1996年01月19日(金) |
「食糧危機」の本当の原因 |
2008-04-18 / Economics 今月から、小麦の政府売渡価格が30%引き上げられ、パンやうどんなどの値上げが続いている。この説明として、農水省は「国際的な穀物価格の高騰が原因だ」と説明し、御用評論家は「こういうこともあるから、食糧自給率の引き上げが必要だ」と言っているが、これは本当だろうか。
農水省のホームページによれば、値上げ後の政府売渡価格は銘柄平均で69,120円/tである。この理由として、小麦の国際価格が「本年2月には10ドル/ブッシェルを超えて史上最高値を更新するなど、政府買付価格は大幅に上昇している」と書かれているが、ブッシェルというのは約27kgだから、10ドル/ブッシェルというのはトンあたりに換算すると約37,000円。政府は国際相場の2倍近い価格で売っていることになる。
それでも食料安定供給特別会計が逆鞘になったのは、この原価に25%の関税と、マークアップ(麦等輸入納付金)など約19,000円/tを乗せるためだ(農水省資料)。これによって政府買入価格は65,250円/tになるから、3月までの政府売渡価格53,270円/tを上回る。これが値上げの理由だ。
他方、国産小麦の落札価格は銘柄平均で約43,000円と、輸入小麦を下回った。これは割安に見えるが、実は約100%の補助金を受けているので、原価は国際相場の2.5倍だ。この補助金の原資は、上の麦等輸入納付金だ。つまり国内農家の保護のため、輸入小麦から関税と上納金を取って国内農家に補填していることが、コストアップの原因だ。
要するに今回の政府売渡価格の値上げの原因は、「自給率」を高めるための農業補助金の原資が不足したからなのだ。したがって小麦を安定して低価格で供給するのに必要なのは「食糧安全保障政策」なんかではない。関税と農業補助金を廃止して輸入を自由化すれば、小麦の価格は半分になる。
同じような問題は、国際的な「食糧危機」についても指摘されている。小麦の価格は昨年77%上昇し、米の価格は今年に入って2.4倍にもなった(図)。この原因は中国やインドの食料需要の増加だといわれるが、米の異常な暴騰は輸出国が数量割り当てを実施したためだ。トウモロコシが1.5倍になったのは、欧米諸国がバイオエタノールの増産を決めたことが原因だ。
だから、この問題を解決するのに必要なのは、熱帯雨林を破壊してCO2を倍増させるバイオエタノールの生産をやめ、穀物価格の安い時期に欧米の農家を保護するために設けられた輸出補助金などの農業保護を廃止して穀物価格を引き下げることだ、とEconomist誌は指摘している。
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