な手口こそ口にされないものの、「何とか工夫できないか」と、所長からも事実上の「指示」をされたという。
 さらに徴収率を維持しようとした背景として、厚生年金を国民年金より上にみる社保内の「序列」を指摘する関係者も多い。
 「(61年創設の)国民年金より、戦前からある厚生年金が『本流』という意識。10年ほど前までは人事交流もなく、保険料徴収こそ業務の柱という自負があった」(現役社保職員)という。
 ◇幕引き狙う官邸
 政府が、標準報酬月額改ざんに関する調査結果を9日に公表した背景には、年金記録漏れ問題にできるだけ早く幕を引き、次期政権の足かせを軽くしたい首相官邸の思惑が見え隠れする。
 政府は8月末時点では、9月12日までに調査結果や対策を公表する運びにしていた。しかし、1日夜に福田康夫首相の退陣表明で作業は中断。舛添要一厚生労働相も公表延期やむなしに傾いていた。
 ところが首相は2日、坂野泰治社会保険庁長官に「予定通り進めろ」と指示。厚労省幹部は「衆院選で民主党から追及されずに済むと考えたのでは」と受け止めている。
 そんな見方が出るのも、記録漏れ問題を早く決着させたい官邸の意向がうかがえるからだ。複数の関係者によると、官邸内には、前回6月27日の関係閣僚会議で「記録漏れ問題に2年間全力を挙げる」との方針を決定する構想があったという。事実上、2年で幕を引くという案だ。
 「最後の1円まで」と強調してきた舛添氏にとって、期限を切れば自らに責任が及ぶことになる。必死で巻き返し、公明党なども舛添氏に同調したため、首相は土壇場で期限を切るのをあきらめた。
 ◇月給30万→8万円 標準報酬、知らぬ間に減額
 仙台市の元会社員、斎藤春美さんは、92年4月から約3年間、東京都内の会社に勤め、約30万円の月給を得ていたが、94年4月、知らない間に会社が訂正届を出し、標準報酬月額を約1年半さかのぼって最低ランク(当時)の8万円に下げられた。将来受け取る年金額は、平均余命(85歳まで)を生きた場合、本来もらえる額より約142万円減る。
 偶然に記録照会してそれを知り、03年に国と会社を相手取って提訴。裁判で会社は改ざんを認め、「社保事務所から(引き下げを)指導された」との答弁書を提出した。04年11月の控訴審は、会社に天引き額と社保事務所に納めた差額の返還を命じたが、社保事務所の指導の違法性は認めず、上告審でこれが確定した。
 どれだけの標準報酬月額が改ざんされているかは、誰にも分からない。社保事務所の窓口などでは確認できるが、自宅で受け取る「ねんきん特別便」には標準報酬月額が載っていない。
 社保庁は、現役加入者に09年4月から標準報酬月額を含む「ねんきん定期便」を通知するのに加え、全厚生年金受給者への通知も急きょ決めた。全記録から極端に引き下げられているケースなども抽出して調査する。
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 ■ことば
 ◇標準報酬月額
 厚生年金保険料の算定基準になるもので、現在は9万8000〜62万円の30等級に分かれている。毎年4〜6月の平均給与額とおおむね同じ額の等級に当てはめる。本人の標準報酬月額に15.35%をかけたものが納付すべき保険料となる。保険料は、本人と会社が折半する。
 ◇年金加入記録の改ざん
 滞納保険料を少なくするため、保険料の基準になる標準報酬月額をさかのぼって下げたり、会社がさかのぼって脱退したように装って加入期間を短くしたりする処理などがある。徴収率を上げたい社会保険事務所職員と、保険料を減らしたい事業主の双方にメリットがあるとされるが、加入者の受け取る年金額が実際より減ってしまう。
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社保庁ぐるみ疑惑も 政府、被害回復に責任
2008年9月10日 読売新聞
 
政府は9日、厚生年金の記録改ざんに社会保険事務所職員が関与していたという調査結果を公表、改ざんによる被害を防止するための新たな対策をまとめた。
(社会保障部・小山孝 社会部・中村亜貴)
 【要約】
 ◇表面化した改ざんは「氷山の一角」との指摘もある。
 ◇被害は相当数に上る可能性もあり、政府はその回復に全力を挙げるべきだ。
 「保険料を滞納する事業主に対し、標準報酬の引き下げや社会保険からの脱退を促すような話をしたことがあった」
 東京の麹町社会保険事務所で1994年から2年間、保険料徴収を担当していた当時の係長(現在は都内の社会保険事務所の課長)は、調査にこう回答した。
 社保庁が実施した今回の調査は、総務省の年金記録確認第三者委員会が2月末までに「改ざん」と認定した事例など17件が対象。このうち、麹町事務所の事例1件だけについて、社保庁は職員の関与を認めた。
 記録の改ざんは、月収の記録(標準報酬月額)を引き下げたり、会社が営業を続けているのに違法に制度から脱退させたりという手口で行われ、加入者の年金額が年数万円程度減るなどの例が多いとみられる。その一方、事業主の保険料負担が軽くなるほか、社保事務所にとっても保険料の滞納額を少なくし、事務所の徴収成績を高く見せかけることができるという“利点”がある。
 だが、10年以上前の古い時期の改ざんが多く、当時の書類などはほとんど残っていない。麹町事務所以外の事例では当時の担当者が「覚えていない」などと答えたため調査が行き詰まり、真相は不明のままだ。
 改ざんが全国でどのぐらい起きているのかは、わからない。ただ、千葉県内の社会保険事務所職員は「あちこちの事務所で同じようなことをやっていた。今回の調査結果で、職員の関与を認定した1件は、ほんの“氷山の一角”に過ぎない」と話す。
 この言葉を裏付けるように、年金記録確認第三者委員会が認定した改ざん件数は、過去半年で3倍以上の56件に急増している。改ざんに気づかず本来より少ない年金額を受給している人は、これよりはるかに多い可能性が高い。
 さらに、2年前まで滋賀社会保険事務局に勤めていた尾崎孝雄さん(55)は、「社会保険事務所長が率先して、事務所の成績を上げるため徴収担当者に指示していた」と証言しており、社保庁が組織ぐるみで改ざんに関与していた疑惑も浮上している。
 政府は新たな対策で、厚生年金の全受給者に対して、標準報酬月額の記録を通知することを打ち出した。受給者本人が内容を確認し、同じ会社で働き続けていたのに不自然に報酬が下がっている時期などが見つかれば、改ざんされた可能性が高いことになる。これまで受給者に送られた「ねんきん特別便」には標準報酬月額が載っていなかったが、今回の新たな通知で、受給者が自分で改ざんを発見できる可能性が高まる。
 オンライン上のすべての厚生年金記録から標準報酬月額が不自然に引き下げられるなどした記録を探すコンピューターシステムを開発、該当者に通知して確認してもらうことも決めた。
 ただ、こうした対策にも限界がある。まず、過去の給与明細をすべて保管し、通知と照らし合わせて確認できる人は少数派と見られる。さらに、勤め先の事業所で自分の過去の給与を確認しようとしても、倒産している例などが少なくないと見られるからだ。
 社会保険労務士の井原誠さんは、「本人にも過去の報酬がわからず、年金記録確認第三者委員会に申し立てても記録の回復が難しい例もあるだろう」と話す。
 “本人頼み”の対策ばかりで済ませることは許されない。政府には1件でも多くの改ざん事例を探し出し、被害を回復する責任があるはずだ。
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標準報酬改ざん、社保庁職員関与認める 全受給者に履歴送付
2008年9月9日中日新聞 夕刊
 厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額(給与水準)の改ざんに社会保険庁職員が関与していたとされる疑惑で、社保庁は9日、これまで疑いが指摘されていた17件のうち1件に職員の関与があったことを認める調査結果を公表した。同日の年金記録問題の関係閣僚会議に報告した。
 関与を認めたのは、東京都千代田区の設計コンサルタント会社のケース。1995年、同社経営者が滞納した厚生年金保険料を分割で支払いたいと、麹町社会保険事務所の係長(当時)に申し出たところ、係長は厚生年金から脱退するよう指導。その際、係長は、経営者の過去の標準報酬月額16カ月分を少なく改ざんし、浮いた保険料を滞納分に充てると説明した。
 改ざんをめぐっては、保険料の収納率を上げたい社保事務所と、保険料負担を減らせる会社側の利害が一致するため、資金繰りに窮し保険料を滞納した会社を中心に、社保庁側が組織的に指導を行っていたのではないかとの疑念がぬぐえていない。
 こうした事態を受け、社保庁は厚生年金の全オンライン記録(約1億5000万件)を対象に、標準報酬の不審な変更の有無を調べ、不審点が見つかった人には注意を促す通知を送る方針。さらに来年、厚生年金の受給者約2000万人全員に、現役時代の標準報酬の履歴を送付する。

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年金の標準報酬改ざんは組織ぐるみ 元職員が証言
2008年8月19日中日新聞 夕刊
 厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額(給与水準)の改ざん疑惑で、大津社会保険事務所で徴収課長などを務めた元職員、尾崎孝雄さん(55)が19日、民主党の会合に出席し「事務所長や上司から暗に改ざんの指示があり、(都道府県ごとに置かれている)社会保険事務局も容認していた」と証言した。
 標準報酬の改ざんをめぐっては、以前から指摘が相次いでいたが、元職員が公開の場で組織ぐるみの関与を証言するのは初めて。社会保険庁は現在、複数のケースについて調査しており、「調査結果で事実関係を明らかにしたい」としている。
 標準報酬を改ざんして減額したり、加入期間を短く偽装する不正は、社会保険料の負担が軽くなる会社側と、見掛け上の収納率を上げられる社保事務所の利害が一致。しかし従業員は知らないまま将来の年金受給額が減ることになる。
 尾崎さんによると、改ざんは20年ほど前から行われており、保険料を滞納する会社があると、事務所長や上司から「何とか早くしてくれ」と、暗に改ざんを求められたという。社保事務局主催の「収納対策会議」でも改ざんしてでも収納率を上げるよう容認する発言があったという。従業員に知らされないままのケースが7割を占めていた。
 尾崎さんは「こうした手法は全国の担当者が集まる研修で口伝えに広まっていったが、各社保事務所には本庁からの出向者もいたので、本庁も知っていたはず」と指摘した。
 【標準報酬月額】 厚生年金の保険料を計算する際の基礎となる月給の水準。基本給のほか残業手当など各種手当も含む。現在は30等級に区分されている。例えば月給が29万円以上31万円未満であれば、標準報酬月額は30万円となる。これに保険料率(現在は14・996%)を掛けた額が保険料で、本人と会社が折半して負担する。

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石田ふたみ