川底を流れる小石のように。 〜番外編〜 海老蔵への道!
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2003年12月14日(日) |
十二月大歌舞伎 昼の部 実盛物語! |
今日は昼の部。 三階西の席は、座っていると花道が全然見えない・・・。 しかも比較的舞台寄りの席だったためか、 真横から見下ろすような位置で、舞台の上手半分くらいまでしか見えないのだ。 さすがは歌舞伎座だ。うぬう。 それでもめげずに、目の前の手すりを鉄棒に見立て、 殆ど前まわり!するくらいにのぞき込むと、かろうじて花道を真上から見ることができる。 4つある演目のうち、新が出るのは一つだけ。 大河帰りの歌舞伎リハビリと思えば、こんなものだろうか。
「舞妓の花宴」(しらびょうしのはなのえん) 昼の部最初は11時から始まるので、さっくりした踊りがちょうどいい。 客席もまだチラホラ空席がある。 衣装がとてもとてもキレイ。 「源平布引滝〜実盛物語」(げんぺいぬのびきのたき〜さねもりものがたり) まってました! 新之助は主人公の実盛。 源平争乱の時代。 ストーリーは案外複雑で、平家方の検分役として登場の実盛は 実は昔の恩を忘れず源氏に心を寄せている。 そして、源氏の葵御前と、そのまだお腹にいる赤ん坊(後の木曽義仲)を守ろうとする。 平家なのに源氏の見方の心。 それ以外にも、実の娘だと思っていたら実は捨て子だったり、 敵かと思えば、捨て子の父親であったり、 死んだと思っていたら息を吹き返したり、 歌舞伎ならではの波乱の物語。 新の実盛は、大きくて懐が深く、知的で情け深い、実に格好いいヒーローの役。 これを爽やかに力強く演じていた。 10年前の頃は私には聞き取れなかったり、わかりにくかった台詞や義太夫の声も、 今回は何故かしみこむように理解できる。 新之助に集中してるからか。 それだけ自分が年取ったからなのか、嬉しかったり悲しかったり。 なので新の実盛の良さも相まって、物語に入り込み、泣けて仕方なかった。 くううーー。
ことに幕切れ、漆黒の馬にまたがり花道幕外引っ込みの大見得は、 三階からぶら下がるようにして眺めていても素晴らしかった。 客席に「じわ」がくるというのを、初めて目撃してしまった。 以前「じわ」って言葉を知ったとき、ほーと思ったものだが、 「劇場で、クライマックスや入神絶妙の演技の直後に、 観客が詰めていた息を一斉に吐くために起こる低いどよめき。じわじわ。」(国語辞典より) これだよこれ。 三階から見下ろすと、馬上の新之助のタメに客席が心一つに息を詰め、 見得が決まると、ほぉ〜やら、はあ〜やら、声にならないどよめきが自然に起きる。 その中を颯爽と馬で駆け抜け、 張りだした二階席の天井をさらりとかがんでくぐり抜ける後ろ姿が、もうたまらん。 やっぱりいいなあ、新之助。
ぼーっとしたまま、ロビーのソファに倒れ込み見上げると、 そこには十一代目の笑顔が。 ここは思い出の名優達の写真がズラリと掲げられているコーナー。 じいちゃんの写真に、新は頑張ってるよねーとかアレコレ胸の内で語りかけながら、 しょっぱい焼きタラコが美味しい歌舞伎おにぎりを、パクつく。
見づらいショボイ席でも、連日の観劇でも、疲れもなにも吹っ飛ぶ思い。 来て良かった〜。
ここで完全燃焼してしまって、 次の踊り、「仮名手本忠臣蔵〜道行旅路の嫁入り」ではウトウトしてしまう。 これがまた気持ちいいのよね。 三味線の音のせいか?
勘九郎と団十郎の「西郷と豚姫」も良かったが、 もはや今日のオレにはオマケでしかない。
○○追記○○ 渡辺保氏も「新之助実盛の大出来」と褒めてる! とても嬉しい。
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