やんの読書日記
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畠中恵作 新潮文庫
あやかしと病弱な大店の若旦那が 連続殺人事件を解決すると言う 捕り物帖のようでもあり江戸の人情ものでもあり 妖怪ものでもあるふしぎで明るい物語。 あやかしというと陰陽師に出てくるような かなり危ないモノかと思えば 若旦那と一緒に店の離れで活躍するあやかしは 家守みたいに小さくてかわいい感じがする。 体の弱い若旦那にぴったりついてその身をお守りするのも 手代に化けたあやかしでこちらはやさおとこだ。 ひょんなことから殺人の現場に遭遇してしまった 若旦那が殺人犯があやかしであることを突き止めて 最後の火事場で封じ込めるまでの 登場人物のせりふや動きがとても面白い。 江戸の風物、商売の動き、町屋のつくり 人の考え方など当時の江戸の風物を見ているようだ。 若旦那だけに見えるあやかし、と言うのにはわけがあるのだけれど 病気の自分のために家族や店の人がしてくれたことを思って 殺人を繰り返す凶悪なあやかしを退治しようと考え付いた 若旦那の姿にすっきりしたものを感じた。 甘やかされて育ったぼっちゃんと言う感覚はない。 気概のある若旦那。このあとも続編があればイイナと思ってしまった。 江戸時代の日本人は周りの自然現象にもあやかしを感じていたのだろうか。 そう考えると現代の機械と道具に囲まれた生活が つまらないものに感じてしまう。
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