『日々の映像』

2008年05月20日(火)  基礎年金「税方式」のどこに数字のマジックがあるか。

 ここで詳しくは書かないが、消費税を5%として12兆円強の税収が新たに発生したが、その分法人税が減税となって国庫の収入増にはなっていない。政府は国民をごまかさないでハッキリと言うべきである。「国民の皆さんから5%の消費税を頂き、その分を企業の法人税を下げます」

 今回の基礎年季金「税方式」で消費税が9.5%~18%も上げる必要がある?・・・・
どこに数字のごまかしがあるのかと、報道をくまなくチェックすると、企業が負担している基礎年金部分が大幅に削除されるのである。その額は「サラリーマンの保険料の原則半分は企業が負担しているため、税方式に転換すると、事業主負担は2009年度で3兆円、2050年度で10兆円軽減される」と言うものだ。

 国民に新たな負担をかぶせ、企業が3兆円の負担減となる、これでは経団連も力を入れる訳である。

 以下の報道を「えんぴつ」に収録したが、おおよそ体制側に立った解説で、国民の側に立った論説はほとんどない印象である。


基礎年金「税方式」なら、消費税率3.5―12%上げ・国民会議
2008年5月19日 経済新聞
消費税9・5―18%に 年金「税方式」で政府試算
2008/08/5/19中国新聞
消費税率、「10%で収まらず」=社会保障の目的税化で−御手洗経団連会長
2008/05/19-18:51時事通信社
未納、不公平…消えず 年金税方式試算
2008年5月20日 朝日新聞



-----------------------------------------------------
基礎年金「税方式」なら、消費税率3.5―12%上げ・国民会議
2008年5月19日 経済新聞

 政府の社会保障国民会議は19日の雇用・年金分科会で、年金制度改革に伴う財政試算を公表した。2009年度から基礎年金の財源を全額消費税でまかなう「税方式」に移行する場合、同時点で必要な消費税率の引き上げ幅は3.5―12%になるとの見通しを示した。政府が税方式も念頭に置いた長期試算をまとめたのは初めてで、社会保障や税制をめぐる改革論議が加速しそうだ。
 年金制度改革をめぐっては、与野党や経済団体などから税方式の導入を求める提案が相次いでいる。社会保障国民会議の事務局は現行の社会保険方式と比較する材料として、09年度に基礎年金保険料の徴収を完全に廃止し、すべて消費税で負担する「税方式」に切り替えた場合、50年度までに追加で必要となる財源の規模をはじき出した。
 試算では税方式に関する各種の提案について、過去の保険料の納付実績を給付額にどう反映させるかに応じて3つの類型に整理した。(18:23経済新聞)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
消費税9・5―18%に 年金「税方式」で政府試算
'08/5/19中国新聞
 政府は十九日、公的年金制度の基礎年金部分について現行の「社会保険方式」をやめ、財源をすべて税で賄う「全額税方式」に切り替えた場合、必要となる消費税率は二〇〇九年度で9・5%、11%、18%―とする三通りの試算を示した。
 社会保障国民会議に提出した。自民党議員らの税方式化導入の提言を受け、政府として初の将来シミュレーションを行った。国民の負担増が浮かび上がった。
 家計への影響では、基礎年金相当の保険料がなくなる負担減と、消費税引き上げ分の負担増の「差し引き」を推計。現役世代のサラリーマンは、収入にかかわらず負担が増える見通しとなった。企業の保険料負担が軽くなる分が消費税の形で家計に転嫁されるため。年金受給世代は消費税増税分が負担増となる。
 試算は税方式への切り替え時期を〇九年度と設定。まず、基礎年金給付の国庫負担割合を現在の約三分の一から二分の一に引き上げるため消費税1%分が増税となり税率は6%とした。
 これを前提に試算は、給付内容の違いにより必要となる追加財源と消費税率を算出した。(1)保険料の未納者も含め基礎年金満額の六万六千円を一律に給付する場合、〇九年度に必要な追加財源は十四兆円、消費税に換算すると5%(税率計11%)。数十年間そのまま推移するが、五〇年度には7%(同13%)が必要となる。
 (2)過去に保険料未納がある人にはその期間に応じて給付をカットする場合、〇九年度3・5%(同9・5%)、五〇年度6%(同12%)(3)一律支給した上で過去の納付実績に応じて加算する場合、最大12%(三十三兆円分)の引き上げが必要で税率18%―など。
 生活保護との関係では、保険料の未納などにより本来は無年金や低年金の人にも基礎年金を一律給付した場合、支給が不要となる生活保護費は国、地方合わせて三千五百億円どまり。「低年金の解消で保護費が大幅に圧縮できる」とする税方式導入の論拠を退ける結果だった。
 また保険料の納付率の高低による影響は小さいとした。試算は首相官邸のホームページで閲覧できる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
消費税率、「10%で収まらず」=社会保障の目的税化で−御手洗経団連会長
2008/05/19-18:51時事通信社
 日本経団連の御手洗冨士夫会長は19日の記者会見で、消費税を基礎年金や医療、介護などの財源に充てる社会保障目的税化した場合、「例えば、2020年とか25年になれば、10%で収まるとは思っていない」と述べ、将来は税率が10%を大きく上回るとの見通しを示した。
 御手洗会長はこれまで「15年度までに消費税を10%に引き上げるべきだ」との考えを表明してきたが、10%を超える水準に言及したのは初めて。
 経団連は14日、基礎年金を全額税方式とし、財源に消費税を充てるとともに、医療、介護保険制度への公費投入の拡大を盛り込んだ社会保障制度改革の提言を公表した。御手洗会長は社会保障費が毎年1兆円拡大している現状も踏まえ、医療、介護制度も消費税を財源にすれば、「10%ではやがて済まなくなる」と強調した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
未納、不公平…消えず 年金税方式試算
2008年5月20日 朝刊
 高齢化で膨らむ年金財政を保険料で賄うのか、それとも消費税か−。政府は基礎年金の財源を税金ですべて賄う「全額税方式」にした場合、消費税率をどれだけ引き上げる必要があるかを示す試算を初めて公表した。税方式は、現行の保険料方式で起こる未納や無年金問題の解決策として注目を集める一方、巨額の税財源が必要になるなど一長一短。国民生活に大きな影響を与える選択だけに、与野党通じた幅広い議論が不可欠だ。 (上坂修子)
 「全額税方式」は、民主党や自民党の議員連盟「年金制度を抜本的に考える会」(会長、野田毅元自治相)のほか、麻生太郎前自民党幹事長、塩川正十郎元財務相、日本経団連、連合などが提案している。政府はこれらの提案を基に、一定の前提を置いて、将来的に必要な費用を試算した。新たに必要となる費用は、給付の手厚さや移行措置、経済情勢などによって異なるが、試算は現行の給付水準(満額で月六万六千円)を維持するとしている。
 税方式の最大の課題が「移行」だ。現行の基礎年金は財源の約三分の二が保険料になっており、まったく違う制度にするには、何らかの切り替え措置が必要になる。
 試算は異なる移行措置、三パターンについてシミュレーションしている。政府が法律で決めた通り、〇九年度に国庫負担割合を二分の一に引き上げることを前提にしている。これには試算とは別に新たに消費税率1%分が必要になる。
 最も費用がかからないのが、これまで未納・未加入だった期間がある人は、年金をその分減らす方法(ケースA)で、経団連などが提言している。
 新たに必要な費用は〇九年度で九兆円、消費税率は3・5%引き上げなければならない。これが五〇年には6%にまで膨らむため、消費税率は現行の5%と1%を加え12%に。だが、この方式だと新制度に完全に移行するまでに六十五年間かかり、無年金や低年金の問題もすぐには解決しない。
 一方で、最も多く財源が必要になるのが、全員に基礎年金の満額を支給した上で、従来の国庫負担分に加えて、保険料を納めてきた実績に応じて上乗せするやり方(ケースB)。〇九年度で新たに必要な財源は三十三兆円と巨額に上り、消費税率は12%引き上げなければならない。
 また、最も簡単な方法が、これまで保険料をきちんと払ってこなかった未納者も含め、全員に基礎年金の満額を支給する案(ケースC)。〇九年度で十四兆円、消費税率は5%アップになる。この方法の利点は、無年金や低年金の高齢者がただちにいなくなること。だが、保険料を四十年間納めた人も、ずっと未納だった人も年金受給額は月六万六千円ということになり、まじめに保険料を払ってきた人が不公平感を抱くのは明らかだ。
 どの方法にも「未納問題が解決しない」「巨額の費用がかかる」「大きな不公平がある」などの問題が発生する。厚生労働省関係者は「どうやったって税方式は合理的には成り立たない」と結論づける。
 ちなみにサラリーマンの保険料の原則半分は企業が負担しているため、税方式に転換すると、事業主負担は〇九年度で三兆円、五〇年度で十兆円軽減される。経団連などはこの分を社員に還元するとしているが、人件費削減の流れの中で、その保証はない。


 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ