なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
2004年04月29日(木) |
10年ごしの思わぬ再会 |
1990年代前半。私はQ州にある某県立高校に在籍しておりました。自称「進学校」で、いちおう地元では名の通った高校だったようです。ただし、私はこの高校のやり方に真っ向から反対しており、授業はボイコットするわ、教員と大喧嘩するわで、2年次の進学クラスでの成績は90人中89番…わはは、ブービー賞ってやつですね…で、進学クラスから放り出されるというあまりない快挙を成し遂げた大バカです。
この辺の話は、今にして思えば、私のやり口はともかく、私がおかしいと思っていたことはやっぱりおかしかったわけで、まあ、この辺の話はまたおいおいということで。
で、この日記、かれこれ4年目に突入しましたが、けっこう長い間飽きもせずに読者さんでいてくださっている方もいらっしゃるようです。で、今までいただいたたくさんのメールの中でも、先月いただいたこのメールは強烈でした。
「もしかして、SnigelさんはXX高校出身ではないですか?」
当たり。そういうあなたは…と思って差出人を見ると
おおっ、高校のときの同級生。しかも、片手の指の数くらいしかいなかった友人のひとり。
考えてみると恐ろしいことで、彼女、私が高校のときの友人などとはゆめゆめ思っておらず私の日記を読んでくださっていたようです。ところが、件の「指さし」を本名で出版したので、彼女の中で「もしかして?」と思い、ためしにメールを出してみたらしい。
白状するとですね、「指さし」を出す前に出版社から本名で出すかペンネームで出すかを聞かれたんですよ。一瞬悩みました。何でもですね、「ハーフっぽい」名前にすると本がより売れるらしい。たとえば、田中一郎オコナーとか、ほれ、「ハーフ」=「語学が達者」=「立派な本」というミョーな、でも単純な図式が読者の中で成り立つらしい。
あとはほら、ライターさんの中にいませんか、ガンバ佐藤とか、アクセル高橋とかなんだか苗字は本名だけど名前をテキトーにつけたといった趣の名前。さすがにそれは考えなかったけど、本名を出すと仕事もやりづらくなる恐れがあるとか、なんだかいろんなことを考えたわけですよ。
でも、別に悪いことをしているわけでなし、自分にとって誇りになるもんだからと敢えて本名で出版したわけです。それに、上のような姑息な方法で売上を伸ばしても...という思いもあったわけです。結果、まさにひょうたんからこまで上のような驚愕メールが届いた次第。
で、この高校のときの同級生の彼女の名前は「みねまいこ」。私をして二度びっくりさせたことは、なんと彼女はミュージシャン。作詞・作曲もやって、さらに歌う。
音楽的センスのない私に音楽を語る資格はまったくないけど、少なくとも「詞」については語る資格があると思う。
再び舞台はQ州の某高校に戻る。私は高校のときに文芸部の部長なるものをやっていた。別にやりたかったわけじゃない。教室にいるのがいやでいつも図書館にいたおかげで何時の間にか部長になっていたわけ。ちゅうても本人はほとんど作品を書かず。
で、県単位で出している「高校文芸」という高校生の作品を集めた冊子の「小品」(本来は「短い作品」という意味のはずだが、この場合「佳作」といった感じの扱い)の欄に、彼女が書いた作品が載っていた。
この作品を見て、私は驚いたのを覚えている。編集者がどういうセンスをしているのか知らないが、この私小説は間違いなく「小品」扱いではなくもっと大きく扱われるべきだと。それで、10年たった今でもそのタイトルとあらすじを覚えている。自分の書いたものを含めて他はきれいさっぱり忘れ去ったところを見ると、きっと彼女の作品は本物だったのだと思う。
彼女への返信メールに、そのことを書くと、彼女もその自分の作品を覚えていて、「覚えていてくれて嬉しい」と書いてくれた。
ふっと10年という長い期間がひとつの作品を通じて埋まったような気がした…が、それは幻想に過ぎなかった。彼女のサイトを見て、愕然としてしまったのだ。
彼女のサイトを見ると、彼女が高校生だったころの話がぽつりぽつりと出てくる。彼女の目を通じてみた世界と、私の目を通じてみた世界はまったく違っていた。しかも、彼女は病気をしたり大変だったらしい。なのに、私は「片手の指の数しかいない友人」などと言っておきながら、彼女のことを何も知らなかった。
いったい自分は高校のときに何をしたんだろうと思うと暗然とした。勉学に励んで<「一流」の大学に行ったわけでなし、部活動で輝かしい成績を残したわけでなし、かといって、友人とかけがえのない時間を過ごした…というわけでなし。そう、一言でいって何もしていないのだ。何もしていなかったのに周りを見る余裕もなかった...というのは一体どういうことなのだろう。10年の隙間を埋めるも何も、最初から私は、彼女のことを見ていなかったのだ。ふと思うと、高校のときの友人で未だに連絡を取り合っている人は...いない。
彼女に話を戻すと、彼女のホムペから何曲か聞くことができる。上にも書いたとおり、私は音楽センス0の人なのであまり書く資格はないとは思うけど、初めて聞いたときに、何と言ったらいいのやら、「奄美の歌姫」と呼ばれていたあの人の音楽を聴いたときの驚きと同じような驚きを受けた。つまり、既存の音楽と明らかに一線を画している。ぜひ聞いてみてほしいな。
というわけで、私の高校のときの数少ない友人であり、ミュージシャンでもあるみねまいこの公式サイトみねまいこム。
世界は広い。でも、世間は狭い。
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