『日々の映像』

2007年09月05日(水) デング熱 東南アジアで深刻…蚊が媒介 

ご注意

蚊取り線香 虫よけスプレー、自衛を!

 海外に行くときは、蚊がウイルスを媒介する感染症に注意したい。今年は、高熱や関節痛などの症状が出るデング熱の患者が東南アジアで増加傾向にあるという。旅行者や出張者は自分の身を守るため、虫よけスプレーを使うなど、自分でできる対策をとりたい。

 「デング熱」は、感染した人を刺した蚊が他の人を刺すことでウイルス感染が広がる。蚊はヒトスジシマカやネッタイシマカが知られる。

 熱帯、亜熱帯地域でほぼ毎年流行するが、今年は深刻だ。4月にはインドネシアの首都ジャカルタで非常事態宣言が出されたほか、6月以降はベトナムやタイ、シンガポールなどでも前年同時期比で患者数が増加傾向にあり、死者も増えているという。7月末には世界保健機関(WHO)が警告を出したほどだ。

 蚊の発生が増える雨期は特に注意が必要だが、地域によってその時期が異なるため、渡航先の気候もきちんと調べておきたい。

 流行地は、日本人観光客やビジネスマンが訪れる国も多い。このため、帰国時や帰国後に症状を訴え、デング熱と診断される例が毎年出ている。国立感染症研究所(東京)によると、2001年以降、国内では毎年50人前後の患者が確認されており、昨年は58人を数えた。今年は7月末までに41人の患者が報告されており、例年の患者数を上回る可能性も出ている。

 デング熱にはワクチンがないため予防接種はなく、特別な治療薬もない。同研究所感染症情報センター長の岡部信彦さんは「感染を避けるには蚊に刺されないようにするしかない。長袖を着たり、虫よけスプレーや蚊取り線香を使うなど、自分で対策を考える必要があります」と話す。

 東南アジアでは、都市部での感染が多い点にも注意したい。家庭やホテル、オフィスなどの室内にも蚊は入り込んでくる。ネッタイシマカは、屋内に置かれている植木鉢の受け皿や道路の側溝など、水がたまった場所に発生する。衛生状態が良い都市部でも安心できないという。

 なお、ヒトスジシマカは日本にもいる。温暖化の影響で生息地域は北へ広がり、2003年には盛岡市で確認されている。帰国した感染者の血を吸った蚊がウイルスを運び、デング熱が国内で流行する可能性もゼロではない。

 デング熱ばかりではない。北アメリカでは、蚊がウイルスを運ぶ西ナイル熱に気をつけたい。近年、夏から秋にかけて流行し、高齢者などが死亡することもある。今年は8月末までに、米・カリフォルニア州だけで140人を超える患者が出ている。ワクチンは実用化されておらず、有効な治療薬もないため、デング熱同様の予防対策が必要だ。

 海外から帰国時に体調の異常を感じたら、空港の検疫所などに恐れず届け出ることが大切だ。岡部さんは「蚊がデング熱や西ナイル熱などのウイルスを運ぶ危険な存在でもあるということを知ってほしい」と話す。

 デング熱 感染すると40度近い高熱や発疹(ほっしん)、関節痛などの症状が出るが、1週間ほどで自然回復することが大半。まれに出血熱を引き起こし、ショック死することもある。「デング」の語源はスペイン語の「denguero(気取った)」など諸説ある。これは、関節痛に苦しむ患者の姿が気取って歩く人のように見えたからという。

 ◆感染症の発生状況や注意事項を記した主なサイト

 ▽外務省の海外安全ホームページ(http://www.anzen.mofa.go.jp/)

 ▽厚生労働省の検疫所ホームページ(http://www.forth.go.jp/)

(2007年9月4日 読売新聞)

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石田ふたみ