『日々の映像』

2008年03月18日(火)  宙に浮く年金は2025万件も

 年金記録の照合作業なのに、かえって不信が増幅する結果となるようだ。社会保険庁は5000万件の宙に浮いた年金記録の照合作業を進めてきたが、特定困難な記録が全体の4割、2025万件になることを明らかにした。
 ずさんな記録管理を続けてきたツケがこのありさまだ。迷子記録が予想をはるかに超える数字に驚く。今回の年金記録で官僚組織に対する不信は実に深刻だ。これだけの問題が起こっているのに、責任者が誰も法的な処分を受けないのだから「お役人さま天国」と言わねばならない。



社説:宙に浮く年金 不信解消の道がまた遠のく
  毎日新聞 2008年3月15日
「訂正必要なし」と返答の8割、実は「必要あり」 ねんきん特別便
2008.3.3 産経新聞


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社説:宙に浮く年金 不信解消の道がまた遠のく
  毎日新聞 2008年3月15日 

どこまで続くぬかるみぞ、といった暗たんたる思いになる。年金不信をぬぐうために行った持ち主のわからない記録の照合作業なのに、かえって不信が増幅する結果となった。不信は年金にとどまらず、その場しのぎで言い逃れする政治にも向かう。
 社会保険庁は5000万件の宙に浮いた年金記録の照合作業を進めてきたが、特定困難な記録が全体の4割、2025万件になることを明らかにした。
 ずさんな記録管理を続けてきたツケがこのありさまだ。迷子記録全部の持ち主が判明できるとは考えなかったが、予想をはるかに超える未統合に改めて驚く。
 昨年12月公表された持ち主不明の記録は1975万件だった。社保庁は、生年月日がずれても同一人と判定できるソフトを開発し、2次照合を進めた。3カ月間で新たに260万件の持ち主がわかったという。
 その一方で、12月時点で氏名の欠落していた記録も別に470万件あった。当初社保庁は「氏名が復元できたら持ち主にたどり着ける」と軽く考えていたが、実際はほとんど記録の氏名が判明したのに持ち主までたどり着けなかった。その結果、差し引き50万件の不明記録増だ。
 08年3月照合完了という政府公約について、舛添要一厚生労働相は「約束を守った」と胸を張る。釈然としない。昨年夏の参院選で、当時の安倍晋三首相は「最後の一人まで記録をチェック、年金を支払う。そのため政府は3月までに突き合わせを行う」と約束した。
 年金記録問題が3月にメドが立つと期待を寄せた人は多い。しかし、政府は「一通りの作業を約束通り終えた」という認識のようで、ギャップは大きい。
 照合作業とは、あくまでも手段に過ぎない。年金記録問題の目的は、まじめに保険料を払っていたのに年金を受け取れない人を救済することにある。「やってみたが、やはりダメでした」としか感じられない態度では、制度への信頼など得られるはずがない。
 照合作業は長期化が避けられない様相だ。政府は今後(1)住民基本台帳ネットワークシステムとの照合(2)手書きの記録台帳との突き合わせ−−などで持ち主探しを進める。だが展望が開けているわけでない。暗礁に乗り上げたら、インターネットなどで不明年金番号を公示し「あなたのではないですか」と呼びかけることも考えている。
 エンドレスの作業に国民があきらめてくれるのを待っているのなら、もってのほかだ。政府が行うべきはまずメリハリをつけた行程表を示すことだ。混乱の極みを招いた責任者の処分もうやむやのままである。国民は公的年金制度が果たして持続可能なものかどうかに疑いを抱いている。国民が制度を相手にしなくなったら、年金は元も子もなくなる。

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「訂正必要なし」と返答の8割、実は「必要あり」 ねんきん特別便
2008.3.3 産経新聞

 年金記録に漏れがないかの確認を促す「ねんきん特別便」で、記録訂正の可能性が高いにもかかわらず、「訂正の必要がない」と返答してきた人について、改めて電話や個別訪問で確認したところ、実際には、約8割に記録訂正の必要性があったことが3日、社会保険庁の調査で明らかになった。社保庁は2月から特別便を見やすく改良したが、依然3割が「訂正の必要がない」と返答しており、改訂版特別便の効果が限定的なことも分かった。
 調査結果は、3日の自民党の議員連盟「年金記録問題に関する検討会」に示された。
 社保庁は昨年12月から、基礎年金番号に統合されず宙に浮いた記録5000万件と社保庁のオンライン記録を照合した結果、「氏名・性別・生年月日」の全部もしくは一部が一致した人に特別便を送付したが、1月時点で、回答者の約9割もが「訂正がない」と回答していたことが判明。社保庁は急遽(きゆうきよ)、1月25日から電話や個別訪問による再確認である「入念照会」を行ってきた。
 入念照会は、基礎年金番号の記録と、宙に浮いた記録に期間重複がなく、他に結びつく可能性のないケースに限定して行われ、2月15日までに照会を終えた1万7103人のうち、78・5%にあたる1万3426人が実際には記録訂正が必要たった。

「訂正の必要がない」と回答した理由についても調べたところ、「間違いがないと思っていた」44・0%、「すでに記録確認を行っている」12・1%、「他に年金制度に加入した記憶がない」10・5%などだった。
 特別便を受け取った人のうち、「訂正の必要がない」と回答している人は2月19日現在約53万人にのぼり、社保庁はこのうち半数近くが実際には記録訂正に結びつくとみている。
 一方、社保庁は「特別便が分かりづらい」との批判を受けて2月6日から、加入履歴の詳しい見方を説明した見本を同封した改訂版特別便を送付しているが、この回答状況についてのサンプル調査結果も公表した。
 サンプル調査は、改訂版特別便を受け取った1000人を対象に行われた。回答があった436人のうち、「訂正の必要がない」と返答した人は137人で31・4%を占めた。
 改訂前の同内容のサンプル調査では「訂正の必要がない」は45・0%で15ポイントほど減ったが、依然3人に1人が、記録訂正の可能性が高いにもかかわらず「必要ない」と回答していることが明らかになった。

特別便の改良効果が限定的だった形だ。社保庁は今後、これらの人についても入念照会を行っていく予定だが、特別便をさらに分かりやすくするよう再改良を求める声も強まりそうだ。
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 ■ねんきん特別便 
 宙に浮いた年金記録5000万件の照合作業の結果、記録漏れの可能性が高い人に対して、昨年12月から発送を始めた。ところが、回答者の約9割が「訂正の必要はない」と返答。“なりすまし”防止で特別便に記録漏れ部分のヒントを明示しなかったため、記録漏れに気付かなかった人が多かったとみられ、今年1月下旬から相談窓口で過去の勤務先名などのヒントを積極的に教える相談対応に変更した。2月6日発送分の特別便からは加入履歴の詳しい見方を説明する見本を同封した。1月末までに発送済みの108万人に対しても、3月下旬に見本を追加した特別便を再送付する。

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石田ふたみ