『日々の映像』

2002年10月24日(木) さわやかな励ましの風

 スウェーデンの化学アカデミーは、良い人をノーベル化学賞に選んでくれた。何と言っても、田中さんがサラリーマンエンジニアであったことが、日本の研究者に計り知れない好影響を与えることになった。

 田中さんのように企業の研究室で、一定のテーマに取り組んでいるエンジニアは膨大な数になる。これらの人たちに田中さんは、大いなる励ましの風を送ったことになる。

 田中さんが、テレビなどに登場すると、ほとんどの人は微笑む。栄誉や昇進などは毛頭考えずに仕事一筋の人柄が強力なパンチを与えているようだ。

 田中さんは、係長より下の主任だった。それが、今回の受賞で係長・課長・部長を飛び越して、役員待遇の「フェロー」への昇格が濃厚のようだ。ただし、これは13日付けの報道だ。15日の報道によると、島津製作所は研究環境を整えるために「田中ノーベル賞祈念研究所(仮称)」を年内に設置するという。

 田中さんは、東北大学工学部電気工学科の卒業だ。東北大学は「15日の評議会で、田中さんに名誉博士号を授与する事を決めた」(10月16日 毎日から)という。これだけ、全国の学生や研究者に励みを与えたのだから、この決定は当然のことだろう。

 田中さんは「この分野は面白い事がどんどん増えて、やりたいことがいっぱいあります。このままずっと、仕事を続けたい。やる気が衰えず、会社が必要としてくれる限りは」(10月17日毎日)と言っている。

 昨日まで日本国内で全くと言ってよいほど評価されていなかった人がノーベル賞を受賞する。・・・慌てて日本国内で大評価の動きが出る。・・・日本という国は何か根本的に反省しなければならない側面があるような気がする。文部化学省は田中さんに文化勲章授与の検討を始めている。

 島津製作所にとって、田中さんを中心とするエンジニアは、まさに宝だ。シャープが厚さ10数ミリのノートパソコンから数ミリの厚さに出来る先端技術を発表している。「文字や動画を表示する極薄(1ミリ弱)のディスプレー(の裏)に、コンピューターの頭脳部(中央演算処理装置)を組み込むことに成功した」(10月20日 朝日から)という。

 日本のメーカーが世界のパソコン市場をリードすることになる。これらは総べて、宝のような人材によって開発されているのだ。

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石田ふたみ