『日々の映像』

2007年08月16日(木) 中越沖地震の記録 (36)

1、原発被災「非常に重大」9割 中越沖被災地アンケート   朝日新聞
2、「被害は予想下回る」IAEA、柏崎原発の調査結果発表   朝日新聞
3、仮設住宅が完成、148世帯入居 被災した新潟・刈羽村  朝日新聞
4、中越沖地震:柏崎市の高校生ら、避難所でミニコンサート  毎日新聞
5、原子炉内部の被害は依然不明   毎日新聞
6、柏崎原発の内部を報道陣に公開、天井クレーンいまだ動かず 読売新聞
7、9割が「原発の安全性に疑問」 中越沖地震アンケート  産経新聞
8、刈羽ガス復旧遅れ 本管破損や浸水で難航  産経新聞
9、中越沖地震の被災地に保健師派遣 島根県  産経新聞
10、特報 原発増設凍結解除 交錯するそれぞれの思惑  産経新聞



1、原発被災「非常に重大」9割 中越沖被災地アンケート  朝日新聞
2007年08月15日09時54分
 新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発が受けた被害について、被災住民の8割が「非常に重大なこと」と受け止めていることが、民間調査会社による現地調査でわかった。以前は原発に賛成だったのに反対に変わった人も3割おり、安全が確認されるまで再開すべきでないとした人が6割を占めた。トラブルが相次いだ原発への不信の大きさを裏付けた形だ。
 サーベイリサーチセンター(東京都荒川区)などが7月28日から8月3日にかけ、被害が大きかった柏崎市中心部で500人を訪ね、アンケートした。原発を襲った想定外の揺れについて82%、地震後に起きた放射能漏れについて81%、変圧器の火災について76%が「非常に重要なこと」と受け止めていた。
 原発の問題点を複数回答で尋ねたところ、「下に活断層があること」「トラブルが多すぎること」をそれぞれ63%、「東京電力の報告・情報伝達が遅すぎること」を62%が挙げた。
 安全性について「事故後も信頼は変わらない」と答えたのは9%に過ぎなかった。原発への賛否では「賛成だったが、反対する気持ちに変わった」が34%、「賛成に変わりない」は21%。以前から反対の人は39%で、地震を境に賛否が逆転した形になっている。
 複数回答で原発の被災へのとらえ方を聞くと、安全性に疑問を持ち「廃止すべきだ」としたのが27%、「確認されるまで稼働すべきではない」が60%だった。



2.「被害は予想下回る」IAEA、柏崎原発の調査結果発表  朝日新聞
2007年08月15日10時52分
 国際原子力機関(IAEA)は14日、新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発の調査結果についてプレスリリースを発表、被害は予想を下回るものだったが、地震が原子炉や施設全体に与えた影響については、今後の詳細な調査が必要だとしている。報告書は数日中に公表される。
 IAEAのエルバラダイ事務局長は「調査結果と日本側の分析は、世界中の原発に対し、肯定的な面も、否定的な面も含め、重要な教訓を含む内容だ」と述べた。
 IAEAは現地調査を4日間行い、地震時の記録などを分析。今回の被害は原子炉本体や原子炉の安全に関するシステムに影響を与えない部分に限られていたようだとし、緊急時の安全機能も正常に働いたとの結論に達した。放射能漏れについては、東京電力の記録や分析を調べた結果、健康や環境に影響が出る量をはるかに下回る量だったとする日本側の結論が裏付けられたという。
 この結果、IAEAは「被害は予想を下回るものだった」としている。ただ一方で、IAEA調査団は原子炉内部の状態などを確認しておらず、東京電力、さらに経済産業省原子力安全・保安院が進めている調査や詳細な分析が重要だと指摘。原子炉格納容器、炉心、燃料棒等の精密検査はまだ進行中であるとして、判断を保留した。
 また地震が施設に与えた影響については、施設の一部に、長期的な安全操業に影響がでる可能性もあるとしている。問題となりうる部分については、施設の交換を早めに行う必要があるかどうかを決めるため、今後、追加的な工学的分析を行うことを考慮すべきだとしている。



3、仮設住宅が完成、148世帯入居 被災した新潟・刈羽村  朝日新聞
2007年08月15日20時01分
 新潟県中越沖地震で被災した刈羽村で15日、住まいを失った人たちの仮設住宅200戸が完成し、148世帯515人が入居した。被災者は新たな生活を始める一方、仮設暮らしがいつまで続くのかという不安がつきまとう。仮設住宅の使用は最長2年間。しかし、阪神淡路大震災や中越地震では2年を超えても住み続ける人が相次いだ。長期化する仮設生活から抜け出すには、新たな住まいの再建がいかに早く進むかにかかっている。
 「2年後が心配だ」。柏崎市内の仮設住宅に母(69)と入居した同市西本町3丁目の配管業、田村浩二さん(45)の表情は暗い。借家だった自宅は全壊し、家財道具も失った。公営住宅の入居を申し込んだが空きはない。「仮設にこれだけの人がいるのに、今後空くのだろうか」と話す。
 6人家族で入居予定の刈羽村の女性(45)は、全壊した自宅に通じる道路の一部も川の護岸とともに崩れた。河川や道路の工事が終わらなければ、自宅に手をつけられない。「2年で出られるのかしら。中学生の子の受験勉強もあるのに」
 仮設住宅の使用期間は建築基準法に基づく2年。特別措置法が適用され、使用期限が延長された95年の阪神淡路大震災では、最大4万6617世帯だった入居者がすべて退去したのは5年後の00年1月。2972世帯が入居した04年の中越地震では、3年近くたった今も183世帯が残る。
 仮設生活が長引く最大の理由は、住宅再建が進まないことだ。国の被災者生活再建支援法による最大300万円の援助は、住宅本体の建て替えや補修には使えない。被災者向け公営住宅の完成が遅れたり、大工への注文が集中して工期が遅れたりするケースも多い。
 新潟県は今回の地震で、中越地震と同様、独自の支援制度を創設した。「半壊」以上の世帯に、住宅の新築・補修にも使える最大100万円の補助金を出す。泉田裕彦知事は「地元に偏りがちな大工を、地元以外の業者も利用してもらえるような紹介の仕組みも考えたい」と住宅再建の円滑化を進める考えだ。
 民主党などは、国が見直しを検討している被災者生活再建支援法について、住宅本体への適用や支給額の引き上げなどの改正を求めている。



4、中越沖地震:柏崎市の高校生ら、避難所でミニコンサート  毎日新聞

 新潟県中越沖地震で最も大きな被害を受けた柏崎市で15日、県立柏崎総合高校の生徒らが避難所として使用されている半田コミュニティセンターの被災者らを元気づけようと、ミニコンサートを開いた。
 生徒たちは背中に「負けるものか」とローマ字で書かれた白いTシャツを着て、美空ひばりさんのメロディーや映画音楽などをブラスバンドで披露した。最後は楽器を置いて、全員が起立して童謡の「ふるさと」を合唱した。聞いていた30人ほどの被災者らも一緒に口ずさみ、復興を祈った。
毎日新聞 2007年8月15日 21時19分 (最終更新時間 8月15日 21時33分)



5、原子炉内部の被害は依然不明  毎日新聞
 東京電力は15日、被災した柏崎刈羽原発(柏崎市、刈羽村)を報道陣に公開した。地震で破損した排気ダクト周辺では足場が組まれるなど修理が進められているが、安全上もっとも重要な原子炉内部の被害状況は依然として判明しておらず、高橋明男所長は「運転再開については議論できる状況ではない」と述べた。
 放射性物質を含んだ水が外部に漏れた6号機では、地震の揺れで使用済み核燃料プールの水があふれた4階の放射線管理区域が初公開された。
 床にあふれた水はふき取られたが、原子炉圧力容器のふたの開閉や燃料の出し入れに使う天井クレーンは壊れたままで、破損部は白いシートに覆われていた。
 東電の担当者は「まずクレーンを修理しないと原子炉の中は見られない。時期のめどは立たない」と話した。地震の前に原子炉圧力容器のふたを開けていた1号機は、22日ごろから炉内の状況の点検を始めるという。
 火災が起きた3号機の変圧器では、基礎部分にあるコンクリート製防油堤に、幅10〜20センチの亀裂が変圧器を取り囲むように発生していた。
 高橋所長は「一番の反省点は(3号機の)火災。原子炉の安全停止を一生懸命にやったが、もう少し火災をケアすればよかった。(住民に)ご心配をおかけしてしまった」と、1カ月を振り返った。【西川拓】
毎日新聞 2007年8月15日 20時46分 (最終更新時間 8月15日 21時29分)



6、柏崎原発の内部を報道陣に公開、天井クレーンいまだ動かず  読売新聞
 東京電力は15日、柏崎刈羽原子力発電所6号機の原子炉建屋内部を報道陣に公開した。
 使用済み燃料プールの水があふれた作業フロアは、床面の放射性物質をぬぐう作業が一部で終わり、あふれた水を詰めた袋は片付いていた。しかし、3か所で破損が確認された天井クレーンは動かない状態が続いている。
 1〜5号機で見つかった主排気筒とダクト接続部のずれの点検は9月上旬から始まるが、そのための足場が組まれつつあった。
 詳細な点検計画について、高橋明男所長は「原子炉の安全な停止、被災状況の把握に全力を挙げており話せる状況にない」とした。
 国際原子力機関(IAEA)が14日発表した「損傷は予想を下回った」などとする見解に、高橋所長は「実態をよく見てもらうという姿勢が評価していただけた」と話した。新潟県の泉田裕彦知事も15日、「事実上の安全宣言だ」とし、「風評被害が軽減されることを期待している」と述べた。
(2007年8月15日21時42分 読売新聞)



7、9割が「原発の安全性に疑問」 中越沖地震アンケート   産経新聞
 新潟県中越沖地震の被災者を対象に民間調査会社が実施したアンケートで、「今回のような大地震が起きるとは思わなかった」と83%の人が回答したことが15日、分かった。原子力発電の安全性に疑問を抱いている人は89%にのぼった。
 「サーベイリサーチセンター」(東京都)が7月28日〜8月3日、新潟県柏崎市の住民500人から聞き取り調査した。
 地震への意識についての質問に、「自分の居住地域は安全と思っていた」人は地震前は61%だったが、地震後は19%となった。
 3年前の新潟県中越地震の経験から「そのときは大丈夫だったので今回も大丈夫と思った」と回答した人は76%。中越地震後、「防災対策を進めた」と回答した人は20%にとどまっていた。
 東京電力柏崎刈羽原発に対しては「発電所の下に活断層があることが問題」が63%、「東電の報告や情報伝達が遅い」が62%だった。
 今回の原発事故を受け、60%が「安全性に疑問があり、安全と確認されるまで稼働すべきではない」と回答した。



8、刈羽ガス復旧遅れ 本管破損や浸水で難航 中越沖地震   産経新聞
 新潟県中越沖地震で、柏崎市の都市ガス復旧にメドがついた一方、刈羽村の復旧は遅々として進んでいない。ガスの本管が破損し、水の浸入が著しいためだ。2市村を管轄する同市ガス水道局は18日に復旧の方針を示すが、「来月以降にずれ込む可能性が高い」とみており、村民は不安を募らせている。
 都市ガスは柏崎市と刈羽村の約3000戸の復旧が困難とみられていた。旧柏崎市は14日までで約95%まで進み、今月末までに復旧する見込み。一方、刈羽村は復旧対象戸数約1700戸のうち、約1100戸しか復旧しておらず、復旧率は14日までで約65%にとどまり、同市ガス水道局は「今月中の復旧は難しいだろう」と話す。
 工事を指揮する日本ガス協会によると、村内の県道黒部柏崎線沿いに埋設された本管の破損が激しいという。それに加え、地下水の水位が高く水が管に入りやすい▽道路のアスファルトが厚く、切断しにくい−など複数の要因が重なり、工事が難航している。
 地震発生以来、卓上ガスコンロを使って自宅で調理を続けている同村刈羽の佐藤千恵子さん(72)は「夫婦2人でガスボンベを20本以上使った。暑いうちはお風呂も行水でもいいが、涼しくなってくると困る」と不安を漏らす。
 平成16年の中越地震で自宅が半壊、補修したにもかかわらず今回の地震で全壊した同村刈羽の会社員、遠藤春治さん(53)は「村内にある会社の寮を借りて寝泊まりしているが、ここもガスが使えず食事は弁当かインスタント食品ばかり。早く使えるようになってほしい」と祈るように話した。
 同協会は、家屋が倒壊し掘削用重機が進入できない場合は別ルートからガス管を配管する▽水が抜けない場合は新たにガス管を埋設する−などの打開策を検討し、18日に方針を示す。同協会は「災害復旧でこのような対応は珍しいケース。1日も早い復旧を目指す」と話している。
(2007/08/15 02:21)



9、中越沖地震の被災地に保健師派遣 島根県
 新潟県中越沖地震の被災地に保健師を派遣 島根県は、新潟県中越沖地震の被災者支援にあたる保健師2人と事務職員1人を現地に派遣、13日から活動を始めた。来月2日まで滞在し、柏崎市内で被災・避難者の健康相談や健康チェックなどを行う。県は今後、1班当り保健師2人の4班8人を被災地に派遣する方針。
(2007/08/14 02:40)


10、特報 原発増設凍結解除 交錯するそれぞれの思惑  産経新聞
 東京電力による原発のトラブル隠しが発覚した平成14年以降、福島県双葉町にある福島第1原発7、8号機の増設を凍結していた双葉町議会が今年6月、凍結を解除した。ところが7月、新潟県中越沖地震により柏崎刈羽原発で放射能漏れが発生。「凍結解除は拙速だったのか」との声も聞こえる。財政難を原発増設で乗り切りたい双葉町に対し、反対姿勢を示す福島県。複雑な思いを抱える町民、さらには増設を望む国と東京電力…。凍結解除をめぐってそれぞれの思惑が入り乱れている。(小野田雄一)
 「安全・安心の観点からみて、増設は議論すべき段階ではない。県としては協力できない」−。
 6月19日。福島県庁副知事室。双葉町議会の「凍結解除決議」を受けて、電源立地等初期対策交付金の申請への協力を求めに訪れた双葉町の井戸川克隆町長は、内堀雅雄副知事にそう拒絶され、苦い表情を浮かべた。
 「町の財政事情は厳しい。ご配慮頂きたい」。再度の理解を求めたが、副知事は「県の見解は先ほど示した通り」。議論は平行線だ。「県の協力が得られない場合、町単独で申請する選択肢もある」。井戸川町長は声を絞り出した。
 井戸川町長は平成17年の町長選で「町政の変革」を掲げ、過度の原発依存体質を作り上げた前町長を批判。前町長の後継者を破って当選した。
 だが前町長が原発増設を見越し、大規模な事業を繰り返して悪化した財政は深刻だった。平成17年度の同町の実質公債費比率(収入額に対する借金返済額の割合)は27.3。全国の自治体でワースト13だった。
 同町の税収の約50%は原発関連の固定資産税が占めている。さらに同町の就労者の3人に1人は原発関連といわれるほど、原発依存は根深い。
 交付金申請が通れば、今後4年間で39億2000万円が町に入る。「県との対立もやむなし」という町の姿勢には、町の財政健全化への不退転の決意が込められている。
 町民は、町が増設の方向に向かうことについて、複雑な思いを抱いているようだ。
 「どんなに安全といわれても不安は残る。増設しなくて済むならそれが一番いい」(75歳主婦)、「増設を見越した町運営に見える。税金の無駄遣いをなくすのが第一」(53歳女性飲食店経営者)、「原発で町に入るお金も大事だが、健康や命には代えられない」(52歳男性会社員)。
 取材では反対意見が多く聞かれた。
 また増設を受け入れる人々も「この町には原発しかない。原発がなくなれば若い人はいなくなる。増設はやむを得ない」(60歳無職男性)、「どんな仕事にも危険はある。生活がかかっている以上、危険をどう減らすかを考えるしかない」(51歳自営業女性)などと、積極的な賛成ではなかった。
 町民の意識の背景にあるのは、中越沖地震による放射能漏れだ。話を聞いた多くの町民が放射能漏れに触れ、「人体に影響ないレベルだから良いというわけではない。そもそも漏れるのがおかしい」(32歳男性会社員)、「町はもう一度、凍結について考えてほしい」(63歳無職男性)などの意見も聞かれた。
 「双葉町の凍結解除決議は大きな一歩で、大変ありがたい」。東京電力福島事務所の松井敏彦所長は8月7日、福島市内のホテルでそう話した。
 同原発の1号機は運転開始から35年。老朽化が危惧(きぐ)されており、東京電力にとって7、8号機の増設は悲願となっている。
 また資源エネルギー庁も「県と町との協調態勢が築かれることが望ましいが、町単独での申請がなされた場合でも、交付金を出すことになるだろう」とし、凍結解除を肯定的に受け止めている。
 双葉町とともに増設などを凍結していた立地3町と同町で構成する「県原発所在町協議会」は、今年5月の総会で凍結解除の方向を目指すことで合意している。立地当事者の双葉町が最初に凍結を解除したことで、今後、各町でも凍結解除が進む公算が大きい。
 本格的な増設に向けた動きが加速するとみられるが、その後は町民に対する公開ヒアリングなどの手続きが待っている。着地点はまだ当分、霧の中だ。
 ■電源立地等初期対策交付金 発電所や放射性物質最終処分場などの建設を検討している自治体が、立地可能性調査などを経た後で受けられる国の交付金金。道路などインフラ整備をはじめとして、公共施設の建造などに広く充てることができる。
 双葉町は同調査をすでに終えていたが、その後に増設を凍結したため、交付金申請をしていなかった。同町の場合、平成19年度内に申請が通れば、1年につき9億8000万円、22年までの4年間で計39億2000万円が交付される。
 交付には、(1)都道府県のみへの交付(2)都道府県と地元自治体への交付(3)地元自治体のみへの交付−の3つのルートがある。(2)の場合は都道府県側の同意が必要なため、現段階で双葉町は(3)を選んだ。
(2007/08/15 02:15)



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石田ふたみ