『日々の映像』

2003年03月06日(木) 心が洗われる純情な夫婦

 日本産科婦人学会は、代理出産を認めていない。同学会は、なぜ認めないのか、その理由を国民が理解出来るだけの説明責任があると思う。この学会の掟に従わずに、二例目の代理出産に手を貸してやったのが、有名な諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津医師だ。

 同医師は「代理出産は私がやりたくて行なっているのではない。この方法でしかお子さんを手にすることができない、子宮を失った患者さんの求めに応じて行なってきた。せめてもの救いの道とすべきだ」(3日読売から)と述べている。根津医師は、日本産科婦人学会の除名処分を受けていた。今回の件で、学会復帰に問題が出るとの指摘だ。

 代理出産で子供をもうけたのは「30歳代の夫と20歳代の妻。妻は以前第1子を妊娠したものの死産となり、緊急手術で子宮を摘出、子供を作ることが出来なくなった。このため、既に子供のいる30歳代の夫の義姉が代理母になることを承諾。夫婦の精子と卵子で体外受精を行い、昨年受精卵を義姉の子宮に移植、妊娠し、昨年度中に出産した」(同)という。日本産科婦人学会は、この根津医師の行為を認めていないのだ。学会が認めていない医療行為したということで、除名処分となったのだ。日本産科婦人学会のこれらのことに関する決定の印象は、子供が欲しい夫婦の願いより、学会の権威を優先する思考があるように思えてならない。

 私が引用したかったのは、子供が授かった夫の喜びの手記である。「私たちは、結婚してから子供に恵まれず『不妊治療』により、ようやく妊娠することができました。ところが、わが子と会えると思っていた出産当日、私たちは『胎児死亡、子宮全摘出』という過酷な現実を突き付けられました。一時期、私も妻も、わが子の後を追って死んでしまおうとばかり考えていました。(中略)代理出産により、自分の子供を授かることができた、この喜びは筆舌に尽くせないものです。・・・政府は、今後代理出産を禁止する方針だそうですが、私たちにはまったく理解できません。私たちと同じ境遇の人たちから、幸せになるための選択を奪わないで下さい」(同)人の醜さが氾濫する社会にあって「わが子の後を追って死んでしまおうとばかり考えていました」という純情な文に接すると心が洗われる思いである。

 代理母の可否を産科婦人学会の倫理委員会、及び国としての審議が進んでいるようである。前記のような事例が、なぜ倫理的に問題だというのだろう。こんなことを問題視するのであったら、子供をまともに育てない未熟な母親の存在こそ大問題である。産科婦人学会としてこの分野の貢献を検討してもらいたいものだ。

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石田ふたみ