| 2002年03月30日(土) |
キャノン社長の「わが経営哲学」 |
3月6日に記述した主要企業のリストラは14万人を越える。松下電器は、1660億円もの割増退職金を支払って、全体社員の約10%を削減する。このようなリストラ旋風の中で、キャノンの御手洗社長の経営哲学は、日本の企業社会の中で大きな光彩を放っているように思う。3月19日、毎日の特集ワイドで御手洗社長の「わが経営哲学」が出ていたので、その中の1部を引用したい。 現在のリストラ旋風の中で・・・仮にこの先、業績が悪化して、人件費を大幅に削らなければならない事態になっても終身雇用は守りますか・・・。との質問に対して「みんなで我慢すればいいじゃないですか。首を切らずに給与をカットするなり、ワークシアリングするなりして、苦難の時間をみんなが手を携えて我慢すればいい。景気は循環するんだから必ず良くなる。・・・私も入社以後2度給料カットを経験していますが、その時だって誰も辞めませんでした。首を切るなら賃金カット。私ははっきりと言っている。『業績が悪くならないように労使一体となって頑張ろう。もし、そうなったら、社長から新入社員まで皆で我慢しよう』と言っている。」松下電器も1万4000人の希望退職でなく、10%の賃金カットで耐えることも選択の1つとしてはあったように思う。松下電器の場合、最も働き盛りの50代が1万4000人中70%も占めたのだ。次の質問と説明に移ろう。 「実力主義に対して社員から不満は出ませんか」との質問に対して「うちが貫いているのは平等じゃなくて、公平です。平等に賃金を配るのではなく、個々の能力を公平に認める競争を保証して社員を伸ばしていく。平等というのは非競争原理。・・・公平は競争の原理です。機会均等を踏まえた公正、公平な実力主義が徹底するようにしていますから不満は聞こえてこない」という。 キャノン社長は79年から10年余り、キャノンUSAの社長をしていた。意外なことにアメリカ流の社外取締役についてキッパリと否定していた。「社内のことを知らなくて、いちいち説明しなくてはいけない社外取締役は、おじゃま虫意外何物でもない。むしろ、終身雇用でずっと来た役員の方が、愛社精神もあるし、それに基づく強い倫理観や使命感を持っている。経営者が持つべき倫理観、使命感を終身雇用制で育てることが大事」と言っていた。長引く不況の中で、多くの企業が業績低迷に苦しんでいる中で、キャノンは終身雇用制の堅持を明確にしながら、2期連続の最高益を更新した。リストラの嵐の中で、この御手洗社長の話は1つの光彩を放っている。
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