『日々の映像』

2008年09月08日(月)  今度は有害米の横流し

消費者の食品への不信が高まる中で、さらに追い打ける深刻な事件が惹起する。大阪市のコメ卸売加工業者「三笠フーズ」が、有害な農薬やカビが残留している工業用米を食用と偽って転売していたという。農薬は、中国製冷凍ギョーザ事件でも問題になった有機リン系の「メタミドホス」だ。少なくとも約300トンがすでに流通している可能性が高いという。三笠フーズは1キロ十数円で仕入れ、5倍前後の価格で売っていたというが、こんなことがまかり通る背景に黒い霧に隠されている何かがあるといわねばならない。今時こんな暴利は聞いたことがない。

今回の事件は農林水産省の黒い霧の一部のような気がする。有害米といえば、ほとんどの人が食べているカドミウム汚染米に対しても明確な情報を国民に知らせていない。以下は6~8年前に書いた文章であるが関心のある人は開いて見てください。

カドミウム汚染         (2000年 3月11日の日々の映像から)
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20000311
カドミウム汚染農地        (2002年 6月24日の日々の映像から)
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20020624
カドミウム汚染米        (2002年 7月27日の日々の映像から)
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20020727


有害米1800トン、全量転売目的か 三笠フーズ
                       2008年9月7日 朝日新聞
食用米価格、工業用の10倍 利ざや目的売却も認める
                       2008年9月6日 朝日新聞
三笠フーズ「汚染米」転売、10年前から…元責任者認める
                       2008年9月7日 読売新聞
事故米購入16社を一斉緊急点検へ 農水省
                       2008年9月6日 日経
(主張)汚染米の転売 農水は事後監視の徹底を
                       2008年9月7日 産経新聞
殺虫剤検出の事故米350トン、全量食用に転用 三笠フーズ
                       2008年9月8日 日経
汚染米転売 流通経路を総点検せよ
                       2008年9月7日付・読売社説)

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有害米1800トン、全量転売目的か 三笠フーズ
2008年9月7日3時6分 朝日新聞

 三笠フーズ(大阪市北区)が政府から工業用に限定された有害米を食用に転用していた問題で、同社が仕入れた事故米は過去5年に政府が売却した事故米全体の4分の1に上ることが分かった。農林水産省は、帳簿や関係者の証言から、その全量を食用と偽って売ろうとしていた可能性が高いとみている。
 農水省によると、事故米の購入は、工業用のりの製造業務を商業登記の目的欄に記載した業者に限られ、これまでに購入したのは17社。03年度〜今年8月に政府が売却した事故米は計約7400トンで、うち三笠フーズが24%の1779トンを占め、17社中最多だった。
 政府保有の輸入米などにカビや水漏れなどで事故米が発生すると、農水省のホームページに掲載。その後、47都道府県にある出先機関の農政事務所が近隣の業者らに通知して指名競争入札を実施して売却業者を決める。
 大阪市に本社を置き、福岡県筑前町に工場をもつ三笠フーズは04年2月以降、北海道や東北、関東など東日本の農政事務所が発注する事故米取引にも積極的に参入。53回の取引のうち49回は少額の随意契約で、北海道の倉庫にあるカビの生えたタイ産米60キロを300円で買い取るなど安値の購入を繰り返していた。
 同省のある職員は「三笠フーズから『入札はいつか』と問い合わせがよくあった。100キロ以下の少量だと、輸送費の方が高く買い手がつきにくいが、三笠フーズは少量でもよく購入していた」と証言する。
 冬木三男社長は6日の記者会見で事故米の食用への転用を始めた時期を「5、6年前から」と話している。また、改ざんされていない本物の帳簿類から工業用として出荷された記録は確認されておらず、農水省は、同社はもっぱら食用と偽って販売した可能性が高いと判断。少なくとも298トンを食用と偽って売っていたことが確認されているが、それ以外の流通先についても特定を進める。(歌野清一郎)
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食用米価格、工業用の10倍 利ざや目的売却も認める
2008年9月6日19時2分 朝日新聞

 米販売会社「三笠フーズ」(大阪市北区)が工業用途の条件で政府から購入した米を食用と偽って販売していた問題で、同社が有機リン系の農薬成分メタミドホスや毒性のあるカビが検出された外国産の事故米計809トンを約716万円の安値で買い入れていたことが農林水産省の調べでわかった。工業用米と食用米の価格差は10〜15倍に上り、同社の冬木三男社長も6日、利ざや稼ぎの目的で、売り抜けていたことを認めた。
 農水省によると、残留農薬の基準値(0.01ppm)の5倍のメタミドホスが検出された中国産のもち米計約800トンは、06年11月〜07年5月に計4回の入札で三笠フーズが落札。同社の購入価格は計約712万円で、1キロ当たり平均8.9円で仕入れた計算になる。発がん性が指摘されているカビ毒のアフラトキシンB1が出た米国、中国、ベトナム産の米計約9トンは計約4万円で仕入れ、1キロ3〜5円の取引だった。いずれも工業用のりの用途に限り、食用としては流通させないことが契約条件だった。
 一方、みそ、焼酎、和菓子などに加工される食用として販売される輸入米は1キロ80円前後が相場だ。三笠フーズは、事故米であることを取引先に伏せて少なくとも298トンを販売しており、この取引だけで1千万円を超える利益を得たことになる。同社は03年度以降、50回以上にわたって事故米を落札しており、農水省は事故米と食用米との価格差に着目して、集中的に事故米を仕入れたとみて、帳簿類を調べている。
 三笠フーズは仕入れた事故米を福岡県筑前町の工場で保管していた。
 このうちアフラトキシン検出米は、これまでの農水省の追跡調査で、焼酎メーカー4社(鹿児島県3社と熊本県1社)で使用されていたことが確認されている。一方、メタミドホス検出米の計約295トンは、佐賀の仲介業者から福岡の仲介業者を経て、福岡や熊本の米穀店へ流れた後、京都や兵庫の仲介業者を介して関西方面へ出回ったとみられる。最終的に菓子メーカーなどで米菓子や和菓子に使用された可能性が高いものの、まだ全容は判明していない。(歌野清一郎)

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三笠フーズ「汚染米」転売、10年前から…元責任者認める
                      2008年9月7日読売新聞

 米穀加工販売会社「三笠フーズ」(大阪市北区)が、発がん性のあるカビ毒や残留農薬に汚染された工業用の「事故米」を食用と偽り転売していた問題で、同社の非常勤顧問(76)が6日、読売新聞の取材に応じ、同社が約10年前から不正転売をしていたことを明らかにした。
 さらに「事故米転売は他の複数の業者も行っていた」と話し、業界で不正が横行していた疑いも指摘した。一方、農林水産省が、事故米の加工・流通状況を確認する検査に際し、日程を業者に事前連絡していたこともわかった。同社は、事前に用意した「裏帳簿」を見せるなどして不正発覚を免れており、農水省は「チェック体制が甘かった」と不備を認めた。
 この顧問は、福岡県で米穀飼料を製造販売する個人商店を経営していた。1997年に三笠フーズに買収され、顧問は98年ごろから2006、07年ごろまで三笠フーズ九州工場の責任者を務めた。冬木三男社長が6日の記者会見で、不正転売の提案者と指摘した人物の一人。冬木社長は会見で、不正が始まった時期を「5〜6年前から」と説明。顧問の証言とは食い違っており、事故米の取り扱いを始めた当初から、転売が行われていた疑いが強まった。
 顧問は「(個人商店を経営していた)1985年ごろから、カビの生えたコメの中からきれいなコメだけを選び、食用に転売していた。他の複数の業者も行っていた」と、業界で不正が横行していたとした。
 さらに、約2年前には、有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が残留するコメについて、「冬木社長から『どうにか、食用で販売したい』と持ちかけられた」と証言。検査機関で残留農薬を測定したところ、国の基準値を下回っていたため、1年半前から販売を始めたという。顧問は「農薬の残留状況を確認しており、健康に問題はなかったはず。購入業者も薄々気づきながら、値段の安さを優先して買ったのではないか」と話している。
 ◆農水省、検査日程を事前連絡◆
 この問題では、事故米に関する農水省の流通経路調査の甘さも露呈した。
 農水省によると、事故米は、政府が毎年、輸入するよう義務付けられた「ミニマム・アクセス米」と呼ばれる外国産米と備蓄用などに買い上げた国産米のうち、基準値を超える残留農薬が検出されたり、保管中にカビが生えたりしたコメを指す。このうち、食用に適さなくなったものは工業用のりの原料や家畜飼料などとして、国から業者に売却されている。
 工業・飼料用は、焼酎やせんべいへの加工用のコメよりも安価なため、農水省は、用途通り使われているかどうか検査することを内規で義務付けている。
 各地の農政事務所は、管轄地域の購入業者から加工計画書の提出を受け、加工作業に立ち会って点検するほか、在庫量と加工数量、販売状況などを帳簿で確認する。しかし、抜き打ち検査や販売先の調査は規定になく、検査は事前に連絡された後行われていた。
 農水省は「抜き打ち検査をするなど厳しくしたい」と検査方法の見直しに着手した。

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事故米購入16社を一斉緊急点検へ 農水省
                       2008年9月6日 日経
 農薬やカビ毒で汚染された事故米が食用に不正転売された問題で農林水産省は6日、不正が発覚した三笠フーズ(大阪市)以外の事故米の購入業者に対して一斉緊急点検を実施することを決めた。
 点検対象は2003年度以降に事故米を購入した16社。8日以降、各地の農政事務所を通じて調査に入る。事故米は食用以外に用途が限定されており、緊急点検では決められた用途が守られているかどうかなどについて各社の取引経路を追跡し、転売先まで含めて厳密にチェックする方針。
 また、同省は再発防止のため、事故米の販売や流通に関するシステムを見直す意向だ。〔共同〕 (20:43)
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(主張)汚染米の転売 農水は事後監視の徹底を
2008.9.7 産経新聞
 食用には適さず、工業用糊(のり)の原材料などに使われるはずの汚染米が加工食品用として販売されていた。「食の安全」を脅かす不正行為がまたも明らかになった。
 再発防止の観点からも不正転売には厳しい追及が必要だ。一方で売却した農林水産省の事後監視体制にも少なからず問題点が指摘されている。徹底した見直しが必要となろう。
 ウルグアイ・ラウンド合意で日本は平成7年度からコメの最低輸入義務を課され、現在は年間70万〜80万トンを中国などから輸入している。このうち2000トン程度は輸入後検査で基準値を超す農薬やカビの発生が確認されている。
 農水省はこれを「事故米穀」として区別し、食用には回さないことを条件に民間に売却している。価格は食用米の5分の1程度が相場とされ、今回はこの仕組みが悪用された格好だ。
 不正転売をしていた三笠フーズ(本社・大阪市)は、15年度から現在まで計1779トンの事故米穀を買い取っていた。最近の2年間では、少なくとも430トン程度を焼酎や米菓の材料として不正転売していた可能性が強い。
 転売された汚染米については、事前に洗浄やカビの除去作業が行われていたとして、農水省は「ただちに健康被害につながる恐れはない」と消費者に冷静な対応を呼びかけている。
 だが、これまでの調べで、三笠フーズは二重帳簿の作成や出荷記録の偽造・廃棄を行っていたことも明らかになっている。会社ぐるみの極めて悪質な不正行為と言わざるを得ない。消費者の不安解消のためにも、転売先の追跡調査には万全を期してほしい。
 農水省は食品衛生法違反罪で同社を刑事告発する方針という。当然のことではあるが、他の事業者には問題がないのかどうか。売却後の事故米穀の転売については対象を三笠フーズ以外にも広げ、さらに徹底した調査をすることが求められよう。
 同時に、事故米穀の売却体制そのものも再検討すべきだ。農水省は販売計画書や売上伝票などでチェックはしていたというが、不正を見抜けなかったのも事実だ。計画的不正にも対処できる新たな事後監視体制も考えたい。
 食品の産地偽装など食の安全に対する国民の不信感は危険水域まで達している。消費者行政の抜本改革が急がれる。

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殺虫剤検出の事故米350トン、全量食用に転用 三笠フーズ

 2008年9月8日 日経
 米粉加工会社「三笠フーズ」(大阪市北区)がカビ毒や残留農薬で汚染された「事故米」を食用に転売していた問題で、殺虫剤「メタミドホス」が検出された出荷済みの事故米約350トン全量を食用に転売していたことが7日、農林水産省の調べで分かった。同社は記録上、工業用のり向けとして出荷。同省はこのうち約50トンを食品加工会社の倉庫で発見した。
 事故米は工業用にしか使えず、食用に転用すると食品衛生法に抵触する可能性がある。農水省は、三笠フーズが2003―08年度に同省から購入した事故米1800トンのほぼ全量を食用に回そうとした疑いがあるとみている。(07:00)

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汚染米転売 流通経路を総点検せよ
2008年9月7日付・読売社説)
 
消費者の食品への不信が高まる中で、さらに追い打ちをかけるような不祥事である。
 大阪市のコメ卸売加工業者「三笠フーズ」が、有害な農薬やカビが残留している工業用米を食用と偽って転売していたことが明るみに出た。
 農薬は、中国製冷凍ギョーザ事件でも問題になった有機リン系の「メタミドホス」だ。少なくとも約300トンの汚染米が焼酎などに加工され、すでに流通している可能性が高いという。
 食の安全への信頼を裏切る行為だ。農林水産省は、健康被害の有無にかかわらず、どこに、どれだけ転売されたのか早急に解明し、回収を急がねばならない。
 汚染米は、世界貿易機関(WTO)協定に基づき、国が中国やベトナムから輸入したコメの一部だ。基準を超える農薬が検出されたり、カビが生えたりしたため、のりなどの工業用に使うという条件で農水省が民間に売却した。
 三笠フーズはこのコメを2003年度から計1779トン仕入れ、一部を焼酎メーカーや米菓メーカーなどに転売したという。
 1キロ十数円で仕入れ、5倍前後の価格で売っていた。相当な暴利を得ていたことになる。
 農水省には偽造伝票を示し、二重帳簿を作って販売先を隠していた。社長は「私が指示した」と認めている。組織ぐるみの悪質な不正が長年にわたって続けられてきた可能性が高い。
 「転売前に洗浄、検査したので食用にしても問題ない」という会社の説明にもあきれる。
 農水省は同社を食品衛生法違反容疑で告発する方針だ。捜査当局による解明も期待したい。
 農水省は偽造伝票を鵜呑(うの)みにして販売先の調査を怠った。チェック体制の甘さを猛省すべきだ。不正を見過ごした間に汚染米はさらに転売され、大半は行方が分からなくなってしまった。
 不正を把握してからの対応にも問題がある。最初に匿名の通報があった先月22日から半月近くも事実を公表しなかった。
 実際に汚染米が転売された焼酎メーカーなども、いまだに公表していない。これでは風評被害が広がるばかりではないか。
 三笠フーズ以外にも16業者に汚染米が販売されている。これらの業者についても、転売先や最終用途などについて早急に調べる必要がある。
 工業用へのコメの加工を食品メーカーが扱う是非も含め、汚染米売却の在り方を点検すべきだ。

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石田ふたみ