『日々の映像』

2000年01月28日(金) 理想の死に方 (3号の引用)

 シグネチャー2月号に塩田丸男氏の随筆「理想の旅たち」が載っていた。「私の死亡記事」という本がある。この本は各界102人の著名人が執筆者なのである。この本にはどのように死にたいかという希望が記述されている。「読者と歓談中に急性心不全で死亡」(安部譲二氏)「最後のさくら鑑賞中に突然倒れ、救急車で運ばれたがまもなく死亡」(岩見隆夫氏)「誤って谷間に転落し頭を打って死亡」などなどである。
 
 塩田氏の指摘は「102人もの人が死を語って、誰もが一言も介護に触れていないというのはどういうことだろう。自分が死に至る過程で、他人の介護を受ける状態になる・・そんな状態を誰もが考えたくないに違いない。下の世話を見知らぬ他人に朝晩してもらう・・・こんな毎日を何ヶ月も過ごすくらいなら・・・ピストルで自分の頭を撃った方がまだましだ、と思うのだろう。
 
 介護などはされないで、死を迎えたいとする心理は良く理解できる。しかし、人は老いて病の過程を経て死んでいくのである。丸田氏は「あたたかく、やさしい、よき介護を経て死に至る。これが理想の旅立ちではないだろうか」と結んでいた。
 
 モナリザを描いたイタリア・ルネッサンスを代表する偉人・万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な言葉がある。

    「充実した人生は長い
    充実した1日はいい眠りを与える
    充実した人生は静寂な死を与える」

 静寂な死を迎えられるようになるには、テーマを持って今日を充実した1日としなければならないのだ。

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石田ふたみ