『日々の映像』

2007年07月31日(火) 中越沖地震の記録 (21)

1、中越沖地震から2週間 空洞商店街、被災追い打ち 朝日新聞
2、日報抄の引用
3、東電が新潟県や柏崎市に義援金7千万円  朝日新聞
4、中越沖地震:要介護高齢者 生活不活発病の疑い  毎日新聞
5、中越沖地震:サポート情報 ライフライン
6、柏崎刈羽原発の揺れ、想定の2.5倍…最大2058ガル
7、波打つ敷地・焦げた壁・続く油漏れ…柏崎原発建屋内を公開  読売新聞
8、地震防災研究 活断層の評価が甘過ぎる  新潟日報社説


1、中越沖地震から2週間 空洞商店街、被災追い打ち 朝日新聞
2007年07月30日14時38分
 新潟県中越沖地震は30日で、発生から2週間になった。柏崎市と刈羽村で1438人が避難所生活を続ける一方、同市内の商店街では半数以上の店が再開するなど復興の動きも見え始めた。ただ、中心部のしにせ商店街では、被災をきっかけに店をたたむ決断をした経営者も出てきた。街の空洞化を防ぎ、どう立て直すのか。再建の先を見据えた課題がのしかかる。
 「また店をやる気にはとてもなれない」。柏崎市役所に近い古くからある商店街で、靴店を営む阿部良平さん(58)は、父親の代から続く店を閉じることを決めた。
 表のタイルがはがれ落ち、ショーウインドーのガラスは砕けた。再開には「1000万円以上かかる」。借金してまで再開しようという気にはならない。
 市内は古くからの9商店街がある。かつては食料品や金物、雑貨、呉服などを扱う300店以上が軒を連ねた。だが、郊外の大型店進出などの影響で、最近の6年間だけで30店が閉店。市商工会議所は「経営が厳しい店ほど被害がひどい。市内で数十店規模が閉店に追い込まれるのでは」と予想する。
 それでも逆境に立ち向かう人たちがいる。市商議所副会頭で呉服店経営の吉田直一郎さん(61)は「商店街は、いくつもの店が連携して人の流れをつくるから意味がある。出て行く人を指をくわえて見送るわけにはいかない」と話す。「『とにかくあきらめないで』と呼びかけ、夢が持てる商店街に作り直したい」
 吉田さんは地震から10日後、別の商店街で被災した競合店の中村康夫さん(47)に電話をかけた。仮店舗の場を紹介するなど両商店街で協力し合うことを確認した。
 同じく震度6強の揺れを3年前に経験した同県小千谷市。駅前からアーケードがのびる東大通商店街は、地震で約40軒の店舗・事務所のうち6軒が閉店した。
 商店街は、復興策を探るため、近隣2800世帯にアンケートをし、要望の多かったミニスーパーを共同で設置する構想を立てた。酒店を経営する高野直人さん(50)は「お客を巻き込んだ街づくりが必要だ」と訴える。



2、日報抄の引用
 中越沖地震に襲われた柏崎市の商店街に胸が痛む。明治、大正、昭和と、地域の歴史を刻んできた建物が軒並み大きな被害を被っている

▼傾いた町屋の土間で、高齢の男性が肩を落としていた。近寄り難い雰囲気だ。黒光りする柱、線香のにおいが染みついた仏間。思い出が詰まった家を解体されるのは、身を切られるよりつらいだろう

▼レトロな洋風建築の絵本館は今にも倒れそうなほど傾き、子どもたちが夢を託した短冊が風に揺れていた。この地域は、柏崎市が六月下旬に「歴史的建造物概況調査」を行ったばかりという。市内に古い建物がどれだけ残っているのか、まず全体像を掘り起こし、風格ある街づくりに生かそうという事業である

▼県内の文化財に詳しい山崎完一さんは、調査の印象を語る。「百年以上も前の様式を残す町屋や土蔵造りの住宅などが、意外なほど残っていました。柏崎は石油産地としていち早く近代化したためか、洋風建築も多い」。地域の記憶を伝える建物に中越沖地震が残したつめ跡は、あまりにも大きい

▼耐震診断と補強へ、国がもっときめ細かな補助制度をつくっていればと悔やまれてならない。これ以上、悔いを生んではならない。阪神大震災で問題になったのが、文化財指定を受けていない歴史的建造物だった。直せば使える貴重な建物が「全壊」と診断されて次々と消えていった

▼「直せる建物を壊さないでと柏崎の被災者に訴え、ノウハウを教えています」と、阪神大震災を体験したボランティアが大粒の汗を流しながら語っていた。住民、行政、専門家、各地で震災を体験したボランティア。熱い思いを結集したい。
[新潟日報7月25日(水)]



3、東電が新潟県や柏崎市に義援金7千万円  朝日新聞
2007年07月30日18時33分
 東京電力は30日、新潟県中越沖地震で被災した新潟県などの自治体に総額7000万円の義援金を贈った。内訳は新潟県に3000万円、柏崎市に2000万円、刈羽村に2000万円。



4、中越沖地震:要介護高齢者 生活不活発病の疑い  毎日新聞
 新潟県中越沖地震で避難している要介護の高齢者に、心身の機能が低下する「生活不活発病」の疑いがあることが県理学療法士会などの調査で分かった。調査した28人のうち3分の1が身体機能の低下を訴えた。避難生活で家事や散歩など日常的な活動が減ったことが原因で、同会などは「できる範囲で体を動かすように」と注意を呼び掛けている。
 
生活不活発病(廃用症候群)は体を動かさないことで、心身の機能が低下する状態。筋力や心肺の機能低下や、うつ状態など精神にも影響し、寝たきりにもなる。高齢者の生活の質を著しく下げるため警戒されている。
 
県理学療法士会と県作業療法士会が28日、要介護者が避難する柏崎市の4福祉避難所で、生活不活発病の兆候を調べるチェックシートを使って高齢者28人に聞き取り調査し、約3分の1が身体機能低下を訴えた。「地震後は寝ていることが多く、足が悪くなった」「前は壁伝いに歩けたのに車椅子を使うようになった」などの内容だった。
 
避難所ではトイレや入浴など日常行動に助けを借りることが多く、周囲に気兼ねして散歩などを控える傾向などが原因とみられる。

 生活不活発病は、避難生活で起こりやすいとされ、04年の中越地震では被災地の高齢者の約3割の歩行能力が低下したことが厚生労働省調査班の調査で判明。県は今回の地震では厚労省が作った同病のチラシを配るなどして注意喚起し、県理学療法士会などに対策を依頼していた。
 
対策で大切なのは本人や周囲が注意し、意識的に活動すること。同会の深川新市会長は「やりづらいことでも人任せにせず、無理のない範囲でやってみることが必要」と呼びかけている。【前谷宏】   毎日新聞 2007年7月30日 15時00分



5、中越沖地震:サポート情報 ライフライン
 ◇鉄道
 28日午後7時現在、信越線・柿崎−宮内間、越後線・柏崎−吉田間が不通。このうち信越線・柏崎−宮内間は30日から再開見込みで、当面は通常より本数を9本程度減らして徐行運転。信越線・柏崎−長岡間、柏崎−柿崎間、越後線・出雲崎−吉田間、柏崎−出雲崎間でバスによる代行輸送を行っている。
 JR西日本は8月10日まで、札幌−大阪、青森−大阪、新潟−大阪、金沢−上野の夜行列車全線を運休。
 ◇ガス
 28日午後8時現在、柏崎市と刈羽村の2万7451戸で供給停止が続いている。
 ◇水道
 柏崎市で28日午後7時現在、3790戸が断水。刈羽村で1312戸が断水中。
 ◇道路
 28日午後7時現在、国道352号は柏崎市椎谷ー西山町と同市宮川ー刈羽村刈羽で通行止め。国道403号は上越市安塚区で通行止め。国道405号は長野県栄村和山ー切明で通行止め。
毎日新聞 2007年7月28日 20時45分 (最終更新時間 7月28日 20時46分)



6、柏崎刈羽原発の揺れ、想定の2.5倍…最大2058ガル
新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原子力発電所内のほとんどの建物で、設計時の最大想定値を大きく上回る揺れを観測したことが30日、東電が発表した解析結果で分かった。
 
3号機のタービン建屋では、最大加速度2058ガルという最大級の揺れを記録していた。稼働再開に向け、想定の上方修正を迫られるのは必至だ。
 
柏崎刈羽原発の建物や敷地内には97台の地震計が設置されている。東電によると、最大680ガルを記録した原子炉本体のある原子炉建屋だけでなく、ほとんどの建物での揺れが、想定を上回った。3号機タービン建屋1階で観測された東西方向の2058ガルは、想定値(834ガル)の約2・5倍。東電は「原発でこれほどの揺れが観測されたのは、恐らく初めて」という。
 
新型の地震計33台では、地震波の波形データも得られた。これに基づき、各原子炉建屋での揺れを詳細に解析したところ、建屋内の機器などほとんどすべての構造物の揺れが、想定を上回ったことも判明した。1〜4号機建屋の方が、5〜7号機に比べ、揺れが大きかったことも分かった。
 
原子炉の圧力容器や、緊急炉心冷却装置などの最重要機器は、設計強度に余裕を持たせてあるため、想定を上回る揺れがあっても、ただちに破損するわけではない。また、分析の結果、強い揺れをもたらした地震波が、1〜7号機とも、周期0・5〜1秒の間に集中しており、原子炉が共振しやすい周期はもっと短いため、大きな被害が避けられた可能性もある。
 
東京大学地震研究所の纐纈一起(こうけつかずき)教授は、2058ガルの揺れについて「周辺地域の活断層評価が十分でなく、未知の活断層による揺れの予測が甘かった」と話している。
(2007年7月30日22時2分 読売新聞)

                 

7、波打つ敷地・焦げた壁・続く油漏れ…柏崎原発建屋内を公開  読売新聞
 東京電力は21日、新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所の建屋内部を報道陣に初めて公開した。
 波打つ敷地内の道路、焦げた壁に囲まれた3号機の変圧器など、原発関係者も想定していなかった〈ありえない光景〉が広がる。地震のツメ跡が生々しい原発施設の姿を見た。(科学部 米山粛彦)
 3号機の変圧器に近づくと、油のにおいが鼻をツンと突く。変圧器内の油を密封している絶縁体のふたが地震で外れ、今も油が流れて出ているためだ。炎上が激しかった変圧器の壁は真っ黒に焦げ、数十メートル離れた消火栓の脇には、消火活動に使おうとしたとみられるホースが放置されたままになっていた。
 7基の原子炉自体には異常はないとされるが、原子炉建屋の周囲を歩き回ると、道路や砂利は海のように波打っている。地下深くの岩盤に直接建てられた原子炉建屋とは違い、変圧器は軟らかい土の上に設置されている。このため、地震の揺れで土の部分だけが沈み込み、建屋と変圧器に段差が生じた。東電社員が段差にメジャーを当てると、その長さは50センチ程度もあった。
 異変は、変圧器周辺にとどまらない。
 1号機近くの軽油タンク脇の地面は、1・6メートルも沈んでいた。このため消火用の配管が傷つき、交換工事が始まっていた。「変圧器などの周辺施設に、原子炉建屋ほどの強い耐震性を持たせていないのが問題だった。今回の地震をこれからの想定にどこまで生かすかは検討課題だ」。発電所の幹部は、神妙な顔つきで語った。
 しかし、固い岩盤の上に建ち、地震に強いはずの原子炉建屋では、さらに想定外の異変があった。
 微量の放射性物質を含む水が見つかった6号機。この原子炉建屋の中3階と3階には、原発を制御する機器などが置いてあり、放射性物質を扱わない「非管理区域」のはずだった。
 しかし、地震後、ここに放射能に汚染した水が合計1・5リットル余り散乱していた。
 これらの水は地震の揺れで、使用済み燃料プールから建屋最上階(4階)の床にこぼれ、壁の中の配管を伝い、中3階と3階の天井にあるダクトや電気コード棚からしたたり落ちたとみられる。
 放射性物質を扱う「管理区域」から「非管理区域」への漏れ。検査した東電社員も検査結果に「まさか」と思い、検査をやり直してしまったほどだ。
 現場には、水が再びしたたることも想定し、ピンク色のシート、さらにその上にはバケツや紙タオルが置かれ、最先端の原発施設には似つかわしくない光景があった。
(2007年7月22日0時6分 読売新聞)



8、地震防災研究 活断層の評価が甘過ぎる  新潟日報社説
 中越地震からわずか二年九カ月後に起きた今回の大震災は、地震に関する常識を覆した。ほぼ同じ地域を、マグニチュード(M)6・8クラスの激しい揺れが襲うなど、県民ならずとも予想しなかったはずだ。
 中越沖地震の震源は日本海海底の活断層と推定される。この地域は国の地震観測強化地域に指定されている。異常が見つかったら、観測を強化することになっている場所である。異常どころか、いきなり震度6強だ。評価が甘いといわれても仕方あるまい。
 地震の巣である活断層は、全国に二千以上あるといわれる。国はそのうち長さが二十キロ以上で活動が活発な百十の断層を重点的に調査している。県内には長岡平野西縁断層帯など七つが存在する。「長岡」の最大Mは8・0前後と想定されている。
 今回の地震と「長岡」の関連は不明だ。中越地震を起こした活断層は地震の後「活発な断層」とされた。阪神大震災や能登半島地震なども活断層が活発とは認識されていなかった。
 日本列島のあらゆるところに大地震の危険性が潜んでいる。国はこのことをきちんと周知すべきだ。
 国の地震予知や震災対策の大半は、太平洋岸の東海、東南海で起きるとされるプレート境界型の巨大地震に備えてのものだ。想定される被害の大きさや産業への影響を考慮すれば、そこに力点を置くのは当然だろう。
 プレートの動きは活断層にひずみをもたらす要因でもある。一層研究を深めねばならない。
 だからといって、活断層の研究や対策がおろそかになっては困る。近年大きな被害をもたらしている地震は、いずれも活断層のずれによるものだ。活断層評価の精度を上げ、国民に適切な情報を伝える方策を急ぐべきだ。
 今回の地震では、緊急地震速報の有効性が確認されたと気象庁は評価している。確かに新潟市などでの実証試験では本震発生の約十秒前に速報を受信している。だが、震源に近づくほど速報と本震の時間差はなくなる。
 地震の前触れとなる波動は、秒速約六キロで進む。震源から十キロ以内では緊急速報はほとんど役に立たない。活断層型地震への対応は、この面でも極めて脆弱(ぜいじゃく)である。
 原発や新幹線、高速道路なども直下型の大地震にどこまで耐えられるか未知数だ。活断層地震の予知は不可能とされる。どこに活断層が横たわっているのかさえ定かではない。
 これでは国民は安心できない。緊急に全国の活断層調査を行うよう強く要請したい。安全と安心の確保は国政の最重要課題である。後追いの対策に終始してはならない。
                     [新潟日報7月26日(木)]


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石田ふたみ