2008年01月09日(水) |
日本でも、窓口負担『ゼロ』は可能 |
日本の医療で多くの疑問がある。なぜ、医師不足が深刻な問題として噴出してくるのか分からない、必要な時に適切な医療を受けられなくなる「医療崩壊」と言うべき不安が広がっている。しばらく前まで、自己負担が1割であったが、最近の3割負担は厳しい。 今日は医療費の窓口負担「ゼロの会」の責任者、池川明さん(池川クリニック院長)の新春インタビューの要点を引用したい。
--------日本でも、窓口負担『ゼロ』は可能」------- 1、日本では1961年に『国民皆保険制度』が創設され、健保本人の10割給付(患者負担ゼロ割)が始まり、1984年までは健保本人の窓口負担はゼロであった。 2、1984年に健保法の1割負担が導入されました。さらに、『構造改革路線』で1997年に健保2割負担、2003年には健保・国保が入院・通院ともに3割負担となり、2007年10月からは高齢者の一定割合も3割負担になっている。 3、『医療改革』の名のもとで、実に国民の85%が3割負担になってしまいました。過重な負担により、治療中断や受診の手控えが生じて重症化するといった問題が起きている。 4、総医療費は約31.5兆円で、このうち国民は保険料9兆円と窓口負担5兆円の計14兆円、約45%を負担しています 5、国と、バブル期の2倍近い経常利益を上げながら税負担は減っている大企業(資本金10億円以上)に応分の負担をしてもらうべきです。なぜかというと、保険料を徴収する国には医療保障の法的責任があり、多くの労働力を使って大きな利益を上げている大企業ほど生活や労働環境、社会保障を引き受ける責任があるからです。こうしたことも、先進国では当たり前となっていることなのです 上記5について一言補足したい。消費税で国民は12兆円以上の負担を強いられているが、この額そっくり大企業の減税になっているのである。このことを沖縄のンチャさんから書き込みしていただいたが、もう一回書き込みをお願いしたい。 http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20080109
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日本でも、窓口負担『ゼロ』は可能」(新春インタビュー 2008/01/04 キャリアブレイン
「日本でも、窓口負担『ゼロ』は可能」 医療費の窓口負担「ゼロの会」担当責任者・池川明さん(池川クリニック院長)
昨年1月、神奈川県保険医協会が事務局を務める医療費の窓口負担「ゼロの会」が生まれた。医療機関の窓口負担は、2003年に健保本人、06年からは高齢者も所得によって3割になった。この負担増に伴い、受診抑制や治療中断が生じて重症化等を招く中、「重すぎる窓口負担を解消し、国民(患者)が必要な治療を受けられるようにしよう」と、神奈川県内の医師らが立ち上がった。「ゼロの会」には、映画監督の山田洋次氏ら20人を超える各界の著名人が賛同を寄せるなど、誕生から1年で大きな広がりを見せている。「ゼロの会」について、責任者の池川明さんに聞いた。(山田 利和)
■受診時の負担「世界からは矛盾」 −日本でも、かつて窓口負担はゼロだったのですね。 「そうなのです。日本では1961年に『国民皆保険制度』が創設され、健保本人の10割給付(患者負担ゼロ割)が始まり、84年までは健保本人の窓口負担はゼロでした。日本の医療制度は憲法25条の『生存権保障』によるもので、生存に必要なものを保障することが原則です。このため、お金の給付ではなく、治療や薬そのものを給付する『現物給付』となっています。だから当初、健保本人はゼロ割負担(窓口負担ゼロ)だったのです」
−それが、今では3割になっていますが。 「国民皆保険制度は創設後、より良い医療を提供しようという医療運動で徐々に改善され、73年の老人医療無料化など、給付内容は充実していきました。ところが、この流れは『臨調行革路線』で一転し、84年に健保法の1割負担が導入されました。さらに、『構造改革路線』で97年に健保2割負担、03年には健保・国保が入院・通院ともに3割負担となり、昨年10月からは高齢者の一定割合も3割負担になっています。『医療改革』の名のもとで、実に国民の85%が3割負担になってしまいました。過重な負担により、治療中断や受診の手控えが生じて重症化するといった問題が起きています」
−この間の負担増が激しく、いつの間にか「負担は当たり前」ともいえるような状況になっています。 「『財源がない』という理由で、国が低医療費政策を進めていることが原因です。しかし、『窓口負担は本当に当たり前なのか』と問うてみると、ヨーロッパ諸国やカナダ、オーストラリアなどでは、受診時の患者負担は原則無料なのです。病気や怪我に備えて、保険料を支払っているからで、『受診時の負担は当然』という今の日本の考え方が、世界の多くの国々からみれば、逆に矛盾した話になるのですよ」
■税金等の使途「国に要求しよう」 −日本では医療というと、いつも財源の話が先にきてしまいますが。 「それが問題です。現在、総医療費は約31.5兆円で、このうち国民は保険料9兆円と窓口負担5兆円の計14兆円、約45%を負担しています。国は財政難を強調しますが、日本の医療費水準は経済規模に比べて極めて低く、OECD(経済協力開発機構)30か国で22位に過ぎません。それだけ医療費を切り詰めていることになり、世界の常識からはおかしい。医療の進歩と高齢化に応じた経済力に見合う医療費を確保することが不可欠です」
−そのための財源はあると。 「そうです。日本では税金や保険料が医療に使われる割合も約40%と先進国で最低です。私たち国民は、窓口負担だけではなく、保険料を払っています。もともと税金も納めており、この何割かが国から医療に回される仕組みです。財源は、私たちが納めた税金や保険料で成り立っているのですから、『払ったお金(財源)を、こういうふうに使ってほしい』と、国に要求していいと思うのです。税金や保険料が医療や福祉に還元されるように、国の無駄遣いも見直すべきです」
−では、窓口負担の5兆円はどのように捻出するのですか。 「国と、バブル期の2倍近い経常利益を上げながら税負担は減っている大企業(資本金10億円以上)に応分の負担をしてもらうべきです。なぜかというと、保険料を徴収する国には医療保障の法的責任があり、多くの労働力を使って大きな利益を上げている大企業ほど生活や労働環境、社会保障を引き受ける責任
があるからです。こうしたことも、先進国では当たり前となっていることなのです」
−窓口負担をゼロにすると、受診率が上がり、医療費が膨らむという指摘がありますが。 「患者さんの負担を増やして受診を抑制したからといって、医療費全体は安くなりません。というのは、国民医療費の75%は高額な費用を要する病気が占めていて、25%の患者さんで掛かっています。残りの25%が大半の75%の患者さんに使われている医療費のため、患者負担を増やした受診抑制では、この数%の医療費が抑制されるだけです。むしろ、受診を我慢して病気が重症化する方が、結果的に医療費は高くつくことになります。早期受診・早期治療こそ、医療費を抑える効果的な方法ではないでしょうか」
−では、負担ゼロに向け、具体的にはどのように取り組んでいきますか。 「医療機関などで手軽に渡せて『ゼロの会』を知ってもらうためのリーフレットを作成しました。これを用いて、さまざまな場所や機会を利用し、会の活動に理解を得る活動を進めています。そして、神奈川だけではなく、各地にゼロの会を立ち上げられたらという考えも持っています。まず何よりも、医療制度を変えるには、国民の圧倒的な支持が必要です。1千万人を目標にしているのですが、今年は本格的に賛同や署名を広げていく方針です。そして、実現に向けて、政府や関係機関に積極的に働きかけていくことにしています」
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