『日々の映像』

2002年02月28日(木) 余    録

 以前にも書いたことがあるが、日本の新聞は悪いイメージのニュースはデカデカと報道する。反面、好ましいことは報道しないか、または報道しても小さな扱いのように思う。日本が造船世界一の座に返り咲いたことを100人中何人知っているだろうか。テレビも扱わないし、経済新聞で小さく扱われるだけだ。よって、殆どの人は知らないのであろう。「日本造船工業会がまとめた2001年の新造船受注量は・・前年比24%増の797万トンとなった。韓国は同38%減の641万トンとなり、日本が3年ぶりに造船世界一の座に返り咲いた」(2月1日 日経から)日本の賃金水準で、世界一の受注をするのだから、日本の造船技術がいかに勝れているかの証になると思う。
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 1月にキャノンのことを少々記述したが、2001年12月決算は、「連結営業利益が2818億円と前の期に比べ15%増え、4年ぶりに過去最高を更新した」(2月1日 日経から)という。連結売上高が2兆9000億円であるから、売上比で10%余りの営業利益という優秀さである。(連結税引き後の純利益1670億円)複写機市場では、勝組のキャノンとリコーがアメリカのゼロックスなどからシェアを奪っているのだ。
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2月13日に書いた雪印グループの再建に関連して外資は困ると言う農林省の指導には驚いた。この指導には当然法的な根拠がない。「雪印グループの再建に関連して政府が異例の『外資排除』を示したのは、酪農家保護だけでなく、牛乳生産に対する行政による管理ルールを守り通したいとの思惑があるためだ」(2月8日 毎日から)という。乳牛は自由経済のルールで流通しているのではなく、官主経済ルールの中に入っているのだ。このような分野の製品は総べて国際価格より高くなる。 
 農林省のトップである渡辺事務次官は外資導入に関連して「競争力も大事だが、生産と供給の仕組みが壊れては困ると言う声が強い」(同)と強調している。日本の企業はどんどん海外へ進出している。反面、優れた海外の企業を受け入れないというから、国際的に見れば見当違いの議論をしているように思う。
 話題に上っているネスレはスイスに本社のある会社だ。「ネスレは酪農から出発し、100年の歴史を持つ会社だ。ブランド管理能力に非常に優れ、同社は世界に約500の工場を持つ世界最大の食品メーカー。日本にも1913年に進出し、『ネスカフェ』・・・などでなじみがある」(同)ネスレが雪印のような問題企業を丸抱えにすることは考えられない。
 それでは日本の食品メーカーの中で、雪印の支援と再建に乗り出す企業があるのだろうか。
「事件がどこまで広がるか予測がつかない。今どんな企業も怖くて『雪印支援』は言い出せない」(2月6日 毎日から) 地に落ちたスノーブランドを買う企業は限りなくゼロの印象だ。行政と政治がこれだけ口を挟む企業を支援する企業が出るわけがない。
 商社が雪印を支援する可能性があるのだろうか。「大手商社は、雪印を丸抱えで支援することに極めて消極的だ」(2月8日 毎日)というから、雪印グループ全体は消滅へ向かって進むような気がしてならない。
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 2月15日に「大気圏はわずか10キロメートル」と題して少々記述した。地球からわずか20キロの成層は、気温(マイナス50度)と共に、太陽の強い紫外線が直撃するので、巨大な飛行船を浮かべるには超ハイテクの技術が求められる。計画の概要はこうだ。「ヘリウムガスを詰めた全長250メートル、直径60メートル、重さ30トンの巨大飛行船約15機を日本上空に浮かべ・・・気流に流されないように機体後部のプロぺラを使い、定点の半径1キロ以内にとどめる。・・・最大のメリットは、地上の通信基盤がない地域でも、飛行船さえ浮かべれば、一気に高速通信ができる点だ。・・・米と英は2003年に実行化一歩手前の長さ150メートル級の飛行船を成層圏で飛行させる」(2月11日 毎日から)という。高い打ち上げコストがかかる衛星より安価となり、通信技術に一つの革命が起こるのかも知れない。これらの実現化を目指す「日本成層圏通信」(同)という民間企業が発足している。
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 2月17日に記述した日本国債の格下げについて補足しておこう。Aa3から1段階引き下げA1になるとチェコ・ハンガリー並みの信用、2段階引き下げのA2にかると、ギリシャ、南アフリカ並みの信用というから困ったものだ。この信用の大幅な下落は、富士山が爆発する火山性地震であるといわねばならない。
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 1月も倒産の多い月だった。「帝国データバンクが発表した1月の企業倒産は件数で前年同月比19.3%増の1620件」(2月16日 毎日)で戦後最悪であるという。1月11日にも記述した特別保証制度を利用したにもかかわらず、倒産した企業が1620件中515件(32%)も占めている。この割合も過去最高となっている。
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 2月12日少子化に関連して、結婚しない(結婚できない?)女性が16.8八%、結婚しても子供を産まない(産めない)女性が13.2%になるとの推計を書いた。この推計は、労働省の人口問題研究所のもので、今までの4回の調査で当たったことがない。よって、この推計より悪くなる可能性が十分にある。
 1997年1月からこの日々の映像を書き始めて、6年目に入った。毎年この少子化の問題を数回記述してきたので、おおよそ20回あまり書いたような気がする。これらの記憶を少々辿り、かつ、2月6日・7日の日経の「なぜ止まらぬ少子化」も一部参考にして、この少子化の問題を記述してみたい。
 少子化の第1の原因は、一定の年齢に達しても結婚しない人(結婚したいとは思っているが出来ない人)の激増ぶりである。この統計的なデーターは、昨年の11月7日に記述したので再度引用してみよう。先ず、25歳から29歳までの未婚率は次のとおりだ。
    男性 69.3% (95年調査では66.9%)
    女性 54.0% (95年調査では48.0%)
 男性の場合ならまだ良いとしても、女性で25歳から29歳で50%以上の人が未婚であるから大変なデータ―であると思う。
 次に30歳から34歳の未婚率は次のとおりで、前回の調査より一気に上昇している。
   男性  42.9% (95年調査では37.3%)
   女性  26.6% (95年調査では19.7%)
 このデーターは驚くべきことだと思う。30歳から34歳になっても、女性の4人に1人以上が未婚なのである。更に加筆すれば、35歳から39歳の男性で25%、女性で13.9%が未婚との統計となっている。(昨年10月31日の国勢調査の確定値から引用)これらの未婚率の統計から、2月12日に記述したように、1985年生まれの女性(現在17歳)の未婚率が16.8%に達するとの推計になっている。
 男性の未婚について少々記述したい。30歳から34歳で42.9%が未婚で35歳から39歳で実に4人に1人が未婚と言う驚くべきデーターなのだ。都市部へ行くと更にこの未婚率が上昇する。なぜだろう。少々総論となるが「問題の根っこにあるのは、若者の自立を支援しようという発想が、社会全体に乏しいことだ」(2月6日 日経・宮本千葉大教授)細部は省略するが、同教授の指摘は出生率の高い国は、職業訓練や住宅確保など若者に対する社会的自立支援策が充実していると言う。考えてみれば、住宅コストの高い都市部にあって若い夫婦の住宅の支援策は皆無に等しい。都市部は、この経済的な側面が未婚者を増加させている一因であることは確かである。
 農村部へ行くとどうか。日本全国の統計では、前記したとおり35歳から39歳の男性で25%が未婚となっているが、これをはるかに超えている集落がいくらでもある。私が知っているAという集落は、100軒中33軒にお嫁さんがいない。男性の年齢は35歳から50歳である。長男が35歳から50歳であるので間もなく両親はいなくなる。これが1つの国であれば、間もなく人口が半分に減少する。この集落のことを思い浮かべると、日本の未来を見るような錯覚に陥る。この農村部に独身の男性(お嫁さんが来ない)が多いことに関して、集落の関係者と話す機会も多くあった。この日々の映像に何回となく記述もした。ここでこの問題をダラダラと記述するつもりはない。ただ1つだけ記述すると、お嫁さんが来ない農家の長男は、一般的に個(自分の考え・個性)が乏しいのである。
 しかも、先月の余録に記述したように、18歳以前に完成した狭い社会観・常識の中で生きている人が多いような気がしてならない。一度積み上がった常識の中で生きているので、当然話題も少ない。これでは、お嫁さんの来てがないのも当然のように思える。
 農村部の長男に個が乏しいのは、日本の社会の縮図のように思う。日本は公(網の目のように張り巡らされた行政・地域の慣習)を優先して、個が押しつぶされていく構造がある。農村部の長男はこの公に従順な「いい人」が多い。いい人とは言い換えれば、ただ官の支配・地域の慣習に従うだけで自分がないのだ。
 都市部に話を移そう。最近は会っていないが、しばらくの間25歳の独身女性4人と懇談する機会があった。4人ともに「いい人が見つかったら結婚したい」という意志を持っていた。彼女達が目出度く結婚したとする。しかし、1月の余録に書いたようにコミュニケーションが保たれず離婚する人(統計的な数字は省略)が多い。これも少子化の大きな原因の1つだ。この離婚のことはここでは記述を省略する。
 若い夫婦は、だいたい共稼ぎで人生のスタートを切る。妻が正社員(25歳から34歳の働く女性の正社員の割合65%・・・2月7日 日経)の場合は、育児休暇が取得できる。しかし、現実はどうか。「正社員でさえ嫌がらせが横行している。非正規社員が働きながら子供を産むのはかなり困難だ」(2月7日 日経・谷女性ユニオン東京副執行委員長)法律的には正社員は育児休暇が取れることになっている。しかし、現実は出産と共に会社を辞めさせようとする企業が多いのが現実だ。よって、高いレベルの仕事をしている女性ほど結婚しても出産をしない人が多いのだ。そして、30代の中ごろになってから、そろそろ子供を持とうと考える。しかし、現実はそうはうまくいかない場合が出てくる。
 2月6日の日経で、「楽観は禁物、産み時を逃す」と題して、30歳を過ぎると妊娠しにくくなる解説が載っていた。「ある研究によると、妊娠のしやすさは、30歳を過ぎると年々低下する。誤算に気付いた時は、得てして後の祭りだ」(21世紀政策研究所)そして「産めない」夫婦、女性が誕生する。1992年まで30歳以上を高齢初産と規定されていたが、やはりこの傾向は否定できない現実なのだ。前記したように、30歳から34歳での女性の未婚率は26.6%だ。100人中26人が未婚なのである。これらの人たちが結婚しても「産めない」部類に入る確立が高まる。子供はいつでも産めるという幻想を持つべきでないのだ。この2月6日の解説を読んで「・・・なるほど、人間も生物なのだ。女性としての妊娠の能力が出るのは15歳前後だ。それから20年も経ってから、妊娠しようと思ってもだめの場合が多いのか・・・これが生物としての摂理なのだ。・・・」と納得した。
 さて次は結婚しても「産まない」夫婦の話に移そう。
 前記したように、25歳から34歳の女性の35%は、契約社員、パートなどの非正規社員だ。育児休業は、正社員だけの適用となっており、契約社員・派遣社員は取得する権利がない。よって、これらの女性達は、生活水準の大幅な低下か、出産断念かという二者択一を迫られることになる。若い女性達を福利厚生が少ない(ほとんどない)安い労働力として使う動きが更に強まっている。「人件費削減などで企業は非正規雇用を進めており正社員と非正規社員の比率が逆転する日も遠くない」(2月7日 日経)という。パート・契約社員の割合は、25歳から34歳で35%となっているが、結婚適齢期の21歳から30歳のパート・契約社員の割合は50%近くになっている感じだ。これでは前段に引用したとおり「非正規社員が働きながら子供を産むのはかなり困難だ」という対象夫婦が増加していく。社会全体で、人件費抑制の名のもとで、若い女性たちをいじめておいて、少子化が問題だなどという話は滑稽だ。社会全体で少子化へ進めと力を合わせて協力し合っているように映る。この日本は1月27日に書いたように人口7000万人減へ向かって進むしかないのか。
 2月7日の日経から子供を産んで欲しい女性達の人数を見てみよう。表のとおり、25歳から34歳の女性は500万人だ。この内、65%に当たる325万人が正社員、175万人が非正規社員という内訳だ。出産が可能な20歳から34歳までの女性は約750万人になる。これだけの女性がいながら、1ヵ年の出生数は100万人少々なのである。よく少子化の問題が議論される時、年金が破綻するという論説が多い。しかし、一番の問題は農村部の崩壊だ。農村部は3割減反で苦しんでいる。私は懇意にしている農村部の有力者に「時間の問題で5割減反になる」と話をした。なぜ政治は少子化の有効な対策が取れないのだろう。
 政治に詳しい同氏は「児童手当などの予算を増すことは、利権につながらないからね」とつぶやいていた。ドイツは、0歳から18での子供を持つ家庭に、1人1ヶ月15000円の児童手当が出る。子供が3人いると45000円だ。諸物価が日本より大幅に安いので、日本の物価水準で言えば6〜7万円の支援と同じだ。こんな支援予算は、利権が生まれないので、法案が成立する可能性はゼロだろう。100年後の日本は、道路だけ出来て人がまばらの社会になる。










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石田ふたみ