| 2002年06月29日(土) |
小麦の国際価格これでよいのか |
今月は大豆とトウモロコシのことを書いた。まとめとして小麦のことを引用しておこう。米国・オーストラリアなどの大規模機械化農業は世界を圧倒している。小麦の平均価格は2.7ドル(一ブッシェル27キロ当たり 340円・1キロ当たりでは12六円)でしかない。
この主要穀物の国際価格では、さすがの中国もお手上げのようだ。「安い労費を武器に野菜生産では高い競争力を誇る。だが、1人当たりの農地面積が0.4ヘクタール・・・に過ぎないため米・小麦・大豆などでは米国や豪州に太刀打ちできない。
中国の社会科学院は、05年までで米・小麦・綿花の3品目だけで1300万人の農民が職を失う。」(6月5日 毎日)と分析している。中国はWTOの加盟で、安い外国産の穀物がどんどん輸入される傾向になる。1300万人もの農民が、米・小麦などの生産から撤退し、中国が大量輸入の自体となれば、これらの穀物相場は大暴騰を招くのではないだろうか。
中国は安い労働力を武器に、野菜や加工食品では強い競争力を持つ。6月28日に書いた冷凍ホウレンソウ・ネギなどがその代表だ。「中国から日本に入る農産物は61億ドル(00年で約7600億円)」(6月25日 毎日から) 競争力の弱い小麦などの生産から現金を稼げる日本向けの野菜を作る・・・この動きにもやがてブレーキがかけられるだろう。何しろ中国の人口は12億人だ。この12億人の胃袋に満足な食糧を与えるだけでも大変なことである。
中国は国家を挙げて全国規模で食糧の増産をしているようだ。しかし、この日々の映像で何回も引用したが、米ワールドウォッチ研究所が指摘しているように水不足・砂漠化が深刻な問題になっているからだ。
アメリカに続いて小麦などの穀物の輸出大国はオーストラリアだ。しかし、この穀物の輸出も追って強いブレーキがかかると思う。オーストラリアの生態系が完全に崩れだしている。
「(オーストラリア)中央部が砂漠状態であるため、強い風に運ばれた海の塩が内陸に集まる。雨が降ると低地に向かい流れ出す。これまでは途中の森がこうした(塩分を含んでいた)水を吸い上げていた。しかし、18世紀から白人の入植が本格化し、放牧地や耕作地を広げるため次々と森を伐採した」(6月24日 毎日から)少々ショックを受けたのは、ダーリング川の流域だけでも「600万本以上の大木が切られた」(同)という。
塩分に慣れ育った大森林、固有の風土を破壊して、10キロ当たりわずか126円の小麦を輸出する・・・これほど馬鹿げた行為はない。オーストラリアは塩害の地域が広がっている。「今世紀半ばには12万平方キロに拡大すると言う数値も公表されていた。日本列島の3分の1に相当する土地が『塩漬け』の危機に瀕している」(同)大自然を誇るオーストラリアは塩の大地となるようだ。
オーストラリアのデーターで驚いていられない。「国連環境計画によると、世界のかんがい農地の約20%に当たる300万平方キロ(日本の面積の約7倍)が塩害のため農業生産に支障をきたしている。 豪州のほか米カリフォルニア、中国、シリア、ヨルダンなどに被害が広がっている」(同)近い将来、この地球上に食糧危機が訪れると認識すべきだ。
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