『日々の映像』

2007年07月28日(土) 中越沖地震の記録 (18)

1、柏崎の「花街」ダメージ深刻  新潟日報
2、東電が風評被害拡大 知事、初期対応を批判  新潟日報
3、佐渡への宿泊客 キャンセル9259人  新潟日報
4、断層は西傾斜、国土地理院が発表 中越沖地震 朝日新聞
5、発耐震対策、周辺機器も補強・保安院、電力会社に要請方針  日経
6、災した柏崎市の商店街、56%の店が再開  日経7月27日
7、柏崎市、予算確保しながら災害用医薬品を発注せず 読売新聞
8、中越沖地震義援金、10億超す  新潟日報
9、西山町で食糧備蓄生かされず  新潟日報
10、プラント刈羽店 従業員数十人解雇へ  新潟日報
11、社説  原発の安全規制に独立機関を(7/27・日経)



1、柏崎の「花街」ダメージ深刻  新潟日報
 柏崎市の花街として栄え、1980年代には原発建設関係者でにぎわったという飲食店街「新花町」。中越沖地震で店舗がつぶれたり、傾いたりしたところも多い上に、ガスなどのライフラインの復旧が遅れ、一帯は深刻なダメージを受けている。閉店を余儀なくされた人もおり、店主らからは「不景気に追い打ちをかけられた」とのうめき声が漏れている。

 大きく傾いた店舗から木材が1つ1つはぎ取られていく。地震前、その建物で小料理屋を切り盛りしていた栗林真里さん(56)は閉店を決めた。

 「大家さんに建て替えの話も聞いたが、家賃が倍になるという。とてもやっていけない」。22年間も慣れ親しんだ店の変わり果てた姿に涙をこぼした。

 隣接する諏訪町なども含め、新花町一帯には100軒余りのスナックや割烹(かっぽう)、寿司店がひしめく。

 諏訪町でスナックを始めて40年の有坂ノブさんの店は損壊こそ免れたが、店内がめちゃめちゃになった。「開店当時、この辺の飲食店は10軒くらいだった。原発ができるようになって店がどんどん増えた」と思い出話にため息が交じった。原発景気が去った街に、今度は地震が追い打ちをかけた。

 店の多くは月末に仕入れなどの支払いを迎える。「日銭が全く入らない」と首を振るのは、新花町で割烹店を夫婦で営む池上春子さん(57)。借金返済に、家賃や各種保険の支払いも重なる。「店じまいも考えたけど、ほかに仕事もないよね」と笑ってみせた。

 自宅アパートも被災し、店内で寝泊まりしながら後片付けをするスナックの女性店主(66)もいる。開店のめどは依然として立っていないが、地震から1週間後に常連客が顔を見せたという。辛うじて難を逃れたビールを客が持参した氷で冷やして出した。

 「こんな時にって思ったけど、元気かって様子を見に来てくれたんだよね。そういう人もいるから店をやめるわけにはいかない」と女性店主は言う。

 日が暮れた新花町。通りは暗く人通りもないが、いくつかの店がネオンをともす。24日に営業を再開したスナックでは水道が復旧するまで、トイレの水をタンクで運んでいた。それでも、雇われ店主の佐藤マリンさんは笑顔で客を出迎えた。

 「地震で仕事がなくなったお客さんも来てくれた。みんなストレスがたまるけど、元気を出してほしいね」
新潟日報2007年7月26日


2、東電が風評被害拡大 知事、初期対応を批判  新潟日報
 泉田裕彦知事は25日の定例会見で、中越沖地震で発生した東京電力柏崎刈羽原発の放射能漏れなどによる風評被害について「初期のリスクコミュニケーション(情報の発信と説明)がうまくできていなかったことで、甚大な被害を被った」と東電の初期対応が被害を大きくしたとの認識をあらためて示した。
 東電の情報開示の手法について知事は「当初『放射能漏れはない』と言っておきながら、途中で訂正したり、事後的にさまざまな事実を出してくる。一連の対応が信頼を損ねている」と厳しく批判した。
 風評被害が世界的に広がっていることから、県は、外務省などを通じ本県観光の安全情報などの発信を始めた。在外日本大使館のホームページに県が作成した外国語の安心情報を掲載した。
 中越沖地震の特徴について知事は「中堅地方都市を襲った災害。中越地震のように橋やトンネルといったインフラよりも個人住宅の被害の方が深刻。地盤の液状化により、外見上は分からない宅地崩壊などの被害が大きい」と見解を述べた。
2007年07月26日



3、佐渡への宿泊客 キャンセル9259人  新潟日報
 佐渡観光協会は25日、中越沖地震による佐渡への7―9月の宿泊客のキャンセル数が延べ9259人に上るとの調査結果を公表した。
 調査は島内の旅館やホテル、民宿などの80施設を対象に行い、70施設から回答を得た。このうち60施設で宿泊客のキャンセルがあった。
 内訳は個人客が4987人、団体客が4272人。月別では7月が6048人、8月が2918人、9月が293人。
 同協会は「原発問題によるキャンセルが増えており、新たな予約も入らない状態」と話しており、月内にも首都圏などで誘客のラジオCMを始めることを計画している。
2007年07月26日



4、断層は西傾斜、国土地理院が発表 中越沖地震 朝日新聞
2007年07月27日09時56分
 国土地理院は26日、新潟県中越沖地震を起こした断層が二つあり、いずれも西に下がった逆断層と推定できると発表した。断層の上端部は東の陸地側となり、深さは約1.2キロと浅い。地震を起こした断層が、被害を受けた東京電力柏崎刈羽原発の、より近くにあった可能性が出てきた。
 断層の一つは長さ約12キロ、幅約10キロで、約1.5メートルずれた。もう一つは長さ、幅ともに約10キロで約1.4メートルずれた。二つは隣り合っていると考えられた。
 これまで政府の地震調査委員会は、余震分布などから東に下がった断層を推定していた。産業技術総合研究所の解析では、そこから分岐した断層があるとの見方も示されている。
 地理院は、地殻変動の観測結果をもとに二つの断層の存在を推定した。余震分布では、比較的浅いところに西に下がっていると判断できる成分もあり、地殻変動の観測と合わせて整合性がとれるという。
 8月8日開催の地震調査委員会で報告する予定。地理院の飛田幹男・地殻変動研究室長は「内陸の断層と違い観測点が少ないため、モデルの推定は難しく、議論になるだろう」と話している。
 一方、東京大地震研究所も26日、精密な余震観測をもとに、西に下がった断層の可能性があるとの見方を明らかにした。



5、発耐震対策、周辺機器も補強・保安院、電力会社に要請方針  日経
 経済産業省原子力安全・保安院は、新潟県中越沖地震で火災が発生した原子力発電所の変圧器など心臓部以外の周辺機器や施設について耐震補強工事を早期に実施するよう各電力会社に求める方針を固めた。8月から具体策の検討を始める。2007年度内にも各電力会社が工事に取りかかれるようにする考えだ。
 耐震強化対策の詳細は総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の専門委員会(委員長、班目春樹東京大学教授)で検討する。  7月27日



6、災した柏崎市の商店街、56%の店が再開  日経7月27日
 新潟県は27日、新潟県中越沖地震で被害の大きかった同県柏崎市の商店街で、25日までに56%の店舗が営業を再開したと発表した。今週に入り水道の復旧が急速に進み、再開店舗が増えた。地域住民の生活に欠かせない商店街も以前の姿を取り戻しつつある。
 JR柏崎駅北の商店街254店舗を調査した。9ブロックあるうち再開発が進んでいた五中会商店街の復旧が最も進んでおり、90%が再開した。アーケードが崩れた東本町2丁目商店街は21%の再開にとどまっている。



7、柏崎市、予算確保しながら災害用医薬品を発注せず 読売新聞
 新潟県中越沖地震で被災した柏崎市の災害用備蓄医薬品のほとんどが期限切れだった問題で、市が医薬品などの買い替え費約80万円を今年度当初予算に確保していながら、発注しないまま震災に遭っていたことが26日、わかった。
 備蓄担当の市防災・原子力課によると、少なくとも2002年以降、備蓄医薬品の使用期限の確認を怠り、06年夏、期限切れに気付いたが、「緊急に必要なものではない」として買い替えを見送った。
 今年3月末、今年度予算に買い替え費を確保した後、医薬品などの種類や量について、市医師会などに相談して購入リストを作成。今月9日には業者の見積書も出来上がって、発注するだけになっていた。
 しかし、同課では、震災翌日の17日に予定されていた中越地震の復興に関する県などとの意見交換会に向けた資料作りなどに追われ、発注したのは今回の地震から8日後の24日だった。このため、地震直後に避難所から「医薬品が欲しい」と複数の要請があったが応じられず、「避難所で用意してほしい」などと対応を任せていた。
 期限切れ医薬品の買い替えを急がなかったことについて、同課は「認識が甘かった」としている。市民からは「中越地震を経験しているのに、防災への意識が低い」と不信の声が上がっている。
(2007年7月27日3時2分 読売新聞)



8、中越沖地震義援金、10億超す  新潟日報
 中越沖地震の被災者支援のため、県災害対策本部、日本赤十字社県支部、県共同募金会に寄せられた義援金の総額が26日までに11億4400万円となり、受け付け開始から10日間で10億円を超えた。中越地震で同じ期間に集まった義援金の約17%にとどまっている。
 これまでに寄せられたのは県災害対策本部に5億900万円、日本赤十字社県支部に約5億円、県共同募金会に約1億3300万円。
 中越地震に比べて義援金額が少ないことについて県では「中越大震災ほど報道で大きく取り上げられていないことや、能登半島沖地震など災害が相次いだことも影響しているのではないか」としている。

 中越地震では約370億円の義援金が寄せられ、被災者に配分された。
新潟日報2007年7月27日



9、西山町で食糧備蓄生かされず  新潟日報
 柏崎市西山町事務所近くの倉庫に同市が備蓄していた約1000食分の乾パンが、中越沖地震発生直後に配られていなかったことが、27日までに分かった。同市防災・原子力課は「現場は備蓄を知らず、本庁は支援で届いた食料の配布を最優先した。連携が不足していた」と釈明している。

 同事務所によると、地震が起きた16日の夜は西山地域の12避難所に約2400人が避難。同課が送ったおにぎりなどが同事務所に到着したのは午後11時ごろ、避難所にはさらに数十分後に届いた。乾パンの備蓄を把握していれば、迅速な食料提供が可能だった。

 市は2006年、災害用備蓄品計約2万1000食分などを市内7カ所に分散保管。西山町事務所近くの倉庫には、毛布や缶入り乾パンなどを配置した。しかし同課が事務所に渡した備蓄品の記録に食料の記述がなく、現場の担当者は乾パンの存在を知らなかったという。

 16日から西山地域の避難所で暮らす無職女性(75)は「初日の夜はボランティアからおにぎりをもらったが、備蓄があるなら早く出してもらいたかった」と話した。
新潟日報2007年7月27日



10、プラント刈羽店 従業員数十人解雇へ  新潟日報
 総合ディスカウントストアのプラント(福井県坂井市)は26日までに、中越沖地震で被災した刈羽村の「プラント―5刈羽店」の一部従業員を解雇することを決めた。対象は地元採用者で、数十人に上る見通し。今回の地震による大規模な解雇が明らかになったのは初めて。
 同社は「解雇人数は詰めている段階」としているが、本社がある坂井市のハローワーク三国は「会社から約40人の解雇を来週にも届け出ると報告を受けている」としている。
 同社によると、解雇するのは同店の全従業員約220人のうち、生鮮食品売り場のパートやアルバイトら。店舗は21日から営業を再開しているが、生鮮食品売り場は、専用冷蔵庫や調理場、給排水設備が大きな被害を受けたため、閉鎖している。
 今回の決定について、同社は「生鮮部門は当面、再開できる見通しが立たない。売り場のパート、アルバイトは出勤しないと収入もないため解雇する。再開する場合は優先して再雇用したい」と話している。同じ売り場の正社員約10人は既に他店舗に異動したという。
 プラントは県内に4店舗を展開。刈羽店は中越地震直後の2004年11月に開店。売り場面積は1万7000平方メートルで、柏崎刈羽地区で最大規模。
2007年07月27日



11、社説  原発の安全規制に独立機関を(7/27・日経)
 地下は水浸しで、天井のクレーンは軸が折れていた。地震発生から10日が過ぎても、点検が進むにつれて、柏崎刈羽原発では新たな損傷やトラブルが次々に見つかっている。

 周辺の旅館やリゾート施設の予約キャンセルや、イタリアのサッカーチームの来日中止など、いわゆる風評被害もじわりと広がっている。原発の安全に第一義的な責任を持つのは、事業者である電力会社だが、国の安全規制当局が、安全確認やトラブル評価の情報をわかりやすく発信すべき時期ではないだろうか。炉心から放射能漏れはなく、原発の耐震性は実証された、などと繰り返しても、住民の安心は得られまい。

 使用済み燃料プールから水があふれるなど、リスク管理の常識を覆す事象も多い。圧力容器のふたを開けて、肝心の炉心の健全性を確認する作業も急がねばならない。

 今回の地震で学んだのは、監督官庁も電力会社も、原発に関する様々なリスクを過小評価しがちだという事実である。海底断層の評価、想定地震動の強さ、いずれも地震国日本の現実に比べてリスクを過小に評価してきたことは明らかだ。役所と事業者に一部学界まで巻き込んで、原子力分野は産官学ともに世間の常識とは少々ずれた仲間内の理屈、「ムラの論理」が随所に顔を出す。

 変圧器が炎上しても、使用済み燃料プールから水があふれても、クレーンが損傷しても、炉心が壊れて大量の放射性物質が周辺に飛散する最悪の事態にさえ至らなければ、原発は安全と言い切ってしまうのが、典型的なムラの論理といえる。

 私たちは日本の原発が健全にその役割を果たすために、安全規制を担う原子力安全・保安院が、原発推進役の経産省の傘下にあるという、矛盾した関係を解消するよう、提言してきた。推進と規制を同じ役所が受け持つのは無理がある。今回の地震でも、原子力安全・保安院は現地に10人近いスタッフを常駐させていたのに、その存在感は住民や国民に伝わっていない。安全規制機関にとって組織的独立は決定的に重要だ。

 リスク評価機関としての原子力安全委員会は、内閣府に設置されているが、人員が不足している。新潟県知事や柏崎市長が国際原子力機関(IAEA)の調査参加を希望したのは、安全委や保安院に対する国民の信頼度が低いことを示している。

 米国の原子力規制委員会は3000人を超す専門家を抱える独立機関で、フランスも昨年、安全規制機関を法的に独立させた。安全機関の独立は、原子力大国の要件ではないか。


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石田ふたみ