『日々の映像』

2008年01月05日(土)  経済3団体トップの年頭所感

 経団連の御手洗冨士夫会長は「日本経済の次なる『躍動の10年』に向けたスタートを切る年にしたい」との抱負を語った。御手洗冨士夫会長は、05年の1人当たり国民所得が経済協力開発機構(OECD)加盟国(30か国)中で13位と、00年の2位から大きく後退したことを指摘したうえで、「10年以内に世界最高の所得水準を実現する」との目標に向けて「あらゆる政策手段を結集すべき」と呼び掛けている。

 何しろ9年連続で国民所得が減少しているのだから、06年度は経済協力開発機構(OECD)加盟国(30か国)中で16位と更に後退している。
 
 同友会の桜井正光代表幹事は「このまま政治が停滞し、改革が後退すれば、国際社会で日本の存在感や魅力が失われる」との懸念を示している。今年度の最大のテーマは、衆参ねじれによる政治の停滞・混迷だろう。

 結びに2007年12月30日の日経の社説の一文を引用したい。
「急速な少子高齢化と激しい国際競争の中で、国家・社会と国民生活の安定を維持するのは容易なことではない。政治家、企業経営者はもちろん、国民1人ひとりがよほど真剣な努力を傾けないと、社会の安定と信頼感を取り戻すことは期し難い。」

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経済3団体トップが年頭所感、所得水準後退など課題多く
(2008年1月1日10時53分 読売新聞)
 日本経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体は1日、2008年の年頭所感を発表した。
 経団連の御手洗冨士夫会長は「日本経済の次なる『躍動の10年』に向けたスタートを切る年にしたい」との抱負を示した。
 05年の1人当たり国民所得が経済協力開発機構(OECD)加盟国(30か国)中で13位と、00年の2位から大きく後退したことを指摘したうえで、「10年以内に世界最高の所得水準を実現する」との目標に向けて「あらゆる政策手段を結集すべき」と呼び掛けた。
 日商の岡村正会頭は「日本経済が早期にデフレから脱却するには、中小企業全体の底上げを図ることが重要だ」と訴えた。
 同友会の桜井正光代表幹事は「このまま政治が停滞し、改革が後退すれば、国際社会で日本の存在感や魅力が失われる」との懸念を示し、福田首相に構造改革の推進でリーダーシップを発揮するよう強く求めた。

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社説 政治の安定と社会の信頼感を取り戻せ(12/30日経)
 波乱の多かった2007年が暮れようとしている。日本の政治は「ねじれ国会」で停滞と混迷を余儀なくされ、持続的成長をめざす改革努力は緩みがちになった。年金の記録漏れ問題は有権者の政府不信と年金不安を増幅させた。食品などの偽装表示問題が相次ぎ、社会の規律と信頼感も揺らいでいる。

 急速な少子高齢化と激しい国際競争の中で、国家・社会と国民生活の安定を維持するのは容易なことではない。政治家、企業経営者はもちろん、国民1人ひとりがよほど真剣な努力を傾けないと、社会の安定と信頼感を取り戻すことは期し難い。

ねじれ・偽装・年金不振

 今年春、誰が納めたのかが特定できない年金記録が5000万件に達することが明らかになった。厚労省・社会保険庁の無責任さはあきれるばかりだ。国民の間に将来の年金に対する不安が根強くあったが、大規模な年金記録漏れの発覚で国民の行政不信と年金不安は頂点に達し、安倍晋三内閣の支持率は急落した。

 安倍政権の支持率急落に追い打ちをかけたのが「政治とカネ」の問題である。資金管理団体の事務所費問題で国会の追及を受けた松岡利勝農相が5月に自殺し、衝撃が走った。その後農相に就任した赤城徳彦、遠藤武彦両氏も辞任に追い込まれ、政治不信が一段と高まった。

 今年は食品の「偽装」問題が世間を騒がせた。消費期限の過ぎた牛乳を使ったシュークリームを出荷した不二家、牛肉ミンチに豚肉などを混入していたミートホープ、チョコレート菓子「白い恋人」の賞味期限を改ざんした石屋製菓、和菓子の製造年月日を偽装表示した「赤福」、老舗の船場吉兆まで菓子や総菜の消費期限や産地表示を偽装していた。

 偽装は食品にとどまらない。建材大手ニチアスの耐火性偽装が発覚し経営者は退陣に追い込まれた。一昨年発覚した耐震偽装の再発防止策として建築基準審査が厳しくなった結果、今年は住宅着工件数が大きく落ち込み、経済成長率を押し下げた。一連の偽装問題は経済社会の規律の緩みを象徴している。

 与野党の政治決戦となった7月の参院選では、年金記録漏れ、政治とカネの問題に加え、地域格差への不満が噴出し、安倍自民党は歴史的な惨敗を喫した。参院では与野党勢力が逆転し、民主党が第1党となって議長、議運委員長などの重要ポストを占めた。衆院では与党が3分の2以上の多数だが、参院は民主党が完全に主導権を握り、民主党が同意しない限り、法案が1本も通らない「ねじれ国会」が出現した。

 安倍首相は参院選惨敗後も続投したが、政権の命運を賭けるとしたテロ対策特措法延長のメドが立てられず、健康を損ねて9月の臨時国会の所信表明演説直後に突然、政権を投げ出した。後継首相には自民党総裁選で麻生太郎氏を破った福田康夫氏が就任した。

 福田首相は民主党との協調路線を打ち出し、地域格差などに配慮する方針を表明した。しかし、テロとの戦いの貢献策であるインド洋での海上自衛隊の給油活動は中断したまま2カ月が経過し、テロ特措法に代わる給油新法案はいまだに成立していない。秋に本格検討するはずだった税制抜本改革も先送りされた。

 ねじれ国会を理由に国としての重要な意思決定ができない状況が長期化するのは好ましくない。こうした問題意識から福田首相と小沢一郎民主党代表の間で自民・民主の大連立が協議された。この協議は民主党内の支持が得られず、国民にも唐突な印象を与えて不調に終わった。

早期解散で民意を問え

 守屋武昌前防衛次官が逮捕された防衛省汚職事件で政府不信の声は再び高まった。5000万件の年金記録漏れのうち、1975万件の照合作業が難航し、945万件は照合できないことが判明、来年3月までに照合するとした公約と絡んで内閣支持率が急落した。福田政権はねじれ国会のもとで苦しい政権運営が続いている。

 給油新法案は再延長された国会で年明けには与党の3分の2以上の賛成により衆院で再可決され、ようやく成立する見通しだが、来年度予算案を執行するための関連法案をめぐって、ねじれ国会は3月末には最大のヤマ場を迎える。3月末までに予算関連法案が成立しなければ、来年度予算に大きな穴が開く。

 ガソリン税の暫定税率をめぐる与野党激突は避けられそうにないが、国民生活に混乱が生じないよう予算関連法案の速やかな成立が望ましい。その後は衆院を解散し、総選挙で民意を問うことが必要だろう。民意に沿って早急に政治を安定させる枠組みを作り、抜本的な税制改革や年金改革に取り組むことが来年の政治に課せられた最大の課題である。政治の停滞が日本の衰退を招くようなことがあってはならない。

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石田ふたみ