『日々の映像』

2008年07月09日(水)  洞爺湖サミットが終わる

 テレビに映る各国首脳の振りまく笑顔を見ているとやや不愉快になった。
温暖化、食料・石油の歴史上かってない高騰・・・世界の大衆にこれだけの
打撃を与えて出てくる言葉は「懸念」程度ではどうにもならない。今日は時間がないので、5大新聞の社説を掲げるに留めたい。


G8温暖化―さあ、中国はどう応える
     2008年7月9日 朝日社説
G8環境宣言 世界で目標を共有できるか
                   2008年7月9日読売社説
温暖化対策 半減目標の具体化が問題
                    2008.7.9 産経社説
洞爺湖サミット 先進国の削減責任が不明確だ
                    2008年7月9日 毎日社説
G8合意、50年50%排出削減の微妙さ(7/9)
                    2008年7月9日 日経社説

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G8温暖化―さあ、中国はどう応える
       2008年7月9日 朝日社説
 脱温暖化へ、洞爺湖サミットで主要8カ国(G8)が一歩踏み出した。
 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの世界全体の排出量について、50年までに半減するという考え方を気候変動枠組み条約の全締約国と共有し、この目標を締約国会議で採択することを求める。そんな内容の文書をまとめたのだ。
 この問題では、去年の独ハイリゲンダム・サミットで「50年までに半減」という目標を「真剣に検討する」と申し合わせた。今回のサミットでは、それをどこまで先に進められるかが問われていた。
 G8が「50年までに半減」を正式の国際目標にしようと率先して提言できなかったのは残念だ。
 だが、この文書がいうように、脱温暖化には世界全体での対応が欠かせない。国連の下にある締約国会議は、先進国に排出削減の義務を課す京都議定書の実施期間が12年に終わった後の枠組みづくりを担っている。その舞台に向けて、この目標を採択するよう求めたことは大きな意味がある。
 「50年までに半減」を目標とすることには、米国がなかなか「うん」と言わなかった。そうしたなかで、この旗を降ろすことなく、それを国連の枠組みに託したのである。まもなく政権の座を去るブッシュ大統領の米国を日本や欧州が押し切り、国連主導の流れを確かなものにしたといえる。
 この発信に、きょうサミット3日目の主要排出国会議で中国やインドなどの途上国が理解を示せば、G8が投げた球が生きてくる。
 「50年までに半減」は、世界の科学者たちでつくる「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告をもとにしている。途上国は削減義務を負うことに反発しているが、「50年までに半減」という国際目標そのものには反対しにくいだろう。
 今回の文書でもう一つ意義深いのは、G8の国々が「野心的な中期の国別総量目標」を定める、と明言したことだ。
 米国は、排出量の削減目標を国ごとに決めることに消極的だった。その米国を引き込んだのである。
 京都議定書後の枠組みは、インドネシアのバリで開かれた去年暮れの締約国会議で09年までに仕上げることを決めている。この話し合いでは、米国と並ぶ排出大国となった中国などにどう応分の責任を果たしてもらうかが最大の懸案になっている。
 G8は今回、「先進国は20年までにどれだけ減らすか」などの中期目標を示せなかった。代わりに国別目標を担うというカードを切った。
 温暖化対策という待ったなしの課題。きょうの最終日、こんどは急成長中の途上国が応える番である。
G8経済―3F危機との長き闘いへ
 Fuel(燃料)とFood(食糧)の国際価格が、かつてない勢いで高騰している。それを、米国のサブプライム問題に端を発したFinance(金融)の世界的な混乱が増幅している。
 北海道洞爺湖に集まった主要8カ国(G8)の首脳は、世界経済を激しく揺さぶるこの「3F」について「深刻な試練だ」と強い懸念を示した。
 とはいえ、「3F危機」をすぐ沈静化させられる即効性のある対策を、合意文書で示せたわけではない。
 短期的な対策として、原油では産油国の増産や製油所への投資強化、産油国と消費国との対話、原油市場の需給情報の整備がうたわれた。食糧では、最貧国への支援拡大や緊急時に備えた備蓄制度、輸出規制の撤廃などをあげた。合意文書に盛り込まれた対策に目新しさは乏しい。
 また、原油と穀物の高騰をあおっていると批判される投機マネーの抑制策や、あるいは、その大もとにある米国の金融混乱とドル安にも、明確なメッセージは示されなかった。
 インパクトには欠ける内容だが、それはG8の利害が衝突したからでは必ずしもない。残念ながらいまのところ即効薬は見いだしがたい、という現実があるからだ。
 3F問題の根底には、世界経済の大きな構造変化がある。これに対応するには、世界各国が中長期の対策を地道に積み重ねていくしかない。省エネを進め、代替エネ・新エネを開発し、途上国を含めて食糧を増産していくといった長期的な対策である。
 その点では、このサミットが問題解決に向けてスタートする決意を示したと評価できるのではないか。
 ブラジル、ロシア、インド、中国が頭文字から「BRICs」と呼ばれ、急速な経済成長が注目され始めたのは5年前だった。その新興国経済がこれほどのスピードで離陸し、世界経済の枠組みを著しく変えると予想した人は少なかっただろう。それが原油と食糧の需給見通しを大きく変えた。
 3Fは、今回サミットのテーマである地球温暖化とも深く結びついている。G8各国は利害対立を抱えながらも、共通の問題として対応していかざるをえなくなっている。
 たとえば、エネルギーと食糧の大輸出国であるロシアは、初参加のメドベージェフ大統領が、小麦などにかけていた輸出関税をサミット直前に撤廃した。これで食糧特別声明に輸出規制の撤廃を盛ることができた。バイオ燃料を推進する米国も、食糧との競合批判を受けて「食糧安全保障との両立」に合意した。サミットの重しがこれを引き出したともいえるだろう。
 3Fの克服は、新興国も含めて長き闘いになる。G8には、その険しい道のりをリードしていく使命がある。
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G8環境宣言 世界で目標を共有できるか
                   2008年7月9日01時58分 読売社説)
 温室効果ガスの排出量を2050年までに半減させる。この目標を世界全体で共有する。主要8か国(G8)として、ぎりぎりの合意にこぎ着けたということだろう。
 北海道洞爺湖サミットで、G8首脳は、最大の焦点となっていた地球温暖化対策に関する合意文書を発表した。
 50年までに半減という長期目標を達成するため、G8だけでなく、世界全体で排出削減に取り組んでいく必要があるとの認識で、G8首脳は一致した。
 世界全体の排出量は現在、先進国と新興国・途上国でほぼ半々である。先進国だけが努力しても、世界全体で半減することはできない。宣言は、G8首脳が新興国・途上国に応分の削減努力を一致して促したものだ。
 米国を含め、G8諸国が長期目標を国連の会議で採択するよう求めたことは、一定の前進だ。
 10〜20年後の中期目標についても、G8は、国別の排出総量目標を設定することで合意した。総量目標を設定する手法の一つとして、日本が提唱しているセクター別アプローチを「有益な手法」として評価した。
 G8のほか、中国やインドなど新興国も参加する主要排出国会議が9日に開かれる。G8の合意に新興国側がどう対応するかが、焦点となる。
 13年以降のポスト京都議定書は来年末までにまとめなくてはならない。G8の合意は、今後の国連での協議の方向性を示したものといえる。
 総合的にみると、日本は議長国としての役割は果たせたのではないだろうか。
 昨年のサミットでG8は、50年までに半減を「真剣に検討する」ことで合意した。今回はそれ以上の成果が求められていた。
 EU(欧州連合)は、半減よりも高い目標を先進国が掲げるべきだと主張していたが、合意文書は、G8としての目標設定には踏み込まなかった。
 米国は、大量排出国の中国、インドを含めた合意でないと実効性が伴わないとして、G8だけによる長期目標の議論には消極的だった。結果として、米国の主張を色濃く反映したものといえる。
 G8は新興国・途上国に対し、排出削減のための資金・技術援助を続けていくことを確認した。
 新興国・途上国も、先進国の支援を受けつつ、共通の目標に向かって、国情に応じた削減努力をしていくことが必要である。
(2008年7月9日01時58分 読売新聞)
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【主張】温暖化対策 半減目標の具体化が問題
                        2008.7.9 03:04 産経社説
 主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の2日目は、主要8カ国(G8)首脳ら正式なサミットメンバーだけによる会合を開き、世界経済、地球温暖化、食糧危機、開発・アフリカ問題、核不拡散、和平を含む政治問題などについて協議した。
 その結果、多岐にわたる地球規模の課題に、G8として厳しい現状認識を示すとともに、問題解決へ向けた一定の方向性を打ち出すことはできたようだ。
 その意味では一歩前進といえるが、あいまいな表現も多く、具体化に問題を残した。今後は対策の具体化に向け、一層の国際協調努力が求められる。
 主要テーマの地球温暖化対策では、「2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも半減させる」という長期目標について、「気候変動枠組み条約の全締約国と共有し、採択することを求める」ことで一致した。
 長期目標に慎重だった米国を含め、少なくともG8としては「50年半減」を「世界の目標」として求めることでは合意したわけで、昨年のドイツでのサミットの「真剣に検討する」という表現からは一歩踏みこんだ。G8が「野心的な中期の国別総量目標」を設定することでも合意した。
 しかし、排出削減はG8の合意通り、排出国全体での取り組みが不可欠だ。きょう開くG8を含めた16カ国首脳による「主要排出国会合」(MEM)の結論に注目したい。MEMには排出量ですでに世界一の中国やインドなどの新興国も入っている。
 13年以降の温室効果ガス削減の枠組み(ポスト京都議定書)作りは、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)を主舞台にして、来年末までの合意を目指している。それを後押しするためにも、今回のサミットとMEMの合意が重要な意味を持つ。
 世界経済では、下方リスク、原油・食料価格上昇によるインフレなどに「強い懸念」を表明、世界貿易機関(WTO)交渉の成功の重要性も強調したが、有効な具体策にまでは及ばなかった。
 北朝鮮、イランなどを含む政治課題では、日本人拉致問題の解決や北に人権状況の改善を求めていくことで一致した。
 G8の結論を受け、今後は6カ国協議など分野ごとの交渉で、有効な解決策の具体化に全力を挙げることが求められる。
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社説:洞爺湖サミット 先進国の削減責任が不明確だ
             2008年7月9日  毎日社説
 これはどの程度の前進といえるのか。北海道洞爺湖町で開催中のサミット(主要国首脳会議)で、G8(主要8カ国)が「環境・気候変動」の首脳宣言をまとめ公表した。
 焦点だった温室効果ガス削減の長期目標は、一読しただけでは昨年からの進展の度合いが判別できず、あいまいさの残る内容だ。
 今回、温暖化対策でG8に最低限の合意として求められていたのは、昨年の独ハイリゲンダム・サミットの合意を前進させることだった。つまり、「世界の温室効果ガスの排出量を2050年までに少なくとも半減させる」という長期目標に合意することだ。
 この目標に対し、米国のブッシュ大統領は、中国、インドなど主要経済国を抜きにしたG8だけの合意に否定的で、昨年より合意が後退するのではないかとの懸念もあった。
 首脳宣言は、「50年までに世界の排出量を少なくとも半減させるという目標についてのビジョンを、国連気候変動枠組み条約の締約国と共有し、採択することを求める」という内容だ。その際に「すべての主要経済国の貢献が必要」との見解を示している。
 「50年に半減」という数値を残し、かつ、米国が合意に加わったという点では、最悪の事態は免れた。
 しかし、文書の上でG8自身が「50年に半減」に合意したとは書かれていない。先進国自らが、どこまで自分たちの責任を果たそうとしているかも具体的に表明されていない。むしろ、主要経済国全体の参加が前提となっている。
 途上国の参加を促すためにも、先進国には世界全体の目標を超える削減が求められている。それを思うと、長期目標の合意に、京都議定書以降(ポスト京都)の削減を後押しするだけのインパクトがあるかどうか、首をかしげざるをえない。
 中期目標については、G8が野心的な国別総量目標を設定することが合意された。米国が設定に否定的だったことを考えると、この部分は前進である。しかし、ポスト京都の枠組みの中で法的拘束力を持たせた目標とするのかどうかは明確にされていない。中期目標の具体的数値も示されず、ここでも先進国の覚悟はみえにくい。
 ただ、G8が指摘するように、地球温暖化を食い止めるには、先進国だけの努力では不十分であることは事実だ。途上国を含め、すべての主要経済国が排出削減に取り組むことが必要であることは論をまたない。
 9日の主要経済国会合(MEM)では、長期目標や中期目標などについて、G8の合意をさらに一歩進める必要がある。日本には、先進国としての責任ある目標を示し、議論をリードすることが求められる。
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 G8合意、50年50%排出削減の微妙さ(7/9)
                      2008年7月9日  日経社説
 2050年までに温暖化ガスの排出を、世界全体で少なくとも半減させる。昨年の独ハイリゲンダム・サミットでは真剣な検討にとどまったこの長期目標を、今回の洞爺湖サミットで主要8カ国(G8)首脳は、世界共通の展望として、国連気候変動枠組み条約の数値目標として採択するよう求めた。

 議論をリードした議長の福田康夫首相は、「低炭素社会をめざす地球規模の国際共同行動の一歩」と、洞爺湖での前進を強調した。ただし、この長期目標はG8の合意ではなく、G8が世界に求める課題という文脈で書かれている。排出が急増している中国やインドなどに削減の枠組みへの参加を求める米国のブッシュ政権に配慮したものといえる。

 長期目標の設定に難色を示していた米国を巻き込んで、文書化にこぎ着けただけでも上出来というのが、首相の言い分だろう。しかし、40年も先の、法的拘束力のない長期目標の再確認を、前進と呼べるほど、温暖化を巡る状況は甘くない。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が世界の政策決定者に求めている科学的な要求水準は、2020年までに先進国の25―40%の排出削減や、今後10年から15年以内に、世界の排出量を減少に転じる早期のピークアウトである。

 今回のG8会合でも、温暖化対策の基本はIPCCの科学的予測にあると確認している。それなのに、20年をめどにした中期目標については、「野心的な国別総量目標」と、抽象的にしか示されていない。

 サミット最終日のきょう、中印など新興国も参加する主要経済国会議が開かれる。先進国に意欲的な中期目標の設定を求める新興国が、具体性のないG8の結論にどう反応するか。温暖化をめぐる国際交渉では、ここが最大の焦点となる。

 日本が提案していた目標設定のために分野ごとの削減可能量を積み上げる「積み上げ型セクターアプローチ」という言葉は、今回の宣言にはない。代わって、目標を達成する手段としてのセクターアプローチは有効と表現されている。削減目標はトップダウンで決め、達成はボトムアップでという原則に戻ったわけだ。

 20年までに20%ないし30%削減という意欲的な中期目標を掲げるEUが今回、米国に譲歩したのは、来年12月決着に向けて議論が本格化している国連の温暖化交渉の勢いをそがないためといわれる。中継ぎとしてのサミットのあいまいな役割を、議長を務める福田首相は見事に演じ切ったのかもしれない。


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石田ふたみ