川底を流れる小石のように。 〜番外編〜 海老蔵への道!
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2003年03月25日(火) |
京都南座 夜の部 源氏物語 |
早めに起きたつもりでもいつの間にか新幹線の時間ギリギリ。昨夜夜中に武蔵の最新2話をまたビデオで観てしまったのがいけなかったか。今まさに発車しようとしている新幹線に飛び乗る。まわりはみーんなビジネスマン。こだまは自由席がなく全席指定で満席。皆さん、これからお仕事っすか。小雨の曇り空を眺めていたらいつの間にかぐっすり寝てしまった。
目が覚めると、もう京都。
バスのチケットセンターで地下鉄とバス共通のプリペイドカードを購入。地下鉄に乗って二駅でホテルへ到着。じゃらんの激安パックだったが、11時にチェックインできるのでここに決めた。 まずは腹ごしらえだ。この時のために新幹線では飲まず食わずでとおした。
地下鉄で一駅。地上にでるとそこはもう四条大橋。橋の向こうに見えるのは南座だ。あーここまで来てしまった。京都は不思議な街だ。地図で眺めていたのよりずっとこじんまりした街並みなのに、懐が深い。どこかに似ているようで、でもどことも違う。言葉の通じる外国に来たみたいだ。
一人でもゆっくり食事ができる店を歌舞伎好きの方に教えてもらっていた。「志る幸」はたたずまいからして不思議に古びており、白みその汁の具を好きに選べる和食屋さん。私は利休弁当¥2600をいただく。かやくご飯はふっくら炊きたてで、焼き魚も炊いた鶏も、とろりと半熟のゆで卵も、実にほどよく良い味で、あー京都だー!とじんわり感激!京都の白みそのお汁は、ほんのり甘くあくまで白く、酒粕でも入っているのかはじめての味だった。お隣のやはり一人で来ていた女性は具に「おとしいも」を選んでいた。「はまぐり」や「しじみ」ならわかるがおとしいも?好奇心を押さえきれず何ですか?とたずねると里芋をとろろのようにふんわりおろしたものだそう。京のなまりで「おいしいですよ」とにっこり教えてくれた。
さて腹もくちくなり、次に目指すのは「一澤帆布」。ここのトートバッグが一つ欲しかった。 バス停を探しつつ四条大橋をわたるとそこは鴨川。天気予報ははずれてとても晴れて気温が高い。川風は春の香りでうっとり。南座を通りのこちら側から眺めたらなんだか感無量だ。 ふと目にとまったのが、つげの櫛の専門店のウインドーに飾られた小さなだるまさん。Kが達磨大使が好きで、木彫りのだるまさんをお土産に欲しいと言われていたのだ。時間もないしきっと無理だよと言っておいたのに、真っ先に見つけられて嬉しかった。小さなつやつやのだるまさん購入。 201系やらなんやら網の目のようなバスの路線図を見ながら高校生の女の子に「知恩院前に行きたいのですけれど・・・」と尋ねると○番のバス以外はぜーんぶ行きますと京言葉で教えてくれた。
歩くとけっこうあるよと聞いていたが、バスだとあっという間。で無事「一澤帆布」へ。色も形も迷いに迷ったが、グレーのトートを一つ購入。 この距離なら大丈夫と歩いて戻る。知恩院で小学生の頃夏の合宿で2週間過ごした思い出があるが、ちーっとも覚えてなかった。けど毎日通った銭湯の冷えたスコールの味だけはくっきり思い出した。 八坂さんは夜に来ようと通り過ぎ、祇園をぶらつく。「よーじや」でみなに頼まれたあぶらとり紙を山のように買う。ほかにもお香の店や手ぬぐい屋や、和菓子屋や、ともかくひやかしながらまた南座へ。開場は3:30過ぎとのことで、時間もあるし汗もかいたし荷物も山だし一度ホテルへ戻ることに。
ホテルの一階にはスタバがあるので、アイスカフェモカを買い部屋で一休み。シャワーを浴びてさっぱり。映画でみたことのあるオペラに出かける前の準備をするシーンみたいだ。うきうき。
小雨のぱらつく中、南座へ。着いたら真っ先に劇場写真売り場へ。今月の出し物のベストショットが大きな写真になって一枚500円で売られているのだ。新之助のは8種類と聞いていたが、一枚増えて9種類。どれにしようか悩む。これが幕間とかになると売り切れてしまう可能性もあり、開演前にさくっと購入。筋書きも買って座席へ。
南座は美しくちんまりした劇場だ。 たぶん歌舞伎座の半分くらいか?一番前の花道脇は、手をのばさなくとも手が届いてしまう激近距離シートでビックリ。客席は満員。98%は女性。 あーとうとうここまで来てしまった。 柝の音を聞いていたら、心が透き通ってくるようなシンとした気持ちに。
須磨のさびしげな静かな浜。暗い場内花道をスポットを浴びて新之助の光の君が白馬にまたがりしずしずと登場!! おおおーーーー!美しい。キレイだ綺麗だとは聞いていたがこれほどとは。しかも白馬だぜ。おおおーー!胸が苦しくて息が出来ない。新之助がすぐそこにーー!と私が思っている間、場内もあまりの美しさにどよめきが。 4時に開演で9時前には終わるのだけど、休憩のぞくと4時間はこの距離で新之助三昧なのねっー!と心は波打つものの、たちまち雅な源氏の物語の中へ。 新之助は何度も花道から登場したけれど、その度に、なんとも言えない、いい匂いがする。最初は衣装に香の香りがたきしめられてるのかと思ったが、それだけじゃないみたいだ。お香の香りの他に、パフュームだとかなんかそんなような香りも混ざっているような、ともかく新しかこんな香りはしないだろう!というような、えもいわれぬ良い香りだった。はぁー。
菊之助の紫の上と新之助の光の君は、並ぶと本当に絵のように美しく、二人手に手をとってよよと泣き崩れるともうもうたまらぬ。新の涙はとても美しく、言葉もない。 花道の私の頭のあたりで新が立ち止まると、真下の私からは形の良い鼻の穴がくっきり見えるのだが、その形までもが美しい。
30分の幕間に急いで外へ出て、南座となりの「松葉」でにしんそば。ふーむこれが関西のにしんそばか。
団十郎と菊五郎が出るとやはり安心して見ていられる。明石の入道役の団のちょびひげなかなか。やつれた朱雀帝の菊五郎もしぶい。
北島三郎ばりに雪が降りしきる明石の君の子別れのシーン。新は下手に向かってうつむきただただ涙にむせぶのだが、私の目の前でうつむきキラキラポロポロとと玉のような涙を流す新を見ていたら、11月の演舞場「武蔵」の舞台まではナマ新とお別れねと思え、私も泣けて仕方なかった。 はー涙にむせぶ幕切れ、うつむいて動けずにいると、手のひらの中にひらりと雪が舞い落ち、思わず握りしめてまた涙。
芝居の興奮も冷めぬまま、八坂さんへお参り。どうかまた新のお芝居を観に南座に来られますように。お酒もないのにほろ酔いで花見小路の一力亭の前で舞妓さんにみとれ、この道のあちこちに貼られている南座の新のポスターを眺めてまたうっとり。 夜が終わるのが勿体ない。行きたかった先斗町のバーは見つけられなかったが、もうオレ酔ってるしいいかーと夢うつつのままゆっくりホテルまで歩く。
今朝は5:30に起き、短かったけど楽しかった京都を後に仕事へ直行。仕事中も何度も新之助の美しい横顔がうかび、ぼうっとしてしまう。 職場のみんなには生八つ橋とよーじやのあぶらとり紙をお土産に。 5時には力つきそうになり、へたばりそうになるも、遊んだからには働かにゃあと踏ん張る。
京都は桜には早すぎたけれど、それで良かったと思う。もし桜が満開だったりしたら、きっと今日帰ってくるのがもっともっと辛かっただろう。 あーしあわせ。。。
○○後日の反省○○
いやはや、初めての一等席で相当舞い上がっています。 アップするのを、今更ながらためらうほどです。 その後、何度か花道脇の席で観劇したのですけど、あの良い香りがしたのはこの時だけでした。 やはり光の君の衣装に焚きしめられたお香の香りだったようです。
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