3日前に大手行と竹中氏との全面対決のテーマで書いたが、最大の焦点は繰り延べ税金資産をどこまで認めるかという基準なのである。
一般的にはなじみのないことであるが、少々会計の世界に首を突っ込んでみたい。会計のルールの中に、繰延資産というものがある。本来は経費なのだが、資産として扱うという擬制(ぎせい・違うのに同じとみなす)資産で、商法上は創立費・開業費などの7項目を3〜5年で償却する。本来は経費なのであるが、擬制すなわち資産とみなそうとする概念である。よって、株式会社のB/Sの借方に表示されていても、資産としての実体はないのである。
今問題になっている銀行の繰り延べ税金資産の計上のイロハの例題のように示すと、次のようになる。銀行の会計上の利益が20億円であったとする。しかし、税務上は貸倒れ引当金計上の2億円の先がまだ倒産していない。よって、課税上の所得は22億円になる。この22億円に対して50%(ここでは分かりやすく50%とする)の税金であるので法人税等は11億円になる。
さて、ここで、怪しげな擬制資産処理が行なわれる。少々専門用語になるが、借方(資産)繰り延べ税金資産1億円、貸方(利益)法人税等調整額1億円という仕訳を起こして、下記のとおり当期の純利益は10億円であったと表示する。20億円の利益に対して、9億円しか残っていないのに10億円の利益だとするから、1億円が繰り延べという名の擬制資産となるのだ。
損益計算書 税引き前当期純利益・・・・ 20億円 法人税等 ・・・・−11億円 法人税等調整額 ・・・・+ 1億円 当期純利益 ・・・・ 10億円
問題は、このような繰り延べ税金資産の計上額だ。「大手行の繰り延べ税金資産は、中核的な自己資本の半分近くになっている」(10月26日 読売HP)のである。
仮に2兆円の自己資本の銀行があったとする。このB/Sの借方を見ると実態のない繰り延べ税金資産が約1兆円も計上されているのだ。
竹中プロジェクトチームでは、この繰り延べ税金資産を10%に制限しようという原案だ。これが仮に実行されると、大手行で国際基準の自己資本を下回るところが出て来る。よって、金融界や与党からも強い反発が出ている。
しかし、擬制とは違うのに同じと見なす概念である。自己資本の実体はないのにあるように見せかける繰り延べ税金資産というごまかしも限界に来ているのだろう。
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