『日々の映像』

2008年07月10日(木)  大分教育汚職 これで「教育」ができるのか

 私がここで感想を述べるまでもない。社説の一部を引用して置きたい。
1、教員に採用されるのも管理職になるのも、金次第ということなのか。大分県で次々に出てくる教育界の腐敗ぶりには、あいた口がふさがらない。
2,公務員に袖の下を渡してものを頼む。警察が動く。次々に関係者が逮捕され、並ぶ顔写真を金の流れの線が結ぶ「汚職相関図」がメディアに掲載される。
 組織的な贈収賄事件でしばしば見る報道だが、登場者が教員や県教育委員会幹部ら教育者たちだからだ。
3、まず合格点に満たない者の点数を水増しし、合格させていたことである。本来なら合格していたはずの受験者には許し難い不正だ。水準に満たない“教員”の最大の被害者は、教わる児童である。
4、関係者は「人事の前後には、モノ、金が動く」と金品授受横行の体質を語る。
5、逮捕されたのは、いずれも教育関係者だ。女性小学校長が長男、長女を採用試験に合格させるため、現金や商品券を県教委参事に贈った。
6、捕らえてみれば先生とは、あまりにも情けない話ではないか。児童へのわいせつ行為など教員の不祥事が後を絶たない中で、これは極め付けだ。


大分教育汚職―教え子に何と説明する
                    2008年7月10日  朝日社説
教員採用汚職 金で買われた「教員」の地位(社説)     
                    2008年7月9日 読売新聞
社説:教員採用汚職 これでどう「道徳」を説くのか
                    毎日新聞 2008年7月8日
主張】教員採用汚職 身内に甘い体質断ち切れ
                    2008.7.8 産経新聞
教員採用汚職 子どもに何と説明するか〔社説〕
                    新潟日報2008年7月9日 


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大分教育汚職―教え子に何と説明する
                    2008年7月10日  朝日社説
 教員に採用されるのも管理職になるのも、金次第ということなのか。大分県で次々に出てくる教育界の腐敗ぶりには、あいた口がふさがらない。
 小学校長らが自分の子を採用するよう県教育委員会の幹部らに頼み、現金や金券を贈る。幹部は採用試験で得点を水増しする。
 さらに驚いたことに、県教委ナンバー2の元教育審議監が10人前後の受験生の名前を部下に示し、「合格ラインに入れろ」と指示していたというのだ。県教委ぐるみで不正工作をしていたと言われても仕方があるまい。
 採用だけではない。管理職への昇任試験で便宜を図ってもらうため、県教委幹部に金券を渡したと言って、教頭らが警察に出頭した。腐敗の広がりは目を覆いたくなる。
 100万円の金券を受け取ったという元教育審議監をはじめ、逮捕者は「先生」と呼ばれる人ばかりである。教え子たちにどう顔向けするのか。
 大分県警は徹底した捜査で不正にかかわった人たちを明らかにし、ウミを出しきってほしい。そうしなければ、子どもたちの信頼を取り戻せない。本来なら合格できた人は納得できないだろうし、逆に実力で合格した人がいつまでも疑惑の目で見られることにもなりかねない。
 教育界にとって深刻なのは、今回の底なしの不正が大分だけの特殊な事情によるとは思えないことだ。
 教員の採用にからみ、1990年に山口県で、2年前には大阪府で汚職事件が摘発されている。金のやりとりまでは確認できないにしても、採用にあたって古手の教員に口利きをしてもらうという話は各地でしばしば聞く。
 その背景には、県教委という教員中心の閉鎖的な組織で、採用から人事まで一切を取り仕切っている現実がある。この仕組みは「教育の独立」に配慮したものだが、やりたい放題の不正を許してきた温床ともいえる。
 今回の事件を受けて、大分県教委は採用試験を県人事委員会との共同実施に改めることを決めた。この際、一般の県職員や県警職員と同じように教員の採用も人事委に任せたらどうか。
 さらに採用や人事を透明にするためには、教員の不正採用疑惑を警告してきたNPO法人「おおいた市民オンブズマン」などの外部の第三者の目を活用することを考えてもいい。
 大分県教委では採用試験の答案は年度末までしか保管されない。08年度採用の分も残っておらず、いまとなっては不正工作を検証するのは難しい。少なくとも数年間は保管すべきだ。
 採用や人事を公正にするのは、優秀な教員を集め、教育の質を高めるために欠かせない。全国の教育委員会は大分の事件をひとごとと思わず、足元を見つめ、改善策を進めてもらいたい。
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教員採用汚職 金で買われた「教員」の地位(社説)     
2008年7月9日 読売新聞
 大分県で教員不信を助長する不正が、次々と明るみに出ている。膿(うみ)を出し切り、早急に信頼回復を図らねばならない。
 小学校教員の採用試験で、小学校長らが自らの子どもを合格させるよう県教育委員会幹部らに頼み、現金や金券をやり取りした贈収賄容疑で逮捕された。
 受け取った幹部の1人は、県教委で教育長に次ぐ立場の元教育審議監で、退任後も市教育長という要職にあった。ほかの逮捕者も、県教委の課長級の参事や小学校の校長、教頭だ。
 保護者から、「ルールを守るよう指導する人間の犯罪を子どもたちにどう説明するのか」と憤りの声が上がるのも、当然だろう。
 地方教育界の組織的な不正は、20年近く前にもあった。教員採用をめぐって、1990年に山口県の教育事務所長が賄賂(わいろ)を受け取っていたことが発覚した。その際、小中学校の校長3人や市教育長らも贈賄罪で略式起訴された。
 また、2年前に大阪府教委で非常勤講師の採用に絡み、6年前には富山県教委で人事異動に絡み、汚職が摘発されている。
 だが、教訓は全く生かされていなかった。今回はより深刻だ。
 まず合格点に満たない者の点数を水増しし、合格させていたことである。本来なら合格していたはずの受験者には許し難い不正だ。水準に満たない“教員”の最大の被害者は、教わる児童である。
 さらに問題なのは、校長や教頭の管理職任用試験でも疑惑が浮上していることだ。
 ほかに、小規模校の校長が県教委の参事に異動が決まった後、現職の教育審議監に「あいさつ」名目で金券を贈っていたことが判明している。金券などを贈ることが常態化していた可能性もある。大分県警は徹底解明してほしい。
 県教委は今回の事件を受け、改善策をまとめた。教員採用試験を県の一般職員の採用に当たる県人事委員会と共同で実施する形にしたが、まだ不十分だ。
 文部科学省が毎年、各都道府県と政令市の教委から受けている報告では、20教委が評価の観点や方法など採用選考基準を公表しているが、大分県は入っていない。悪弊を断ち切る対策が必要だ。
 他の教委も、「他山の石」として自らの足元を点検すべきだ。
 教育界では様々な教員の資質向上策が出されているが、教育者にふさわしい能力と意欲を備えた人材を適正に選ぶことが先決だ。文科省も県教委任せではなく、対策を練らねばなるまい。
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社説:教員採用汚職 これでどう「道徳」を説くのか
                      毎日新聞 2008年7月8日
 公務員に袖の下を渡してものを頼む。警察が動く。次々に関係者が逮捕され、並ぶ顔写真を金の流れの線が結ぶ「汚職相関図」がメディアに掲載される。
 組織的な贈収賄事件でしばしば見る報道だが、今大分県警が捜査を進めている事件の相関図に驚かされるのは、登場者が教員や県教育委員会幹部ら教育者たちだからだ。
 小学校校長らがわが子を採用してもらうために、県教委幹部らと贈収賄サークルを成したのが事件の構図だ。しかし、関係者の証言などでは、これにとどまらない。例えば、逮捕者の一人は少なくとも35人の口利きを受け、成績改ざんをした疑いがある。また別の一人は小規模校から県教委に転勤する際、現職幹部に高額金券を贈っており、関係者は「人事の前後には、モノ、金が動く」と金品授受横行の体質を語る。
 公立学校教員採用試験は都道府県、政令指定都市教委が夏場に2段階選考で実施する。県警の調べでは、不正は合格点に足らない者に加点するやり方だ。採用倍率は全国的に団塊世代の大量退職や少人数学級導入の動きもあってひところより下がり、07年度で平均7・3倍だが、大分県は11・9倍と人気は高い。
 文部科学省は教育振興基本計画の策定で、向こう5年間で2万5000人の教員定数増加を盛り込もうとし、支出抑制を図る財務省に拒まれた。
 確かに授業時間を大幅に増やす新学習指導要領を実施するには教員を増やすことは必要だ。しかし、今回のような実態が露呈しては説得力はそがれる。
 それだけではない。教員採用にはコネや情実が利いているのではないかという疑念、不公平感は多くの地域で語られ、採用不祥事が報じられる度に嘆息が漏れてきた。文科省は「そのような採用実態は聞いていない」としてきたが、ならば、疑念を払うために、捜査機関とは別に、今回の事件の土壌を徹底検証してその内実を開示し、速やかに事件も疑いも生じさせない改革をすべきではないか。
 それには、採点・判定などが二重、三重に他者によってチェックできる仕組みが必要だ。恣意(しい)的な加点、減点の形跡が明確に残り、第三者が検証できれば抑止効果は上がる。しかし、それは情けない手段だ。こと教育界でこうした対策を考えなければならないこと自体が問題なのだ。
 今回の事件はごく一部の不心得者が起こした、では説明できない根の深さと広がりを示唆している。自制の感覚が鈍磨するほど長く続いてきた慣行慣習ではないのか。そんな疑念さえぬぐえない。例外として扱い、これを教訓としないで放置するなら「教育不信」をさらに深めるだけだろう。
 真剣に子供と向き合っている多くの先生たちのためにも、徹底解明が必要だ。
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【主張】教員採用汚職 身内に甘い体質断ち切れ
2008.7.8 産経新聞
 大分県の教員採用をめぐる汚職事件が発覚し、県教育委員会の幹部らが逮捕された。優れた人材を選考すべき採用試験をゆがめる行為であり、断じて許し難い。
 逮捕されたのは、いずれも教育関係者だ。女性小学校長が長男、長女を採用試験に合格させるため、現金や商品券を県教委参事に贈った。
 当初は仲介役として逮捕された小学校教頭夫婦もまた、長女を合格させるため、同様に商品券をわいろにしていた。
 教育者が金品を使ってわが子を教員にしようとは、にわかには信じ難い話だ。
 事件は、県教委ナンバー2の教育審議監だった同県由布市教育長が逮捕される事態になっている。この元教育審議監は、在職当時、採用の実務を担当する部下の参事に不正を指示していた。
 逮捕容疑以外にも複数の受験者から依頼を受けていたとみられ、点数を水増しするなど改竄(かいざん)した疑いもでている。
 一部の県教委幹部が合否を左右できるような選考方法自体が問題だ。県教委には再発防止へ徹底した調査が求められる。
 教員採用は、東京、大阪など大都市圏では、大量採用した団塊の世代が退職期を迎え、広き門になってはいる。
 しかし、民間就職口が限られる地方では教員の人気は高く、社会的地位もある。平成19年度の小学校の教員採用試験の倍率をみると、全国平均4・6倍に対し、大分県は約12倍だ。
 教員採用試験は筆記試験のほか、面接や実技により合否判定される。だが配点や評価基準を公表している教委は少ない。このため大分県の事件に限らず、教員採用をめぐっては「コネが必要」など縁故採用のうわさが絶えない。身内に甘く、閉鎖的な教育界の体質への不信感は根深い。
 校長、教頭など管理職試験の問題が教育委員会の身内から漏れる事件も起きている。
 公教育改革では教員の資質向上が欠かせない。採用試験では模擬授業など実技やボランティア経験を選考に加えるなど工夫もみられる。教育委員会によっては採用試験の面接官に外部から民間人を加えるなどの動きもある。
 今回の事件は、こうした改革にも逆行しており、教育への信頼を損なうものだ。教育界全体として反省を促したい。
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教員採用汚職 子どもに何と説明するか〔社説〕
                    新潟日報2008年7月9日 
 捕らえてみれば先生とは、あまりにも情けない話ではないか。児童へのわいせつ行為など教員の不祥事が後を絶たない中で、これは極め付けだ。
 大分県の教員採用をめぐる汚職事件のことである。教育界に身を置く両親が、採用試験で娘の「合格」を二百万円で買っていた。教育の世界で、あるまじきことだ。
 かかわっていたのは当時、県教委ナンバー2だった教育審議監や採用の実務を担当していた義務教育課参事らだ。二〇〇七、〇八年度の採用試験で三十人以上を合格させるよう頼み込まれていたという。
 依頼者の大半は教育関係者で、子弟を教職に就けさせるために行ったとされる。両親は大分県警の調べに「審議監に謝礼を払えば、便宜を図ってもらえると言われた」と供述している。
 大分県では教育界ぐるみの不正行為が、堂々と行われていたということだ。子どもたちに、この事実をどう説明するのか。不合格となった受験生に何と釈明するのか。教育への信頼を失墜させた責任はあまりにも重い。
 教員の世界は学閥などでまとまる身内社会の傾向が強い。人事などには閥が大きな力を持つといわれる。採用や昇格、異動に身内の慣例が働くケースも多いとされる。
 そんな狭い社会が「社会常識」を鈍化させ、不正の温床になっていたのではないか。百万円単位でカネが動いた大分県はその典型といえよう。
 文部科学省は今回の事件を個人の非行や、大分県だけの問題として片付けてはならない。自治体で行っている採用試験の在り方を調査し、その実態を把握すべきだ。
 教育振興基本計画の策定に当たって、文科省は教職員数を五年間で二万五千人増やすことを主張していた。財務省の反発で数値は盛り込まれなかったが、このような不正がまかり通っているようでは、国民の理解は得られず、優秀な人材の確保も難しい。
 このままでは教育界全体の信頼が地に落ちてしまう。子ども、保護者、教員の信頼関係がなくては教育は成り立たない。子どもの学力低下を憂える前に、教育界の再生が先だ。
 「昇格に際して県教委の担当者に金品を贈っていた」など、大分県では採用試験以外にも次々と不正が明らかになっている。膿(うみ)は出し尽くさなければならない。徹底捜査を求めたい。
 大分県に限らず教員の採用や昇格などでは縁故や謝礼の噂(うわさ)を聞く。不正はなかったか、儀礼の範囲を越えていないのか。本県でも精査が必要だろう。
 教壇がカネとコネにまみれていた。教師の地位は下がる一方だ。立て直しは急を要する。

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石田ふたみ