『日々の映像』

2008年08月30日(土)  大分教員汚職 21人 採用取り消しへ

 大分県教育委員会は29日、昨年の教員採用試験で、不正な点数操作により合格した教員40数名中約半数の21人を特定、採用を取り消す方針を決めた。不正は一昨年の試験でもあったとされるが、県教委は裏付けが不十分として取り消しを見送った。採用取り消しとなる教員はすでに教壇に立っており、過去に例を見ない大量の採用取り消しには、若者の人生がかかっているだけにこの顛末は深刻である。

 これだけの事件でありながら、データを改ざんした男性職員を停職4ヵ月▽校長・教頭昇任試験で点数操作した中学校長を減給2ヵ月にしたほか、監督者12人を減給や戒告、文書訓告程度の処分なのだ。これでは処分が甘いとまた問題になるのでは・・・。

 埼玉県教育委員会委員長の高橋史朗・明星大教授は「処分対象が21人とは、絶句するほど多いが、不正が明らかになった限りは、やむをえない措置だ」と指摘。「一番心配なのは、教師がいなくなってしまう子供たちへの影響だ。どうやって信頼を回復するかを最優先で考える必要がある。大人の不正を中途半端にごまかせば、子供はかえって不信感を持つ。率直に話した上で、後の先生たちが必死になって子供たちにかかわり、時間がかかっても努めるしかない」と話す。果たして、教育界全体の腐敗の根を断ち切ることが出来るのか、日本の社会そのものに、ため息をする人が多いのではないだろうか。


大分教員汚職 21人 採用取り消しへ 今春採用の不正合格者 前年分は見送り
                         2008年8月30日 西日本新聞
大分教員汚職、不正採用教員21人採用取り消し
                         2008.8.29 21:03 産経新聞
教員採用取り消し 子供への影響不安、2学期目前…担任来ない?
                         2008.8.29 23:51 産経
大分教員汚職 採用取り消しを再生の契機に
                         2008年8月30日付・読売社説

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大分教員汚職 21人 採用取り消しへ 今春採用の不正合格者 前年分は見送り
2008年8月30日 西日本新聞

 教員汚職事件を受け大分県教育委員会は29日の臨時会で、2008年度教員採用試験(07年度実施)で21人が不正な点数操作による不正合格だったと特定、採用を取り消す方針を決めた。一方で、不正な操作がなければ合格していた21人については意向を確認し、10月1日以降に採用する。文部科学省によると、教員採用での不正合格者の採用取り消しは全国でも異例。

 07年度試験については「不正があったとみられるものの、データの信頼性が不十分で裏付けが弱い」として採用取り消しは見送った。ただ、同年度受験者の中には不当に不合格となった者もいる可能性があるため、特別試験を行って合格すれば09年度に採用する。

 県教委の教育行政改革プロジェクトチームは、元県教委義務教育課参事江藤勝由被告(52)=収賄罪で起訴=らのパソコンからデータを復元して調査。その結果、08年度の不正合格者は小学校教諭14人、中学校教諭6人、養護教諭1人の21人と特定。点数操作前とみられる試験データが残っていたため、改ざん後のデータと照合、確認した。

 21人は1週間以内に本人に説明した上で採用を取り消す。ただ、現場の混乱を避けるため、希望すれば臨時講師として雇用を続ける。21人はいずれも採用1年目の試用期間中で、任用側は正式採用者に比べ処分をしやすいとされる。

 05、06年度の試験データも残っていたが、「破損がひどく解析できなかった」という。

 また、不正に関与した職員3人、高校教育担当教育審議監ら監督者12人を同日付で処分した。江藤被告の指示でデータを改ざんした男性職員を停職4カ月▽05、06年度の校長・教頭昇任試験で点数操作した中学校長を減給2カ月にしたほか、監督者12人を減給や戒告、文書訓告にした。

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大分教員汚職、不正採用教員21人採用取り消し
2008.8.29 21:03 産経新聞
 教員汚職事件を受け、大分県教育委員会は29日、昨年の教員採用試験で、不正な点数操作により合格した教員21人を特定、採用を取り消す方針を決めた。不正は一昨年の試験でもあったとされるが、県教委は裏付けが不十分として取り消しを見送った。採用取り消しとなる教員はすでに教壇に立っており、過去に例のない大量の採用取り消しの異常事態に、教室の混乱を避ける対応が求められる。
 採用取り消しとなるのは、小学校教員が14人、中学校が6人、養護教員が1人。採用取り消し対象の教員が希望すれば、臨時講師として雇用するとしている。
 不正のしわ寄せで本来の得点を減点されるなどし、不合格となった19年の受験者についても希望を確認した上で、10月以降に新たに採用する。
 18、19年の採用試験では、元義務教育課参事、江藤勝由被告(52)=収賄罪で起訴=が受験者の点数を改竄(かいざん)、計40人近くが不正合格したとされ、県教委は江藤被告のパソコンのデータを分析し、19年試験分は受験者の本来の得点や改竄の過程が特定できたという。
 18年の不合格者には救済の機会を与えるため、特別試験を実施し、合格者を来春採用する。17年以前は資料が廃棄され、不正が証明できないとしている。
 記者会見した小矢文則教育長は「取り消し対象者には丁寧に説明し、学校現場に混乱がないようにしたい」とし、自身の責任は「一連の不祥事の全体像がまだ見えていないので、それまで待ちたい」と述べた。
 また教員21人の採用取り消し方針を受け鈴木恒夫文部科学相は29日、「『清く正しく生きなさい』と教えるべき教育の責任者が不正をした。予想以上の数だ。取り返しがつかない。怒りを覚える。子供に悪影響を残すことだけは避けてほしい」と述べ、教委に調査結果の詳細な報告を求め、指導も辞さない考えを示した。
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教員採用取り消し 子供への影響不安、2学期目前…担任来ない?
2008.8.29 23:51 産経
 不正採用教員21人の採用取り消しが決まった大分県。2学期が始まるが、担任がいなくなる可能性もあり、子供や保護者への説明はどうするのかを含め、不安視する声が出ている。
 県庁の教育委員室で記者会見した小矢文則教育長は苦渋の表情を浮かべた。
 採用取り消し者はいったん、職を失うことになるが、不正に関与した県教委職員については最も重い処分で停職にとどまった。「甘いのではないか」との質問も出たが、小矢教育長は小さな声で「過去の処分と比較してもかなり厳しいと思っている。採用取り消し者には十分丁寧に説明したい」と繰り返した。
 2学期からの教員の扱いについて、県教委は明確にしていない。
 大分市内の小学生の父親は、教員のこれまでの実績や子供への影響を考えて、取り消しを年度末まで待つなど配慮してほしいという。
 埼玉県教育委員会委員長の高橋史朗・明星大教授は「処分対象が21人とは、絶句するほど多いが、不正が明らかになった限りは、やむをえない措置だ」と指摘。「一番心配なのは、教師がいなくなってしまう子供たちへの影響だ。どうやって信頼を回復するかを最優先で考える必要がある。大人の不正を中途半端にごまかせば、子供はかえって不信感を持つ。率直に話した上で、後の先生たちが必死になって子供たちにかかわり、時間がかかっても努めるしかない」と話す。
 また23年間小学教員だった教育評論家の親野智可等(おやのちから)氏は「教委は今後の対応を通知1枚で学校に任せるのではなく、子供のショックを和らげるためのカウンセリングなど心のケアにも取り組むべきだ」と話す。
 10年以上前からあったとされる不正採用。大分では秋の国体開催を控えており、「国体を前に、これで幕引きするかもしれない」(県関係者)との見方もある。信頼回復へ採用責任者として県教委の対応が問われる。
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大分教員汚職 採用取り消しを再生の契機に
2008年8月30日付・読売社説

 前例のない事態である。大分県の教員採用汚職事件で、同県教育委員会は、今年度採用した小中学校教員らのうち21人が不正採用だったとして、採用の取り消しを決めた。
 学校現場が混乱しないよう、最大限の努力を尽くしてほしい。
 不正採用者は、収賄罪で起訴された県教委の元義務教育課参事・江藤勝由被告らが、得点を水増しして合格させていたものだ。
 県教委では、パソコンから復元したデータや江藤被告らの話から不正採用者を特定した。しかし、同様に疑惑が持たれた昨年度の採用者については、裏付け不十分として、取り消しを見送った。
 それ以前については特定が困難な見通しで、今回、採用を取り消されたのは氷山の一角だ。
 21人の中には、自身が不正に合格したと知らなかった教員も含まれている可能性がある。採用を取り消された後、希望すれば臨時講師として雇用される。
 既に教壇に立つ21人が、年度途中に一斉に教室から姿を消せば、多くの児童生徒は新学期から担任の先生が突然いなくなる。
 「不正採用」と認定されながら何人が再雇用を望むかどうかは不明だが、こうした事態を考慮した措置だろう。
 県教委は、スクールカウンセラーの派遣、児童生徒や保護者への丁寧な説明はもちろん、できる限りの対策を取らねばならない。
 一方、本来は合格していたのに、減点されて不合格になった今年度試験の受験者は、本人が希望すれば採用される。
 重要なのは、大量の一斉採用取り消しという異常事態を踏まえ、教育界が再発防止と信頼回復をどう図っていくかだ。
 県教委は事件を機に、教員採用試験を県人事委員会と共同で実施するなどの改善策を取っている。今後、2次試験の判定基準を一層明確化する。
 さらに、校長、教頭の昇任試験では市町村教委などの推薦を廃止する方向で検討するという。
 今回の事件は、教育委員が単なる“名誉職”であってはならないことも示した。
 6人全員が、不正に気づかなかった監督責任を認め、今後の報酬を自主返納する方針だが、当然だろう。お目付け役としての役割をしっかり果たしてもらいたい。
 間もなく江藤被告らの公判が大分地裁で始まる。裁判で明らかになった事実も含め、事件を教育界全体の教訓とし、腐敗の根を断ち切る決意が欠かせまい。

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石田ふたみ