『日々の映像』

2007年07月30日(月) 中越沖地震の記録 (20)


1、被災者生活再建 支援金の使途制限を解け 日報社説
2、被災企業対策 中小にも手厚い支援を  日報社説
3、「激甚災害指定基準」の一部改正について
4, 点検中の柏崎1号機、原子炉の水もあふれる  朝日新聞
5、1号機・原子炉の水も作業フロアに流入…柏崎刈羽
6、被災宅地調査「危険」2割、419か所地滑り・崩落の恐れ  読売新聞
7、エコノミークラス症候群検診、柏崎市と刈羽村の避難所で
8、刈羽 水田送水管80カ所破損 500ヘクタールで影響
9、心の傷、高齢者に色濃く…3年前の中越地震で被災者調査
10、柏崎で被災した家屋21棟、6割がアスベスト含む建材使用
11、信越線柏崎−宮内、30日再開  日報



1、被災者生活再建 支援金の使途制限を解け 日報社説
 中越沖地震で自宅が壊れた被災者を対象に仮設住宅の入居受け付けが始まった。地震発生から十日、ようやく将来の生活再建に向けた次の段階に移ろうとしている。
 まだ千五百人以上が避難所暮らしをしている。仮設住宅は柏崎市に約八百、刈羽村に約二百、出雲崎町と合わせ千戸余りが用意される。お盆は家族水入らずで過ごしたいだろう。被災者の願いに応えようと工事も急ピッチだ。
 一九九五年の阪神大震災では入居は抽選で行われた。このため、顔なじみや近所同士での仮設生活ができず、住民の孤立が問題になった。
 二〇〇四年の中越地震ではその反省から、集落の仲間が隣り同士で入居する方法が取られた。ただ、冬場の湿気や結露に悩まされた。今回は天井裏に換気扇を設置するという。
 被災者にとって最も大切なことは仮設を出た後の生活だ。被災者の生活再建支援制度の改善が急がれる。
 被災者生活再建支援法は阪神大震災を契機に一九九八年に施行された。被災の程度により、家財などの購入費として最高百万円を支給することになった。しかし、住宅本体の修理や新築費用に充てることは認めなかった。
 〇四年の改正で支給額は最高三百万円に引き上げられた。使途は住宅解体や家賃にとどまり、今も住宅再建には使えないままだ。所得や年齢の制限も多い。申請手続きも煩雑だ。
 この支援金の使途を広げ、住宅再建にも活用できるよう被災者本位の制度に変える。これが中越地震で得た最大の教訓だったはずだ。
 支援金は中越地震では四千八百世帯に六十五億円、同じ年の7・13水害でも三百世帯に四億円が支給されている。しかし、せっかくの制度も使い勝手が悪いことから、本県を含めて全国の自治体が災害のたびに、独自の住宅再建支援策を設けている実態がある。
 政府は今年三月、学識者による検討会をつくり、来年の法改正に向け議論を始めた。中越沖地震はその最中に起きた。政府は支援金の使途を住宅再建まで広げると早く表明すべきだ。
 安倍晋三首相は二十四日、泉田裕彦知事の改善要望に「理解されやすい制度になるよう研究したい」と述べた。これでは被災者の不安は解消されない。まず使途制限の緩和を宣言する。改正の細目はそれから詰めればいい。
 中越地震の被災者もまだ約二百五十世帯が仮設住宅に残る。生家を直したくても資金が足りない被災者は多い。
 「このまま、仮設ごと(壊れた自宅がある)山に引っ張ってってくれんかのう」。仮設住宅で年金生活をしていた八十二歳のおばあちゃんの訴えだ。その声を無駄にしてはならない。
[新潟日報7月27日(金)]


2、被災企業対策 中小にも手厚い支援を  日報社説
 中越沖地震では企業も大きな打撃を受けた。被災企業は復旧に向けて懸命の努力を続けている。県も市町村も被害の実態把握を急ぐとともに、手厚い支援態勢を組んでほしい。
 県産業政策課が柏崎市の製造業を抽出してまとめた被災状況調査によると、地震発生五日目の二十日は稼働率ゼロの企業が78%あった。それが二十四日には27%に減り、着実に復旧の道を歩んでいる。
 操業を再開した企業の中にはリケン柏崎事業所も含まれている。トヨタをはじめ、国内全自動車メーカーが、リケンの部品供給ストップで生産停止に追い込まれる事態となった。
 メーカーから応援部隊が多く駆けつけて復旧にこぎ着けた。関連する柏崎市の会社は百社近くに上るだけに、フル稼働に向けた動きは心強い限りだ。
 しかし、県の被災状況調査では稼働率50%未満が16%、100%未満は37%で、ゼロの27%を合わせるとまだ八割の事業所が震災前の状態には完全に戻っていない計算になる。
 長野、群馬など隣県の企業から注文を受けている中小企業が少なくない。そうした企業からは発注先が変更、分散されるのではないかとの懸念の声が上がっている。
 操業再開が遅れるほど受注機会を失う危険性は高くなる。水さえあれば操業できるところは少なくない。ライフラインの確保は市民生活が優先されなければならないが、中小企業への対応も急いでほしい。
 柏崎市と柏崎商工会議所は二十五日、県に対して激甚災害の指定、産業基盤復興への支援などを要請する。
 県は中越沖地震の被害額が総額一兆五千億円になるとの推計値を公表した。このうち、商工関係は三千億円に上るという。中越地震の被害規模をベースに固定資産評価額などを掛け合わせてはじき出した見込み額だ。
 激甚の指定を受けるためには詳細な被害額の算定が必要だ。まずは被害の実態を正確に把握することである。
 激甚指定により、税の優遇措置や低利の融資を受けることができる。中越地震で県は七千万円を限度に年利1・7%の特別融資を実施した。同様の措置を早急に取るべきだ。
 柏崎市は明治からの縮(ちぢみ)行商で商業が栄えた交流の町だった。刈羽での石油産出で興った機械工業の伝統も引き継いでいる。
 地震で東京電力柏崎刈羽原発が止まった。原発と共生してきた地域は、これまでに経験したことのない危機に直面している。
 地場産業は地域のエンジンである。中小企業が復興すれば、街も元気づく。きめ細かな支援を急ぎたい。
                    [新潟日報7月25日(水)]

3、「激甚災害指定基準」の一部改正について
http://www.bousai.go.jp/oshirase/h12/121101/121101.html


4, 点検中の柏崎1号機、原子炉の水もあふれる  朝日新聞
2007年07月28日09時52分
 新潟県中越沖地震で、東京電力柏崎刈羽原発の使用済み核燃料プールから水があふれ出た問題で、点検中だった1号機では原子炉部分の水も同様にあふれ出ていたことが27日、わかった。東電はこれまでプールからの流出だけを公表し、原子炉部分については明らかにしていなかった。
 社民党調査団に対して東電が認めた。東電によると、原子炉とプールの間で核燃料を移動させる際、両施設の水路を直結させ、水の中を動かす。
 1号機は地震発生当時、定期点検を終え、原子炉内に水を張ってプールとつないだうえ、核燃料をプールから炉に戻す直前だった。そのため、格納容器などのふたも開けた状態で、地震の揺れで炉内の水もあふれたという。点検が終わっていないので、炉内に核燃料はなかった。
 5、6号機も点検中だったが、両機は核燃料を炉内に戻した後で、格納容器のふたを閉めていたため、内部の水はあふれなかったという。
 東電は「公表しなかったわけではない。説明不足だったが、炉内は水路で使用済み核燃料プールとつながっており、両者の水に区別はない。1号機ではあふれた水が非管理区域に流れる被害も出ていない」と説明している。
 一方、東電は同日、不明だった補助建屋の雨漏りの原因について、地震で外壁に入ったひびから水が浸入している可能性が高いと発表した。
 管理区域内で使った衣服を洗う場で、厚さ約40センチのコンクリート製壁の床に近い部分がひび割れていた。水たまりは、長さ約21メートル、幅約2メートル、深さ約1センチになっているという。
フォームの始まり


5、1号機・原子炉の水も作業フロアに流入…柏崎刈羽
 東京電力は28日、柏崎刈羽原子力発電所の1号機の原子炉の水も、新潟県中越沖地震で建物の作業フロアにあふれ出ていたことを明らかにした。
 東電はこれまで、使用済み核燃料貯蔵プールの水が地震の揺れであふれたことは発表していたが、炉水の状況は詳しく説明していなかった。東電は、「使用済み核燃料プールの水と炉水は基本的に同じもので、特に問題視はしていなかった。説明不足だったかも知れない」(広報部)としている。水は放射能を含んでいるが、管理区域内にとどまり、建物の外への影響はないという。
 地震発生時、7基ある同原発のうち、1、5、6号機の3基は定期検査中で運転を停止していた。5、6号機の原子炉は閉じていたが、1号機は炉内の核燃料を交換するため、原子炉圧力容器と原子炉格納容器のふたを開けて、上に水を張った状態だった。
 交換した核燃料は、隣接の使用済み核燃料プールに貯蔵されていた。原子炉上部に張った水と、プールの水はつながっており、水面の高さも同じ。放射能の濃度など水質にも大きな差はないという。これらの水が地震で大きく揺さぶられ、一部が作業フロアにあふれ出した。
 水があふれたことは地震発生翌日の17日に公表、床のふき取り作業は27日に終了している。
(2007年7月28日12時35分 読売新聞)


6、被災宅地調査「危険」2割、419か所地滑り・崩落の恐れ  読売新聞
 新潟県中越沖地震の被災地で行われた宅地の「危険度判定」で、地滑りや崩落が起こりやすく「危険」と判定された場所が、調査対象の2割、計419か所に上ったことがわかった。
 建物の倒壊などは免れても、宅地に亀裂が入ったり、段差が生じて避難せざるを得なかったケースもある。一方、国土交通省では、都道府県などが危険性が高いと判断した区域内の造成宅地を対象に、耐震化工事の補助事業を創設しているが、自治体による危険区域そのものの調査が進んでおらず、これまでの利用実績はゼロ。宅地の耐震化の難しさを示している。
 危険度判定は、被災地の宅地に入った亀裂の大きさや陥没の深さ、周囲の斜面の状態などを点検し、二次災害の危険性について「危険」「要注意」「調査済み」の3段階で判定する。
 今月17日〜25日、新潟県などの「被災宅地危険度判定士」延べ248人が4市町村の造成地や傾斜地を中心に計2082か所で実施した結果、「危険」は柏崎市344、刈羽村27、上越市26、出雲崎町22の計419か所となった。
 また、「要注意」も計307か所あり、継続して使用が可能な宅地は計1356か所だった。「危険か所」では今後、地中の調査や、盛り土を固定する擁壁の補修、地盤の強化などが必要となるため、同県では、復興基金などによる補助を検討している。
 一方、2004年の中越地震では、斜面を利用した造成宅地で地滑りや崩落が多発したため、国交省は昨年4月から宅地耐震化工事の補助事業を創設した。宅地にくいを打ったり、擁壁を補強したりする耐震化工事を行う際、国や自治体が合わせて2分の1以上を補助する事業で、1戸当たりの負担は最大100万円程度になる。
 対象地域は、都道府県や政令市などが大地震の発生時に危険があるとして指定する「造成宅地防災区域」であることが要件となっているが、国交省によると、同区域の指定はまだなく、指定の前提となる危険か所の調査を始めている自治体も、大阪府、宮城県、静岡県をはじめ、横浜、川崎、広島、高松市など13自治体にとどまっており、新潟県内はまだない。
 同県では、「調査は、住民に身近な市町村が担うべきだが、動きが鈍い」とするが、上越市などでは「調査には多額の費用がかかるうえ、危険か所とされた宅地の地価への影響が大きく、二の足を踏んでいた。だが、大地震が続いているだけに、宅地の実情把握は必要」と話す。
 国交省都市・地域整備局は「宅地についても大地震の危険性にようやく目が向き始めたばかり。危険か所の指定を急ぐよう呼びかけたい」としている。
(2007年7月28日14時43分 読売新聞)



7、エコノミークラス症候群検診、柏崎市と刈羽村の避難所で
 新潟県中越沖地震で被害を受けた柏崎市と刈羽村の避難所で28日、住民を対象にしたエコノミークラス症候群=肺塞栓(そくせん)症=の検診が始まった。
 29日までに計8か所を回る。
 同症候群は、狭い場所に長時間、同じ姿勢でいることで、足の静脈にできた血の塊(血栓)が肺の血管に詰まり、呼吸困難などを引き起こすもの。同市の柏崎小学校体育館では、高齢者らが、午前10時過ぎから次々に受診。医師や看護師がふくらはぎの静脈をエコー検査で調べ、同症候群の疑いがあるとして血液検査を行ったケースもあった。
(2007年7月28日11時59分 読売新聞)



8、刈羽 水田送水管80カ所破損 500ヘクタールで影響
中越沖地震で刈羽村の田んぼに水を送るパイプが約80カ所で破損し、水の供給ができなくなっていることが27日、分かった。8月上旬までの期間は特に水が必要な稲の出穂期に当たり、コメの出来を大きく左右する。7月内の完全復旧は難しく、農家からは「このままでは収穫期に大変なことになる」と焦りの声が上がっている。

 同村は古くから田んぼへの水の供給に悩まされてきた。安定供給のため10年ほど前、地元を流れる別山川の水をポンプでくみ上げて送るパイプを地中に整備した。3つのポンプ場のある勝山地区では、滝谷と滝谷新田だけで12カ所のパイプの破損が確認されている。

 同地区で34ヘクタールの水田を保有する勝山農産(武本一巳社長)では、地元の製菓会社と契約栽培しているもち米「わたぼうし」に穂が出始めた。武本社長(68)は「一刻も早く稲に水をやりたい。来月4日ごろにはコシヒカリの穂も出始めるので、復旧には一日の猶予も許されない」と訴える。25日には送水試験を行ったが、農道の至る所で水が染み出たり、土砂が噴き出したりした。

 刈羽村災害対策本部などによると、パイプの破損で影響が出る水田は村全体で約500ヘクタール。村は8月上旬を目標に完全復旧を目指す。

 自宅が地震でつぶれたという同村十日市の専業農家男性(70)は「パイプは地中にあるため、修復は簡単じゃない。ライフライン優先は分かるけど、農家にしてみればパイプも急いで復旧させてほしい」と話していた。

穂が出始めた勝山農産のもち米「わたぼうし」。水の供給ができず、武本一巳社長は不安顔だ=27日午後3時ごろ、刈羽村滝谷新田
2007年07月28日



9、心の傷、高齢者に色濃く…3年前の中越地震で被災者調査
新潟県中越地震(2004年10月)で被災した60歳以上の人は、若い人に比べ、抑うつ感など「心の傷」がいまも治りづらい状態でいることが、東京女子大の広瀬弘忠教授(災害心理学)らの調査でわかった。
 新潟県中越沖地震でも多くの高齢者が被災し、避難所生活を余儀なくされているが、広瀬教授は「高齢者の場合、ストレスが小さいように見えてもなかなか癒やされない。周囲が積極的にかかわるなど心のケアが大切だ」と提言している。
 広瀬教授らのグループは、中越地震で被災し、仮設住宅で暮らした経験がある長岡市(旧山古志村を含む)の20歳〜80歳代の住民112人を対象に、意識調査を行った。調査は05年から今年にかけて3回に分け、「なんとなく不安だ」「眠れない」など、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の判定にも使われる13項目の心理状況について質問した。
 その結果、初回調査時には、59歳以下の被災者の中で、PTSDの症状が「ある」と答えた項目は平均で3・11件だったのに対し、60歳以上は2・84件と少なかった。しかし今年2月の第3回調査では、59歳以下の被災者は平均2・33件と減ったのに、60歳以上は2・66件と、ほとんど変わらないことがわかった。
 特に「物事に無関心」「抑うつ感がある」など無力感や無気力に関する4項目については、59歳以下では減少したのに、60歳以上は、逆に0・57件から0・61件へと上昇していた。広瀬教授は「被災後に家の片づけや仕事などで活動できる若い人に比べ、高齢者は避難所での生活が長くなりがちで、心の傷が治りにくいようだ」と話している。
(2007年7月29日3時0分 読売新聞)



10、柏崎で被災した家屋21棟、6割がアスベスト含む建材使用
 新潟県中越沖地震の被災地で損壊した家屋の解体作業が本格化するのを前に、新潟県は28日、専門家に依頼してアスベスト(石綿)を使用した建材の実態調査を行った。
 日本石綿協会の平井良夫技術委員と県職員ら14人が、柏崎市内の3地区で被災した21棟の家屋を調べ、6割でアスベストを含むとみられる建材が見つかった。県は、解体時にアスベストを飛散させないよう解体業者などに注意を呼びかけることにした。
 平井技術委員は「アスベストの飛散対策で有効なのはぬらすことだが、水が不足しているのが気になった。建材を重機で割るなどせず、できるだけ分別してほしい」と話していた。
(2007年7月28日19時11分 読売新聞)


11、信越線柏崎−宮内、30日再開  日報
 中越沖地震のため不通となっていた信越線柏崎―宮内間について、JR東日本は30日の始発から運転を再開する。一方、柏崎市など被災地の家屋被害は県の調査(29日現在)で1万9000棟を超えた。同市は8月1日から、各課に分かれていた被災者の相談窓口を一元化し、生活全般の相談を受ける被災者相談所を開設する。

 JR東日本によると、運休していた快速「くびき野」を30日から長岡―新潟間で1往復運転する。同線柿崎―柏崎間と越後線柏崎―吉田間は、再開のめどが立っておらず、引き続き代行バス輸送を行う。

 損壊家屋の調査が進み、全壊が1024、大規模半壊は218、半壊は1223、一部損壊は1万6625となった。

 柏崎市の相談所は、市役所分館2階に設けられ、関係する部署の職員が常駐する。被災者の生活再建支援や住宅の応急修理、住宅から出た廃棄物の処分といった相談のほか、融資制度についても説明する。

 同市災害対策本部によると、地震発生から28日までに、同市と刈羽村の避難所から合わせて68人が病院に救急搬送された。発生直後は骨折や打撲などのけがが目立ったが、避難所生活の長期化に伴い頭痛やめまい、発熱などで運ばれる人が増えている。

 同市は31日、ごみ焼却場クリーンセンターの煙突の倒壊防止工事に着手する。解体工事の前に、内部にコンクリートを流し込み、倒れるのを防ぐ。8月5日まで行い、その後焼却炉の被害を確認する。
新潟日報2007年7月29日

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石田ふたみ