『日々の映像』

2008年03月16日(日)  中国 チベットの暴動

 中国は1党独裁政治である以上、反政府組織が五輪を前後して現政権にダメージを与える行動に出るだろうと記述していた。今回のチベット暴動は、偶発的か、計画的に起こったのかは分からないが現政権のイメージダウンになることは確かである。チベット自治区の歴史を知る機会がなかったが、ここは、中国の漢民族の文化的な影響がほとんどなかった地域のように思う。

チベット自治区統計局によると、中国で最も人口の少ない省クラス行政区だ。総面積は120万平方キロ余りで中国全土の8分の1を占めるが、人口はわずか270万人ほどである。人口密度は1平方キロあたり3人未満。蔵(チベット)族を主体に、回族、モンパ族、ローバ族、ナシ族、ヌー族、トゥロン族など十数の少数民族が代々居住するほか、民族として認定されていないトン、シェルパもいる。モンパ族、ローバ族、ナシ族の民族郷も設置されているという。いつ中国政府の支配下になったのか、詳しい方がおりましたら教えてください。ともかく、広大な面積で僅か270万人のチベットの人たちを力で抑え込む愚行はやめて欲しいものだ。

チベット自治区の司法当局は15日、区都ラサの14日の暴動に加わった僧侶らに対し、自首するように呼びかける通告を出している。報道では「住民の密告も奨励」とあるとおり、前時代的なあらゆる手段を講じて事態収拾を図ろうとしている。密告を奨励する事態収拾のやり方は、さらに国際的な批判を受けるだろう。
中国チベット自治区の声明は
1、18日午前零時までに自首すれば減刑する
2、他の犯罪者の検挙に協力すれば刑の免除もあり得る。
3、期限までに自首しない者や犯罪者をかくまった者には厳罰で臨む
と警告し、住民には積極的に犯罪者を告発するように呼びかけている。


チベット:暴動に加わった僧侶らに自首呼びかけ 司法当局
http://mainichi.jp/select/today/news/20080316k0000m030092000c.html
チベット:ラサは戒厳令状態 寺院に遺体 連行し銃殺も http://mainichi.jp/select/today/news/20080315k0000e030061000c.html
チベット:亡命者の取り締まり強化へ 中国寄りのインド http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20080315k0000e030062000c.html
チベット:暴動で「死者80人」情報も 滞在日本人ら保護 http://mainichi.jp/select/today/news/20080315k0000e030046000c.html
チベット:「人々の怒りに、対話で応じよ」ダライ・ラマ http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20080315k0000e030018000c.html
中国:五輪控え政権にダメージ チベット暴動
http://mainichi.jp/select/world/news/20080315k0000m030148000c.html

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チベット:暴動に加わった僧侶らに自首呼びかけ 司法当局
 毎日新聞 2008年3月15日
【北京・大谷麻由美、ニューデリー栗田慎一】中国チベット自治区の司法当局は15日、区都ラサの14日の暴動に加わった僧侶らに対し、自首するように呼びかける通告を出した。住民の密告も奨励しており、あらゆる手段を講じて事態収拾を図る姿勢を見せている。一方、インド北部を拠点とするチベット亡命政府は15日、武力鎮圧で約100人が死亡したとの未確認情報があると指摘し、国連の即時介入と現地調査を求める声明を発表した。
 通告は暴動について「計画的な犯罪行為」と指摘。18日午前零時までに自首すれば減刑し、「他の犯罪者の検挙に協力すれば刑の免除もあり得る」としている。「期限までに自首しない者や犯罪者をかくまった者には厳罰で臨む」と警告し、住民には積極的に犯罪者を告発するように呼びかけた。
 国営新華社通信によると、ラサでの14日の暴動ではホテル従業員や商店主らを含む10人が巻き込まれて死亡したが、夜には鎮静化した。一方、AFP通信はチベット独立支援団体の話として、西部・甘粛省夏河で14日からチベット僧侶を含む数百人が通りをデモ行進し、15日には治安部隊がデモ隊に催涙ガス弾を発砲したと報じた。夏河にはラサのポタラ宮に次ぐ規模のチベット仏教僧院ラブラン寺がある。
 こうした中、チベット亡命政府は15日の声明で「平和的なデモが無差別殺人で抑圧されている」と非難。中国政府が暴力的な鎮圧を続ければ「チベット人は方向性を失う」として暴力の連鎖の深刻化に懸念を示した。
 声明はまた、チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世を暴動の「首謀者」とする中国政府の主張に対し、「全く根拠がない」と全面否定した。
 一方、ニューデリーでは15日も中国大使館の塀をよじ登ろうとするなどした亡命チベット人ら約50人が警察に逮捕された。亡命チベット政府の拠点、北部ダラムサラでも約300人がデモ行進を行ったが、大きな混乱はなかった。インド政府は中国側での暴動に関連し、国内の亡命チベット人による政治活動を厳格に取り締まる方針を確認している。
毎日新聞 2008年3月15日
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チベット:ラサは戒厳令状態 寺院に遺体 連行し銃殺も
毎日新聞 2008年3月15日 
【北京・浦松丈二、大谷麻由美】中国チベット自治区ラサの旅行社女性職員は15日午前、毎日新聞の電話取材に「街にほとんど人がいない」と語った。中国当局は戒厳令を敷いていないとしているが、市内要所に治安部隊が展開しており、ラサは事実上の戒厳令状態にあるとみられる。
 職員は「少し前から暴動のうわさが流れていた。14日午後は学校や病院が何カ所も放火されたが、短時間で消火された。当局の対応は速く、夜にはテレビやラジオで鎮圧のニュースが流れた」と話した。一方で、暴動はラサ郊外にも拡大している模様で、外国人旅行者の受け入れは停止されている。
 新華社通信によると、ラサ中心部では14日午後1時10分ごろ、僧侶ら抗議活動の参加者と地元警察の衝突が激化した。午後2時ごろから、僧侶が主要道路の2路線に面した商店に放火。寺院周辺の少なくとも5カ所で火災が発生し、多くの商店や銀行、ホテルが焼け落ちた。火災で停電や通信が遮断された。
 米政府系「ラジオ自由アジア」が目撃者の話として伝えたところでは、観光地として知られ、旧市街地区にあるチベット仏教寺院ラモチェ寺の中で2人、庭で2人が死亡しているのが見つかった。別の場所でも2遺体が発見された。また、26人のチベット人が黒い車両で連行された後に銃撃されたという。
 ラモチェ寺の約110人の僧が、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の写真を掲げ「チベット独立」を叫んで行進し、制止しようとした地元警察と衝突した。暴徒化した一部のチベット人は漢族系商店を襲撃。商品を略奪し、路上で燃やすなどの行為に出ているという。
 目撃者は「中国人が経営する店は次々に放火される。チベット人の店は、中国(漢族)系と見分けるために目印としてスカーフを店先に付けるよう言われている」と述べ、混乱ぶりを伝えた。
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チベット:亡命者の取り締まり強化へ 中国寄りのインド
毎日新聞 2008年3月15日 

 【ニューデリー栗田慎一】中国チベット自治区での暴動に対し、インド政府は14日、亡命チベット人による国内での政治活動を厳格に取り締まる方針を確認した。シン政権は中国との関係改善を進めており、インド亡命中のチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の政治活動を認めていない。方針確認はこれに基づくものだが、隣国インドには世界最多の約10万の亡命チベット人が在住しており、取り締まり強化はインドへの国際的な批判を招く恐れもある。
 ニューデリーでは14日、中国政府による暴動鎮圧に反発する亡命チベット人ら約30人が中国大使館前に参集。中国政府が禁じている「チベット旗」を手に抗議活動をしようとしたところ、警戒中の警察隊に身柄を拘束された。
 デリー警察幹部は「亡命チベット人は国内での政治活動を禁止されている」と語り、今回の暴動を意識した特別態勢ではないことを強調した。
 一方、地元テレビによると、13日に亡命チベット人ら約100人が身柄を拘束された北部カングラ渓谷では14日、約500人がろうそくの火をともして中国の暴動鎮圧に抗議。しかし抗議は平和的に行われたことから、警察は逮捕に乗り出すことはなかった。
 対中関係が悪化していた59年、インド政府はダライ・ラマ14世をインドに受け入れ、中国国境に近い北部ダラムサラをチベット亡命政府の拠点として提供した。しかし、中印両国の関係改善が進んだ近年、インド政府は中国政府の意向を酌みチベット人の新たな受け入れをしていない。
 中国政府の武力鎮圧が激化すれば、インド政府は対中関係と国際世論の間で難しい対応を迫られる。
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チベット:暴動で「死者80人」情報も 滞在日本人ら保護
 【北京・大谷麻由美】中国チベット自治区の区都ラサで14日発生したチベット仏教僧らによる大規模な暴動で、国営新華社通信は15日、「10人の死亡が確認された」と報じた。暴動は14日夜に沈静化し、市内は平静を取り戻したという。一方、米政府系の「ラジオ自由アジア」は、ラサ市民の話として死者数は80人以上に達するとの見方を伝えた。地元武装警察は日本人旅行者3人含むラサ滞在中の外国人580人を保護した。日本人を含む外国人に負傷者はいないという。
 同自治区政府のシャンパプンツォク主席は15日、「これはテロだ。われわれは(人に向けて)発砲してない」と語り、武力鎮圧を否定した。新華社によると、当局者は「地元警察は武力を行使しないよう命じられたが、デモ隊を解散させるためにやむを得ず一定量の催涙弾を発射し、威嚇射撃を行った」と述べた。
 ラジオ自由アジアによると、ラサ市内には暴動鎮圧のために数百の装甲車両が出動し、群集に向かって発砲したという。市民の一人は「あちこちで衝突があり、死者数は80人以上に達するのではないか」と証言したが、詳細は不明だ。
 新華社によると、死亡したとされる10人は「いずれも罪のない市民で焼死した」という。ホテル従業員、商店主の各2人が含まれている。犠牲者はチベットで活動する漢族の可能性がある。僧侶については触れていない。
 新華社によると、自治区当局者は動乱について「ダライ・ラマ一派が組織し、念入りに計画、画策したという十分な証拠がある」と指摘し、インドに亡命中の同仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の支持者らが起こしたと断定した。
 中国当局は8月の北京五輪への影響を最小限に抑えるため、早期に事態収拾を目指す構えだ。だが、首謀者を「ダライ・ラマ一派」と指摘したことで、ダライ・ラマ支持者が反発を強めそう。僧侶や市民を一層刺激する可能性もある。

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チベット:「人々の怒りに、対話で応じよ」ダライ・ラマ
毎日新聞 2008年3月15日
 【ニューデリー栗田慎一】チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は14日、亡命政府があるインド北部ダラムサラで声明を発表し、中国チベット自治区での抗議行動と中国当局の対応を「深く憂慮している」と述べ、強い懸念を表明した。中国指導部には「武力を使うのをやめ、チベットの人々の怒りに、対話で応じるよう訴える」と呼びかけた。
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中国:五輪控え政権にダメージ チベット暴動
毎日新聞 2008年3月15日
 【北京・大谷麻由美】分離・独立運動がくすぶる中国西部、チベット自治区の区都ラサで14日、チベット族による暴動が発生したことで「新中国成立以来、最大の国家イベント」とされる北京五輪を8月に控えた胡錦濤指導部が大きなダメージを受けるのは必至だ。
 また、北京では全国人民代表大会(全人代=国会)が開催中でもあり、今年の全人代で2期目に入る胡錦濤指導部が今後、国内の安定にどのように対処していくか。国際社会は中国の人権問題と絡めながら、これまで以上に監視を強めていくとみられ、新たな対中摩擦になる可能性もある。
 胡錦濤政権は「調和の取れた社会」実現を国内外にアピールしてきた。これは地域格差の解消、安定した国際環境を整えることにあるが、5月に予定される胡主席の訪日時にも、国際人権団体などの大規模な抗議活動が展開されそうだ。
 チベット自治区や隣接する青海省では、インド亡命中のチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世を敬愛する住民が現在も多い。
 中国当局はチベットへの鉄道敷設などインフラ整備を進め、「アメ」を与えるとともに、ダライ・ラマ14世の関係者と水面下の交渉も加速化し、懐柔策も取る一方、分離・独立運動への取り締まりを強化するなど「ムチ」も同時に続け、チベット統治に自信を深めていた。それだけに今回の暴動に大きな衝撃を受けているのは間違いない。
 14日は中国政府がチベットほか、新疆ウイグル自治区、台湾などの分離独立を封じ込めるために設けた「反国家分裂法」の制定からまる3年。また10日は、ダライ・ラマ14世が亡命するきっかけとなった1959年の中国軍によるチベット武力鎮圧から49年目だった。
 中央政府への反発を強める分離・独立運動が「記念日」に合わせて行動を起こした可能性も否定できない。また、台湾では22日に総統選が控えており、台湾の独立を求める団体と連動した可能性もある。
 今回のデモへの対応次第では、五輪ボイコット運動へと発展しかねない。海外の非政府組織(NGO)などはチベット問題を理由に、企業に北京五輪での協賛を取りやめるよう働き掛けている。五輪開幕式の芸術顧問をいったんは引き受けていた米映画監督スティーブン・スピルバーグ氏は、スーダンのダルフール問題を理由に顧問を辞任した。近づく五輪を前に、胡錦濤指導部は難しい対応を迫られそうだ。
 ◇59年に武力弾圧 89年には戒厳令
 中国は1951年、チベットに人民解放軍が進駐。ダライ・ラマ14世をトップとするチベット政権と「チベット平和解放に関する協定」を結んだ。59年3月に社会主義化の影響を恐れた農奴主ら約2万人が蜂起したが、武力で制圧された。ダライ・ラマ14世は亡命し、インド北部のダラムサラを拠点に亡命政府としての活動を続けてきた。
 89年3月に再び大規模な暴動がラサで発生し、当時の胡錦濤・チベット自治区党委書記(現国家主席)が戒厳令を敷いた。同年、ダライ・ラマ14世はノーベル平和賞を受賞した。90年代前半にも抗議活動や僧侶の拘束が相次いだが、最近は自治区内での目立った抗議活動は起きていなかった。06年7月にはラサまで乗り入れる青蔵鉄道が開通し、観光ブームにわいていた。
毎日新聞 2008年3月15日 0時05分 

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石田ふたみ