『日々の映像』

1996年01月17日(水)  020、日本の経済的破綻から資産を守るために



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 「銀行が破綻した場合に、預金者一人当たりの預金額元本1000万円とその利子まで、保護される」という制度がペイオフです。だから、「1000万円を超える預金は分散しなければならない」というのが一般的に言われるペイオフ対策でしょう。

 しかし、単に預金を分散するだけで、本当に資産が保全されると言えるのでしょうか。答は「いいえ。預金を1000万円以下に分散して複数の銀行に預けたとしても、決済性預金に預けたとしても、資産は十分に保全されない」です。

 なぜか?先ほど述べたように、日本経済の現状を冷静に観察すると、ペイオフは少数の危ない銀行を避けるという簡単な問題ではありません。たとえば、金利の高騰で、どの銀行も多量に持っている国債は、大きな評価損を抱えます。ペイオフの本質は、預金者責任という名目で、預金者から国家への巨大な富の移動を行い、国家的な不良債権の解決を図る算段ということなのです。つまり、ペイオフは、国家財政破綻の問題と切り離せない問題なのです。

 また、ペイオフが実施された場合には、引き出し額の制限があると思われます。生活に必要な額として60万のみを引き出すことができるだけで、預金全額を引き出して他の銀行に預けかえることができるわけではないのです。その間に、インフレや円安が進行するとしたらどうでしょうか?1000万円以下でも、預金者の財産は目減りするのです。

 円建て預金の価値が下落するような状況下で個人の資産を守るには、資産の一部を外貨ベースで運用する、たとえば「外貨預金」というのが一般的な発想でしょう。これで本当に資産が保全されると言えるのでしょうか。

 答は「いいえ。日本の銀行に円建て以外の預金をした場合は、それが1000万円に満たない金額であっても、確実に保護されることはない」です。

 なぜか?日本の預金保険では、外貨預金は保護の対象外となります。つまり、銀行破綻で外貨資産が失われも、誰も保障してくれないのです。シティバンクなど外資系銀行でも、日本国内で営業している場合は日本の銀行法での範囲内で営業しています。シティバンクは格付けが高く倒産するとは考えにくいのですが、日本の法律に基づいた処分には対抗できません。

 結局、「国家財政破綻という状況を想定した場合、日本の銀行に確実な資産保全を期待することはできない」ということです。

 「国家財政破綻など起こるわけがない」とお考えでしょうか。確かに、「日本円の価値が無くなるかもしれない」なんて私たちの常識の外にあります。もちろん、日本銀行は絶対に危険だとは言いません。財務省など日本の政府関係者も言いません。しかし、誰も言わなくても、「日本銀行のバランスシート」を見ると、危機は明らかなのです。

 もし、国家財政破綻が起これば、日本株は暴落、国債はデフォルト(債務放棄)となるでしょう。日本株、日本国債はリスク回避にはなりません。

 もちろん、国家財政破綻が起こらなければ、それに越したことはありません。しかし、確実な資産保全のためには、最悪の状況を含めた種々のリスクを考慮しながら、資産の分散を図るというのが鉄則です。

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石田ふたみ