『日々の映像』

2008年03月15日(土)  動揺の震源地米国 円相場は一時、1ドル=98円台。

  世界の経済金融情勢が動揺している。東京市場では株安と円高が進み、一時は12年4カ月ぶりに1ドル=100円の大台を突破した。円高というより、ドルの全面安。動揺の震源地である米国の経済自体が売られている状態だ。 悲観的な報道が多くあるが次のデータを記憶に留めたい。


1995年4月   1ドル79.75円
2003年4月   日経平均株価バブル崩壊後の最安値 7607円

・ドル安、NY一時98円台 米証券大手資金繰り支援受け
2008年03月15日 朝日新聞
・世界経済動揺―首相は日銀人事で決断を
                     2008年3月15日朝日社説
・円相場、一時99円台・95年10月以来の円高水準に
                    2008年3月13日 日経新聞
・12年ぶり東京1ドル=99円台 株は2年半ぶり安値
2008年03月13日 朝日新聞
・今週の〜大前研一ニュースの視点〜
 『米ブッシュ大統領の表情が物語る、米金融市場の悲壮感』

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ドル安、NY一時98円台 米証券大手資金繰り支援受け
2008年03月15日 朝日新聞
 14日のニューヨーク金融市場は、ニューヨーク地区連邦準備銀行などが米証券大手ベアー・スターンズへの資金繰り支援に乗り出すという異例の事態を受けて信用不安が高まり、ドルと株がともに急落した。外国為替市場の円相場は一時、1ドル=98円台に入り、95年9月末以来約12年半ぶりの円高水準をつけた。「安全資産」に投資を振り向ける動きも強まり、金相場は史上最高値を更新した。
 14日朝は、2月の消費者物価指数が前月比横ばいだったと発表されたことなどを受けてインフレ懸念が和らぎ、ドルと株が買われた。だが、ベアー・スターンズに関する発表後、米金融機関に対する経営不安や信用収縮への警戒感が強まり、相場は一転した。
 外国為替市場の円相場は、円が一時1ドル=98円92銭まで上昇。午後5時時点は前日より1円51銭円高ドル安の1ドル=99円04〜14銭。
 株式市場では、大企業で構成するダウ工業株平均が一時、310ドル超も下落。終値は前日終値比194.65ドル安の1万1951.09ドルだった。ベアー・スターンズの株価が同27.00ドル安と47%も急落。ほかの金融株も軒並み売られ、相場の足を引っ張った。
 一方、金相場は指標となる先物価格が一時、1トロイオンス=1009.00ドルまで上昇。終値(999.50ドル)とともに史上最高値を更新した。
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世界経済動揺―首相は日銀人事で決断を
                     2008年3月15日朝日社説
世界の経済金融情勢が動揺している。東京市場では株安と円高が進み、一時は12年4カ月ぶりに1ドル=100円の大台を突破した。円高というより、ドルの全面安。動揺の震源地である米国の経済自体が売られている状態だ。
 発端は、米国の低所得者向け住宅融資(サブプライムローン)を組み込んだ証券の暴落だった。住宅相場の下落が進み、最近は暴落が優良顧客向け住宅ローンへも広がって、第2段階に入った。関連する証券がすべて売られている。
 投資証券の暴落と関連する融資の焦げ付きがふくらんで、大手の投資ファンドや証券会社に対しても経営危機説が流れ始めた。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が「中小金融機関の多少の破綻(はたん)はありうる」と発言して、市場はさらに揺れた。
 ドル離れした資金は、値上がりが期待できる石油や金、穀物など資源絡みの市場に流れ込む。ドル安とエネルギー・資源高の悪循環という様相が深まり、米国を中心に物価上昇と景気悪化の板挟みになる懸念が募っている。
 欧米の通貨当局は、短期資金の市場へ大量の資金を供給して火消しに躍起だ。
 いま日本にできることは限られているが、常に欧米当局と情報交換して、市場の急変に備えておかなければならない。場合によっては、主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を緊急に開くことになるかもしれない。
 そんな不安定な事態のなかで、日本の金融政策のトップ、日本銀行の総裁が決まらない。福井俊彦総裁の任期切れは19日に迫る。福田首相は、野党に拒否された武藤敏郎副総裁の昇格案を再び提案するか、新たな候補に差し替えるか、この週末をかけて考えるという。
 首相には「ベストの人選」と大見えを切った武藤氏を断念することにためらいがあるようだ。意地もあろうし、自らの政権の求心力もかかっている。
 だが、ここは考えどきだ。武藤氏にいくらこだわっても、出口はないというのが客観的な状況ではないか。
 私たちは、武藤氏に対する民主党の反対理由に十分な説得力があるとは思わない。だが、政局への思惑もあって、その反対姿勢は崩れそうにない。
 さらに江田五月参院議長は、いちど不同意となった人事案が再び提示されても、「一事不再議」の原則から審議できないとの見解を示している。首相がもう一度と思っても、参院では門前払いにされる可能性が強いのだ。
 経済の状況によっては、機敏な金融政策やG7としての対応が迫られることもありうる。その時に日銀総裁が不在とあっては、国の利益にかかわりかねない。
 首相は新たな人選を急ぎ、週明けの国会に提示すべきだ。民主党も政局的な思惑を離れ、冷静に判断してもらいたい。
 局面を打開するための勇気と決断を、首相に求めたい。
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円相場、一時99円台・95年10月以来の円高水準に
                   2008年3月13日 日経新聞
 円相場が12年ぶりに1ドル=100円の大台を突破した。13日の欧州外国為替市場で一時1ドル=99円77銭まで上昇し、1995年10月以来、12年5カ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。米欧などの金融当局は資金供給の協調行動に踏み切ったばかりだが、米景気の後退懸念が強く、ドル相場は全面安の様相を呈している。
 13日の東京外為市場の円相場は午前11時過ぎに1ドル=101円を突破した。午後に日経平均株価が下げ幅を広げるのと歩調を合わせるように円高が進行。夕方には欧州勢が円買いに追随し、日本時間の同日午後5時半ごろ、ロンドン外国為替市場で1ドル=100円を突破した。その後はドルに買い戻しが入り、午前11時(日本時間午後8時)現在、前日終値に比べ2円15銭円高・ドル安の1ドル=100円20―30銭で推移している。 (21:05)
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12年ぶり東京1ドル=99円台 株は2年半ぶり安値
2008年03月13日 朝日新聞
 13日の東京外国為替金融市場は円高ドル安が急速に進み、95年11月以来12年4カ月ぶりに1ドル=100円を突破、一時99円77銭まで円が買われた。円急騰による輸出企業の業績悪化懸念が広がり、株式市場では日経平均株価の終値が2年半ぶりの安値になった。米国景気の後退懸念が強いため、ドル安の流れが止まる兆しは見えていない。
東京外為市場の円相場は、ドル売りが進んだ海外市場の流れを引き継いで朝方からドルを売って円を買う動きが強まり、前日に比べて一気に3円以上も円高が進んだ。
 午後5時時点は、前日同時刻と比べて2円90銭円高ドル安の1ドル=100円17〜20銭。ロンドン市場が開いた午後5時過ぎには、1ドル=99円77銭まで値を上げた。ロンドンではその後、やや下げ、正午(日本時間午後9時)現在は、1ドル=100円20〜30銭で取引されている。ドルは対ユーロでも売り込まれ一時1ユーロ=1.56ドル台をつけ、史上最安値を更新した。
 米欧の5中央銀行による資金の大量協調供給で前日はドルを買い戻す動きもみられたが、市場では米国の金融不安の改善には時間がかかるとの見方が強い。米国が大幅利下げに踏み切るとの観測もドル売りの流れを加速させた。「今後発表される米経済指標の内容が悪ければ、1ドル=95円程度まで円高ドル安が進むこともありうる」(大手銀行為替担当者)との見方も浮上している。
 東京株式市場では、東証1部上場銘柄の86.8%が値下がりした。日経平均株価の終値は前日比427円69銭安い1万2433円44銭。10日につけた今年最安値(1万2532円)を更新、05年8月末以来2年半ぶりの安値だ。
 取引開始直後から、自動車、電機など輸出企業株中心に売られた。午後に入ると、米ヘッジファンドの経営不安も一部で報じられ、「売りが売りを呼ぶ展開」(大手証券)に。東京証券取引所第1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は前日比39.26ポイント低い1215.87。
 日本銀行の福井俊彦総裁の後任人事の迷走で「総裁空席」になれば、海外投資家らの「日本株売り」につながるとの指摘もあり、「株価が1万2000円を割る事態もある」(同)との見方も出始めている。
 東証より遅れて取引が始まった他のアジア市場の株価指数も軒並み下落。中国・香港が前日比4.78%、同・上海が同2.42%、台湾が同2.65%、韓国が同2.6%の下落率だった。欧州でも英国、ドイツ、フランスの主要株価指数はいずれも、一時2%超の下落となった。
 一方、原油高も止まらない。12日のニューヨーク商業取引所の原油市場は、国際指標の米国産WTI原油の先物価格が一時1バレル=110.20ドルまで上昇、史上初の1バレル=110ドル台をつけた。
 米欧中銀が供給した資金が「商品市場に回って原油価格を上げ、さらに株式市場の資金が商品市場に移っている」(大手証券)との声もある。
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・今週の〜大前研一ニュースの視点〜
 『米ブッシュ大統領の表情が物語る、米金融市場の悲壮感』
 
米金融市場
悲壮感が急速に台頭
1万2000ドル割り込み取引終了 1週間で400ドル超下落
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●米国の景気は、確実に「recession(後退)」に突入した

 米金融市場では、サブプライム問題を受けて景気減速や
 信用収縮の深刻さを示す材料が相次ぎ、
 悲観論が急速に台頭してきました。

 先日のニューヨーク株式市場ではダウ工業株30種平均が
 合計で400ドル超下落、
 1万2000ドルの大台を割り込んで取引を終えました。

 これまで、米ブッシュ大統領は米国の景気に対して、
 一貫して「recession(後退)ではない」という態度を
 示してきました。

 先日の演説でも、
 「景気は減速はしているが、後退はしていない」
 という論調でしたが、私は聞いていて、
 何やら悲壮な印象を受けてしまいました。

 7日、米労働省が発表した2月の雇用統計によると、
 非農業部門の雇用者数は前月に比べ6万3000人落ち込んだ
 と言います。

 1月も当初発表の1万7000人減から
 2万2000人減に下方修正しているので、
 2カ月連続のマイナスです。

 このような現状を見れば、米国の景気の状態は
 「recession(後退)」だと判断するのが普通だと思います。

 事実、私と同様、米国の経済アナリストなども、
 ブッシュ大統領の演説を聴きながら、
 「recession(後退)と言うべきだ」
 という意見を述べていました。

 ただし、彼らの場合には、「仮に今、”recession(後退)”
 になったとしても、今年の後半には回復する見込みだ」
 という見解のようですが、

 この点については、私には単なるなぐさめとして
 言っているだけで、何ら明確な根拠がある発言とは思えません。

 また、ブッシュ大統領の演説の内容について、
 特に私が問題だと感じるのは、今の米国の景気対策として
 「即効性」のあることは述べていないということです。

 これは、先月ブッシュ大統領が署名したという
 緊急景気対策法案の効果についても同様です。

 米国民への戻し減税を柱とし、法人の設備投資を対象とする
 税控除を含め、対策規模は約1520億ドル(約16兆5000億円)
 を誇る景気対策案ですが、

 税金の還付として、小切手の送付が始まるのは5月からのため、
 家庭が直ちにキャッシュを手に入れられるわけではありません。

 ブッシュ大統領は効果に絶大なる自信を見せていた
 と言いますが、経済学者が言う、急激な「recession(後退)」
 に突入してしまった米国の景気動向を考えると、
 5月では間に合わないのです。

 2月〜3月になって急激にお金が入ってこないで
 困っているというのに、5月まで待つとなると、
 この3ヶ月間はどうしのげばいいのでしょうか?

 私には、致命的な3ヶ月になってしまうと思えます。


●FRBの金利政策も、景気対策には全く効果を発揮していない

 米国の景気対策が全く機能していないという点について、
 別の観点から考察した面白い記事をビジネスウィーク誌の
 コラムの中で発見しました。

 この記事によると、景気対策のため、FRBがフェデラル金利を
 下げているけれども、全く効果が出てないという指摘です。

 なぜなら、確かにフェデラル金利は下がっていますが、
 例えば、「トリプルBのコーポレート債」や
 「30年のモーゲージ債」などの金利を見てみると、
 これらの金利は一向に下がっていないからです。

 つまり、今一番お金に困っていて、金利を下げてもらいたい
 と思っている人が借りているローンの金利や
 相対的に信用リスクが高い企業が発行する債券の利率は
 下がっていないのです。

 FRBのフェデラル金利は、いわゆる優良企業に貸し出している
 金利です。この金利が下がれば、GEやIBMなどは感謝したい
 ところでしょうが、これは当初の目的とは全く異なります。

 銀行は自分だけは低金利の恩恵を受けつつも、
 結局リスクが高いと判断されるところには貸さない、
 あるいは金利は高く設定したまま貸し出す
 という方法をとっているのでしょう。

 景気対策の本来の狙いとしてお金が流れるべきところには、
 全く行き渡っていないという状況になっています。

 この指摘は、的確で重要な指摘だと思います。
 結局、このような本質的な部分を外してしまっている
 というのが、ブッシュ大統領の限界なのかも知れません。

 先日のブッシュ大統領の演説では、
 焦りと悲壮感さえ伺えましたが、それもそのはずで、
 ブッシュ政権発足以降のダウ平均株価の推移を見ると 
 納得します。

 ブッシュ大統領としては、9.11事件以降低迷してきた株価を、
 03年から07年にかけてずっと上昇させてきた
 という自負があったのでしょうが、

 ここに来て急激な下落を見せて、結局、
 8年前の大統領就任時と変わらない水準に近づいてきました。

※「ブッシュ政権発足以降のダウ平均株価推移」チャートを見る
→ http://vil.forcast.jp/c/aisNaa6r4qdeijac

 こうなってくると、一体、この8年間は何だったのか?
 と問いたくなる気持ちかも知れません。

 さすがのブッシュ大統領も打つ手がなく、
 演説ではその顔に自信の無さが表れていました。


                      以上

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石田ふたみ