なべて世はこともなし 日記アーカイブ(インデックス)へ|前日の日記はこちら|翌日の日記はこちら |アイルランド真実紀行へ
無事にダブリンに戻ってきました。…そして1週間が経ちました。 やたらと忙しい自宅での滞在を終えて、向かったのは博多。 この日は雪が降るとの予報でしたが、私が家を出た時点ではまだ晴れ。 別府のコスモピア前のバス停に着くも次のバスは30分後。ちなみにコスモピアとはO分市内で堅実な経営をしていた某地元百貨店が地元の要請で専門店街とともに出店するも、専門店街は倒産して、百貨店自体も閑古鳥が鳴いているかわいそうなバブルの遺物…とか書いたら怒られるかな。で、別府市は今度は性懲りもなくそこからたった数百メートルしか離れていないとこに別のショッピングセンターを出直し市長選まで起こして誘致したとか書いたらもっと怒られるかな。ともあれ、乗車券はコスモピア内の案内所で買えるというので行ってみると、 案内所:「乗車券の販売は通常発車45分前に終了させていただいておりますが、本日はお席に余裕がありますので販売させていただきます」 と、「特別」であることを強調。 なーにたかが路線バスで偉そうなことをと思いつつ、さて、どのくらいバスが混んでるのかと思ってバスを待っていると、乗ったのは、私を含めてたったの3人(運転手含む)。こんな人数なら、乗用車でも十分こと足りたじゃないか。ちなみに、途中の温泉街の鉄輪口バス停より一人乗ってきたので結局バスのお客は3人でした。ちなみに「鉄輪」って読めますか。地元民、あるいは行ったことのある人以外にはおそらく読むことはできないと思います。お暇な方はググってみてくだされ。 別府というのは鶴見山の山の斜面にへばりついたような街で、大分(自動車)道のインターはその山の中腹。ローギアじゃないと上れないような激坂をバスはお客がほとんどいないせいもあってか結構らくらくと上っていきます。で、インターに入る前から雪が舞い始めまして、別府インターから湯布院インターの間の高度700メートル超の場所では外はこんな有様。 雪に慣れていないQ州のこと、雪の多い地域の読者さんは笑い出すでしょうが、このくらいの雪でも大分道は時速50キロの速度制限が出され、それでなくとも一般の車両はスピードを落として走ってます。なのに!この某鉄道会社が母体のバス会社のバスは80から90キロのスピードで追い越し車線から乗用車を片っ端から追い抜いていきます。むろん、この程度の雪ならそんなに神経質になる必要もないのですが、でもさー、運転手さん (運転席側のフロンドグラスの様子)。 …前、見えてなかったでしょ? たとえ3人しかお客が乗っていないバスの中でもお約束のビデオ放映が始まりまして、ビデオもお約束の釣りバカ日誌。そういえば添乗員のバイトをやっていた頃、バスの中では男はつらいよか釣りバカ日誌だったなーなどと思いつつ、ついと見入ってしまう。ビデオがちょうど終わったときバスは天神バスターミナルに着いた。雪も速度規制も何のその、定刻より5分早着。JRと熾烈な顧客獲得争いをしているとはいえ、大したもんだよ。このバスは。 今回博多に向かった理由は、私がプロモーション担当を努める博多在住の天才歌手、みねまいこと会うため。しかし、なんと言いますか、「天才」ってのは紙一重で何かにも近いわけでして。やっぱり彼女はいい意味でフツーじゃありません。だから私は彼女が天才だと思うし、今後ビッグになると思うし(「ピッグ」じゃありません「ビッグ」です。バ行とパ行はことパソコンのディスプレイでは見分けがつきませんな)、大好きなのですが。 そんな彼女と向かったのは、某すし屋。私がビンボーなのを知っている彼女は不憫に思ってかどうかは知らんが、特上寿司をおごってもらう。そして、某デパートのカフェに行き(この時点で私はお疲れモード)、そのあと、某ホテルのカクテルバーへ。なにやら、私に会わせたい人がいるらしい。 やはりみねまいには場所を選ぶセンスがある。前回連れて行ってくれたところといい、今回といい、私の知らない世界ばかり。…ちゅうか、大学生だった頃、飲みに行くといえば、オヤジくさくもキープボトルまであった某飲み屋をはじめとして、あとはチェーン店の居酒屋ばかり。彼女もいなかった寂しい私はホテルのバーだとか、そういうおしゃれなところとは一切無縁な生活をしてまして。以下、書いてて凹んできたので省略。 で、その某ホテルのカクテルバーに着いたのは午後10時。私に会わせたい人は待てど暮らせど来ない。電話をすると、「別のところで飲んでるからもうちょっと待ってて」とのこと。で、いい加減待ちくたびれて帰ろうと決めたのが4時間後の日付の変わった午前2時(待ちすぎ)。お会計を頼むと、紙の上に7340円(推定)と書かれた紙を渡される。一体全体どこからこの数字が出てきたのかさっぱりわからない不明朗会計。もっとも、ボラれたとかではないとは思うが。「きっとこういうところはこういうもの」と自分で自分を納得させる。 で、バーを出たところでタイミングを見計らったかのごとく、みねまいのケータイが鳴る。 みねまい:「会わせたい人が別のバーに来いって」 はいはいはい。毒を食らわば皿まで。2時まで待ったんだ。この際どこでも行きましょ。 木曜日の深夜(あるいは金曜日の早朝)開いてる店があるんかいなと思いきや、さすが博多、あるんですね。こちらは表通りからほんの少し引っ込んだところにある別のカクテルバー。10人くらい座れるカウンターがあるだけの狭い店はバーマンが一人いるだけで他には誰もいない。私に会わせたいという人も来ていない。 必要以上に口は利かないけれども人のよさそうな私よりほんのちょい年上と思われるバーマンとおしゃべり開始。しばらくすると、50くらいのおじさんがいかにもどっかのお店の若いお姉さんをお持ち帰り…といった風情でやってくる。男性が結構酔っているのに対し、女性はあからさまにしらふ。見ていると面白い。 で、待つことさらに45分。私に会わせたい人はほぼ5時間遅れで、やってきた。私よりも若干若いお兄さんは…酔っている。やたらとゆっくりした話し方で お兄さん:「みねまいは、すごいんです」 私:「そうですよね。で、どうすごいと思われるんですか」 おにいさん:「みねまいは………すごいんです」 …ダメだ。会話になってない。こりゃ困ったと、ひでかすに教わった酔っ払いへの秘策、トマトジュースに塩たっぷりを入れて飲ませる。が、二杯飲ませるも彼はカウンターに撃沈。…寝ちゃいました。 (彼の名誉と素性の保護のためにモザイクをかけております) そのあとは、揺すっても叩いてもまったく動じない。完全に寝てしまった模様。どうやら彼はこの店の常連らしく、バーマンも彼のことをよく知っているらしい。みねまいとバーマンと私の3人で一計を案じ、彼のポケットから財布を取り出す。そう、財布の中には何か住所が書いてあるものがあると思ったわけ。案の定、住所が記載された運転免許証が出てきた。 それにしても彼、完全に寝入ってます。その昔、「鉄道警察密着24時。鉄道スリ団を追え」といった感じの番組で、完全に鉄道の車内や駅で完全に寝入った酔っ払いから介抱をしているフリをして財布を盗むというのを見たことがある。あんなに寝入るなんてありえるのかねえ…と当時は思ったが、なるほど、ありえるわ。財布をポケットから取り出し、さらにジーンズの前ポケットに入っていた家の鍵を取り出しても、まだ彼、気がつかない。 で、バーマンにタクシーを呼んでもらい、タクシーが来たところで彼を運び出そうとするが、お、重い。あとで聞いたのだが、彼、なにやらスポーツマンらしく、身体を相当鍛えているらしいのだ。例によっての不明朗会計のあと、そんな彼をバーマンと二人で両肩を抱えてタクシーに乗せる。 で、ひとりだと間違いなく乗車拒否されるのは目に見えているので、みねまいと私もタクシーに乗り込む。タクシーの運転手さん、私たち二人が完全にシラフのせいか、嫌な顔ひとつせずに、彼の住んでいると思われるマンション前にわざわざUターンして社長づけしてくれる。 で、彼を車から降ろして支えようとするが、すいません。私のか弱き身体では無理です。彼を支えることはできません。何とかタクシーから降ろして、運転手さんに「もう行ってください」と言ったまではいいが、彼をマンションの部屋まで連れて行くことは絶望的に不可能。重すぎる。もう道に一緒に座り込もうと思ったら、その時、奇跡が起きた。もう、テレビドラマなら感動的な音楽をバックにスローモーションにするところ。 彼がー、立ち上がったのだー。 …と言っても、私の肩に完全に寄りかかったままながら、なんとか歩こうとしている。こうして、彼を何とかエレベーターに乗せ、彼の住む階へ。で、みねまいが家のドアーの鍵を開ける。 家の入口はマンションにありがちな人一人が立つのが精一杯の狭いところ。さあこりゃどうしたもんだと思ったら、いやー、私は人間の本能を見ましたよ。今まで酔っ払ってまともに歩けなかった人が、入口脇のトイレに一人で入っていったのです。 私:「おーい、みねまい、彼、トイレにいけるんだから大丈夫だよ。撤収するぞ」 というわけで、私にとっては見ず知らずの彼をトイレに残して撤収。朝の5時過ぎにホテルに戻る(こんな時間まで外にいるならホテルなんかとらなくてもよかった気がする)。 そうそう。今日の日記はみねまいを引き合いに出して「天才と何とかは紙一重」という話をしようと思っていたのだった。いつの間にか「ヨッパー介抱日記」になってた。 翌日…というか数時間後、みねまいと天神地下街のインフォメーションセンター前で待ち合わせる。昼飯を一緒に食べて、福岡空港まで送ってもらおうという算段。ところが、待ち合わせ時間になってもみねまいは来ない。外はご覧の通り、雪模様(Q州では珍しいと思う)。陸上の交通機関は大幅に乱れている模様。 こういうときに困ることは、私がケータイを持っていないこと。もちろんアイルランドではケータイを持っているが、次世代ケータイとは無縁の私、私の旧世代のケータイは日本では使えない。こりゃ、おとなしく待つしかないと思っていると、天神地下街にアナウンスが流れる。 アナウンス:「アイルランドからお越しのSnigel様(無論本名で)、アイルランドからお越しのSnigel様、おことづけがございますので、インフォメーションカウンターまでお越しください」 あ、ありえねー。今時、どっかで呼び出しの館内放送があること自体珍しいのに、いくら事実でも「アイルランドからお越し」はねーだろ。みねまい。こらっ。いったい偶然通行していたり買い物をしていた人の何人がその放送に気がついたか知らないが、かなり恥ずかしい放送だったことは間違いない。 さすがにインフォメーションカウンターに行くことは憚られ、公衆電話からみねまいに電話をするも、留守電サービスに直行。ううっ。恥ずかしいがインフォメーションカウンターに行くしかないのか。目の前にあるインフォメーションカウンターながら、足が重い。 私:「あのー、今恥ずかしい放送があったSnigelと申しますが」 すると、おねえさんは営業スマイルで おねえさん:「みねさまからご伝言がありまして今福岡空港にいるので10-15分遅れるとのことです」 ああ、そうですか。ん?待て。なんでみねまいは福岡空港にいるんだ。ちなみに、あとから聞いたところ、電話の向こうで呼び出しを頼まれたおねえさんは「アイルランド」と聞いて一瞬固まったそうな。こんなページ読んじゃいないだろうけど、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。 15分後にみねまいはやってきた。そして、彼女の一言は、私をして頭上に?が5個以上並ぶこととなった。 みねまい:「ごめん。Snigelのことを忘れて福岡空港に行ってた」 聞けば、私を忘れて一人で福岡空港に行き、福岡空港の駅で私がいないことに気がついたんだそうな。 ウソだろ。おいっ。 これがネタであれば面白くも何ともないのですが、本人は大真面目なのだから始末に終えない。ね、天才と何かは紙一重でしょ。 で、昼飯を終え今度はちゃんと私もついて福岡空港へ。ヒコーキの時間まで若干の余裕があった私たちはレストランへ。みねまいが飲み物を買ってくるというので私はテーブルで待つ。何を飲みたいか特に言わなかったけど、まあいいや。何が来ても。ビールだったらいいけど、昨日から飲み続けてるし、今晩も渋谷で飲み会だからお茶でもいいな…などと思っていると、そこに出てきたものは、人智を超越した飲み物だった。 青汁。 繰り返すけど、これがネタなら面白くも何ともなかった。でも、みねまいという天才はこれを素でやってのけるのだ。只者ではありません。本人いわく、「お茶は機械のインスタントだからやめた」とのこと。こいつ。絶対ビッグになると確信を持って思う。冗談抜きで、私はこんなみねまいが大好きです。 ちなみに昨日撃沈して話ができなかった方、青汁を飲む私たちの元にわざわざ会社を抜け出して空港まで来てくださいました。謝りに。ただし、私たちと会ったことまではご記憶にあったそうですが、それ以降はどうやって自宅に帰りつき、布団の上で寝ていたのかなどご記憶にない模様でしたが。空港で会ったその方はまったくの別人の好青年でした。私も酔うと寝てしまうけど、少なくともあそこまでは酔わないなあ。というか、酔ったことがない。 ほんで、その日の夜は某出版社の編集者さんと渋谷で飲み、翌日の日記は怒涛の秋葉原編へと続く。今から連続して書くのでなんとか日曜日の更新に間に合わせたいところ。
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