『日々の映像』

2007年09月10日(月) 3人に1人、携帯が辞書代わり=漢字調べ、20代は8割利用

3人に1人、携帯が辞書代わり=漢字調べ、20代は8割利用−文化庁調査
(時事通信社 - 09月07日 18:10)
 
書き方の分からない漢字を携帯電話の変換機能を使って調べる人が3人に1人おり、20代では8割に上ることが7日、文化庁の「国語に関する世論調査」で分かった。一方、「役不足」「流れに棹(さお)さす」などの慣用句を正しく理解している割合は、4年前の調査より増えた。

 今年2〜3月、全国の16歳以上の男女3442人に実施、56%から回答を得た。

 手書きできない漢字を調べる手段を複数回答で聞いたところ、「携帯電話」が35%。20代は79%(男性72%、女性85%)で、10代と30代でも6割を超えた。

 「ワープロなどの漢字変換機能」は21%、「電子辞書」が19%で、特に10代が48%と高率。ただし、最も多かったのは「本の形の辞書」の60%で、使い分けもうかがえる。

 文化庁国語課は「携帯は単なる通信手段でなくなり、文字生活に占める割合が高まっている」と分析している。 

[時事通信社]

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メール使う人ほど日本語力低い?

大学生の1日平均の携帯メール送受信回数と日本語の基礎学力の相関関係を調べると、送受信回数が多い学生ほど日本語テストの点数が低いという結果が出たという。専門家は「携帯メールのコミュニケーションで新たな語彙を獲得するのは難しい」とみる。
2007年05月01日 産経新聞

大学生の基礎学力を調べるプレースメントテスト。日本語力を問うテストを採用する大学は急増している パソコンを自在に操る男子高校生が、ペンを持ったまま途方に暮れる。簡単な漢字を思いだせないために…。

 第29回東京ビデオフェスティバル(日本ビクター主催)の大賞を受けた長野県梓川(あずさがわ)高校放送部制作のビデオ作品「漢字テストのふしぎ」のエンディングだ。

 「とめ」「はね」「はらい」といった漢字テストで正誤を判定する基準は教師によってばらつきがある。そんな実態を追った約20分の作品には、エンディング以外にも、毛筆で字を書く場面など、手書きの重要性を投げかけるシーンが頻出する。

 「パソコンに頼りすぎて『漢字が書けない』という話が生徒から出ていた。手で書くことは、深く考えることにもつながる。このままでいいのか、という問題提起です」と放送部顧問の林直哉教諭は説明する。

 思いもしなかった漢字の書き間違いで恥をかいた人は少なくないだろう。言葉の専門家とて事情は同じだ。『明鏡国語辞典』(大修館書店)の鳥飼浩二・編集委員はワープロ使用歴15年。講演でホワイトボードに文字を書く際は、前もって念入りに確認するようになったという。

 「キーで変換すれば色々な漢字が出てくる。読める字は増えたという人もいるが、書ける字は確実に減ったはず。せめて幼少期には手書きで体に漢字を覚え込ませることが必要なのではないか」

メール送受信回数と日本語力
 押し寄せるIT(情報技術)の波。手書きや対面といった従来型のコミュニケーションの機会が極端に減る一方で、電子メールや携帯メールの利用頻度は増え続ける。

 しかし、携帯メールに詳しい日本大学文理学部の田中ゆかり教授(日本語学)は「(携帯メールのコミュニケーションで)新たな語彙(ごい)を獲得するのは難しい」とみる。そこでのやりとりは親密な間柄の「おしゃべり」に限られるからだ。丁寧な言い回しや敬語といった配慮表現が絵文字や記号に取って代わられることも多く、言葉を尽くして伝える訓練にはならない。

 「短文化」も加速している。田中研究室に在籍していた立川結花さんが平成17年、大学生の携帯メール約400件を分析したところ、1件平均の文字数は約30字で、5年前の調査結果の3分の1にまで減っていた。「相手に悪く思われないためには、30秒以内に返信するのが暗黙のルール。送受信の頻度は上がり、極端な場合、1文字だけのメールがやり取りされることもある」(田中教授)のが実情だ。

 興味深いデータがある。

 独立行政法人メディア教育開発センターは昨年、大学生約1200人の1日平均の携帯メール送受信回数と日本語の基礎学力の相関関係を調べた。「中学レベル」と判定された学生の平均が1日約32回だったのに対し、「高1レベル」は約27回、「高3レベル」は約15回。送受信回数が多い学生ほど日本語テストの点数が低いという結果が出た。

 「言葉足らずなやりとりなので、送受信回数は増える。結果として、読書などの時間が削られ、語彙力の低下を招いているのではないか」

 調査を取りまとめた小野博教授(コミュニケーション科学)の分析だ。

言葉知らないと「あの人の話は分からない」
 本の街、東京・神田神保町にある国語作文教育研究所。所長の宮川俊彦さんは長年、企業や官庁の昇進や入社試験の論文などに目を通してきた“表現の定点観測者”だ。約400社から依頼を受けた昨年は、1000作近くを読んだ日もある。実感するのは「語彙が乏しく、表現力が極めて低下している」ことだ。

 音楽関連の会社が志望者に課した「友情」というテーマの論作文がとりわけ印象に残っているという。「友情は大事」「友達は大切。いつまでも一緒にいたい」…。乏しい語彙で、わずか数行しか書いていないものがかなりの数に上った。

 宮川さんは言う。

 「昔と違って電話やメールがあれば隣近所で協力し合わなくても生きていける。無理にコミュニケーションする必要がないから、知らない言葉に出くわしても『あの人の話わからない』で済ませればいい。そんな環境の変化も影響しているのではないか」

 IT化の流れはいや応なしに進む。新時代に対応した日本語教育はどうあるべきか。明確な答えは、まだ見えてこない。(海老沢類)

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石田ふたみ