なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
2008年01月17日(木) |
水道業者を家に呼んでみる |
うちの台所の水道。なぜか水が出ない。いや、出ないわけじゃあないんだけど、ちょろちょろとしか出ない。1パイントのグラスを満たすのに30秒とかかかる。その代わり、お湯は問題なく出る。
つまりね、皿を洗うのとかにはお湯がちょっと熱すぎるという点以外、特に問題はない。が、生野菜をお湯では洗いたくない。まあ、大問題じゃあないにせよ、カイゼンは望まれる…といった程度の問題でしょうか。ちなみに、台所以外の場所、つまり、風呂やトイレでは問題なく水は出ます。
そーゆーわけで、さっさと管理会社に連絡すりゃいいものを、忙しいとか、面倒くさいとかなんだかんだで先延ばしにしてきたわけ(この辺がアイルランドに長く住みすぎとされるゆえん)。それじゃあいかんというわけで、月曜日に管理会社に連絡した。返事はすぐに来た。
「そりゃ、水栓(蛇口)部分の交換だね。こっちで払うから、水道業者に連絡して直してもらってください」
はいよ。…って、管理会社も見もしないで蛇口の交換とか言いきってしまってまあ。いい加減だよなあ。
で、この国では、こーゆー場合に一番いいのは、「知り合いの知り合い」を探すことです。知り合いの知り合いなら、あまりボラれることもないだろうし、来るのは2ヶ月先とか言わずにあんがいすぐに来てくれるとも思える。逆に言えば、突然どっかに電話したってあまりうまく行かない気がするのだ。かくして、会社の近所に住む同僚に聞いてみた。すると、彼女の家に出入りしている個人の水道業者(plumber)のケータイの番号を教えてくれた。
さっそく電話。
相手:「*^&%(#)」
…出たな。妖怪ドブリンアクセント。
ダブリンに住んではや8年とか経つけど、未だにホントにとんでもなくアクセントが強い人の英語にはてこずることがあるのは事実。もちろんわかるんだけど、向こうは向こうで、ガイジンの英語は大変だと思い、こっちはこっちで、ダブリンのアクセントのひどいのは大変と思う。非常に分かり合えない人たちであることは疑いの余地はない。
で、結局、この日の夕方4時30分に来てもらうことで同意。あれま、来るのはどうせ来週とか言われるだろうと思っていたから素朴に驚き。そして、会社から帰宅後、家でどうせ時間通りにはこねえだろとタカをくくり、夕食を作り始めたら、なんとまあ、時間通りに来てくれましたよ。ただし、勝手に想像していたバンではなく、ごくごくフツーの乗用車に乗って。
この業者さん、ほぼ手ぶらで部屋にやってきた。「ほぼ」というのは、なんだか大きいポケットの中に何か入っているようなのだが、こーゆー業者さんの必携の道具、スパナだ何だが入った工具箱を持っていないのだ。こりゃ、今日は、きっと様子を見に来ただけだなと勝手に判断。
で、さっそく流しの下を点検開始。そこはすでに私が点検済み。ちゃんと元栓は開いていた。で、その様子を後ろから見ていたのだが、この妖怪ドブリンアクセントオヤジは、実は妖怪半ケツオヤジ…でもあった。
なんだか知らないけど、ズボンとついでに下着までずり下がって、流しの下に頭を突っ込んでるもんだから、見たくもないケツの割れ目が見えている。そういえば、数年前にも同じ妖怪を目撃したよなあ。とりあえず、こっちは、人参やじゃがいもの皮むきに忙しい。
すると、妖怪半ケツオヤジは、例の恐怖のボイラー室に移動。ボイラー室を点検。そして、今度は、何の意味があるのか知らんが、バスルームの水を全開出しっぱなしにして台所の水道の様子を確認。
以下、詳細は省略するけど(←書くのが面倒くさくなったんだろ)いろいろ試すこと30分、妖怪半ケツオヤジが結論を出した。
「こりゃ、元栓が閉まってるよ。管理会社に連絡してみるべ」
というわけで、管理会社に電話。この場合の「管理会社」は、このアパート全体の管理会社。ややこしいけど、この部屋の管理会社とは全く無関係。
管理会社:「元栓は地下にあります」
はい。では行ってみましょう。地下室へ。
ところで、鋭い人はお気づきかもしれないけど、元栓が閉まっていたら、当然風呂やトイレの水も出ないはず。だけど、風呂やトイレで問題がないというのは矛盾している。しかし、実はこれは矛盾でも何でもないのです。アイルランドでは「中水道」があって、風呂やトイレの水は上水道ではなく中水道。つまり、厳密に言えば、バスルームの水は飲用には適さないのです。私なんかは気にしてませんが、人によってはバスルームの水ではうがいすら嫌がる人もいる。
これは、聞いた話なので話し半分に聞いてほしいんだけど、中水道の水は各家庭に一日分くらいの貯水が義務づけられているらしい。それで各家にタンクがあるんだそうな。きっと一昔前は断水とかが日常茶飯事だったんじゃあないかと思う。ともあれ、台所の水が出ないということは、上水道の元栓が閉まっている可能性があるわけで、話としては矛盾しないのです。
で、場面は転換して地下室。怪しげなドアーがあったので開いてみると鍵はかかっておらず、中に入ることができた。中には電気のメーターや水道のタンクがあり、要するに完全な機械室。が、件の水道の元栓は見つからず。
そんなことをやっていると、警備員がやってきた。偶然なんだろうけど、挙動不審な私たち二人の元にほどなく警備員がやってきたことは素朴に賞賛に値すると思う。この警備員さんが、妖怪ドブリンアクセントがかわいいといえるほどひでーダブリン訛りで
「いや、賭けてもいいけど、元栓は各階にあるよ。鍵はドライバーを使えば開くよ」
この鍵、会社にも同様なやつがあるのでドライバーで開くことは知っていたが、警備員がそーゆーことをバラしていいのかな。
かくして再び場面転換して今度はアパートの6階のホール。各部屋の入り口近くに小さな扉があり、いかにも中に元栓がありそうだ。で、うちの一番近くの扉をドライバーで開けようとする。が、この妖怪ドブリンアクセントは小さなドライバーしか持ってないからなかなか開けることができない。私が家から大きなドライバーを持ってくると、扉は難なく開いた。
おい、プロの水道業者。道具くらい持ってこいよ。
が、その扉の中に元栓はなく、隣の家の前のドアもハズレ。そうして、結局うちから一番遠い場所のドアまでたどりついてようやく水道の元栓を発見。ところが元栓は天井の高さにある。妖怪ドブリンアクセントは
「おーい、椅子持ってきて」
だから、プロの水道業者。道具くらい持ってこい!
かくして、その天井の位置にある元栓をまわすと、ジャーという水の勢いよく流れる音が聞こえる。シロート目にも問題が解決したことが分かる。案の定、台所の蛇口からは勢いよく水が流れてきた。
…ってことは、結果から言えば、水道業者など呼ぶ必要がなかったわけ。ま、水道業者を呼ばなかったら、こんな公共スペースの扉を開けるなんて考えなかったろうからなあ。
もうひとつ気になること。前の住人が出て行った時に、わざわざ水道の元栓を閉めていったとは思えない。…ということは、新築で入居して以来、前の住人は元栓を開けることなく出ていったのだろうか。
さて、ここでお会計たーいむ。プロの水道業者を1時間拘束。この国の常識からすると、1時間で100ユーロといったところかな。ま、いくらかかろうと管理会社が払うという約束になってるから知ったことじゃないけどね。
私:「大家に請求するから領収書を書いてくれる?」 業者:「ええ?わし、そんなもん書かんけんね」
出たな、妖怪ダーツゼイ。確かに、領収書を書かなかったら今回の仕事、完全に無税だもんね。そういえば、以前、車の点検を修理業者にお願いした時は…
私:「領収書ください」 業者:「え?領収書がいるなら、料金は2割増しだよ。領収書がないから2割引きにしてあげてるんだから」
…なるほどね、確かに、VAT(付加価値税)が2割を超えてるんだから、無税にする分負けてくれてるなら文句はないわな。ま、そんなわけで、この国での税制は日本のクロヨンも真っ青のザルなんだろうなあという気がする。
ともあれ、領収書をくれないということは、自腹になる。それは困る。
私:「で、いくら?」 業者:「30ユーロ」
はい?
それは安いよ。安すぎる。わかった。それくらいなら自腹でもいいよ。そう思って財布を見ると、30ユーロがない。いや、あるのだ。今日の支払いのためにお金を降ろしてきたので、50ユーロ札が数枚。かくして、50ユーロ札を差し出すと
業者:「いや、お釣りがない」
うーん。財布の中には20ユーロ札と5ユーロ札が1枚づつ。とりあえずそれを渡して、あとは小銭を渡そうとすると…
業者:「ああ、いいよ。これで」
ビバ、いい加減王国アイルランド。なんか知らんが25ユーロならいいや。
というわけで、相も変わらず結果オーライなアイルランドでの水道業者体験でした。あ、ひでかす、半額の12.5ユーロ、出せ。
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