なべて世はこともなし
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2008年01月10日(木) いつになったら終わるやら。歯の矯正。

注:今日の日記、ちょっと力入れて書いてます。文字数にして5000字超。原稿用紙換算で12枚以上、普段の原稿の3倍程度の分量です。お茶でも飲みながらゆっくりお付き合いいただければうれしいです。




いやー、歯ってとっても大きいんですね。


…と言っても「なんのこっちゃ」でしょうから、一から説明しないと。


今年になって毎日忙しいです。連日残業にさらには今週末も含めて土曜出勤までなんだか毎日仕事ばかりしている気がします。そんなくそ忙しいのに、行ってきたんですよ。矯正歯科。そう、まだ、やってたのです。(ご存じない方は、2006年の2月あたりの過去日記を参照。数が多くて、いちいちリンクを張る気力がない(マテ))


30になって歯科矯正というのもなんだかお笑いですが、これを始めたのが2年前。で、ついに、昨日、矯正器具を外すことになったわけ。


朝早くの予約時間を守るために、ラッシュアワーのダブリンを1時間かけて移動(混んでなければ15分)。先生は慣れた手つきでワイヤーを切り(これが結構怖かった。口の中で、パチンパチンとえらい音をたてるんだもん)、一体どんな魔法を使ったのやら、歯をものすごい力で動かしたのに外れもずれもしなかったセラミックをきれいに外し、ついでに歯をきれいに掃除してくれる。


ちなみに、私、何やら知覚過敏とか言われる歯を持っているらしく、歯を機械で磨かれるだけでかなり痛い。これは完全な被害妄想なんだろうけど、なんか、荒く掃除されているような気がする。ま、私が先生だったら、かわいい女子高生の歯はていねいに掃除してあげるけど、30過ぎたオッサンの歯なんかできれば掃除したくないと思うに違いない。ともあれ、掃除の後、上の歯型モデルを作って終了。


じゃ、お世話になりましたと帰ろうとすると、


助手さん:「Snigelさん、今日の午後4時30分にまた来てくださいね」


…なんだよ?経過説明とか、そーゆことなら今やってくれればいいのに。


ぶつぶつ文句を言いつつ、車で会社に向かう。信号待ちの間に八重歯もなくなりまっすぐになった自分の前歯を舌で触れて、一番最初の


いやー、歯ってとっても大きいんですね。


って発言につながるわけです。


今まで矯正用のセラミックとワイヤがついていたので自分の前歯を舌で触るということができなかったわけ(そりゃ裏側は触れたけどさ)。そんなわけで、自分の歯がいかに大きいか改めて気がつかされたわけ。そして、下の歯には裏側からまたワイヤがかけられてしまったことに気がついた。


午前10時半というかんぜんな社長出勤の時間帯に出勤。すると、受付嬢嬢と呼ぶにはちょっと年齢がアレなんだけどさが…


受付嬢:「ああ、Snigel!矯正装置取ったんだね。良くなったね」


と言ってくれる。いい人だよ。この人は。


その点男はダメですね。同僚の男でこの事実に気がついた人は…絶無。人を褒めることができない世のダメな男どもは女性の爪の垢を煎じて飲め!と言いたい。私は、そういう鈍感な男にならないようにいつも努力してるのです。で、いつもこんな会話を会社でしてます。


私:「あ、髪形変えた?いい感じじゃん」
相手:「…髪を洗ってないから束ねただけなんだけど」

私:「あ、髪形変えた?いい感じじゃん」
相手:「…昨夜洗っただけ」

私:「あ、髪形変えた?いい感じじゃん」
相手:「…前髪自分で切って大失敗しちゃったと思ってるの」



…うん、私のように観察力がないくせに下手に誉めようとして失敗するより、最初から褒めないほうが正しいわ。


閑話休題。ごくごく正直に言うと、私が矯正装置を外したことに気がついた人は女性ばかりとはいえ、女性でも気がついていない人のほうが圧倒的に多い。つまりさ、八重歯を治すための矯正なんて完全に自己満足に過ぎなかったということ。


私が女性から見られるようになるためには、あと50センチ身長が高くなって(そりゃいくらなんでも大げさか)、あと10キロくらい痩せて、顔のすべてのパーツを取り換えたら見てくれる人が出てくるかもしれないなあ。…すいません。ちょっとトイレで泣いてきます


で、2台のコンピュータを自分の会社の机の上に置き(一台は通常業務、もう一台は新品のコンピュータの設定)もの凄い勢いで仕事をする。が、休み時間一切返上しても午後3時30分までの5時間で一日分の仕事を終わらせることができるはずもなく、中途半端な状態のまま、再び車で矯正歯科へ。渋滞とは逆方向だったため先ほどは1時間かかった道のりを30分で走る。それにしても無駄だよな。なんでさっき一回で済ませてくれなかったんだ?


で、もう慣れたとはいえコドモにまぎれて待合室で待つこと30分。ようやく自分の番がやってきた。助手さんがやってきて、


助手:「はい、これがSnigelさんの矯正前の歯型」


と言って矯正前の上下の歯型を見せてくれた。なるほど、矯正前と矯正後、当たり前といえば当たり前だけど、目に見えて歯並びが良くなったわ。あ、なるほど、こうやって人の財布から4000ユーロ(64万円)もふんだくったことを正当化しようとしてるな。…こういうひねくれたものの見方はやめるべきですね。はい。


助手:「それから、これが固定器具(retainer)ね。詳しい使い方はあとで先生に伺ってください」


と、渡されたのはボクシングのマウスピースのように上の歯にかぶせる器具を渡される。前から見ると針金が1本渡されているだけながら、上あご(口蓋)の部分、はえー話が口の中の天井にまで器具が入るようになっている。


…え?まだこんなもんつけるの?


聞けば、むこう3か月は食事のとき以外はずっとこの固定器具をつけていなければいけないらしい。それからしばらくは少なくとも寝るときはこの固定器具をつけていなければいけない。で、ようやく気がついた。この日、午前と午後の2度も矯正歯科にいかなけらばいけなかったのは、模(かたど)った歯型からこの固定器具を作らなければいけなかったからだ。なるほど。


で、この固定器具をはめてみる。まず、上あごにものすごい違和感。たとえて言えば、チェルシー(キャンディね)の大きいのが4つくらい上あごにくっついている感じ。なんか、吐きたくなる。それだけでも嫌だが、それ以上にとんでもないことに気がついた。


…話せない。


もちろん話せますよ。だけど、頭の悪い女子高生のような舌足らずな話し方になってしまう。そりゃそうだ。話すとこの固定器具に上あごのかわりに舌が当たるのだ。もともと声が高いのに、このアホな話し方だと、本当に情けないくらい頭が悪そうな話し方に聞こえる。それ以上に、何を言っているのか不明瞭。


先生:「大丈夫。すぐに舌が慣れるから。そしたらフツーに近い状態で話せるよ」


ホントかよ。このホームページでいつも言っているように、アイルランド人の言う大丈夫ほど、大丈夫じゃないものはございません。


かくして、数ヵ月後のアポイントメントをとってこの日は終了。で、せっかく町の近くまで来ているのにこのまま家に帰るのはもったいない、セールもまだ続いているんだしというわけで、そのまま車でシティセンターに向かう。


ところが、夕方のラッシュアワー、しかも雨という悪条件が重なって、道路が大渋滞。30分という、おそらく歩いても同じくらいだろうという時間をかけてJervis Shopping Centreの駐車場に5時45分着。


そして、センター内のDebenhams(デパート)へ。ここ、通りを挟んだところにあるRoches Storesという店を1年半ほど前に買収したために、通りを挟んだはす向かい側Debenhamsが2軒あるというあまりまともじゃない状況になってしまった。日本のデパートならば、売り場を大改造して「本館と別館」といった感じの気の利いた店づくりをしただろうけど、そんなことができなかったこの店、当然の帰結として、Jervis側にある手狭な店が閉店することに。ま、そんな事情で、閉店投げ売りセールでもしているんじゃないかと踏んだわけ。


店に着いたのは5時50分。まずはキッチン用品の物色を開始。ところがすかさず店員が


店員:「6時で閉店です!」


…まだ10分あるだろうが…という正論はこの国では全く通用しません。この国で6時に閉店ということは、6時に店員が家に帰る支度を始める…という意味のようです。日本のように6時になったら蛍の光が流れ始めるという意味ではないのです。しかも、きょう日、日本のスーパーやデパートで6時に閉店なんかするところないだろうなあ。


結局何も見る暇のないまま地上階の紳士服売り場へ(もともと紳士服売り場は地下だったのだが、どうやら売り尽くしが進んでいるらしく地上階に移動していた)。ここでもすかさず店員がやってきて、


店員:「あと5分で閉店です」


こら、まだ5時50分ちょい過ぎだぞ。


はいはいと軽く流しつつ、棚を見てると、お、いい感じのシャツがあるではないか。これ、どうだろ…と思っていると、再び店員がやってきて怒り気味に


店員:「何かお買い上げですか?だったらすぐにレジに行ってください。あと2分でレジが閉まるんですから」


お前ら、いつも人が店に入ってきても無視してるくせに(だから心おきなく買い物ができていいんだけどね)、閉店となると血相を変えて話しかけてくるんだな。そこまでして6時に帰らなければいけない理由でもあるのか?


で、そのシャツ、置いて帰ればよかったのに考えてみれば、店員に急かされてそのシャツを試着もせずに買うことに。よーく考えてみれば、店員にまんまと乗せられたってことになるんじゃないだろうか。


で、あと2分で閉まるはずのレジには数人が並んでおり、2台のレジはフル稼働中。ひとつのレジの係が私に


レジ:「現金でお支払いですか。クレジットカードですか」
私:「クレジットカード」
レジ:「ではこちらへ」



で、クレジットカードで払おうとするとレジ係、ものすごく非難めいた口調で


レジ:「あなた、現金で払うと言いましたよね」


カチンときた私、ものすごくゆっくりと


私:「いいえ、言っておりません。現金は持ち合わせておりませんので払えません」


はい。自慢になりませんが、このとき所持金はおそらく小銭のみで5ユーロを切ってましたから。小学生の財布と中身はほとんど変わらないそんな私は32歳。


で、他の客の会計が終わるまで待たされて、2分で閉まるはずのレジで5分以上待たされてようやくクレジットカードで支払い完了。バカヤロー2度と来るか!と怒り心頭だったのだが、ふっと気がついた。


そうだ。変な固定器具をつけてるんだった。で、目立たないように独り言を言ってみた。


…うん、客観的に何を言ってるかわからんわ。これ。


そして、それ以上に、この店、どうせあと2週間程度で閉店になるんだった。


と、振り上げた怒りのこぶしをどこに降ろしていいかわからないなんだか凹む状況で、センター内のスーパーマーケットのTescoへ。私は、過去日記で「Tesco嫌いです」 (1)(2)というシリーズ書くほどTescoが嫌い。ことJervisの中にあるTescoは人を憂鬱にさせる不思議な力がみなぎっていると思う。なんかこんなところで買い物をしている自分というのを感じて自己嫌悪に陥るというかなんというか。


そんなことを言うなら買い物をしなければいいじゃん…と思われる向きも多いだろうけど、なんのこたーない、ここで20ユーロを超える買い物をすれば1時間の駐車料金が無料になるのだ。ああ、なんてセコい。


というわけで、全日本Tesco嫌い会の会長に立候補しようと考えているくらいTescoが嫌いな私は、Tescoに落とす金を出来るだけ少なく、つまり、できる限り20ユーロに近い金額で買い物を納めようと頭の中で計算をしながら買い物開始。


で、これでかろうじて20ユーロを超えただろうというかごを持ってレジへ。レジは無人の自動レジではなく有人のところに並ぶ。そう、財布の中に小銭しか残ってないから、キャッシュバックをしようというわけ。


日本のデビットカードに同じような仕組みがあるかどーか知らんが、スーパーとかで買い物をした時に、一緒にお金を引きだろうという魂胆。たとえば、20ユーロの買い物に、90ユーロのキャッシュバックを頼むことができる。すると、口座から110ユーロが引き落とされて、20ユーロのスーパーの買い物のほかに90ユーロの現金が手に入るという算段。これをやろうというわけ。ともあれ、最大の目的は20ユーロちょいを使って駐車料金1時間分を稼ぐこと。


で、レジで言われたこと。


レジ:「19.96ユーロです」


うわっ、うまく計算しすぎた。ちゅうか、4セント、足りないじゃん。


ここで、例によってここで低性能の自前の脳が働く。レジの近くにあるチョコレートバーでも持ってきてむりやり20ユーロを超えさせようか。…そう思ったものの、レジの自分の後ろの行列を見て(←この辺が日本人)その考えを断念する。


で、そのたった4セント不足したレシートを持って別の係のところへ。そう、いい加減王国アイルランド、レシートをチェックせずに駐車券サービス券をくれるんじゃないかと期待したわけ。かくして、係の人は、まじまじと私のレシートを見て…


係:「4セント足りないわね。ホントはダメなんだけど、いいわ、サービス券、あげるわ」


初めてTescoを見直しました。たかが4セントとはいえ、サービスしてくれた係の人、ありがとう。




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