1996年01月10日(水) |
日本国破産 国家破産の方程式 |
2005-08-17 これまでみてきたように、このままでは日本が財政破綻を避けることは難しいようです。ジョン・メイナード・ケインズは『貨幣改革論』の中で国家破産の方式には3通りあると主張しています。 a.債務帳消し型 b.債務所有者に対する資本課税型 c.財政暴力出動型 a.の債務帳消し型には2つの方法があります。ひとつは「デフォルト」。つまり借金の返済をやめてしまうことです。この場合、すでにみてきたように国債の保有者は9割近くが金融機関なので、ほとんどの銀行は倒産してしまい、国民の預貯金はほとんど引き出せなくなります。また、国際的な信用もなくなり、日本円の暴落も予想されます。 もうひとつの方法は、いわゆる「預金封鎖」。預金を新旧に分け、当分の間、旧の預金勘定を一定額しか引き出せないようにします。これをやる理由は、政府が大量に発行した国債を旧勘定にして凍結する狙いがあります。前述のように日本が2回目に破産したとき、この手法が採用されました。 b.の債務所有者に対する資本課税型ですが、日本の債務所有者は直接的には金融機関ですが、間接的には国民です。政府には課税権がありますので、大増税をして国民から税金をできるだけしぼり取ることができます。戦後の破産時にも10万円を超える資産に対し25〜90%の高額な財産税がかけられました。 現在、政府が検討している案から想定してみると下記のような増税が予想されます。 1.消費税は10%にし、将来的には30%をめざす。 2.環境税などの新税を導入する。 3.所得税の最低税率は10%だが、5%を新設しアルバイト等からも徴収する。 4.所得税の計算のときの各種控除を縮小する。 5.現在実施中の定率減税は廃止する。 6.高所得者に適用される所得税の最高税率を引き上げる。 7.酒税を簡素化し増税する。 8.社会保険料、年金保険料、雇用保険料、労災保険料等の保険料を増やし、給付を減らす。 9.子供の扶養控除を増やし、子供のない夫婦からは上乗せ所得税を徴収する。(少子高齢化社会に対応するため) ただし、大増税は、国民からの反発が強いのと、かえって不況を促進するため、なかなか実施することは難しいようです。 c.の財政暴力出動型というのは、ハイパーインフレ、貨幣価値の大幅下落を指します。原理的には通貨供給量を10倍にすると貨幣価値は10分の1になり、通貨供給量を100倍にすると貨幣価値は100分の1程度になります。貨幣価値が100分の1になると1000兆円の借金は、実質的には10兆円となります。これは日本銀行がお札(日銀券)をどんどん印刷することで可能です。ただし、預貯金の価値も同じように減ります。1000万円の預貯金は100分の1になると10万円の価値となってしまいます。国民が何十年もかけて貯めてきた資産が、アッという間に消えてしまうことになります。 上記のような方法は、いずれも大不況を招くことになってしまいますが、このままではいずれかの方法、もしくはこれらをミックスした方法を取らざるを得ないというのが、多くのエコノミストの指摘するところです。
★ワンポイントレッスン★ インフレってなに? とある調査によるとインフレの意味を知らないという人が7割を越えているそうですので、これについてちょっと解説しておきます。 インフレとは「インフレーション」の略で、物の価値(物価)が上がって相対的にお金の価値が下がるということです。何故お金の量が増えるとインフレになるかといえば− たとえば、月給1000万円のAさんと月給10万円のBさんは、同じ1万円でも価値が違いますよね。 Aさんにとって1万円は月給の1000分の1でしかない金額ですが、Bさんにとって1万円は月給の10分の1にもなる金額です。Aさんは割と気軽に1万円の買い物ができるでしょうが、Bさんが1万円の買い物をする時には、ちょっと悩むかもしれません。 ところがBさんも1000万円の月給をもらえるようになると、1万円は月給の1000分の1ですから、1万円の価値はかつて月給10万円だった頃の100分の1に下がっていることになります。 お金が増えると(=月給1000万円になる)とお金(=1万円)の価値が(100分の1に)下がる構図がご理解いただけたでしょうか? ところが物の値段がそのまま据え置かれるわけではありません。お金の価値が100分の1になった場合、かつて1万円だったものを、その価値を維持しようとすれば100万円という値段で売られることになります。月給が1000万円になったBさんにとっては、かつてと状況が変わらないのでそれほど困りませんが、Bさんの同僚で月給10万円のままのCさんにとっては、非常に深刻な状況に陥ることになります。
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