川底を流れる小石のように。 〜番外編〜 海老蔵への道!
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2003年11月02日(日) |
新橋演舞場 「武蔵」 初日 |
気持ちよい晴れ。 宮尾登美子の「きのね」を思い出し、 デスクトップの壁紙にしてる武蔵新之助に手を合わせ、 初日おめでとうございます!と声に出して言ってみる。
大江戸線「築地市場」下車。 予想外に大勢の人が降りたので、みんな演舞場行き?とびっくりしてると、 その殆どの人は築地市場へ行くらしかった。
初日らしく華やいで、着物姿の人も大勢。 家庭画報に出てくる「親子で観劇の日のこんな装い」みたいな人ってのは、 本当にいるもんなんだなーと感心。
久々の演舞場だもの!演舞場名物(?と私が勝手に決めてる)おでん定食の予約。 ここで予約を入れておくと、後で30分の幕間に お席にあつあつのおでんが用意されてる仕組み。
本日の席は二等8000円、二階右側。 この右ってのがミソざます。 花道での見せ場が多いので、とにかく歌舞伎は右をとるに限る。 三階4200円席でも右の一列目がとれたら、それはお得なチケットざます。
一等席を4日に予定してるので、 本日はリハビリもかねて、ちょっと高見の見物気分。
けれども久々の柝の音を聞いてしまうとドキドキし、 始まってしまうと、そんな余裕もなく、釘付けに!
おおーー!生の新が、すぐそこに! あの目ぢから!あの躍動感! 上手いというのとは違うが、舞台の空気をがっつり支配してしまう存在感は、 オーラになって舞い上がり、 二階席を通り越し、3階や高い天井まで届くのが見えるようだ。 関ヶ原の戦場の場、 又八と互いに生き残っていたことを喜び合い、 花道を駆け抜ける新之助に「なりたやっ!」の大向こうの声が重なって、 あのなんともいえない一体感。 あーまさしく歌舞伎!あー新之助お帰り!と、胸が熱くなる。
ぼうっとしたまま30分の幕間。 おでん屋のカウンターに座ると、お隣の席は「山川様」とある。 ふとみると、お馴染みの山川静夫アナウンサーがにっこり。 歌舞伎が好きな人ならきっと、山川アナにはお世話になってる。 この人の舞台への愛情や造詣の深さ、尊敬してる。 こんな人の隣でアツアツのおでんー、緊張するぜ。 店のおやじさんも、山川さんが大好きみたいだ。 忙しい合間にあれやこれやと話しかけ、世話をやいてる。 山川さんはつみれがお気に入りらしい。 だいこんや玉子を関西風に薄い色のだしで炊いてあり、 それにお箸でもって、絵を描くようにカラシをさらさらっと、 実にいいあんばいに、きれいにぬっておられる。 さっきからカラシがツーンと鼻にきてた私の食べ方とは大違い! 茶飯に高菜漬けの細かく刻んだのをおかわりしてかけて食べてる。 こっそりマネしてみたら、かなり旨かった。ふふふ。 一足先に山川さんが席を立った。 ふと見ると、イスに鞄が。 これがまた、小さな茶色の皮の鞄で、 愛らしいアンティークみたいな古び方で、山川さんらしい。 しかも忘れてるし。ふふ。 思わず、山川さんお忘れ物ですよーと声をかけると、 いやはや最近トシですねえ、なんでも忘れちゃうの、ありがとう!と笑っておられた。
二幕目、姫路城で3年の修行を終えた武蔵。 キリッと美しい若武者姿で、そりゃあもう惚れ惚れ。 だって睫毛があんなに長いんだよ! つけまつげじゃないのに、ライトを浴びて、睫毛の影が眉間にぴって映るんだよ! きりきりっと書かれた眉毛もりりしく、 そしてあの声!! やー役者は声ですなあ。 以前舞台で声を痛めたことがあり、 それからは相当トレーニングつんだらしい。 あの声、ずっとやられませんように。
三幕目、一乗寺下り松。 歌舞伎の殺陣は、ゆったりと舞うようなのが常なんだけども、 そこは武蔵、新歌舞伎ということもあって、いつもよりはスピーディー。 けど、格好いいものをたっぷりゆっくり魅せるという基本姿勢は変わっておらず、 したがって、アナログマトリックス?みたいな、 人力3D?みたいな、 そんな殺陣で、ばっさりバッサリ斬りまくってた。 ほほぉー。 ちょっと感動。 そして巌流島。 ちょっと嬉しい演出もあり、新の目ぢからを堪能しまくり。
すっかり生の新之助に魅せられた。
とはいえ初日だからね。 二度くらい脇の人の台詞がやばくてプロンプ入ってたし、 あちこちギクシャクしていた。 そして新之助がこんなに好きでも、 源氏や武蔵みたいな新作の歌舞伎は、もう一つなんだと思う。 間延びしてたり、無理矢理縮めてたり、暗転が多かったり、 おしいな。 難しいのかな。 それが歌舞伎らしさ、というものなのだろうか。
沢庵和尚の団十郎は、台詞を聞いてると、父の言葉そのままという気がしてくる。 城太朗役の子役がすごくて、人気者になってた。 無邪気なコドモにはやられるけど、ちょっとやりすぎ?ってくらい凄い子役だった。 新は子役と一緒にいるのが似合う人だ。
帰りがけにロビーで、あ、この人絶対新之助のママだ!と思った女性がいた。 目元や鼻筋がそっくり。 気丈そうで、でも気さくそうでもあり、梨園の妻ー!って感じのママだった。
銀ブラしながらの帰り道、半袖の人もちらほら見られるくらいあったかい。 4日の観劇姿勢への改良点を自らにあげつつ、帰宅。
○○後日の反省・追記○○ 大河ドラマが終わってみると、毎週新之助をテレビで見ることができなくなって、それは寂しい。 けれど、この長丁場のドラマ撮影のために、新はずーーーっと舞台に立っていなかった。 この初日をどんなに首を長くして待ったことか!
宮尾登美子「きのね」は、思えば私が歌舞伎にはまるきっかけになった本。 当時はハードカバーで読んだので、この本のモデルが実在することも、 それが新之助のじいちゃん、十一代目市川団十郎であることも、 全然知らなかった。 あれ以来、何度も読み返しては、感慨も新たに涙してしまう。
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