『日々の映像』

2007年07月26日(木) 中越沖地震の記録 (16)

1、中越沖地震で断層実態解明へ 文科省が16機関に補助金  朝日新聞
2、原発地質調査、手引き見直し 柏崎の事故受け29年ぶり
3、トヨタなど自動車全社が生産再開・リケン、通常稼働に戻る (7/25日経)
4、柏崎原発、放射能漏出の恐れ13件も…5件は詳細不明 読売新聞
5、地震のストレスに要注意「たこつぼ心筋症」患者3人が発生  読売新聞
6、新潟県を放射能の風評被害直撃、宿泊取り消し4万8千件  読売新聞
7、柏崎刈羽原発の内部公開、床の放射性物質ぬぐう作業続く 読売新聞
8、ボランティアもっと来て! 平日激減、片付けはかどらず 刈羽村 日報
9、取り壊し急がずに 「赤紙」住宅で県が注意喚起  日報
10、震動を増幅させる「なぎさ現象」
11、柏崎のインフラ 被害額91億円




1、中越沖地震で断層実態解明へ 文科省が16機関に補助金  朝日新聞
2007年07月25日18時42分
 中越沖地震の余震活動や震源となった断層の実態解明などのため、文部科学省は25日、大学や独立行政法人など16機関に科学研究費補助金を交付することを決めた。金額は2325万円。
 陸上や海底に臨時の地震観測点や全地球測位システム(GPS)観測点を設置し、震源断層と周辺の地質構造との関係の解明を進める。建物や斜面の状況や、地震が地域経済に及ぼした影響、救援活動なども調べる。
 一方、総合科学技術会議も、船から音波で海底の地下構造を探るなどの緊急調査研究を行うことを決めた。調査は産業技術総合研究所や海洋研究開発機構などが行う。



2、原発地質調査、手引き見直し 柏崎の事故受け29年ぶり
2007年07月25日17時47分
 新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発を想定外の地震動が襲った事態を受け、国の原子力安全委員会(鈴木篤之委員長)は、原発周辺の地質や地盤に関する安全審査の手引を、最新の研究成果を反映させて29年ぶりに見直すことにした。先に原発の耐震指針が改定されたが、原発の構造物を乗せる地質や地盤の「素性」を調べるための手引の改定は積み残しとなっていた。
 今回の地震では「断層の調査や評価が不十分だった」との指摘が相次いだ。地質調査の専門家らからは、海底断層の調査などについて、最新の手法や知見を反映させるため、早期の手引改定を求める声もあった。
 原発の耐震性は、影響が出そうな活断層を見つけ、想定される最大規模の地震でも大丈夫な設計だと確かめるのが基本だ。手引は、電力会社が申請する原発の設計計画について、原発周辺の特に地質と地盤の安全審査の道筋を示している。例えば、敷地中心から少なくとも半径30キロ以内の陸地で航空写真や地表の踏査などで調べるよう具体的に求めている。
 昨年9月に改定された原発の耐震指針を補完する、いわば安全審査の手順書。手引ができたのは旧指針と同じ78年。指針が5年近い激論の末に改定され、並行して進めようとしていた手引の見直しまで及ばなかった。
 今回の地震では、東電が同原発を建設するため79、80年に実施した海底調査で見つけた4本の断層のうち、1本が動いた可能性が指摘されている。東電はこの断層を地震につながる活断層ではないと判断していたが、地震後、この断層が動いた可能性を認め、調査などへの疑問が噴出した。
 また、改定された新耐震指針で安全性を調べ直すため、東電は今春まで地質調査をしたが、海底断層の実地調査が入っておらず、「おざなり調査」との批判も出た。甘利経済産業相も24日の記者会見で「海の部分の把握の状況が甘かったということなら、国の確認の対応が不十分だったと思う」と述べている。



3、トヨタなど自動車全社が生産再開・リケン、通常稼働に戻る (7/25日経)
 新潟県中越沖地震で被災した部品大手リケンが通常稼働に戻ったことを受け、トヨタ自動車やスズキ、富士重工業など完成車メーカー各社は25日午前、操業を休止していた工場を再開した。ホンダの軽自動車生産ラインが生産休止を継続しているが、これを除くと自動車メーカー12社全社の工場が生産再開したことになる。

 トヨタは同日午前、グループ28工場すべてで生産を再開。19日から休止していたスズキは湖西工場(静岡県湖西市)など3工場すべてで生産を始めた。群馬製作所(群馬県太田市)で軽自動車の生産ラインを休止していた富士重も全面的にラインが稼働した。

 ホンダは主要生産拠点での生産はすでに再開している。ただ、軽を生産委託している八千代工業四日市製作所(三重県四日市市)とホンダの熊本製作所(熊本県大津町)ではリケンからの部品供給が間に合わず、25日午前も生産休止を継続した。



4、柏崎原発、放射能漏出の恐れ13件も…5件は詳細不明 読売新聞
 新潟県中越沖地震で被害を受けた東京電力の柏崎刈羽原子力発電所で、放射性物質の放出につながりかねないトラブルが、実際の漏出2件のほかに13件あり、そのうち5件では詳細が依然としてつかめていないことが25日、東電のまとめでわかった。
 13件のうち、排気ダクトのずれや消火配管の破損による水の大量流れ込みなど6件は、同日現在、復旧作業に取りかかれていない。
 原子炉建屋内などの空気を吸い出して主排気筒に接続するダクトのずれが五つの建屋で見つかった。稼働中に被害を受ければ、放射能を帯びたガスの漏出が懸念される部分だが、高所にあるため余震発生の危険から足場を組んで直接点検ができず、今回の地震による放射能の有無など詳しい状況は確認できていない。
 また、1号機では、消火系配管の損傷で複合建屋地下5階の放射線管理区域を含む部分に最大2000トンの水が流れ込み滞留した。放射性物質の量は検出できないほどわずかだが、これほど大量の水は想定外で、排気ダクトのずれ5件とともに、復旧の見通しは立っていない。
 現実の放射能漏れは、これまでに2件確認された。地震の揺れで6号機の使用済み燃料プールからあふれた水の一部が非管理区域に漏れだし、最終的に微量の放射性物質が海に流出。7号機の排気筒からは、原子炉の緊急停止後の操作手順ミスで、微量の放射性物質が放出された。ただ、原発敷地内や放水口周辺に設置された監視装置では検出されておらず、いずれも人体に影響ない濃度に薄まっていたとみられる。
 使用済み燃料プールからの水漏れは全7基で発生し、24日までに4か所で除去が完了した。
 東電によると、主な目視による点検は終わり、より細かな部分の点検を現在進めている。同原発には約1200人の社員が常駐しているが、地震で自宅が被災した社員も少なくなく、「現在は600〜700人程度しか出勤できない状態」(東電広報)という。
 同原発では、これまでに、この13件や漏出の2件を含む計64件のトラブルが確認されている。64件中には、24日になって新たに見つかった6号機原子炉建屋のクレーン損傷もあるうえ、原子炉の炉心部分の調査は手つかずの状態で、被害の全容はつかめていない。
(2007年7月25日15時17分 読売新聞)



5、地震のストレスに要注意「たこつぼ心筋症」患者3人が発生  読売新聞
 新潟県中越沖地震の被災地で、精神的ストレスで発症しやすい心臓病「たこつぼ心筋症」の患者が3人発生したことが25日、相沢義房・新潟大医学部教授(循環器内科)の調べでわかった。
 2004年の中越地震直後にも多数の患者が発生しており、相沢教授は「息苦しさや鈍痛など胸に異常を感じたら、すぐ循環器専門医の診断を受けてほしい」と注意を呼びかけている。
 たこつぼ心筋症は、心臓から血液を送り出す際、左心室の下部がふくらんだまま収縮しない病気で、左心室がたこつぼのような形にみえる。血流不足で胸の痛みや圧迫感が続く。約1か月ほど入院して安静にしていれば治るのが普通だが、原因がわからない突然死の中に、たこつぼ心筋症が含まれる可能性も指摘されている。
 心筋梗塞(こうそく)と違って血管に異常はなく、発症原因は不明だが、様々な精神的ストレスで発症しやすく、患者は高齢女性に多い。1990年に日本で最初に報告された。中越地震発生後3週間で、被災地で25人(うち女性24人)の患者が発生したことが相沢教授らの調査でわかり、広く注目されるようになった。
 相沢教授によると、今回の地震では、発生から1週間以内に柏崎市内の病院で3人の患者が確認された。全員が高齢女性で、入院して安静状態にある。
 今のところ、中越地震後ほど患者は多くないものの、相沢教授は「避難した住民同士で口論などして、ストレスをためないでほしい」と話している。
(2007年7月25日14時45分 )



6、新潟県を放射能の風評被害直撃、宿泊取り消し4万8千件  読売新聞
新潟県中越沖地震で起きた東京電力柏崎刈羽原子力発電所の放射能漏れが、観光地に風評被害を広げている。夏のかき入れ時を迎えた県内の旅館やホテルのキャンセルは地震後5日間だけで4万8000件(県市長会、町村長会調べ)にのぼり、その後も事態は深刻だ。観光業者らは「人体に影響がない」と、安全性のアピールに懸命だ。
 「魚のアメ横」で知られる長岡市・寺泊。被害の大きな柏崎市から約35キロ離れているが、いつもなら新鮮な海の幸を求める観光客でにぎわう「魚の市場通り」は閑散としている。「割烹の宿 山長」では17日からの1週間で予約客240人全員がキャンセル。店主の大倉英雄さん(55)は「物的被害は時間がたてば直るが、原発がらみの風評は我々にはどうすることもできない」とこぼす。
 柏崎市内の海水浴場15か所では海の家のほとんどが通常通り営業しているが、客はまばら。柏崎観光協会によると、海水浴客は、市内の年間観光客380万人の約4分の1を占める。自宅が全壊した佐野共恵さん(64)は、鯨波海水浴場で経営する海の家に泊まり込んで客を待つ。「やるしかないからね」と、佐野さんはため息をつく。
 風評被害は広範囲に及び、柏崎市の北約130キロの村上市・瀬波温泉の旅館「汐美荘」でもキャンセルが1000人を超えた。福田修支配人は「県外の旅行会社を回ってもなかなか理解が得られない」という。佐渡島の旅館「八幡館」も560人が予約をキャンセル。内陸の湯沢町でも、地震後4日間の宿泊取り消しが2700人。町によると、「なんとなく怖い」という声が多いという。
 東京電力、県の調査では、柏崎刈羽原発から海に漏れた放射能の量は約9万ベクレル。橋本哲夫・新潟大名誉教授(放射化学)は「ラドン温泉9リットルにしか相当せず、人体への影響は全くない」と話す。
 民宿などで数千件のキャンセルがあった上越市の木浦正幸市長は24日、長野県庁などを訪れ、市内の海水浴客70万人の半数を占める長野県民に「来てもらうことがボランティア活動」と訴えた。佐渡市観光協会も、福島、長野県のラジオ局に「佐渡は安全」とCMを出すなど対策に追われる。
(2007年7月25日15時21分 読売新聞)



7、柏崎刈羽原発の内部公開、床の放射性物質ぬぐう作業続く 読売新聞
 新潟県中越沖地震で、放射能を帯びた水の漏出を起こした東京電力柏崎刈羽原子力発電所6号機の作業フロアが25日、地震後初めて報道陣に公開された。
 公開された作業フロアは、地震による揺れで水があふれた使用済み燃料プールのいわばプールサイド。びしょぬれだったフロアは、23日までにふき取りを完了。ふき取った水を詰めた袋が片隅にまとめられ、10人ほどの作業員が、床にこびりついた放射性物質をぬぐう作業を続けていた。一部が折れて動かないクレーンなど、傷だらけになった施設の現状も公開され、定期点検を終えて今月末に稼働する予定だった6号機の運転再開までの、遠い道のりを感じさせた。
2007年7月25日13時47分



8、ボランティアもっと来て! 平日激減、片付けはかどらず 刈羽村 日報
 中越沖地震で被災した刈羽村でボランティアが不足している。週末には県内外から300人前後が訪れたが、平日は3分の1に激減。家屋の片付けが進むとボランティアがさらに必要になるのは確実で、同村災害ボランティアセンターは協力を呼び掛けている。
 地震後、初の週末に刈羽村を訪れたボランティアは21日が263人、22日が350人だったが、週明けの23日は90人、24日は113人にとどまった。ボランティアは家屋の片付けも手伝うが、人手が足りず、5人の要請があるところを3人にするなど、人数を絞って派遣している。
 一方、柏崎市では週末の21日に671人、22日に886人が集まった。23日は500人を割り込んだが、24日には県外からのボランティアグループが多く参加し、週末並みの627人を確保。「きちんと対応できているが、日によって変動があり動きがつかめない」(市社教)という。
 刈羽村災害ボランティアセンター本部長の広川武司・同村社会福祉協議会長は「刈羽村も被災家屋が多く、片付けが進むと今後活動が本格化してくる。平日にもぜひ参加して」と呼び掛けている。問い合わせは同センター、0257(45)2316。 
2007年07月25日



9、取り壊し急がずに 「赤紙」住宅で県が注意喚起  日報
 中越沖地震の被災住宅の応急危険度判定で立ち入り危険の「赤紙」を張られた住宅約5000戸について、補修すれば住める場合でも急いで取り壊しを決める被災世帯が出ているとして県は24日、「赤紙は全壊認定とは違う。取り壊す前に、専門家や行政窓口に相談を」と緊急の呼び掛けを始めた。
 応急危険度判定は、全壊や半壊を決める被害認定とは異なり「かわらやエアコンが落ちそうといった要因で赤が張られることもあり、補修すれば住める家もある」(県対策本部)。しかし、現地調査をしている新潟大のスタッフから「赤紙を張られたので取り壊そうという被災者がいる」と連絡が入ったという。
 中越地震、能登半島地震でも赤紙が張られたため、補修できた家を壊したり、被害認定前に取り壊して「り災証明」作成に難渋したりするケースがあった。県では早合点しないよう注意喚起している。
 相談窓口は柏崎市役所第2分館や刈羽村生涯学習センター「ラピカ」に設けられている。
2007年07月25日



10、震動を増幅させる「なぎさ現象」
 中越沖地震で震動を増幅させる「なぎさ現象」が発生したとされる柏崎市東本町などの地域では、石などを基礎にした古い木造建造物の「大破率」が他地域に比べて高いことが24日、新潟大災害復興科学センターの高浜信行副センター長らの調査で分かった。しかし、比較的新しい住宅は東本町などでも被害が少なく、同センターは「耐震基準を満たせば、なぎさ現象にも強い」と指摘している。
 同センターは(1)同市栄町など海岸近くの砂丘地(2)東本町や西本町など「なぎさ現象」地域(3)JR柏崎駅前地域―の3地域で木造の約860棟を調査、被害を比較した。
 調査では、建築基準法改正で耐震基準が強化された1981年以前の建築と、それ以後の建築で建物の新旧を区別したほか、コンクリートによる「布基礎」と、石などの上に柱を置いた「直接基礎」ごとに分類。それぞれ外壁の傾きや損壊割合が高い建物の件数から地域ごとの大破率を算定した。
 その結果、同市東本町2と同町3での大破率は、旧住宅(直接基礎)が55%、旧住宅兼店舗(同)が63%に上った。(2)の地域の平均では旧住宅(同)36%、旧住宅兼店舗(同)24%、同(布基礎)10%だった。
 (1)の地域でも旧住宅(直接基礎)は21%となったが、布基礎の旧住宅や新住宅は大破率が低く、(3)の地域はすべての分類で5%未満だった。
 「なぎさ現象」は水を入れたバケツをたたくと波紋が縁の部分で盛り上がるように、地下の固い地盤が盆状のとき、盆の縁部分の地上が大きく揺れる現象。
 同センターは「普通は(3)のような沖積層地域で被害が大きくなるが、今回は砂丘上の被害が大きいという特徴がある」と指摘している。
2007年07月25日



11、柏崎のインフラ 被害額91億円
 柏崎市は、24日現在の主なインフラの被害総額が91億5800万円に上ると発表した。内訳は道路、橋りょう、河川、公園の計1427カ所と、公共下水道の約30キロ。
 仮設住宅の建設が始まった刈羽村では同日までに67件の申し込みがあった。柏崎市では26日から申し込みを受け付ける。
 菅義偉総務相は同日、被災地に入り、東京電力柏崎刈羽原子力発電所などを視察、泉田裕彦知事、会田洋柏崎市長とそれぞれ面談した。菅総務相は同原発が消火に手間取ったことに触れ、「原発と消防のホットラインがうまく機能しなかった。あらゆることを想定して連携を強めるなどを準備しておく必要がある」と述べた。
 柏崎市は同日、同市中浜2の3世帯9人に対して、宅地周辺の擁壁が崩壊し、家屋倒壊の危険性が高まったとして避難勧告を出した。同市内で指示・勧告が出されているのは、11地区の126世帯352人となった。
 都市ガスは同日午後9時現在、同市と刈羽村で復旧率は4・6%にとどまり、2万9000戸あまりが復旧していない。
 柏崎市の水道は同日午後9時現在、59・3%にあたる2万3864戸で復旧したが、1万6000戸あまりで断水が続いている。
2007年07月25日



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石田ふたみ