『日々の映像』

2007年08月09日(木) 中越沖地震の記録 (30)

1、中越沖に浮上の古木は5千年前のもの 山形大教授ら分析 朝日新聞
2、中越沖地震:土砂災害の7カ所、復旧へ緊急工事 国交省  毎日新聞
3、「地盤強化が必要」柏崎刈羽視察の原子力安全委員長が指摘  読売新聞
4、「母乳出ない」「子供が甘える」地震被災で母子にストレス  読売新聞
5、中越沖地震と台風4号による災害、政府が激甚災害に指定  読売新聞
6、「激甚見送り」で上越に不満  新潟日報
7、柏崎原発は「廃炉すべき」  新潟日報
8、地震で被害の寺社が復活へ  新潟日報
9、風評被害対策、県に協力要請  新潟日報
10、柏崎原発調査 原子炉被害の解明を急げ(社説)  新潟日報




1、中越沖に浮上の古木は5千年前のもの 山形大教授ら分析 朝日新聞
2007年08月08日08時39分

 新潟県中越沖地震の発生後、日本海の震源地付近の海域で発見された大量の古木は、約5000年前のものだったことが、山形大学の桜井敬久教授(宇宙線物理学)らの測定調査でわかった。木の種類は不明だが、泥などに長年埋もれていた古木が、地震に伴う海底の液状化現象で浮き上がっているとみられる。

5000年前のものと分かった古木。地震後に海底から浮上した=7月23日、新潟県出雲崎町の出雲崎漁港で
 新潟県は水中カメラによる海底探査で、柏崎市北方沖の震源地付近から出雲崎町沖合にかけて、長さ約20キロ、幅約1キロにわたって大量の古木があることを確認。現在もたびたび浮上しており、これまでに回収したのは約40トン分になるという。

 新聞報道を受け、桜井教授は7月末に自ら現地を訪れて古木を採取。県水産海洋研究所や東京大学の協力も得て、3サンプルについて、時間の経過とともに減っていく炭素14の割合を調べる加速器質量分析法で年代を分析した。その結果、古木は4500〜5400年前のものだったという。

 桜井教授は「古木の年代や種類を知ることは、浮き上がってきた原因を調べる上で有効だ」と話している。

 古木をめぐっては、マダイ漁の網に引っかかるなど漁業に影響が出ていて、地元の漁協が週2回、回収作業を続けていく。水産庁も回収に補助金を出すことを決定。県水産課は「漁への被害を最小限に食い止めたい」としている。処分方法にめどは立っていない。
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2、中越沖地震:土砂災害の7カ所、復旧へ緊急工事 国交省  毎日新聞
 新潟県中越沖地震で、国土交通省は7日、地滑りなど大規模な土砂災害が起きた同県柏崎市と刈羽村の7カ所について、応急工事が必要として「災害関連緊急砂防等事業」として対応することを決めた。国と県が計約21億円を支出し、今年度中の復旧工事の完了を目指す。
 事業を行う場所は、JR信越線青海川駅付近の線路が約50メートルにわたって土砂で埋まった現場など同市内の6カ所と刈羽村の1カ所。土砂を取り除いたうえで、新たな崩壊を防ぐ。
毎日新聞 2007年8月7日 19時47分



3、「地盤強化が必要」柏崎刈羽視察の原子力安全委員長が指摘  読売新聞
 国の原子力安全委員会の鈴木篤之委員長は7日、新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原子力発電所を視察した。
 鈴木委員長は「原子炉そのものは安全が保たれているが、耐震基準の緩い構造物は地盤を強化するなどの対策が必要」と述べ、全国の原発で現在進めている耐震性確認でも、原子炉建屋などの重要施設以外の施設について地盤強化を求めていく考えを示した。
 鈴木委員長は東電から主な被害状況や、原子炉、非常用発電機など重要機器の状態について説明を受け、施設の外観や建屋内の被害状況を視察した。鈴木委員長は「あれほどの地震に見舞われたにもかかわらず、原子炉は安全に停止し、炉内から直接、放射能が出ることはなかった」と、安全機能が正常に作動したことを強調した。
(2007年8月7日23時29分 読売新聞)



4、「母乳出ない」「子供が甘える」地震被災で母子にストレス  読売新聞
 新潟県中越沖地震の被災地・柏崎市で、妊婦や小さい子供を持つ母親から、「母乳が出ない」「子供が甘えるようになった」などの相談が相次いでいる。
 地震への恐怖や震災後の不自由な生活にストレスを感じているのが原因とみられ、日本助産師会新潟県支部では「母親も赤ちゃんも精神的な安定が大切。気軽に相談をしてほしい」と呼びかけている。
 柏崎市の避難所に常駐している看護師や、市健康管理センターの助産師のもとには連日、赤ちゃんを持つ母親らが相談に訪れている。
 相談件数は、市が集計を始めた7月21日から8月7日までに、電話も含めて約90件に上った。内容は、〈1〉母乳が出なくなった〈2〉赤ちゃんのあせもや湿疹(しっしん)〈3〉甘え――などが多いという。
 同センターを訪れた主婦(29)は1歳2か月の長男が、母親に抱きついたまま離れない“赤ちゃん返り”について相談した。自宅の倒壊は免れたが、室内は今も家財道具などが散乱。後かたづけのため母親がそばにいない時間が増えてしまったという。
 助産師らから、「甘えさせてあげることも大切」とのアドバイスを受けた主婦は、「早く元の生活に戻そうと焦っていた。安心した」と話した。
 7か月の二男を連れて相談に来た別の女性(32)は震災以降、母乳が出にくくなり、二男もあまり飲まなくなった。
 ボランティアとして活動する夫の帰宅は遅く、自宅の後かたづけは進まない。離乳食に切り替えようとしたが、ガスが復旧しない中、「カセットコンロ1台で、家族の食事と離乳食を作るのは難しい」と話し、母乳が出やすくなるマッサージを受けた。同支部によると、2004年の中越地震でもストレスで体の変調を訴える母親らが目立ったという。
 中越地震の時にボランティアで現地入りし、今回も相談に応じている助産師の高島葉子さん(55)は「育児の悩みに地震という心配事が増え、体に変化が起こるのはやむを得ない面がある。母親は子育てから少し離れる時間も必要」と呼びかけている。
(2007年8月8日3時2分 読売新聞)



5、中越沖地震と台風4号による災害、政府が激甚災害に指定  読売新聞
 政府は7日午前の閣議で、新潟県中越沖地震と台風4号などによる豪雨・暴風雨災害について、激甚災害法に基づく激甚災害に指定することを正式決定した。
 激甚災害制度は激甚災害法に基づき、災害復旧に要する費用が一定の基準を超える場合、政府の指定により、復旧事業への国庫補助率の引き上げなどが実施される。
 中越沖地震では新潟県長岡市、柏崎市、出雲崎町、刈羽村の4市町村が対象で、復旧事業費の見込み額は公共土木施設243億円、農地17億円、中小企業関係438億円。
 豪雨・暴風雨災害は6月11日から7月17日にかけて、梅雨前線や台風4号によって熊本、宮崎、鹿児島各県などを中心に大きな被害をもたらしたもので、復旧事業費見込み額は129億3000万円。
(2007年8月7日10時49分 読売新聞)



6、「激甚見送り」で上越に不満
 政府は七日、中越沖地震で被災した柏崎市、刈羽村など県内4市町村を激甚災害法に基づき局地激甚災害に指定することを決定したが、上越市は柿崎、吉川両区を中心に家屋や農地、公共施設の被害が拡大しているにもかかわらず、今回の指定は見送られた。被災地からは「置き去りなのか」と怒りの声が上がっている。

 同市では6日現在、住宅約25600棟、土蔵や車庫など約1500棟が損壊。同市全体の被害総額(同日現在の概算)は約50億円。このうち、集落排水施設など農林水産業関連で約21億3000万円、市道など公共土木関係で約12億1000万円の被害が発生した。指定見送りについて、内閣府(防災担当)は「現時点の被害見込額が、指定基準をクリアしなかった」と説明する。

 今回の見送りを受け、生活再建に追われる被災地からは不満の声が相次ぐ。柿崎区の被災者男性(53)は「柏崎ばかりが注目され、柿崎の被害が埋没してしまう」と危機感を口にする。被災した同区選出のある市議は「柏崎市や刈羽村と共同で(指定を)求めていく方法はなかったのか」と憤りをあらわにした。

 さらに、激甚災害指定を求める木浦正幸・同市長の要望のタイミングが結果として、他の被災地に後れを取ったことにも批判は集中している。

 木浦市長は6日に、県庁で復旧支援を要請。8日には、内閣府などを訪れ激甚災害の追加指定などを要望する予定だが、7日の指定決定には間に合わなかった。

 県関係者は「上越市の(指定に向けた)初期の動きは他の被災地に比べ、迅速だったとはとても言い難い」と指摘する。

 木浦市長は「これまでも、指定要望は水面下で行って来た」と反論。国に対し、早期の追加指定に加え、指定の対象ではない農業集落排水施設について、復旧工事の補助率拡大を求めていく考えだ。
新潟日報2007年8月8日



7、柏崎原発は「廃炉すべき」  新潟日報
 中越沖地震によって原子炉建屋のクレーン破損など機器の損傷が相次いだ東京電力柏崎刈羽原発について、地震が原子力施設に及ぼす危険性を指摘している研究者らが7日、県庁で会見し、運転再開に反対を表明した。「再起動の議論は論外で、廃炉しかない」など、それぞれの立場から反対の根拠を述べた。

 会見したのは、地震学や原子炉工学の研究者らでつくる「地震と原発」研究会と、柏崎刈羽原発反対地元3団体のメンバー。

 国の耐震指針の改定作業に加わった石橋克彦・神戸大教授(地震学)は「新指針に照らすと、柏崎刈羽原発の敷地基盤は(多くの構造物が損傷し)原発立地には不適格だ」と指摘。同原発周辺では地震活動が活発化しているとし「傷んだ原発を運転すれば、将来の大地震で大事故に至る可能性もある」と強調した。

 井野博満・東大名誉教授(金属材料学)は「(同原発は)設計上の想定を超えて揺れ、原子炉内の重要機器がひずみを受けた可能性が高い。金属材料の性質が変化し、当初の設計強度を保障できない恐れもある」と説明。

 原子炉圧力容器設計の経験がある科学ライターの田中三彦さんも「内部構造物のゆがみを確認するには取り外しや切断が必要になることもあるが、東電や国は計算で推定しようとしている」と批判した。

 一方、3団体は県、柏崎市、刈羽村に対し「国に設置許可の取り消し、東電に設置許可の返上を求めること」を要望する声明を発表した。
新潟日報2007年8月7日



8、地震で被害の寺社が復活へ  新潟日報
 中越沖地震で本堂全体が倒壊寸前まで大きく傾き、解体を余儀なくされそうだった柏崎市の寺社が、ボランティアらの協力で曳(ひ)き起こされ、よみがえることになった。取り壊しを覚悟していた住職一家や檀家はお盆を前に復元のめどが付き、感激している。

 同市比角1の市街地にある延命寺(宇佐美澄彦住職)。中越沖地震で本堂がひねるように傾き、柱が20度ほど斜めになった。宇佐美住職らは本尊や仏像を運び出したが、本堂の修復はあきらめていた。

 しかし、全国から訪れたボランティアらが修復を提案し、中越地震などで神社や仏閣を直した工事業者を紹介。ワイヤや丸太で倒壊しないよう固定した上で、近く曳き起こして原形復旧することになった。修復費は1千数百万円の見込み。

 住職の妻礼美子さん(53)は「解体、新築には何億円もかかり、もう駄目だと思った。費用も予想よりずっと低額で、元通りになるのが夢のよう」と涙ぐみながら語る。

 延命寺ではお盆に備え、約80基の墓のうち地震で倒れた20基を7日までに全部起こした。

 「お墓参りの皆さんに本堂修復を報告したい」と礼美子さん。近所に住む檀家の加藤貞子さん(66)は「本堂もお墓も毎月お参りする心のよりどころ。直ることになって本当によかった」と胸をなで下ろした。

 修復を勧めた神戸市のボランティア吉村誠司さん(42)は「中越地震などで直せる家や寺を急いで解体して後悔した人がいたので、今回はすぐに復旧をあきらめないよう呼び掛けている」と話している。
新潟日報2007年8月7日


9、風評被害対策、県に協力要請  新潟日報
 中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発の火災や放射能漏れなどの影響で、風評被害が深刻だとして、県旅館組合(野沢幸司理事長)は、東電に対し、同社や関連企業の従業員が休暇中に県内旅館を利用するよう働きかける方針を決め、7日、県に協力を要請した。

 同組合は、来週にも東電側へ今秋の誘客に向け、具体的な対策を取るよう求める。

 同組合には県内のホテルや旅館約750軒が加盟。組合によると、これまでに約5万人のキャンセルがあり、今秋の予約も例年より大幅に減っているという。野沢理事長は「(利用者激減は)東電の対応が悪すぎたことが大きい」と述べた。

 県庁に泉田裕彦知事を訪れた野沢理事長は「夏だけでなく秋にも被害が出るようでは大変困る。歯止めをかけるため県に協力してほしい」と要望。県に、東電への働きかけのほか、被災者を県内旅館に招待できるように助成を求めた。観光キャンペーン強化や、信頼できる機関による「安全宣言」の必要性なども訴えた。

 泉田知事は「(県外へ)正しい情報をきちんと発信していくことが大事。引き続きバックアップしていく」と述べた。

 東京電力によると、同社の従業員は約3万8000人。
新潟日報2007年8月7日



10、柏崎原発調査 原子炉被害の解明を急げ(社説)  新潟日報
 中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発の揺れは、国内の原発では最大で、世界でも前例のないものだったことが明らかになった。
 東電の発表によると、これまでに発生したトラブルは、法令などで報告が義務付けられている十件をはじめ、合わせて千二百六十三件に上る。
 放射性物質の大気中、海中への放出や大量の雨漏り、海水の流入が起きている。中でも気掛かりなのは、耐震構造の原子炉建屋内にまで影響が及んでいることだ。
 原子炉の真上に設置され、核燃料などをつり上げるためのクレーンの車軸が破損した。ふたのあいた原子炉からは水があふれた。原発の心臓部でのトラブルは想定外の事態である。
 原子炉本体が損傷していないかどうか、点検が急がれる。東電の目視点検や県の技術委員会の視察では、異常は見つからなかったという。その技術委座長は、原発被災を「歴史的実験」と述べて辞任した。どんな視点で視察したのか疑わざるを得ない。
 今回の地震では七基の原子炉すべてで設計時の想定を大幅に上回る揺れを記録した。揺れの強さを示す加速度は、3号機で想定の二・五倍の二〇五八ガルに達したのをはじめ、五基で一〇〇〇ガルを超えた。
 超音波やエックス線などを用いた非破壊検査で、隔壁の深部まで徹底的に調べる必要がある。調査を東電に任せるのではなく、国や県が主導して行うべきだ。
 想定外の負荷が掛かった場合、原子炉はどのような影響を受けるのか。未点検の原子炉内の機器や配管部分に、目に見えない変形やねじれなどが生じている恐れはないか。多角的な調査が欠かせない。
 地震による原発被害の問題点を分析し、対策を検討する経済産業省の調査対策委員会が先月三十一日に初会合を開いた。八日の現地調査を手始めに、消防体制や耐震性評価の妥当性、機器の安全評価などを検討する。
 地震発生から一カ月近くになろうとしている。腰を上げるのが遅すぎるのではないか。
 六日からは国際原子力機関(IAEA)の現地調査も始まる。国際的な評価に耐え得る客観的なデータを一刻も早く示すべきだ。原子炉の安全宣言がない限り、地元の不安は消えない。
 航空機や鉄道の事故には、対応した専門調査委員会が常設されている。巨大システムである原発に同様の調査委がないのは解せない。
 事故やトラブルが起きることを前提に、国の体制を整えるべきだ。緊急対応策ができていないという点では、国も東電と同じである。

[新潟日報8月4日(土)]

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石田ふたみ