『日々の映像』

2008年08月25日(月)  北京五輪が閉幕

 17日間にわたって熱戦を繰り広げた北京五輪が昨日幕を閉じた。五輪史上最大の規模で開催された今大会は、開催国の中国が51個の金メダルを獲得し、米国を抑えて世界トップに躍り出る。この背景は18種目を外国人コーチが指導していたことが挙げられよう。日本の反省点の一つではないだろうか。

 日本のメダルは金9を含む25個にとどまったものの、2種目2連覇を達成した競泳界エース北島康介や32年ぶりに日本のチーム競技に金メダルをもたらした女子ソフトボールなどの優勝シーンは観る人の心に熱い感動を与えた。これに対して超プロ級が出場した野球・サッカーのメダルが遠く届かなかったことは残念である市原則之副団長は「野球やサッカーはリーグ優先というエゴが優先されチームジャパンになっていなかった」と批判されても仕方がないようだ。

 オリンピック憲章は「人間の尊厳保持に重きをおく、平和な社会を推進する」と掲げているという。北京五輪に「合格」の評価を与えるには、いくつかの疑問点が残った。五輪開催国が最優先すべきである報道・言論の自由と人権が完全に保障されていたかどうか。この視点で言うのであれば、中国は開催地としては不適格であると思う。一番の違和感は軍・武装警察などの保安要員が11万人も配置されたことである。これほどまでの警備体制を敷かないと、問題の起こる国と理解した。



北京五輪が閉幕、日本は金9を含むメダル25個を獲得
                     2008年 08月 24日 22:55 JST
北京五輪が閉幕 厳重警備で運営は順調
                     2008年08月24日(日) 21時54分 共同通信社
五輪閉幕へ―北京に刻んだ歓喜と涙
                     2008年8月24日 朝日社説
北京五輪閉幕 疑問残した中国流運営
                     2008.8.24 02:51 産経新聞
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北京五輪が閉幕、日本は金9を含むメダル25個を獲得
2008年 08月 24日 22:55 JST
 [北京 24日 ロイター] 17日間にわたって熱戦を繰り広げた北京五輪が24日幕を閉じた。五輪史上最大の規模で開催された今大会は、開催国の中国が51個の金メダルを獲得し、米国を抑えて世界トップに躍り出るなど活躍が目立った。
 日本のメダルは金9を含む25個にとどまったものの、2種目2連覇を達成した競泳界エース北島康介や32年ぶりに日本のチーム競技に金メダルをもたらした女子ソフトボールなどの優勝シーンは観る人の心に熱い感動を与えた。 
 懸念されたテロや大気汚染などの大きな問題もなく北京五輪は全ての競技を終了した。
 <新星乏しく> 
 日本代表選手団の上村春樹総監督は24日に会見し、「当初掲げていた金メダル2ケタ、メダル総数30個以上という目標には届かなかったが、選手達はよく戦い、頑張ってくれた」と総括。福田富昭団長も男子100メートル平泳ぎを世界新記録で2連覇した北島はもちろん、女子レスリング、ソフトボール、男子フェンシング、男子体操などの成果をたたえた。
 北京でのメダル獲得数は、アテネでの金16を含む37個に比べ大きく減少した。9個の金メダルのうち7個はアテネの覇者が獲得したもの。4年の間のケガや敗戦を糧にし「経験」を力に換え、再び栄冠を手にした選手が活躍する一方で、ケガで十分な練習が出来なかった選手、年齢をかさね力を維持するのが難しくなった選手もいた。
 半面、それらの者にとって代わる「若い力」が表れなかったのも事実。金メダリストの新顔は柔道100キロ超級の石井慧と女子ソフトボールだが、準決勝、決勝の死闘を投げ続けたソフトのエース上野由岐子はアテネ大会でも投げており、まったくのニューフェイスというわけではない。フェンシングの太田雄貴などを除けば全体的に「新顔」に乏しい北京五輪となった。
 この点について上村総監督は「五輪は世界のレベルがきっ抗し、ハイレベルな戦いになっている。負けた理由をよく分析し、世代交代をきちんとやっていかないとロンドンでは勝てない」と語った。
 ただ、同総監督によれば4─6位に入った33の競技のなかには、ロンドンに通じる幾つかの光も見えた。福田団長も女子サッカー、バドミントン、カヌー、卓球などで「将来金を狙える人材が新戦力として現れた」とみている。
 準決勝で韓国に敗れ、3位決定戦でも米国に敗退しメダルを逃した野球のようにプロリーグがある男子チーム競技で期待された結果が出なかったのも今大会の特徴。代表団幹部もこの点を問題視している。
 市原則之副団長は「野球やサッカーはリーグ優先というエゴが優先されチームジャパンになっていなかった」と批判。今後は早い時期に選手を選び、チームとしての集中練習を行うことで連帯感を強めることが必要だと訴えた。
 今大会では危機管理の問題も浮上した。
 男女のマラソン代表選手6人のうち2人が故障でレース直前に不参加を表明する異例の事態となった。手続きの遅れや補欠選手の準備不足で補欠を出すこともできず、貴重な3つの枠を使い切れなかった。福田団長によると「マラソンは陸連の中でも特別な管理になっており、選手の状態や情報の管理がよくない。今後はそういう特別扱いのない仕組みに変えていくべきだ」と強調した。
 <アジア勢の躍進>
 金メダルの獲得数では中国が米国を上回りトップになったほか、韓国もアテネを上回る金メダルを獲得するなど、アジア勢の活躍が目立った。
 上村総監督は「日本の柔道と同様に、中国の飛び込みや韓国のテコンドーなどアジア人に合った、民族性にあった競技をより強くしたことが成果につながった」と分析している。
 また福田団長は、中国の選手は国から大きな支援を受けているほか、韓国もナショナルトレーニングセンターの施設を毎年充実させて、集中した合宿などを行っており、日本のように「食費や宿泊費を選手たちが取られることなく、選手も指導者も練習に集中できる体制をとっているところが大きな成果を挙げた」と指摘した。
 ただ、体格の大きい欧米選手の方が優勢だとみられてきた競泳で、日本の北島だけでなく韓国や中国の選手も表彰台に上ったほか、セーリング、カヌー、アーチェリー、フェンシングなど欧米勢が得意としてきた分野でも中国や日本などアジア人の健闘がみられた。
 この背景には各国が海外の有能なコーチを迎えて選手の強化に取り組んでいることがある。「今回は指導者の重要性を改めて認識させられた」という市原副団長。「今後は日本もさらに外国人コーチを招へいしたり、それらのコーチをうまく活用するための管理能力を各競技連盟が強める必要がある」とみている。
 国の威信をかけメダル数で大きく躍進、世界一に上り詰めた中国。経済成長とともにスポーツでもこの国の勢いが今後も続くのか。五輪はこの巨大な国の何かが変わるきっかけになるのか。そして日本はアスリートの底上げを図ることができるのか。
 聖火は2012年ロンドンに渡る。
 (ロイター日本語ニュース 伊賀大記記者 大林優香記者)
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北京五輪が閉幕 厳重警備で運営は順調
2008年08月24日(日) 21時54分 共同通信社
【北京24日共同】中国がアジアの大国としての威信を懸けて開催した第29回夏季オリンピック北京大会は24日午後8時(日本時間同9時)から「鳥の巣」の愛称を持つ北京市北部の国家体育場で閉会式が始まった。
過去最多の204カ国・地域が参加した大会は、開幕直前に新疆ウイグル自治区で発生した警官隊襲撃事件の影響などが懸念され、厳重な警備が敷かれた。大会運営はほぼスムーズで、地元中国が金メダル51個を獲得して国別で初の1位となり、17日間のスポーツの祭典は幕を閉じる。
史上最多の576人の選手団を編成した日本のメダルは金9、銀6、銅10で総数は25個だった。「金2けた、総数30個以上」の目標は達成できず、前回アテネ五輪の金16個、総数37個からも後退。次回2012年ロンドン五輪へ向けて世代交代が急務となった。閉会式では競泳男子平泳ぎで史上初の2大会連続2冠を獲得した北島康介(日本コカ・コーラ)が旗手を務め、23番目に行進。
競泳男子のマイケル・フェルプス(米国)が1大会個人史上最多の8個の金メダルを獲得し、陸上男子短距離ではウサイン・ボルト(ジャマイカ)が3種目をすべて世界新記録で制し、この大会の2大ヒーローとなった。

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五輪閉幕へ―北京に刻んだ歓喜と涙
                    2008年8月24日 朝日社説
 どんな華やかな祭りにも終わりが来る。蒸し暑さに秋の気配も感じられる北京の五輪はきょうが最終日だ。
 競技会場とその周辺に限れば、心配されたテロや大きな混乱はなかった。大会の主役はまさに200を超える国や地域から集まった選手たちだった。そのことにまず胸をなで下ろす。
 「どれほど記録を伸ばせるか、わからないわ」。そう笑ったのは陸上女子棒高跳びで連覇したロシアのエレーナ・イシンバエワ選手である。屋外で重ねた世界記録の更新は14度目だ。
 日本にとっては、王者米国を倒したソフトボールが後半戦のハイライトだった。上野由岐子投手が2日で3試合、400球を超える熱投。「体力だけでなく、頭がパンクする」ような疲れをねじ伏せ、球技で32年ぶりの金メダルをもたらした。「まだまだ投げられる」という鉄腕ぶりが頼もしい。
 陸上男子のトラック種目としては史上初のメダルとなった400メートルリレーの「銅」も忘れがたい。
 敗者にも心に残る姿があった。柔道男子で2大会連続の金メダルを狙った日本選手団の主将、鈴木桂治選手は初戦で敗れた。「今は何も残っていない。やり残したこともない」
 人の強さと弱さ、勝利への執念と敗北の無念さ。勝負のあやと非情。そうしたことが選手の姿と言葉からにじみ出て、片時も目を離せなかった。
 五輪はナショナリズムを呼び起こす。そんな中で印象的だったのは、女子バレーの米国を銀メダルへ導いた郎平監督と、シンクロナイズド・スイミングで中国に初のメダルをもたらした井村雅代コーチだ。中国の元スター選手と日本を代表する指導者が母国を離れて献身的に指導する姿は、国境を軽やかに超える新鮮さを感じさせた。
 女性でいえば、中東イスラム圏からの参加が目を引いた。長く宗教的な理由でスポーツへの道を閉ざされてきた人たちだ。地味だが、着実な変化を実感した大会でもあった。
 視線を中国に移せば、「百年の夢」だった五輪開催の気負いが目立った。開会式での独唱の少女の「口パク問題」など過剰な演出がたて続けに明らかになった。大会の成功を願うあまりとはいえ、少々やりすぎだったろう。
 観客席では中国選手の活躍には五星紅旗が乱舞したが、他国の選手へ拍手する余裕は乏しかったようだ。露骨なブーイングがあったのも残念だった。今回の五輪の体験をスポーツを楽しむきっかけにしてほしい。
 競技施設を惜しみなく建て、人を大量に動員する。そんな豪華な五輪は今回の中国が最後だろう。質素で中身の濃い祭典をどうつくるか。その課題は4年後のロンドン大会へ引き継がれる。それは16年の五輪に立候補している東京が解くべき問題でもある。

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北京五輪閉幕 疑問残した中国流運営
2008.8.24 02:51 産経新聞
 ■この経験をどう生かすのか
 世界の注目を集めた北京五輪が閉幕する。
 参加選手の総数でも、競技場・関連施設の規模でも史上最大級の大会だが、これまでのところ、運営自体に支障をきたす大きな混乱はなかった。中国政府や五輪関係者の努力を評価したい。
 競技面では世界中を沸かせた場面が数多くあった。北京最大のスターは、やはり競泳男子で7つの世界新記録を更新し、8種目制覇の偉業を達成したフェルプス選手(米国)だろう。
 陸上百、二百メートルで2冠のボルト選手(ジャマイカ)は、長い間米国が君臨してきた陸上短距離界に吹いた新風である。金メダル獲得競争を独走した中国選手団の活躍も五輪史に刻み込まれた。
 ≪よく踏ん張った日本≫
 金メダル9の日本選手団も、よく踏ん張った、とねぎらいたい。なかでも、五輪2大会連続で男子百メートル、二百メートルの平泳ぎを制した北島康介選手の奮闘が光る。
 ソフトボールでは過去3大会連続覇者の米国を抑えて日本チームが金をもぎとった。エース上野由岐子選手の3試合連投413球は特筆に値する。北京が五輪公式競技としてのソフトボールの最後の大会となったが、復活への希望をつなぐ熱投だった。
 多くの感動的な場面を生んだ北京五輪は、競技運営の面では「成功」といえよう。
 しかし、「人間の尊厳保持に重きをおく、平和な社会を推進する」との理想をうたうオリンピック憲章に照らしてみるとき、北京五輪に「合格」の評価を与えるには、いくつかの留保をつけざるをえない。
 まず、五輪開催国が最優先すべきである報道・言論の自由と人権が完全に保障されていたかどうか。これは疑わしい。
 開会式の前後に新疆ウイグル自治区で少数民族の過激派による武装警察などへの襲撃やテロがあり、多数が死傷した。現地に飛び事件の取材にあたった産経新聞記者を含む複数の邦人記者が短時間とはいえ拘束された事実は、民主主義社会における常識からすれば、異常だ。これについて、中国当局から納得できる回答はまだ得られていない。
 競技施設が集中する北京の五輪公園周辺では数回にわたり、欧米の人権活動家らが「チベットに自由を」などと書いた横断幕を広げ、そのたびに警官に排除された。中国当局が五輪取材の報道陣に対して公言したインターネット規制の全面解除は、五輪終盤になっても実現していない。
 言論の自由や人権については、北京五輪組織委員会の定例会見で毎回のように欧米メディアが質問したが、組織委側からは「デモは問題解決のためであって、デモのためのデモであってはならない」など紋切り型の回答が目立った。これでは、国際協調を打ち出した北京五輪のスローガン「一つの世界 一つの夢」が泣く。
 ≪効果の定着を期待する≫
 胡錦濤政権は北京五輪の開催を「中華民族百年の夢」とした。豪華絢爛(けんらん)たる開会式に続きメダル獲得競争を制することで一党独裁による改革・開放路線の正しさを内外に誇示しようとした。
 しかし、国際社会の評価を異常に気にするあまり、五輪施設周辺だけで軍や武装警察を含めて11万人もの治安要員を駆り出した。過剰な警備網は異様である。
 多くの外国人には奇異に見えたことはまだある。開会式の舞台に登場した少女が歌った革命歌曲は吹き替えだった。「中国の56民族を代表して」と紹介され、色とりどりの民族衣装姿で行進した子供たちもじつは大半が漢民族だった。五輪組織委はすべてが「最高のパフォーマンスを提供するため」の演出だという。
 五輪にあたり中国当局は対外イメージの悪い中国人のマナー改善教育に躍起だった。テレビの人気番組が「正しい応援のしかた」という特番を組んだほどだ。
 実際には日本の相手チームばかりを大声で応援する試合もあり、当局の思惑通りにはならなかったが、市内の地下鉄では年配の外国人に積極的に席を譲る学生の姿も見られた。五輪効果の定着に期待したい。
 政治、経済の両面で今後も影響力を強めるであろう中国(人)がどう変わっていくか。「百年の夢」の後を生きる五輪後世代が、中国の命運を握っている。


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石田ふたみ