『日々の映像』

1996年01月11日(木)  日本国破産 IMFは日本を救えるか!?

2005 
 日本国内で国債が消化できないとなると、外国からの資金調達が必要となります。大手格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、2002年5月に「日本の債務状況を向こう数年間予想した」結果として、日本国債の格付けを先進国としては最低、アフリカのボツワナ以下に引き下げました。日本政府は、この格付けに対し抗議しましたが、これだけの借金を抱えている国家ならば妥当な判断といえるでしょう。2004年2月末現在、日本国債を保有する海外投資家の比率は3.7%に過ぎません。2005年1月から財務省はロンドン、ニューヨークなどで日本国債の説明会を開き、外国人投資家へ日本国債への投資を呼びかけました。しかし、リスクは高いのに金利は低い日本国債への海外投資家の反応は冷ややかだったといいます。つまり、市場での資金調達は難しそうです。そうなると国際的な金融機関に助けてもらうしか手はなくなります。
 財政破綻は何にも珍しいことではありません。最近では1998年にロシアが国債のデフォルト(債務不履行)、2001年にはアルゼンチンが外国債のデフォルトをおこしました。デフォルト直前の金融危機におちいった国は枚挙にいとまがありません。特に途上国ではその頻度が高く、自国経済の運営が上手くいかずに外国からの融資を受け、その債務が返済不可能なまでに膨らんでしまった重債務貧困国 は、世界191ヶ国中42ヶ国もあります。
●2002年3月現在、重債務貧困国として認定されている国は42ヶ国
・中近東アフリカ地域:計35ヶ国
イエメン、ソマリア、エチオピア、象牙海岸、マリ、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ガーナ、ブルキナ・ファソ、ブルンディ、タンザニア、モザンビーク、リベリア、ベナン、マダガスカル、ザンビア、アンゴラ、セネガル、ギニア・ビサオ、コンゴ(民)、コンゴ、中央アフリア、ギニア、モーリタニア、カメルーン、スーダン、トーゴー、マラウィ、サントメ・プリンシペ、チャード、ニジェール、シェラ・レオネ、ガンビア
・中南米地域:計4ヶ国
ガイアナ、ボリビア、ホンジュラス、ニカラグア
・アジア地域:計3ヶ国
ベトナム、ミャンマー、ラオス
これらの国々はIMF(国際通貨基金)から融資を受け、その場を凌いでいるものの、結局は債務の鎖につながれ、大変な苦境に陥っています。IMFに関しては大変、問題が多い機関なので、次章で詳しくみてみたいと思いますが、そのIMFの出資総額は約2930億ドル(2003年1月31日現在)。すでに貸し出し済みのものや、近く行われる借入用に予約済みとなっているものも含むため、新規貸付能力は780億ドルしかありません。
【参考】http://www.imf.org/external/np/exr/facts/jpn/finfacj.htm
為替相場が1ドル=100円として7.8兆円だけです。これでは日本の単年度の一般会計赤字40兆円すら埋めることはできません。【資料4】の公債残高の累計にも書いてありますが、全世界の開発途上国の累積債務残高を合計しても約316兆円にしかならないのです。日本は他国と比べ財政規模が多きすぎるので、この巨額の負債は国際機関であっても救済できません。
 日本の財政破綻はIMFが助けられる規模ではありませんが、日本が自力で再建ができない場合、国の経営権は失うことになる可能性が大きくなります。
 2002年2月14日の衆議院予算委委員会で「ネバダ・レポート」という文書が取り上げられ、金融・財政関係者の間で話題となりました。アメリカの金融専門家たちは日本の財政状態を、もう既に回復不可能なほど財政破綻が進んでおり、これを改善するためには相当大胆な改革を断行しなければならず、日本が自らこのような改革をやることはないので日本は遠からず破産すると見ているようです。この経済金融レポートには「日本がIMFの管理下におかれたときの予測」を書いていて、以下の8項目の改革が行われるであろうと予測しています。
① 公務員の総数、給料は30%以上カット、及びボーナスは例外なくすべてカット。
② 公務員の退職金は100%すべてカット。
③ 年金は一律30%カット。
④ 国債の利払いは5~10年間停止。
⑤ 消費税を20%に引き上げる。
⑥ 課税最低限を引き下げ、年収100万円以上から徴税を行う。
⑦ 資産税を導入して不動産には公示価格の5%を課税、債券・社債については5~15%の課税、株式は取得金額の1%を 課税。
⑧ 預金は一律1000万以上のペイオフを実施し、第2段階として預金額を30%~40%財産税として没収する。
 IMFでは、総務会、国際通貨金融委員会、理事会などが開かれていて、会議での投票権は加盟国の出資額によって票数が決められています。現在、184ヶ国が加盟国していて、日本は米国に次ぐ出資国ですが、最大の出資国である米国の金融政策・財政政策とは切っても切り離せない関係にあります。米国社会を動かしているのは、実は、ウォール街、米国財務省、世界銀行、IMFの『金融複合体』*1で、これらの諸機関は相互に人事を交換し、タイアップしています。世銀やIMFの実働部隊は、ほとんど米国金融機関のスタッフで占められています。
 近年の米国の独善的な外交姿勢および日本と米国の特別な関係を考慮すると、日本がIMFの管理下におかれる可能性は否定できません。あまり知られていませんが、米国政府は毎年10月、日本政府に対し「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」という文書を提出しています。その文書は米国大使館のホームページに公式文書として載っていますので、誰でもみることができます。この文書をみると、小泉首相の言っている構造改革が、実は米国の要望に応えていることがわかります。
【参考】http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041015-50.html
 日本政府が米国政府の要望に応えて政策を決めている現状では、上記のような改革が行われるであろう確立は高いでしょう。そうなれば国債は塩漬けにされ、預金もカットされ、資産税も導入される。公務員のリストラと給料のカットが大幅に実行されるから、日本経済の成長は止まり、国内は一時的に大混乱に陥り、国民は大きな「痛み」を味わうことになるでしょう。
 また、内閣府の「海外経済データ」(平成16年)によれば、世界のGDPにおける日本の割合は13.6%、米国の割合は33%。両国だけで世界のGDPの約半分(46.6%)になってしまうほど世界経済に大きな位置を占めています。つまり日本経済が大混乱に陥った場合、その影響は世界中に飛び火し、世界経済を大混乱させることになるでしょう。特に、次のコラムに見るように、日本に依存してきた米国経済は大打撃を受けるはずです。世界の覇権国家、米国が経済破綻した時、果たして地球はどうなってしまうのでしょうか?

★ワンポイントレッスン★ 円高と円安
 円高と円安では数字が逆転するので、混乱する方もいるかと思いますので、ちょっと解説します。
 ドルは世界の基軸通貨なので、為替相場はドルを基準に考えます。
 たとえばAさんが米国に行くことになり、銀行に200円を持っていったら2ドルと替えてもらえました。
 一年後、Bさんも米国に行くことになり、やはり200円を持っていったら、今度は1ドルにしか替えてもらえませんでした。
 AさんとBさん、どちらが得をしたかといえばAさんですね。Aさんが米国に行ったときは1ドル=100円でしたが、Bさんが行ったときには1ドル=200円になっていたわけです。
 つまり、Bさんの時には、円はドルに対して半分の価値になっていた⇒ドルに対し円の価値が低くなった⇒円安というわけです。
 反対にBさんが米国に行ったときは1ドル=200円でしたが、Aさんが行ったときには1ドル=100円だったわけですから、Aさんの時には円はドルに対して二倍の価値を持っていた⇒ドルに対し円の価値が高かった⇒円高というわけです。

■コラム 米国を支え続ける心優しい国ニッポン‐日本は米国の金蔓!?‐
世界の産業構造を大まかな視点でみてみますと、近年では、途上国が資源を供給し、日本が生産(既に中国にシフトしつつありますが)し、米国が買うという構造になっています。米国は、大量消費社会です。大量に消費をするということは、当然、支出が多くなり、米国は財政・貿易・家計の三分野とも大きな赤字を抱えることになりました。いわゆる「三つ子の赤字」というものです。2004年度の財政赤字は4125億5300(45兆3800億円)で過去最大。累積赤字は7兆3840億ドル(812兆円)。そのうち2.5兆ドル(275兆円)以上が対外債務です。
 この借金漬け米国経済を支えてきたのが、実は日本です。日本は貿易立国だと言われ、戦後、ずっと海外にモノを売ることで経済成長してきました。日本が海外にモノを売るには「円安=ドル高」の方が有利です。たとえば、日本国内で100万円で売っている車が1ドル=100円ならば、米国での売値は10000ドルになります。でも、1ドル=200円ならば、米国での売値は5000ドルになります。米国民にとってみれば1ドル=200円の方が買いやすいし、日本企業の側からみても1ドル=200円の方が売りやすいからです。モノを売りたい日本とモノを買いたいアメリカ、両者の利害は一致しているようにみえます。
 ですから日本政府は為替レートを円安に誘導しようとし、市場介入(為替相場の安定を図るため、中央銀行が外国為替市場において外貨を売買すること)というものが行われます。2003年、日本政府・日銀は外為市場で20兆円もの円売り・ドル買い介入を行いました。さらに2004年度は、国家予算よりも多い140兆円もの外為介入枠を設け、ドルを買っています。日本の貿易黒字は今だいたい10兆円です。この貿易黒字10兆円を維持するために、20兆円を使っているのですから、なんとも不可思議な話しです。
 また、ドルを持っているだけでは増えませんから、そのドルで利子がつく米国債を買い運用します。2004年10月現在、米国債の市中残高内訳をみると、1兆8550億ドル(190兆円)のうち、38%の7150億ドル(73兆円)を日本が所有 しています。(ちなみに2位の中国は1740億ドル、3位の英国は1410億ドル。)結局、貿易で黒字を出しても、そのお金は米国に戻っていく構造になっているのです。現在、米国への資金の総流入額の8割は日本からだとされています。
 ところが、日本がこれだけ市場介入しても、ドルの価値は下がってきています。これだけ巨額の赤字を抱える国家であれば、いつドルが暴落するかわからないので、当然のことなのですが…。ドルの価値が下がれば日本の持つドル資産は目減りしていきます。しかも、ドルが暴落すれば、5000億ドル以上の外貨準備、7000~8000億ドルとされる対米債権は吹き飛んでしまいます。だから、さらに市場介入して「円安=ドル高」を維持しようとする。そしてまた日本国民が汗水たらし、寸暇を惜しんで働いて稼いだお金が米国に流れていく…という構造になっています。
 また、日本から流れ込んだお金は、ウォール街(世界金融の中心地)を通して、米国企業や多国籍企業の株価を押し上げます。また、それを原資として投資銀行が次々と諸外国の企業を買収し、ダメな部分は切り捨てて、伸ばせる部分だけを伸ばし、株価上げてから売り払います。
日本人になじみのある一例をあげましょう。新生銀行の前身である日本長期信用銀行は1998年に破綻し、政府が一時国有化。債務の約9割のカットをしたうえで米国投資ファンドのリップルウッド・ホールディングスへ売却されました。日本政府が18ヶ月間の特別公的管理期間中に投じた公金は約8兆円。それに対しリップルウッドが要した経費は、譲渡された後に資本増強のために注入した1200億円を考えなければ、買収に使った10億円だけです。約8兆円という巨額な公金が投じられた銀行を、自己資本10億円と投資家から集めた1200億円、合計1210億円で買収。そして5年4ヶ月後に新生銀行は東京証券取引所に上場。売り出し価格525円の株価は827円で取引を終え、リップルウッドは2500億円もの利益を得たといいます。また、2005年1月の2次売却で再び約2900億円の利益を得ました。合計5400億円を超える利益です。
 リップルウッドの賢さを褒めるべきか、日本政府が無策だったのか、いずれにせよ金融知識の差が命運を分けたようです。たとえは悪いかも知れませんが、詐欺に騙されないためには詐欺師の手口を知っておくことが一番の予防策です。詐欺師の手口を知らない人は簡単にカモにされてしまいます。
 日本人がアメリカにモノを売り、その代金をアメリカに投資する。それによってアメリカ経済は強さを増し、日本経済は弱体化していく。また、日本企業が買収され、次々と外資系企業となっていく。資本主義・自由主義経済を貫く原理は「競争」であり「弱肉強食」です。日本人には米国を理想化し追随している人が多くいますが、心優しき日本人が、この厳しい弱肉強食の世界を果たして勝ち抜いていけるのでしょうか?
*1:たとえば、米国財務省元長官のロバート・ルービン氏はウォール街を動かす世界最大の投資銀行ゴールドマン・サックスの元会長。退任後は全米最大の商業銀行シティーグループ会長に就任。世界銀行の前総裁のジェームズ・ D・ウォルフェンソン氏はソロモン・ブラザーズの元会長であり、自ら経営するJ・ロスチャイルド・ウルフェンソン商会では投機家ジョージ・ソロス氏と組み国際投機をおこなっていた。米国の中央銀行FRB(米国連邦準備制度理事会)の前議長ポール・ヴォルガー氏はチェース・マンハッタン銀行の元副頭取で、退任後はJ・ロスチャイルド・ウルフェンソン商会の会長に就任。FRBの現議長アラン・グリーンスパン氏はJ・P・モルガンの重役出身。ゴールドマン・サックスもシティーグループもソロモン・ブラザーズもJ・P・モルガンも、そしてJ・ロスチャイルド・ウルフェンソン商会も、世界最大の金融財閥であるロスチャイルド系の企業です。これは決して偶然ではありません。ロスチャイルドとは、一体、何者か?詳しくは第三章でみていきます。

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石田ふたみ