『日々の映像』

2008年06月21日(土)  肥料も1.5〜2倍に値上げへ

 私がコミュニテイに『国家破産サバイバル研究会』を立ち上げたら「やや大げさだ」という指摘があった。しかし、現在の国の借金と石油・食料の高騰を踏まえると決して大げさなテーマではないのである。

全国農業協同組合連合会(JA全農)が、主要な肥料の販売価格を7月から現行の1.5〜2倍程度に値上げする方向で最終調整していることがわかったという。原料のリンや窒素などの価格高騰がその理由であるが、価額が2倍になったとしても100%輸入に依存している肥料の確保が出来るかどうかという状態に追い込まれている。

 最大の問題は化学肥料の原料であるリン鉱石の世界最大規模の輸出国である中国が実質的な禁輸措置に踏み切ったのだ。 今年4月、中国は化学肥料の輸出関税を100%と大幅に引き上げ、翌5月にはリン鉱石の関税も100%に引き上げた。13億人という世界最大の人口を養うべく自国の農業向けにリン鉱石を活用するように方針を変更したためで、実質的には禁輸措置に近いのだ。
(2008年6月11日ダイヤモンド・オンラインから)
 加えて中国に並ぶ世界最大のリン鉱石の生産国である米国はすでに輸出を禁止している。ロシアなどでも産出されるが、国際的に品薄状態が続いており、すでにリン鉱石、窒素、カリウムは、ここ数年で2〜5倍も価格が上昇している。今後、さらに入手困難になれば、中国や米国以外の国も自国の農業のために禁輸措置に動く可能性もある。そうなれば、日本の農業は窮地に立たされるのである。
(2008年6月11日ダイヤモンド・オンラインから)
やや古いデータであるが、農産物の肥料自給率を調べて見ると、肥料の流通・需要と供給は以下である。
         生産量   輸入量  内需量   輸入比率
窒素質肥料    495トン  191    487  
リン酸質肥料   216     347    583      60%
カリ質肥料    15    310     382     97%
合計       726     848    1452  
補足するまでもないが、リン酸質肥料60%、カリ質肥料に至っては97%輸入に依存してきたのである。肥料の3大要素といえばリン、窒素、カリウム。この3つがなければ日本の農業は成立しない。にもかかわらず、日本はリン鉱石を戦略物資(備蓄をしなかった)とせず、全量を通常の輸入に頼っており、その多くを中国に依存してきたのである。その中国が実質的な輸出禁止ではどうにもならない。日本に「平和ボケ」という言葉があるが、「国産の野菜が作れなくなる」とうリスクを抱えているのである。

肥料1.5〜2倍に値上げへ 全農が最終調整
2008年6月19日3時4分朝日
肥料の自給率
http://blog.new-agriculture.net/blog/2007/02/000193.html
店頭から国産野菜が消える? 米・中が肥料の輸出を実質禁止
2008年6月11日ダイヤモンド・オンライン
米国・肥料の高騰が作付に影響する(ミシシッピ州立大学)
http://www.tmr.or.jp/headline/1199979515.html
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肥料1.5〜2倍に値上げへ 全農が最終調整
2008年6月19日3時4分朝日
 化学肥料の約6割のシェアを持つ全国農業協同組合連合会(JA全農)が、主要な肥料の販売価格を7月から現行の1.5〜2倍程度に値上げする方向で最終調整していることがわかった。原料のリンや窒素などの価格高騰が理由。今後、農産物の価格にも影響する可能性がある。
 全農は原則的に毎年7月に肥料の価格を改定している。値上げは今回で5年連続。73年の第1次石油危機時に品目によって30〜40%値上げしたが、今回はそれを上回る過去最大の上げ幅になる。農林水産省によると、生産費に占める肥料の割合は約1割で、値上げは農家にとって大きな負担となる。
 全農は近く値上げ幅を発表する。ただ毎回、肥料の価格そのものは公表していない。農水省の資料などによると、様々な肥料を混ぜ合わせた「高度化成」という主要な複合肥料の場合、価格は20キロあたり2100円程度(06年)。倍になると4千円を超える。
 中国やインドなど新興国の食糧需要の急増に合わせて、世界の肥料の需要も増加。肥料の3大要素であるリン、カリウム、窒素の国際価格も急騰している。日本は原料のほぼ全量を輸入に頼っているが、リン鉱石の有力な生産国である中国は、国内分を確保するため輸出税を課すなどして輸出を規制している。
 肥料価格の高騰は、ローマで今月開かれた「食糧サミット」でも、食糧問題に深刻な影響を与えていると指摘された。(吉村治彦、小山田研慈)
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肥料の自給率
http://blog.new-agriculture.net/blog/2007/02/000193.html

食料自給率には農産物の肥料自給率も考慮に入れた方が良さそうです。
農水省のカロリーベースの食料自給率の算出方法では、畜産物には飼料自給率を乗じて国内生産量を算出しています。しかし農産物では、畜産物の飼料に相当する肥料を考慮しないで国内生産量を算出しています。

そこで農産物の肥料自給率を調べて見ると、肥料の流通・需要情報によると平成12年度では下記のような数量になります。
         生産量 輸入量 内需量 輸出量 (単位千トン)
窒素質肥料   495  191  487  205
リン酸質肥料  216  347  583    2
カリ質肥料    15  310  382    2
合計       726  848 1452   209

仮に輸出をしないとして肥料自給率を計算すると
          自給率
窒素質肥料   125%
リン酸質肥料   37%
カリ質肥料     4%
合計        64%

つまり国内産とされている農産物の65%しか生産できない事になります。
カリ質肥料で見ればたったの4%になってしまいます。
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店頭から国産野菜が消える? 米・中が肥料の輸出を実質禁止
2008年6月11日ダイヤモンド・オンライン

 国産の野菜がスーパーの店頭から消える可能性が出てきた。

 化学肥料の原料であるリン鉱石の世界最大規模の輸出国である中国が実質的な禁輸措置に踏み切ったのだ。

 今年4月、中国は化学肥料の輸出関税を100%と大幅に引き上げ、翌5月にはリン鉱石の関税も100%に引き上げた。

 13億人という世界最大の人口を養うべく自国の農業向けにリン鉱石を活用するように方針を変更したためで、実質的には禁輸措置に近い。

 肥料の3大要素といえばリン、窒素、カリウム。この3つがなければ日本の農業は成立しない。にもかかわらず、日本はリン鉱石の全量を輸入に頼っており、その多くを中国に依存。もともと、危うい立場にあった。

 国際的な資源獲得競争のなかで、日本では原油や食料価格の高騰ばかりに目が向いているが、国際的には肥料も同じように重要視されている。

「米国地質調査所が戦略的物質として位置づけた8つの資源のうち、6つは金や銅などのメタルだが、残り2つは肥料に必要なリン鉱石とカリウム」と、資源問題に詳しいジャーナリストの谷口正次氏は説明する。

 中国に限らず、中国に並ぶ世界最大のリン鉱石の生産国である米国はすでに輸出を禁止している。ロシアなどでも産出されるが、国際的に品薄状態が続いており、すでにリン鉱石、窒素、カリウムは、ここ数年で2〜5倍も価格が上昇している。

 今後、さらに入手困難になれば、中国や米国以外の国も自国の農業のために禁輸措置に動く可能性もある。そうなれば、日本の農業は窮地に立たされる。

 40%以下と先進国のなかで最悪の食料自給率を少しでも高めようと、農林水産省は、後継者不足の解消、減反政策の見直し、企業への農業の開放などさまざまな政策を打ち出そうとしている。だが、肥料がなければ国内農業生産増大は望むべくもない。

 中国産ギョーザに農薬が混入されていた事件以降、安全性を気にする消費者のあいだでは国産の食品に対する人気が高まっていた。

 しかし、中国からの肥料がなければ、食べるもの自体がなくなるかもしれない。それが日本の現状なのだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)

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米国・肥料の高騰が作付に影響する(ミシシッピ州立大学)
http://www.tmr.or.jp/headline/1199979515.html

ミシシッピ州立大学の報告書によると、世界の窒素・燐・カリウムの栄養分に対する需要が肥料価格を過去の記録的な水準に駆り立てているので、同州の生産者は着実に上がっている生産コストの観点で今年の作物の作付の判断をしようとしているという。

Agriculture Onlineが伝えており、2007年にはコーンの市場価格が向上したので、その作付面積を記録的なものに促進させ、ミシシッピ州のコーン作付面積は2006年に34万エーカーだったのが、2007年に96万エーカーになった。

しかし、コーンは一般的にその他の主要な畝作物よりも多くの肥料の投入量が必要となる。

ミシシッピ州立大学・エクステンション・サービスの穀物の農学者のエリック・ラーソン氏はコーンは作付・管理・収穫のために必要となる肥料や燃料の量が多いので、今年のコーンの作付面積は減る可能性が高いだろうと述べている。

同氏は「肥料代や燃料代が劇的に上がっているときにはミシシッピ州ではその他の作物に比べて、コーンの作付面積は典型的に落ちる」と述べている。

2007年は作付時の価格が高かったのでコーンは魅力的で、現在のコーン価格も同州のここ5年間の平均価格より約1ドル高くなっている。

小麦や大豆はコーンよりも窒素肥料が少なくて済むので今年の作付の選択には魅力的である。

同大学・エクステンションの土壌の専門家のラリー・オールドハム氏はコーンに必要な窒素肥料の量は、土壌や作物管理の要因次第であるが、エーカー当たり 130−250ポンドである。

これと比較して、綿花に必要な窒素肥料の量はエーカー当たり平均で110ポンドで、同氏は「私どものところの窒素肥料価格はポンド当たり55−60セントで、それは歴史的な高値になっている。同州では綿花を生産するよりもコーンを生産するほうがかなり多くの窒素を必要とする」という。

過去には窒素肥料価格はその製造業者で使用されている天然ガス価格と密接に関係していた。

窒素肥料はエネルギー産品の一部なので、エネルギー価格が上がったので窒素肥料も上がった。今日、その価格は世界の劇的な需要増に引っ張られている。

インド・中国・ブラジルが肥料の主要消費国になっており、最近では肥料の需要を増やしているので、すべての生産国の肥料価格を高くしている。

一部の肥料の流通は輸送や供給の問題があるため抑制されるかもしれない。こうした状況があるので、良好な管理を今から始めていく必要がある。

オールドハム氏は肥料コストを維持していく次のようないくつかの助言が可能であるという。


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石田ふたみ