『日々の映像』

2008年03月14日(金)  石原銀行 唯我独尊の成れの果て

新銀行東京は、そもそも石原都知事の「鶴のひと声」で設立が決まったのだ。よって、ほとんどの報道は「新銀行東京」とは言わず「石原銀行」と呼ぶ。この銀行は「東京都の中小企業を救う!」と、石原都知事が2期目の選挙公約にぶち上げたのがきっかけだった。

 2005年に開業したばかりなのに、ずさんな融資により今年3月で累積損失1016億円、都が出資済みの1000億円も含め資本の8割以上が失われる段階になっている。債務超過に陥っている融資先企業も、昨年末の段階で全体の3割に当たる4000社に達しており、さらに焦げ付きが膨らむといわなければならない。詳しくは以下に引用した報道の通りであるが「唯我独尊の成れの果て」との批判が一番当たっているようだ。
 

石原銀行 まだ傷口を広げるのか
        2008年3月13日中日新聞社説
「石原銀行」は必要か
    2008/3/12 コメント(3)

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石原銀行 まだ傷口を広げるのか
2008年3月13日中日新聞社説

石原慎太郎東京都知事が議会に新銀行東京への追加出資の了承を求めた。譲渡先も現れない銀行に税金を使って増資−では釈然としない。黒字経営の確たる見通しがなければ傷口を広げるだけだ。
 「追加出資が負担の最も少ない方法だ」。石原知事は四百億円の追加出資の妥当性を審議する議会でこう述べた。清算の場合、過去の同規模の金融機関の破綻(はたん)を例にとると、損失額が一千億円に上ってしまうので追加出資を認めてほしい。これが知事の主張である。
 新銀行は二〇〇五年に開業したばかりなのに、ずさんな融資により今年三月で累積損失一千十六億円、都が出資済みの一千億円も含め資本の八割以上が失われる見込みだ。追加出資の財源は税金であり、都民がすんなり応じられる額ではあるまい。
 増資しないと銀行の健全度を示す自己資本比率が国際決済銀行の基準である4%を割り込み、業務改善命令の対象になる。自ら主導してきた銀行であり、つぶせない。旧経営陣の責任を強調する知事の答弁からは、そんなメンツも見えてくる。
 融資の焦げ付きは今後四年間で三百億円、既に回収不能にある債権と合わせると六百億円に上ると見込まれている。債務超過に陥っている融資先企業も、昨年末の段階で全体の三割に当たる四千社に達しており、さらに焦げ付きが膨らむことを覚悟しておかねばならない。
 知事は「都民に役立つ銀行として再生させたい」とも述べた。追加出資後は六店舗を一店舗に、行員も減らして四年後に黒字化を図るのだという。融資額を四分の一に減らし、一方で収益は二倍にする。「経営規模を縮小して、どう収益増を図るのか」。知事は都民の疑問に、はっきりと答える必要がある。
 新銀行は昨年来、十一の金融機関と譲渡交渉を試みたが、いずれも断られた。新銀行の資産を再評価すれば、とても応じられない。それほどまでに劣悪と判断されたのだろう。
 その結果が追加出資だ。資本増強は引受先を周到に探し、協力を求めるのが通常のパターンだが、新銀行の筆頭株主は出資比率八割の都であり、税金投入という“奥の手”が使える。安易と言わざるを得ない。
 新銀行は中小企業を貸し渋りから救おうと創設されたが、今では中小金融は不良債権処理を終えた大手銀行や地域金融機関の草刈り場だ。新銀行は、その役割を終えている。
 「進むも地獄、引くも地獄」。知事の弁である。同じ地獄ならば、議会も税金投入の最少化が期待できる事業清算を正面から論議すべきだ。
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「石原銀行」は必要か
2008/3/12 コメント(3)
唯我独尊の成れの果て?経営破たん寸前の新銀行東京をめぐり大荒れだった昨日(3月11日)の都議会予算委員会。野党議員から「ふざけたことを言うんじゃないですよ」と叱責され、苦笑いが精一杯の石原都知事の姿である。

今朝の「とくダネ!」は、小倉キャスターが「3年で1000億円を超す赤字で都議会は紛糾しています。石原都知事の答弁は如何なるものだったのでしょうか」と経営難に陥っている新銀行東京を取り上げた。
当初から『石原銀行』と皮肉を込めて呼ばれた新銀行東京。もとは、「大手銀行の貸し渋りで資金繰りに悩む中小企業を救済したい」と、石原都知事が2003年の選挙公約に掲げ、無担保・無保証を看板に05年4月から開業した。
開業当時からの代表執行役は、トヨタ自動車出身の仁司泰正・元代表(07年6月退任)だったが、当初から審査がずさんで、返済の意思のない詐欺師まがいの事業者にも融資をし、すぐに焦げ付くなど不良債権が累増。08年3月期決算の累積赤字は1000億円を超える見込みだ。
東京中小企業家同友会が会員200社を対象に行ったアンケート調査では、「新銀行東京は中小企業に役立っているか?」に、「役立っている」と答えたのはわずか21社。121社が「役立てっていない」と答えている。
同時に、仁司・元代表執行役はもちろん、石原都知事に対する責任論も急速に高まっているのだが、石原都知事は謝罪と得意の強弁を使い分け、基本的には強気の姿勢を崩さない。
冒頭に触れた昨日の予算委員会の紛糾部分を再現すると…
石原「400億円の追資を認めて頂かないとこの会社は潰れますよ。潰れたらもっともっと大きな損害が出て犠牲者が出るんですよ。あなた先のことを考えなきゃ」
吉田信夫(共産)「1000億円の赤字を作った人間にそんなこと言われる筋合いないですよ。あなたが、いかに先の見通しがなかったかってことじゃないですか。ふざけたことを言うんじゃないですよ」
小倉は「高金利、無担保で貸して誰が考えてもうまくいくわけがない」。呼応してタレントのデーブ・スペクターが「街金より借りやすいという話があったですが、なぜもっと早く監督しなかったのですかね」と。
得意の強弁も今や通用しなくなった石原都知事。07年の都知事3選は余分だったのでは?

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新銀行東京 旧経営陣だけの責任なのか(3月12日付・読売社説)
 こんな甘い融資姿勢では、銀行が傾くのは当然だろう。

 経営危機に陥っている「新銀行東京」が、その主因は、銀行設立時の代表執行役らが放漫な貸し付けを推し進めたからだ、などとする調査報告をまとめた。

 報告書によれば、当時の経営陣は、相手企業の返済能力を十分に審査せず、限度額いっぱい融資することを貸し付け担当者に奨励した。返済が滞っても、融資から半年以上たっていれば、担当者は責任を問われなかった。

 貸し渋りに苦しむ中小企業に融資する、という設立目的があったにせよ、銀行としての限度を逸脱している。

 大甘の融資によって救われた企業もあるだろうが、問題企業もまた群がって来たことは容易に想像できる。牛肉偽装で摘発された食肉卸会社に対し、不祥事が発覚した直後に融資を実行したことも判明している。

 新銀行東京は、東京都が資本金の8割以上、1000億円を出資している“子会社”だ。都は、設立当初の経営陣を民事・刑事両面で追及する、という。

 都民の税金で支えられた銀行で乱脈融資があったとなれば、見逃すことはできない。旧経営陣の責任を問うのは当然だ。

 しかし報告書は、都の責任についてはまったく触れていない。石原知事はじめ都の幹部が被害者のように振る舞うことに、納得できない都民が多いのではないか。

 新銀行東京は、石原知事が2期目の公約の目玉に掲げ、前面に立って設立を推進した。

 不況下の中小企業を救う、という名分だったが、3年前の開業時は景気が上向き、大手金融機関も中小企業向け融資に力を入れ始めていた。新銀行の設立自体、再考すべきだったのではないか。

 先行きが懸念される中でのスタートだった。都は開業時から経営の細部まで注意を払っていたはずだ。そうでなければ怠慢ということになる。杜撰(ずさん)な実態を全く知らなかった、では通らない。

 都が被害者の立場を強調するのは、そうしなければ、新銀行東京に対して400億円もの追加出資を行う議案を都議会で通しにくいという事情もあろう。

 だが、石原知事は失策を認め、勇気を持って、銀行業からの撤退を表明する時ではないか。

 さらに傷口を広げることに、都民の理解は得られまい。店じまいを前提に、少しでも軽い損失で済む撤退策を探る方がいい。

(2008年3月12日01時26分 読売新聞)

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石田ふたみ