『日々の映像』

2003年12月18日(木) アメリカとヨーロッパとの対立  

 米ソ冷戦時代は、米国とヨーロッパは強い同盟関係にあったが、イラク戦争を契機に緩やかな対立関係が形成されている。具体的には、イラクへの米国中心の攻撃に対して、フランス、ドイツ、ロシアが強く反対したのである。
 
 この後遺症がどのような形で修復されていくかが、現在の国際関係を考える上で重要な意味を持つ。ブッシュ大統領は、米国で予算を組んだイラク復興工事(約2兆円)の発注に、フランス、ドイツ、ロシアの企業は、入札に参加させないと決めたのである。
 
 この決定に対して12月12日アナン国連事務総長は「国際社会が団結して復興に加わるべき時に、協力ムードに水を差す不幸な決定だ」と述べ、米政府に不満を表明している。シュレーダー首相も「誰を事業に参加させ、誰を参加させないのか議論するのは無意味だ」と述べ、米政府の決定を「後ろ向きの姿勢」と批判している。
 
 また、欧州委員会も米国の方針を「間違い」と批判し、再考するよう求めた。そのうえで、世界貿易機関(WTO)協定上、問題がないかどうか調査に乗り出す方針を決めた。 これに対して米政府(米通商代表部)は「「事業を発注した主体は、米英占領当局(CPA)で、CPAは国際通商協定の履行義務を負う米政府機関ではない」(12月14日・毎日から)という理屈だ。この対立が大きくなっていくのだろうか。
     

    
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癒しの森119                           2003年12月18日
           映画 ラスト・サムライ(3)

 武士道の概念を三つあげれば、「義」「勇」「仁」の概念である。ここでは三国志に波打つ義の世界を少々記述したい。三国志の最初の名場面は、仁徳の人・劉備、信義の英雄・関羽、直情の豪傑・張飛3名の義兄弟の契りを結ぶ「桃園の誓い」である。義兄弟の誓いとは、一つの目的に向かって一緒に死のうと誓いである。
 
 三国志の中で「義」を重んじる代表として関羽が描かれている。「一般社会では劉備と関羽は、孔子や孟子よりも重要な道徳的な規範です。孔・孟の道徳より幅広く普及し、効果を発揮してきた存在なのです。中国では香港の警察をはじめ、いたるところで神棚を設けて関羽を祭っています。・・・小説の登場人物が大衆の崇拝する宗教的な対象になったことは、世界のいかなる文学作品もなしえなかったことです」(潮出版社・「旭日の世紀を求めて」の金庸氏の説明から)とある。
 
 中国の人たちの「義」を重んじた関羽に対する尊敬の念は、日本人の想像を遥かに超えている。それだけ「義」の概念が社会の規範となっている。日本の武士道はここで説明するまでもなく、中国文化(儒教)の影響で形成されたのである。それにしても、日本人が忘れかけているの武士道を、アメリカ人が世界に対して宣揚するのだからやや戸惑いを感じる。
 
 主演のトム・クルーズは「サムライこそが、武士道こそが国境さえ超えて人類普遍に持つべき精神」と熱く語るのである。ラスト・サムライは、壮大なスケールで武士道精神を描いている作品であった。
  
 ・悠久の 歴史を称えし 義の規範 これが廃れば カオスの社会
      



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石田ふたみ