『日々の映像』

2007年08月01日(水) 中越沖地震の記録 (22)

1、地盤沈下の対策強化、全原発に原子力安全委が要請  読売新聞
2、鎮圧後も出動指令、住民救助要請断る…原発火災で消防混乱  読売新聞
3、東電副社長が柏崎原発「駐在」に、トラブル続きで赴任  読売新聞
4、柏崎、災害続きで廃業商店も  新潟日報
5、避難所の被災者、疲労色濃く   新潟日報
6、被災支援の使途拡大両論併記  新潟日報
7、子どもに避難生活のストレス  新潟日報
8、被災地の水道、全面的に復旧 地震から15日ぶり
9、東電、原発停止で追加費用4千億円 経常利益を減額修正  朝日新聞
10、原発停止が東電痛撃、業績見通しを大幅下方修正   読売新聞



1、地盤沈下の対策強化、全原発に原子力安全委が要請  読売新聞
 新潟県中越沖地震によって、東京電力柏崎刈羽原子力発電所でトラブルが相次いだのを受け、政府の原子力安全委員会(鈴木篤之委員長)は30日、トラブルの原因になった地盤沈下の対策強化を全原発に求めるとともに、消火設備に関する審査指針も改定する方針であることを明らかにした。
 原発の耐震指針では、建物や機器の重要度に応じてクラス分けをし、そのクラスごとに強固な地盤に設置するなどの対策を求めている。しかし、今回の地震では、火災が発生した変圧器など重要度の低い建物や機器が設置された地盤が、大きく沈下し、大きなトラブルにつながった。同委員会では、重要度の高い施設だけでなく、低い施設の地盤の強さも改めて検証し、必要な補強を行うよう、全原発に要請した。
(2007年7月30日23時12分 読売新聞)



2、鎮圧後も出動指令、住民救助要請断る…原発火災で消防混乱  読売新聞
 新潟県中越沖地震で起きた東京電力柏崎刈羽原子力発電所の変圧器火災で、柏崎市消防本部が鎮圧後も相次いで消防車を出動させ、住民の救助要請に十分応えられなかったことが30日、わかった。
 原発火災と地震などとの複合災害を想定していなかったため、指揮が混乱。市消防本部は体制やマニュアルを見直す考えだ。総務省消防庁によると、原発を抱える他の自治体も複合災害を想定しておらず、原発事業者の自衛消防体制の不備に加え、新たな課題が浮上した。
 変圧器の火災は、16日午前10時13分の地震直後に起きた。直通電話が使えず、東電は14分後に119番通報。本部は原発消防活動計画(マニュアル)に従い、車両9台を市消防署と2分遣所から出動させようとした。しかし、市民からの救助要請などで車両や隊員が出払っており、発電所側に「自衛消防隊で対応してほしい」と要請。午前11時になって化学消防車1台(隊員5人)を出動させた。
 化学消防車は30分後に到着、10分後に火の拡大の恐れがない「鎮圧」状態となった。しかし、現場は無線が届きにくく、本部は状況を把握できないまま、続いて3台(隊員計12人)を出動させた。3台は午後0時10分の「鎮火」の前後に到着、いずれも消火活動をしなかった。
 一方、原発火災が鎮火するまでの約2時間に本部が受けただけで救助要請などが130件以上あった。しかし、本部は「隊員や車両が足りず断ったケースも多かった」とする。
 市消防本部のマニュアルでは、複合災害を想定しておらず、隊員や車両が足りない状況の訓練はしていなかった。今回、無線の不感地帯で連絡を中継する指揮車は別の現場へ出るなどしており、原発へ派遣できなかった。
 市消防本部は「『鎮圧』を把握していれば追加出動は取りやめたはずだが、混乱で無線のことまで考えてなかった。経過を分析し、体制やマニュアルなどを見直したい」としている。
(2007年7月31日3時1分 読売新聞)



3、東電副社長が柏崎原発「駐在」に、トラブル続きで赴任  読売新聞
 新潟県中越沖地震でトラブルが相次いだ東京電力柏崎刈羽原発に30日、同社の武黒一郎副社長が「駐在」として赴任した。
 同原発の高橋明男所長が現場の復旧作業に追われているため、被害や復旧状況を把握し、地元自治体や関係機関との折衝にあたり、広報体制の強化も図るという。常務以上の役員が、原発駐在として派遣されるのは異例。
 同日朝、着任した武黒副社長は、原発内の事務本館前で、職員を前に「地域の信頼が揺らぐ未曽有の試練に全力で立ち向かい、災害に強い発電所にするため、総力を結集して取り組みたい」とあいさつ。この後、刈羽村役場、柏崎市役所を訪れ、着任を報告した。
 柏崎市役所では、会田洋市長が「風評被害を含めて間違った認識を持たれている面もあるので、問題がないことを国内外できっちりPRしてほしい」と注文を付けた。武黒副社長は、8月下旬から2か月ほどかけて、原発周辺の海底で断層調査を進め、年内にもデータの解析を終えたいと説明した。
 武黒副社長は、6人いる副社長のうち、原子力・立地本部長を担当しており、2001年から3年間、同原発所長を務めた。
(2007年7月30日13時59分 読売新聞)



4、柏崎、災害続きで廃業商店も  新潟日報
 商店や住宅が混在し、中越沖地震で建物の倒壊などが起きたJR柏崎駅南側の柏崎市宮場町、城東地区。両地区は2005年6月の集中豪雨による水害で家屋浸水の被害が相次いだだけに、住民は「ようやく水害を忘れかけていたのに…」とうんざり顔で片付けに追われる。2度の自然災害に見舞われた商店主の中には、営業再開をあきらめる人も現れている。

 同市内は2年前の水害で約500棟が浸水。国道353号沿いの両地区は道路が冠水、孤立状態となった一部住民がボートで救出された。その記憶もさめないうちに、震度6強の揺れが襲った。

 「もう廃業、廃業」。同市関町で食料品店を営んできた加藤昭子さん(65)はさばさばした口調だった。2年前の水害では店内が浸水、商品も水浸しになった。畳を替えて再出発したが、地震では建物そのものが大きく傾いた。今は、つっかえ棒でかろうじて支えている状態だ。

 地震当日、商品などがひっくり返った店内を目にして、店を畳もうと決めた。住み慣れた店舗兼住宅を離れ、数百メートル先の親せき宅に身を寄せている。「水害の時も店をぶちゃろう(捨てよう)かと思ったけど。今回はもう駄目。やめる」。地震から2週間の30日、保健所に廃業届を出した。

 同市城東1の海津栄子さん(71)宅は、室内の柱に床上浸水した時の水の跡がくっきりと残っていた。夫とクリーニング店を営む海津さんが混乱した店内を片付け、営業を再開したのは先週末。店は今後も続けるつもりだが、周りではまだ避難している住民も多く、開店休業状態だ。

 海津さんは2年前を振り返り、「徐々に水が上がったから、商品を2階に運ぶ余裕があった。水害は水が引けば(復興は)早い」と語る。しかし、地震については「一瞬のことでどうしようもなかった。お客さんも被災して仕事にならない」と嘆いている。
新潟日報2007年7月31日



5、避難所の被災者、疲労色濃く   新潟日報
 中越沖地震から30日で2週間。柏崎市などの避難所には、1600人を超す住民が不自由な暮らしを強いられている。睡眠不足やストレスに悩まされ、被災者の疲労も色濃くなってきた。中には避難所を転々とさせられる人もおり、先の見えない生活に不安を募らせている。

 柏崎市田塚3の主婦若月清江さん(82)は震災以来、慢性的な睡眠不足に陥っている。夜中でも寝ている自分の脇を人が歩き、日が昇る前から起き出した人の話し声が聞こえる。同じフロアで生活していた男性は、脳こうそくで病院に運ばれた。むくみ始めた左足を見ながら、「自分もいつそうなることか…」と不安な表情を見せる。

 小さな子どもがいる母親もつらい思いを強いられている。同市の女性会社員(38)は、1歳4カ月の4女が毎晩のように夜泣きをするたび、屋外に出て、泣きやむのを待つ。周囲からは「うるさい」「しつけがなっていない」と小言を言われ、肩身を狭くする。

 多くの人が集まっている避難所はプライバシーが保たれにくい。同市西本町の主婦小菅千代子さん(57)は「下着を含め洗濯ものを干す場所がない」と嘆く。近くのコインランドリーに行く姿も多く見られるが、「衣類を出し入れする際、ジロジロ見られている気がする」(同市の25歳の主婦)という。

 着替え用の小さなテントを設置している避難所もあるが、同市の女性(29)は「外から透けて見えるので使いたくない」と不満を漏らす。

 ライフラインが復旧していくにつれ、避難所の閉鎖は進んでいる。福祉避難所に身を寄せる同市学校町4、無職武田昭子さん(79)は近く、避難所を移らなくてはならない。

 「引っ越し」はこれで4度目。壊れた自宅には戻れず、同居していた長男夫婦とも離ればなれ。足に関節炎を抱え、一般の避難所ではトイレに行くのですら不自由だ。「何度も避難所が変わり、もう疲れた。家族以外と暮らすのは落ち着かない」と一日も早い帰宅を訴えている。
新潟日報2007年7月30日



6、被災支援の使途拡大両論併記  新潟日報
 中越沖地震を受け、改正への動きがあらためて注目されている「被災者生活再建支援制度」の見直しを議論する内閣府の有識者検討会(座長・伊藤滋早稲田大特命教授)が30日、都内で開かれ、中間報告を取りまとめた。現在は対象外で、災害を経験した本県などが要望している住宅の修理、建設費に使途を拡大することなどについては、賛否両論の併記にとどめた。

 現行制度は、被災世帯に最高300万円が支給される。だが所得、年齢条件が厳しいことや使途が住宅解体撤去費などに限られ、事務手続きも煩雑であることから、改善の要望が上がっている。

 こうした指摘を受け、中間報告では分かりやすく、迅速な対応ができる制度に改善するよう提言。一方で公費負担が増大することへの懸念も盛り込んだ。

 住宅本体への支援など個別の問題点については「住宅再建は地域の復興に不可欠で、公共性がある」「住宅所有者と非所有者に不公平が生じる」といった各委員の意見を紹介する形とした。

 検討会後、伊藤座長は「現段階ではさまざまな見方を国民に示すことで広く議論してもらいたいと考えた」と説明。中間報告では中越沖地震に伴って加えられた内容はほとんどなかったが、「結果として中越沖地震被災者にも資する改正となるようにしたい」と述べた。

 検討会は今後、中間報告に対して意見を募るパブリックコメントを8月に実施。この結果を踏まえ、年内に最終案を作成する。
新潟日報2007年7月31日



7、子どもに避難生活のストレス  新潟日報
 中越沖地震の激しい揺れや長期化する避難生活がもたらすストレスなどが原因で、柏崎市など被災地の小中学生計1090人がカウンセリングを受ける必要があることが、30日までの県教育委員会の調査で分かった。「地震を思い出して不安になる」「よく眠れない」などと訴えているという。

 そうした児童生徒のうち116人には、既に県が派遣した臨床心理士がカウンセリングを実施した。

 市町村別のカウンセリング必要人数は、柏崎市が498人と最多。続いて長岡市403人、上越市78人、小千谷市70人、刈羽村が41人だった。それぞれの全児童生徒に占める割合は、刈羽村で9人に1人、柏崎市で14人に1人に上った。

 また、18日から柏崎市と刈羽村に開設された児童生徒向けの「心の相談室」は、28日までに71人が利用した。

 柏崎市の水道復旧率は30日午後9時現在で98・4%。断水となっている同市高浜地区で31日未明に通水試験を行い、漏水がなければ同日中に全域で復旧する見通し。刈羽村でも同日昼には飲料水として利用できるようになる。

 都市ガスの復旧率は30日午後9時現在、同市と同村で18・5%にとどまっている。
2007年7月31日



8、被災地の水道、全面的に復旧 地震から15日ぶり
2007年07月31日22時24分
 新潟県中越沖地震の被災地で最後まで水道の復旧が遅れていた柏崎市の一部で31日、給水が始まった。刈羽村はすでに復旧しており、発生から15日ぶりに、被災地でほぼ全面的に水道が使えるようになった。この日は朝から好天に恵まれ、久しぶりに自宅で洗濯機を回す住民も多かった。
 「これでやっと洗濯も洗い物もできる」。柏崎市宮川、主婦早川羊子さん(58)は、蛇口から流れ出る冷たい水にうれしそうに手を伸ばした。
 自宅の井戸は水量が少ないため、しばらくは車で長岡市まででかけ、コインランドリーで洗濯をしていたという。
 釣りえさ用水槽の水の確保に苦労していた近くの釣りえさ卸業者の男性(60)も「やっと一安心というところだね」と笑顔をみせた。
 最後まで断水していたのは浄水場から遠い高浜地区の約300戸。井戸を持つ家が、近隣の住民たちに水を分けるなど、近所同士の助け合いの輪も広がっていた。
 この日で高所の一部を除き、被災地では水道、電気ともに回復。ただ、柏崎市内の都市ガスの復旧率は約20%で、完全復旧は8月中旬までずれこむ見通しだ。
 高浜地区で民宿を経営する広田勝彦さん(62)は「水が出たのはうれしいけれど、ガスがないと民宿はできない。死活問題だ」。東京電力柏崎刈羽原発のトラブルもあり、旅館や民宿の経営者らは「ライフラインと風評被害で二重の打撃だ」と頭を抱えている。


9、東電、原発停止で追加費用4千億円 経常利益を減額修正  朝日新聞
2007年07月31日20時40分

 東京電力は31日、新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原子力発電所が全面停止に追い込まれたことで、07年度だけで4000億円強の費用が新たに発生すると発表した。原発停止に伴い不足する電力を、燃料調達費がかさむ火力発電でまかなう必要が出てきたためだ。復旧工事費や耐震補強の費用は含まれておらず、費用がさらに膨らむ可能性がある。


記者会見で質問に答える東電の勝俣恒久社長=7月31日、東京都千代田区で
 東電は同日、08年3月期連結決算の業績見通しについて、経常利益を当初予想4000億円から1300億円へ大幅に下方修正した。合理化を図ったが、なお減益幅は2700億円になった。当期利益も3100億円から650億円に修正した。

 勝俣恒久社長は同日の記者会見で「電気料金を上げることは現時点では考えていない」と述べ、費用増加分をただちに消費者に転嫁しない方針を示した。ただ、原子炉の炉心部分の点検が始まり、国が地震対策の基準を見直せば費用がさらに増えるおそれがあり、結果的に電気料金に響く可能性も否定できない。

 東電によると、柏崎刈羽原発の1〜7号機がすべて年度内いっぱい止まることで400億キロワット時の電力量を火力発電に振り替えなければならなくなる。そのため、石油を510万キロリットル、液化天然ガスを130万トン追加購入する必要があり、3600億円かかるという。核燃料の購入費や使用済み核燃料の処理費用などは減るが、追加購入する火力発電用燃料は割高。他の電力会社から電力を買うための費用もかかるという。

10、原発停止が東電痛撃、業績見通しを大幅下方修正   読売新聞
 東京電力は31日、新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原子力発電所の運転が停止した影響で、2008年3月期連結決算の業績見通しを大幅に下方修正すると発表した。
 経常利益は07年4月の当初予想に比べ2700億円少ない1300億円となり、連結決算の公表を始めた1995年3月期以降で最低となる見通しだ。税引き後利益も、当初予想より2450億円少ない650億円と、2番目に低くなる見込みだ。
 柏崎刈羽原発が止まり、火力発電所を動かすために必要な原油や液化天然ガス(LNG)の調達費用が膨らんで、経常利益を計5380億円押し下げるという。一方、電気料金の収入増などが利益を2680億円押し上げ、差し引きで2700億円の減益となる。
 だが、今回は柏崎刈羽原発の復旧費について「点検調査中のため、見通すことが困難」(勝俣恒久社長)として計上していない。復旧費を含めれば業績がさらに悪化する恐れがある。
 勝俣社長は31日の記者会見で、業績悪化を受けた電気料金の値上げについて「すぐにお願いすることはないが、今後の検討課題だ」と述べた。
(2007年7月31日21時31分 読売新聞)



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石田ふたみ