乳がんなんてやっつけろ!!

2002年04月01日(月) 検査

市内の大きな病院の外科へ紹介状を持っていく。
外科の「乳腺外科」と書かれた部屋へ。気持ち程度にドアが1枚あった。
優しそうな年配の先生が視診をする。胸を見せるのは少し恥ずかしい。
「右の乳首が少し横を向いていますね」と言った。
触診の後、胸のしこりの細胞を注射で取る。
大きな注射だった気がしたのだが、あっという間のことで痛みも少しで終わる。
注射の前だったか後だったか、
取った細胞を研究材料として使ってもいいという許可書にサインをした。
研究材料などといわれると、自分の今取った細胞は
がん細胞だと決められたような気がした。
結果が出る間に別の検査室で超音波検査を受ける。
暗がりの中で検査の人の手がしょっちゅう止まるので
画面を見てみると大きなしこりの他にも小さなしこりがたくさんある。
「それ、できものですか?」と聞くと
「あちこちあるねーなんでだろうね」との答え。

その時は(やっぱり乳腺にお乳がたまっているのだ)と思った。
しこりがいっぱいあるわけない。

そしてマンモグラフィーという乳房のレントゲン。
おっぱいをビヨーンと伸ばされて機械にはさんで押しつぶして
乳腺内のしこりまで見る検査。これが痛かった!はさまれる瞬間は思わず声が出た。
おまけに検査はオトコの人だし、まだ授乳中だからおっぱい出るし勘弁してほしかった。
配慮がほしい。すべての検査が終わってお昼からの結果を待つ。
私のこのときの気持ちは(小さな小さなガンでそこだけ取る手術だったら保険金も出るしいいな。
中途半端な病気だったらお金かかるだけで嫌やなあ)という軽い気持ちだった。

お昼を院内のレストランで食べたあと、約束の時間に病室へ。
待合室で母と「どきどきするなあ」と話をする。
名前を呼ばれる。「お母さんも一緒に」優生と3人で中へ。
先生が「坊やはいくつ?」と優しくたずねる。
私の目を見ない先生。母に向かって話しをする。

「細胞診の結果、悪いものだったのです」すまなそうに言う先生。
一息ついて「リンパにも転移している可能性があるので、
若いからかわいそうだけど右のおっぱいを全部取ることになると思います」と言った。
(え?おっぱいを全部?)
予想もしていなかった結果にとまどう私。

母を見るとショックを隠せない様子。笑っている優生。
「右側に大きなしこりがあり、リンパの硬さからいって
転移の可能性が高いので全部摘出になる」という結論。

正直ショッキングな事実だった。
20代の乳がんは稀だし今は乳房を全部切除する手術は少なくなってきていると思っていた。
自分がガンになるなんて思いもしなかった。
でもこれが現実。
先生からの告知が終わると、母は優生にミルクをあげるために部屋を出た。

1人になると頭がぼーっとして手先がしびれてくる。
何も考えられない感じ。
先生は「手術と入院の予定を決めましょう」と言った。
私は「主人にも話を聞いてもらいたい。明日島から来ますので、説明をお願いします」と伝えた。 

そこへ看護婦さんがやってきて、入院の際に持ってくるものや
スケジュールを淡々と説明し始めた。はっきり言って何も頭に入らない。
まだ血が全身に巡りきっていない感覚で、頭もぽーっとしている。
あとから思えばだが(そのときは余裕なんてない)告知っていうのは
もう少し心細やかに行われるべきものじゃないか。
看護婦さんからは「大丈夫?」の一言もなく、
最後に「まあ今は気が動転しているでしょうから、
これ読んでおいてください」と言って、紙切れ1枚を渡されただけだ。

部屋を出るときに、ふうーっと一息吐いて外に出る。

すぐに母が父に電話する。そして私も剛くんに電話。
仕事中だった彼にガン告知のことを伝える。ショックを受けた様子。
そして明日の朝1番で島から来てくれると言ってくれた。
電話が終わって外に出ると、母とさっきの看護婦さんが話をしていた。
「娘さんのことですからね。お辛いでしょうが、がんばってください」
そんな言葉が聞こえてきた。

病院を出るとこれでもかというくらいにいい天気。不思議だ。
ここにたった今ガンだと告知された人間がいて、
でも世の中は何一つ変わらず動いていて太陽だってこんなに降り注いでいる。
帰りの車の中、落ち込んでいる母を励ますために精一杯笑った。
そうしているほうが自分の気持ちが落ち着いた。
みんなのためにもガンバラなくちゃ

告知された夜、1人になる時間があって考えた。
ネットで「乳がん」を検索してみると、いろんな病院で診てもらったほうがいいとのことだった。
いわゆるセカンドオピニオンというやつ。
友達や親戚からすすめられた乳腺科がある病院に早速電話。
診療時間がとうに過ぎた病院には、警備の方がいただけだった。
私はその方に胸のうちを語った。
「今日乳がんだと言われたのだけれど、納得がいかない。
なのでそちらで診てほしい。お願いします」。
しかし、その方は受付の方でもなく看護婦さんでもなく、
警備の方だったので困惑され
「ここの病院は予約制なのだが、今から明日の予約は取れない。
なので直接病院に来てお願いしてみてください」と優しく教えてくれた。

明日の午前に今日の病院へ行って、午後セカンドオピニオンをとることにした。
ネットでいろいろ病気のことを調べるとちょっと怖くなった。
でも自分の病気のことだから全部知っておきたい。

乳がん患者のML(メーリングリスト)があったので、すぐに入会する。
「今日、告知を受けました」と書いたメールを送った。
夜、弟やその彼女も心配してきてくれた。
おじちゃんはガンにいいという電解還元水とアガリクスを持ってきてくれた。本当にありがたいことだ。

明日の朝来るはずだった、剛くんが夜行の船で来てくれた。
この夜は優生と剛くんと3人で並んで眠った。
剛くんが手を握って寝てくれた。ちょっと泣いた。


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