なべて世はこともなし 日記アーカイブ(インデックス)へ|前日の日記はこちら|翌日の日記はこちら |アイルランド真実紀行へ
私は過去にスウェーデンに10回以上行き、スウェーデンをある程度はわかったつもりでいました。その上で、100の質問には住みたい国に「スウェーデン」と書いたこともあります。しかし、反省しています。 缶詰。 シュールストレミングという、はえー話がニシンの缶詰…なんだけど、これがまたとんでもない代物らしいのだ。 世界一臭い缶詰。 私の友人が1年以上まえにスウェーデンから買ってきてくれて、開ける機会をいつも逃してしまい今日まで放置してしまっていたわけ。 左が今年の2月ごろ撮影。そして右は本日撮影。 おわかりいただけるでしょうか。この缶詰、成長してます。膨らみが増してます。左の写真だって、去年に比べると膨らんでるのに、最近になって更に爆発寸前といっていいほど膨張してます。言いかたを変えると、中で発酵が進んでます。とってもキケンな状態になってます。 とはいえ、ですよ。どんなに臭いって言ったって所詮は人間が食べるもんです。スウェーデン人が喜んで食っている(と思われる)あくまでも食べ物です。…ってことはさ、臭い臭いと大騒ぎしたところで、実はたいしたことはないんじゃないだろうか。 思えば日本人は納豆を食べる人種です。私は食べませんがひでかすは喜んで食べてます。たまーに日曜日の朝に冷凍してあった納豆をパックごとチンして(環境ホルモン出てるよ。精子の数が減ってるよ。キケンだよと思うが)食べてます。 いくら納豆を食べないとはいえ同じ日本人の私、納豆の匂いはさして気になりませんが、同居人のドイツ人などに言わせると、とても我慢ができるレベルの匂いじゃないそうな。確かにひでかすが納豆を食べていると、誰も台所によりつきません。納豆ですらそうなんだから、くさやなんかの匂いをかがせた日にはえらい騒動になりそうだ。 こうして考えると、このスウェーデンのキワモノの食べ物、魚を喜んで食べる日本人の感覚では実は他が騒ぐほどのことはないんじゃないだろうか…と思ったわけ。 とはいえ、念には念を入れて庭で開缶作業を行うことにした私たち。私とひでかすは撮影を理由にこの缶をスウェーデンから持ってきた友人その人に開けてもらうことにした。 まず。缶切りを使おうとするのだが、この見事に膨らんだ缶に缶切りの刃がささらない!で、刺さったと思った瞬間、振った缶コーラのように中身の液が缶切りの刺さった穴からどぴゅっと勢いよく飛び出す。 (流れ出した液が妙に生々しい) で、勢いよく飛び出したのは液だけではなかった。中身の魚の一部も飛び出し、それだけでは飽き足らず辺り周辺には人智を超越した匂いが充満する。 その匂いがポイントになるので無理やり描写してみると、Temple Barのヨッパーどもがトイレに使っている、アンモニア臭で目までやられそうな裏通りにHowthの魚のマーケットで1週間前に売れ残った魚をさらに1週間放置して、そこに1年前にくさった卵を1ダース投下して割ったところに自分の鼻を5センチの距離まで近づけた感じと言えばわかってもらえるでしょうか…わかんないですよね。はい。素直にさじを投げます。表現不能なとんでもない匂いです。 その匂いの強烈さと言えば、問題の缶詰から10メートルは余裕であるこの距離ですら、その爆裂な匂いが届く。いや、届くなんてもんじゃない、強烈な匂いが屋外なのに充満する。 じゃじゃーん。これが中身(泣きながら撮影してます)。 日ごろ、私がどんなにまずいメシを作っても喜んで食べてくれ、かつ、納豆だって喜んで食べるはずのひでかすが ひでかす:「ごめん。オレ、食えない」 なんだよお前!いざと言うときに全く役に立たないアンポンタンだな。…というわけで、ここは丈夫(ますらお)となるべく私はフォークで一切れ缶からつまみ出しました。ひでかすは ひでかす:「うわっ、食うの」 とか言いつつ、人にカメラを向けてます。でも、カメラを向けつつひでかすは完全に逃げ腰。 …私は食べましたよ。一切れだけだけど。 まず、アンモニアの刺激が舌にきて、そして、ヌルっとした感触、飲み込んだ後には塩っ辛さ。飲み込んだけど、うまいとか、まずいとかいう次元じゃない。ただ単に腐った食べ物。 これを見た、スウェーデンから件の缶詰を持ってきた友人は、Snigelが食ったんならじゃあわしも一口と、一口食べます。 ソッコー吐き出す友人の図。 そのままキッチンへ走っていき口をすすいでました。涙目で何か言ってましたけど聴取不能。 驚いたのは、多数のハエが呼びもしないのに、缶周辺にすぐに集結。確かに、ハエが好きそうな匂いですよこれ。しかも、その匂いの広がりの早いこと早いこと。おそらく近所に住んでいるハエが一気に集結したと思われます。 というわけで、食べることはおろか、ハエが集まりそうで捨てることもままならぬ、スウェーデン産のただひたすらに迷惑な食べ物、友人は一計を案じました。 埋葬処分。 いやー、はじめて本気で「庭付き一戸建てに住んでて良かった」って思いましたね。集合住宅じゃ捨てるのもままならず、困り果てるとこでした。というか、集合住宅であれ開けてたら、まず間違いなく異臭騒動で避難騒ぎになっていたと思われます。 で、この日記を書くにあたって、このシュールストレミングについてWikipediaで調べてみました。いわく… 「多くの航空会社では、飛行中の気圧低下により内圧の高いシュールストレミングの缶が爆発する恐れがあるとして、航空機内への持ち込みを禁じている」 …友人は持ってきてもうたがな。しかもスウェーデンの航空会社で。むろん、爆発してヒコーキの飛行に重大な影響を及ぼすとかでなく、強烈な匂いが充満するだけ…って、それだけでヒコーキの飛行に重大な影響を及ぼしそうだな。 ただ、これが冗談ではなくて、この臭い缶詰を日本に輸入している会社のブログによると… シュールストレミングがヨーロッパ主要航空会社から空輸禁止の措置をとられました。どうやら、靴爆弾や火気のような扱いをされてしまうようなのです。 (出典:DUVA&LULEA BLOG) しかも、このサイトによると、日本でこのシュールストレミングの缶詰は一缶3780円だそうです。 3780円を庭に埋めてしまいました。 ただ、それよりも何よりも気になったWikipediaの記述(私たちのとった行動があちこちで間違っていたことが分かるので一読を推奨)。 製品によっては気温が高いと発酵が進み過ぎてどろどろに溶けてしまうため、食べるタイミング、製品の選択に充分注意する必要がある。 あれって、一昨年の冬に缶に詰められたものらしい。…ってことは去年の夏に食べるべきもので。あらためて写真を見ると、確かに「どろどろに溶けてしま」っていた気がする。つまり、つまり、考えたくはないが… 本当に腐ってたんじゃないか? いやー、二度とできない体験をさせてくれたスウェーデンの缶詰に乾杯!そりゃ、他国の文化をむげに否定するつもりはないけど、体を張って食べたんだからそれでも言わせてくれ。 こんなもん食えるか! 異文化との相互理解の道は、まだまだ遠い。 ここで話は終わらない。ひでかすによるAnother Viewまたは続編(本人談)はこちらへ。
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