『日々の映像』

2008年08月31日(日)  豪雨 新たな都市災害の様相

 20年ほど前土木の専門家から雨量と土木設計の講義を受けたことがある。その後山林の開発関連の仕事に関わってきたので雨量の基本はよく記憶している。
この当時は次の基準であった。
時間当たり雨量  50ミリ  ・10年確率・10年に1回降るかもしれない。
時間当たり雨量  100ミリ ・・100年確率・100年に1回降るかもしれない。
 中小河川の設計は10年確率で設計されていると習った。特に都市部は10年確率(時間当たり雨量50ミリ)で設計されているのだ。ゆえに今回のように時間当たり100ミリを超える豪雨となると、まさに道路が河川に変わってしまう。

 それにしても以下の時間当たりの雨量は凄まじく昔の土木・都市設計の基本を根本から変える必要が出てきている。
・岡崎市で1時間当たり146ミリの雨量 観測史上7番目
・東京都町田市付近でも1時間当たり110ミリの雨量
・一宮で1時間当たり120ミリの雨量

 100年確率の猛烈な豪雨が毎年のように襲ってくるのである。アスファルトとコンクリートで覆われた都市の市街地で、行き場のない雨水が道路、低層の住宅や地下を襲う。庶民は新たな都市災害を明確に意識して行動する必要がある。ともかく、都市部で時間当たり50ミリ豪雨となったら、道路に水が溢れ出すのである。

東海の雨やまず 浸水1万棟超、川再び決壊も
                      2008年8月30日 朝日新聞
記録的豪雨、岡崎市で146ミリ 観測史上7番目
                      2008年8月30日  日経
尾張地方でも被害甚大 一宮では記録的雨量
                      2008年8月30日 中日新聞
記録的豪雨 水害の常識を捨てねば
                      2008年8月30日中日新聞 社説

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東海の雨やまず 浸水1万棟超、川再び決壊も
                   2008年8月30日22時12分  朝日新聞
 東海地方は30日、一日中雨が降り続き、愛知県蒲郡市では昼ごろに裏山の土砂が崩れ、住宅に入り込む被害があった。同日夜には名古屋市への災害救助法適用が決まり、家屋の損壊や浸水のあった世帯への貸し付けや、商工業者の運転資金の貸し付けなどで国の補助を得ることになった。
 30日夜までの愛知県と名古屋市のまとめによる家屋の被害は、床上浸水が計2033棟、床下浸水が計8316棟になった。名古屋市の被害は2日近くたって全容がわかってきた形で、床上浸水が935棟、床下浸水が5839棟になったという。
 農林水産関係の被害は、愛知県のまとめで3億円を超える見通しになった。
 同県岡崎市では、行方不明の女性(80)の捜索が続けられたが、川の増水で難航した。同市で捜索願が出されていた79歳の男性は30日昼ごろ、無事が確認された。
 愛知県幸田町では、町内を流れる広田(こうた)川が、29日未明に決壊した地点で再び決壊した。町は県を通じて一時、陸上自衛隊に災害派遣要請を出したが、水位が下がったことから同日夜までに要請を解除した。
 名古屋地方気象台によると、降り始めから30日夕方までの愛知県内の雨量は、岡崎市が448ミリ、蒲郡
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記録的豪雨、岡崎市で146ミリ 観測史上7番目
                          2008年8月30日  日経
 気象庁によると、愛知県岡崎市で29日午前2時までの1時間に降った146.0ミリの雨量は観測史上全国7番目にあたる。気象レーダーによる解析では、東京都町田市付近でも1時間に約110ミリの雨が降ったとみられる。
 午前9時までの24時間雨量は岡崎市で302.0ミリ。関東地方でも埼玉県久喜市で225.5ミリ、東京都八王子市で212.0ミリに達した。
 北海道から本州にかけて延びた前線と南にある低気圧の間に湿った空気が流れ込み、積乱雲が発達。東日本を中心に大雨を降らせた。前線と低気圧の動きが遅いため、大気が不安定な状態は30日も続き、断続的に激しい雨が降る恐れがある。落雷や突風にも注意が必要という。(15:02)
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尾張地方でも被害甚大 一宮では記録的雨量
                         2008年8月30日中日新聞

28日から29日にかけて東海地方を襲った豪雨は、尾張西部地方にも大きな被害を及ぼした。雷鳴が居座ったように長くとどろき、一宮市では観測以来初めてという記録的雨量を観測。

 記事中ほど省略

◆一宮で120ミリの時間雨量
 28日夜からの記録的な豪雨で、尾張西部地方でも各地で住宅浸水や道路冠水などの被害が出た。特に一宮市では、千秋町地区で28日午後10時10分からの1時間に、観測開始以来最高となる120ミリの時間雨量を記録した。
以下省略

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記録的豪雨 水害の常識を捨てねば
                      2008年8月30日中日新聞 社説
 
東海・関東地方を激しい豪雨が襲った。道路が川に変わり、いたるところで住宅が浸水、交通機関も不通となった。従来の水害対策を根底から見直す必要があるのではないか。
 雨で一寸先も見えない。愛知県岡崎市で最大時間雨量一四六ミリを記録、市内の全十四万世帯に避難勧告となった。東海豪雨の最大時間雨量九七ミリ、二〇〇四年九月に三重県宮川村(現・大台町)に土砂災害をもたらした台風21号の一三九ミリを超える。
 停滞する前線を暖かく湿った空気が入り込んで刺激し、積乱雲の群れを発生させ、今回の大雨を降らせたとみられている。
 わが国では一九九六年から時間雨量五〇ミリ以上の集中豪雨の発生回数が急速に増えている。
 地球温暖化との関連を疑う声もあるが、確たる根拠はない。しかし、集中豪雨の頻発が当たり前になった今、これまで水害対策の常識とされたことを、徹底的に再検討しなければならない。
 七月下旬、神戸市・都賀(とが)川で児童が死亡した事故が示すように、集中豪雨で川は一瞬のうちに増水する。首都圏や名古屋圏などアスファルトとコンクリートで覆われた都市の市街地では、行き場のない雨水が道路、低層の住宅や地下施設にあふれた。
 市街地の雨水を下水やポンプで川へ流せば、川の水位をさらに上げ堤防決壊の危険を大きくする。また市街地を流れるのは中小河川が多く、治水安全度は低い。
 従来の治水の中心は、増水しても安全に川で流すことだった。このためダムによる洪水調節、河床しゅんせつで流水量を増加、堤防強化などを進めてきた。
 これらの整備だけでは壁に突き当たるのも明らかである。
 道路や公共施設の敷地に雨水の浸透施設や、豪雨が過ぎてから放流する一時貯留施設を設けるのは対策の一つである。東海豪雨を経験した自治体で施工済みだ。
 洪水や土砂災害の情報や警報はきめ細かく気象庁などが提供するようになった。浸水予想のハザードマップ整備も進んできた。これらを基に自治体は人命を第一に考え、空振り覚悟で早めに避難を呼び掛けるべきだろう。
 高度成長期以来、防災への配慮を無視した安易な市街化区域の指定も目立つ。これからの指定に慎重を期すのは当然だが、指定済みの区域でも浸水を繰り返したり、急傾斜地の近くなど危険個所は、見直しを急ぎたい。


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石田ふたみ